銀ちゃんを愛する女の子
甘くるしいほどのキスを君と
おなまえをどうぞ
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【(2)膝があたる】
山のように盛られた料理が少しずつ減っていく。たくさんのグラスがジュースや酒で満ち、そして減ってを何度も繰り返す。大きなテーブルに広がる景色は、誕生日パーティーが滞りなく進んでいる証拠だ。
「***殿、すこし休んだらどうだ。最初の乾杯をしたきり動きっぱなしじゃないか。料理を運ぶばかりで、まだ何も食べてないだろう?」
「桂さん、お気づかいありがとうございます。でも、あともう一回、からあげを揚げてこないと……あ、ホラ、神楽ちゃんがもう食べ終わっちゃうから」
ごゆっくり、と笑って***が離れていくので、桂はやれやれと首を振った。艶のあるストレートの長髪がサラサラと揺れた。その隣で天然パーマの毛先をあちこちに跳ねさせた銀時が、じとっとