雑多な短篇置き場
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【スイート、スイート、スイート】
2022-0214 バレンタイン記念作品
※注意※ 若干の大人向け要素あります
生クリームたっぷりのケーキ、ふわふわのシュークリーム、苺のシロップ漬け、繊細な飴細工、とろけるチョコレート、色鮮やかなアイスクリーム。ところ狭しと並んだスイーツは、甘党の銀時にとってまさに夢の光景だった。
「なぁマジで?これ全部食っていーの?マジで銀さんこれ、タダで全部食っていーの?」
「いいんだよ銀ちゃん、いっぱい食べて下さい」
今日はバレンタインだから、大江戸なんちゃらプリンスとかいう高級ホテルのスイーツ食べ放題をご馳走します。今朝の電話でそう言われ、半信半疑で待ち合わせ場所に来た銀時を、***は満面の笑みで迎えた。
それで今は、落ち着いた雰囲気の高級ラウンジで、落ち着きのない庶民なふたりがギャーギャー騒ぎながらスイーツを食べている。
「うぉぉ!うんまぁぁぁ!何だコレ?何か洋風の、洋風のモナカみてぇなコレ、めっさうめぇんだけど!?」
「それマカロンって言うんですよ。あ、銀ちゃんこっちのチョコのアイスも美味しい。はい、どうぞ」
丸テーブルを超えてアイスの載ったスプーンが銀時に差し出された。あーん、という口に滑り込んできたチョコアイスは甘くて濃厚なのに、すぐに溶けるからもっと食べたくなる。
並んだスイーツとテーブルの間を何度も行ったり来たりして、給仕係が全て食べ尽くされそうだと青ざめるのも、他の客がアイツまだ食うのかと引くのも無視して、胃袋が満杯になるまで平らげた。
もう入らないとなってようやくスプーンとフォークを離した銀時は「食った食った」と言いながら肘掛けつきの椅子にゆったりもたれた。
「こういうバレンタインも気に入ってくれました?」
「んなもん気に入るに決まってんだろ。ひとの金で食う甘ぇモンほどうめぇモンはねーからな」
「良かったぁ……手作りも考えたんですけど、お菓子は銀ちゃんの方が作るの上手だから、今回はプロの手に頼っちゃいました。でも喜んで貰えて嬉しい」
ティーカップを傾けながら満足げに「ふふっ」と微笑む***に銀時は釈然としない。
いや別に手作りでもいーけど?
むしろお前の手作りチョコ食いてぇけど?
と言いかけたが、あれほど大量のケーキやパフェを貪り尽くした今では、もう気まずくて言えなかった。
会計の時ふと見えた伝票の数字に銀時は目を剥いた。が、***が顔色ひとつ変えずに財布から数枚の諭吉を出したのには、もっと驚いて目玉が飛び出るかと思った。
「お前、そんな金どっから出したんだよ!」
「え?どっからって、お財布からですよ?」
「そーゆー意味じゃねぇぇぇ!バレンタインひとつにそんな大金使うなっつってんだよ馬鹿!もしかして***って、お嬢様か何かなの?金銭感覚のぶっ壊れたご令嬢なの?」
「ち、違いますよ!確かにバレンタインだからだけど、でもそれだけじゃなくって私は……その、あの、」
急に言い淀んだ***が口ごもって、ふたりでホテルのロビーに立ち尽くした。
えぇと、と悩んで銀時をチラッと見上げた表情は気まずそうだった。渋々といった感じで手提げをごそごそと探りはじめる。「こ、これ」と***が恥ずかしそうに押し付けてきた物を見て銀時は目を丸くした。
赤いリボンが巻かれた透明の箱。その中にほんの小さなチョコレート。いびつなハート型の茶色い物体、の表面にホワイトチョコで「ぎんちゃんだいすき」と書かれた文字はガタガタに崩れていた。
「手作りも頑張ったんだけど、上手くいかなかったからスイーツビュッフェで挽回したかったんです。それに正直に言うとね……銀ちゃんと一緒に甘いもの食べたかったの。たまにはこんなデートしたいなぁって思ったから……だからぜーんぜん大金なんかじゃなくって、こういう時の為に働いてるんだから、いいんです!」
何が楽しいのか***はフニャッと笑い、右手を握りしめてガッツポーズをするから、銀時は呆れた。言葉も出ずにぽかんとしてるうちに、ロビーの端に売店を見つけた***は、新八と神楽に土産を買うと言って駆けていく。ショーケースに並ぶ焼き菓子を真剣に吟味する横顔を遠くから眺めていたら、銀時の脳裏に素朴な疑問が浮かんだ。
———そういや俺達って、いつデートしたっけ?
記憶を辿っても最後のデートが思い出せない。万事屋で夕飯を食べたり、スーパーに買い出しに行ったり日常的に一緒に居るせいで、デートという恋人同士なら普通にすることを完全に忘れていた。
そういえば今日の***は、初めて見る着物を着ているとか、いつもより丁寧に化粧しているとか、そんな細かいところに今さら気づいた。それと同時に***がデートをしたいということさえ、素直にねだれない女だったことを銀時は思い出した。
手の中の形の悪いチョコと「だいすき」の文字を見下ろして、ぶはっと吹き出す。まだ売店にいる***を置いて、銀時がフロントへ向かうとホテルマンが癪に触るほど品のいい笑顔で「いらっしゃいませ」と言った。
フロントでの用事が済み、ソファに座って待っていた銀時のもとへ、両手に紙袋を抱えた***が戻ってきた。新八と神楽だけでなく、お登勢や職場の連中にも土産を買ったようで大荷物だ。待たせてごめんね、と苦笑いをしながら隣に腰掛けると、吹き抜けの天井のステンドグラスを見上げて「わぁ」と感嘆の声を上げた。
「キラキラして綺麗……スイーツは美味しいし雰囲気も良いし、素敵なホテルでしたね。いつかまた来れたらいいな」
「んじゃ、泊まってかね?」
「へ?やだ、なに言ってるんですか銀ちゃん、私達がこんなところに泊まれるわけな」
「部屋とった。しかも泣く子も黙るスイートルームな」
「えっ!?」
目玉が零れそうなほど目を見開き、飛び跳ねる姿に銀時はゲラゲラ笑った。着流しの袖からルームキーを出すと再び「え!?」という叫び声が上がる。上品すぎるコンシェルジュに「お部屋までお荷物お持ちします」と言われた***は、驚きのあまり腰を抜かしていた。
仕方なく腕に掴まらせて高層階行きのエレベーターに引きずり込む。最上階に連れてこられ、辿りついた部屋のドアに「SUITE」の文字を見ると、また「え!?」と叫び呆然としていた。でも連れ込まれた部屋の広さだとか、窓から見える夕暮れの江戸を一望する景色だとか、馬鹿デカいベッドとかガラス張りのバスルームとかにギョッと青ざめると、***は悲鳴のような声で言った。
「どどど、どういうことですか銀ちゃん!?ほ、ホテルの人を脅したんですか!?そんな犯罪まがいのことして許されると思ってるんですか!?」
「オイィィィ!!お前、俺のこと何だと思ってんだよ!ちゃんと金払ってるわ!こーゆー時のために働いてんだし、別にいーだろーがたまには」
言いながら銀時は右手でパチンコのハンドルを回す動きをした。先週の臨時収入が全て飛んだが、それもまぁいい。
本当に?と疑いの目をする***の肩を掴んで「本当だっつーの」と言いながらベッドに押し倒す。うわあっ、と驚いている所に馬乗りになって、すぐに口付けようとした銀時の口元を小さな手が覆って止めた。
「ちょっ、ちょっと待って下さい!急に泊まるなんてダメだよ。万事屋に電話しなきゃみんな心配するから」
「心配しなくてももぉ電話しましたぁ〜。んで神楽には、ぱっつぁんとこ泊まれってしっかり言ってますぅ」
「嘘っ!?」
嘘じゃねーしと笑って、さっき貰ったチョコの箱を開ける。お世辞でも上手とは言えない歪んだハートのそれを、仰向けの***の眼前に突きつけた。「っ、」と息を飲んだ顔が、恥ずかしそうにサッと赤くなった。
「そーいや***、これ何て書いてあんの?字がヘタクソすぎて読めねぇから教えて」
「や、ヤダ……言わない」
「は?言えよ、お前が書いたんだろーが」
ホワイトチョコの文字をニヤニヤ眺める銀時を、***が羞恥心で瞳を潤ませて睨む。そういう顔が余計に煽るといつまで経っても学ばない。チョコをぱくっとひと口でたいらげて、身を乗り出した銀時は、唇に甘い息が掛かるほど顔を近づけた。
湯気が出そうな位に真っ赤な顔をふるふる振って***は拒んでいた。だがその両手首を掴んでシーツに抑えつけ、身体ごと覆いかぶさり「なぁ言えよ、早く」としつこく求める。ついに観念して、蚊の鳴くような声が漏れた。
「ぎ、銀ちゃん……だ、いすき、って、んっ!?」
声を飲みながら噛み付いた***の唇は、生クリームみたいに柔らかい。そっと撫でた頬っぺたは苺の色に似ている。飴細工さながら華奢な身体をたやすく組み敷けば、シロップ漬けのように潤んだ瞳がとろんとした視線を寄こした。
乱れた着物の上から掌で包んだ胸の膨らみがシュークリームみたいにふわふわで、揉みしだく手が止まらなくなる。緩んだ襟の中の鎖骨のあたりに強く吸いついて、マカロンと同じサイズの紅い鬱血を残した。
小さな唇を食べるようなキスをして、どちらのものか分からない唾液が口から溢れそうになった時にごくんっと一気に飲み込む。広がるチョコレートの味は濃くて、もっと飲みたくなった銀時は歯止めが効かなくなった。
頭のてっぺんから爪先まで、どこもかしこも柔くて甘い***が、今日食べたどのスイーツよりも美味い。ついさっきあれほど食べたのに、もう腹が減った。身体と身体をぴったり重ねて、ふたりでベッドに沈みながら、終わらないキスの狭間で言いわけのように銀時は囁いた。
「どんだけ食っても食い飽きねぇ、食えば食うほど欲しくなりやがる……結局どんな甘ぇモンより俺が食いてぇのは、食いたくてたまんねぇスイーツは……***、お前だよ」
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【スイート、スイート、スイート】
2022-2-14 バレンタイン記念
2022-0214 バレンタイン記念作品
※注意※ 若干の大人向け要素あります
生クリームたっぷりのケーキ、ふわふわのシュークリーム、苺のシロップ漬け、繊細な飴細工、とろけるチョコレート、色鮮やかなアイスクリーム。ところ狭しと並んだスイーツは、甘党の銀時にとってまさに夢の光景だった。
「なぁマジで?これ全部食っていーの?マジで銀さんこれ、タダで全部食っていーの?」
「いいんだよ銀ちゃん、いっぱい食べて下さい」
今日はバレンタインだから、大江戸なんちゃらプリンスとかいう高級ホテルのスイーツ食べ放題をご馳走します。今朝の電話でそう言われ、半信半疑で待ち合わせ場所に来た銀時を、***は満面の笑みで迎えた。
それで今は、落ち着いた雰囲気の高級ラウンジで、落ち着きのない庶民なふたりがギャーギャー騒ぎながらスイーツを食べている。
「うぉぉ!うんまぁぁぁ!何だコレ?何か洋風の、洋風のモナカみてぇなコレ、めっさうめぇんだけど!?」
「それマカロンって言うんですよ。あ、銀ちゃんこっちのチョコのアイスも美味しい。はい、どうぞ」
丸テーブルを超えてアイスの載ったスプーンが銀時に差し出された。あーん、という口に滑り込んできたチョコアイスは甘くて濃厚なのに、すぐに溶けるからもっと食べたくなる。
並んだスイーツとテーブルの間を何度も行ったり来たりして、給仕係が全て食べ尽くされそうだと青ざめるのも、他の客がアイツまだ食うのかと引くのも無視して、胃袋が満杯になるまで平らげた。
もう入らないとなってようやくスプーンとフォークを離した銀時は「食った食った」と言いながら肘掛けつきの椅子にゆったりもたれた。
「こういうバレンタインも気に入ってくれました?」
「んなもん気に入るに決まってんだろ。ひとの金で食う甘ぇモンほどうめぇモンはねーからな」
「良かったぁ……手作りも考えたんですけど、お菓子は銀ちゃんの方が作るの上手だから、今回はプロの手に頼っちゃいました。でも喜んで貰えて嬉しい」
ティーカップを傾けながら満足げに「ふふっ」と微笑む***に銀時は釈然としない。
いや別に手作りでもいーけど?
むしろお前の手作りチョコ食いてぇけど?
と言いかけたが、あれほど大量のケーキやパフェを貪り尽くした今では、もう気まずくて言えなかった。
会計の時ふと見えた伝票の数字に銀時は目を剥いた。が、***が顔色ひとつ変えずに財布から数枚の諭吉を出したのには、もっと驚いて目玉が飛び出るかと思った。
「お前、そんな金どっから出したんだよ!」
「え?どっからって、お財布からですよ?」
「そーゆー意味じゃねぇぇぇ!バレンタインひとつにそんな大金使うなっつってんだよ馬鹿!もしかして***って、お嬢様か何かなの?金銭感覚のぶっ壊れたご令嬢なの?」
「ち、違いますよ!確かにバレンタインだからだけど、でもそれだけじゃなくって私は……その、あの、」
急に言い淀んだ***が口ごもって、ふたりでホテルのロビーに立ち尽くした。
えぇと、と悩んで銀時をチラッと見上げた表情は気まずそうだった。渋々といった感じで手提げをごそごそと探りはじめる。「こ、これ」と***が恥ずかしそうに押し付けてきた物を見て銀時は目を丸くした。
赤いリボンが巻かれた透明の箱。その中にほんの小さなチョコレート。いびつなハート型の茶色い物体、の表面にホワイトチョコで「ぎんちゃんだいすき」と書かれた文字はガタガタに崩れていた。
「手作りも頑張ったんだけど、上手くいかなかったからスイーツビュッフェで挽回したかったんです。それに正直に言うとね……銀ちゃんと一緒に甘いもの食べたかったの。たまにはこんなデートしたいなぁって思ったから……だからぜーんぜん大金なんかじゃなくって、こういう時の為に働いてるんだから、いいんです!」
何が楽しいのか***はフニャッと笑い、右手を握りしめてガッツポーズをするから、銀時は呆れた。言葉も出ずにぽかんとしてるうちに、ロビーの端に売店を見つけた***は、新八と神楽に土産を買うと言って駆けていく。ショーケースに並ぶ焼き菓子を真剣に吟味する横顔を遠くから眺めていたら、銀時の脳裏に素朴な疑問が浮かんだ。
———そういや俺達って、いつデートしたっけ?
記憶を辿っても最後のデートが思い出せない。万事屋で夕飯を食べたり、スーパーに買い出しに行ったり日常的に一緒に居るせいで、デートという恋人同士なら普通にすることを完全に忘れていた。
そういえば今日の***は、初めて見る着物を着ているとか、いつもより丁寧に化粧しているとか、そんな細かいところに今さら気づいた。それと同時に***がデートをしたいということさえ、素直にねだれない女だったことを銀時は思い出した。
手の中の形の悪いチョコと「だいすき」の文字を見下ろして、ぶはっと吹き出す。まだ売店にいる***を置いて、銀時がフロントへ向かうとホテルマンが癪に触るほど品のいい笑顔で「いらっしゃいませ」と言った。
フロントでの用事が済み、ソファに座って待っていた銀時のもとへ、両手に紙袋を抱えた***が戻ってきた。新八と神楽だけでなく、お登勢や職場の連中にも土産を買ったようで大荷物だ。待たせてごめんね、と苦笑いをしながら隣に腰掛けると、吹き抜けの天井のステンドグラスを見上げて「わぁ」と感嘆の声を上げた。
「キラキラして綺麗……スイーツは美味しいし雰囲気も良いし、素敵なホテルでしたね。いつかまた来れたらいいな」
「んじゃ、泊まってかね?」
「へ?やだ、なに言ってるんですか銀ちゃん、私達がこんなところに泊まれるわけな」
「部屋とった。しかも泣く子も黙るスイートルームな」
「えっ!?」
目玉が零れそうなほど目を見開き、飛び跳ねる姿に銀時はゲラゲラ笑った。着流しの袖からルームキーを出すと再び「え!?」という叫び声が上がる。上品すぎるコンシェルジュに「お部屋までお荷物お持ちします」と言われた***は、驚きのあまり腰を抜かしていた。
仕方なく腕に掴まらせて高層階行きのエレベーターに引きずり込む。最上階に連れてこられ、辿りついた部屋のドアに「SUITE」の文字を見ると、また「え!?」と叫び呆然としていた。でも連れ込まれた部屋の広さだとか、窓から見える夕暮れの江戸を一望する景色だとか、馬鹿デカいベッドとかガラス張りのバスルームとかにギョッと青ざめると、***は悲鳴のような声で言った。
「どどど、どういうことですか銀ちゃん!?ほ、ホテルの人を脅したんですか!?そんな犯罪まがいのことして許されると思ってるんですか!?」
「オイィィィ!!お前、俺のこと何だと思ってんだよ!ちゃんと金払ってるわ!こーゆー時のために働いてんだし、別にいーだろーがたまには」
言いながら銀時は右手でパチンコのハンドルを回す動きをした。先週の臨時収入が全て飛んだが、それもまぁいい。
本当に?と疑いの目をする***の肩を掴んで「本当だっつーの」と言いながらベッドに押し倒す。うわあっ、と驚いている所に馬乗りになって、すぐに口付けようとした銀時の口元を小さな手が覆って止めた。
「ちょっ、ちょっと待って下さい!急に泊まるなんてダメだよ。万事屋に電話しなきゃみんな心配するから」
「心配しなくてももぉ電話しましたぁ〜。んで神楽には、ぱっつぁんとこ泊まれってしっかり言ってますぅ」
「嘘っ!?」
嘘じゃねーしと笑って、さっき貰ったチョコの箱を開ける。お世辞でも上手とは言えない歪んだハートのそれを、仰向けの***の眼前に突きつけた。「っ、」と息を飲んだ顔が、恥ずかしそうにサッと赤くなった。
「そーいや***、これ何て書いてあんの?字がヘタクソすぎて読めねぇから教えて」
「や、ヤダ……言わない」
「は?言えよ、お前が書いたんだろーが」
ホワイトチョコの文字をニヤニヤ眺める銀時を、***が羞恥心で瞳を潤ませて睨む。そういう顔が余計に煽るといつまで経っても学ばない。チョコをぱくっとひと口でたいらげて、身を乗り出した銀時は、唇に甘い息が掛かるほど顔を近づけた。
湯気が出そうな位に真っ赤な顔をふるふる振って***は拒んでいた。だがその両手首を掴んでシーツに抑えつけ、身体ごと覆いかぶさり「なぁ言えよ、早く」としつこく求める。ついに観念して、蚊の鳴くような声が漏れた。
「ぎ、銀ちゃん……だ、いすき、って、んっ!?」
声を飲みながら噛み付いた***の唇は、生クリームみたいに柔らかい。そっと撫でた頬っぺたは苺の色に似ている。飴細工さながら華奢な身体をたやすく組み敷けば、シロップ漬けのように潤んだ瞳がとろんとした視線を寄こした。
乱れた着物の上から掌で包んだ胸の膨らみがシュークリームみたいにふわふわで、揉みしだく手が止まらなくなる。緩んだ襟の中の鎖骨のあたりに強く吸いついて、マカロンと同じサイズの紅い鬱血を残した。
小さな唇を食べるようなキスをして、どちらのものか分からない唾液が口から溢れそうになった時にごくんっと一気に飲み込む。広がるチョコレートの味は濃くて、もっと飲みたくなった銀時は歯止めが効かなくなった。
頭のてっぺんから爪先まで、どこもかしこも柔くて甘い***が、今日食べたどのスイーツよりも美味い。ついさっきあれほど食べたのに、もう腹が減った。身体と身体をぴったり重ねて、ふたりでベッドに沈みながら、終わらないキスの狭間で言いわけのように銀時は囁いた。
「どんだけ食っても食い飽きねぇ、食えば食うほど欲しくなりやがる……結局どんな甘ぇモンより俺が食いてぇのは、食いたくてたまんねぇスイーツは……***、お前だよ」
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【スイート、スイート、スイート】
2022-2-14 バレンタイン記念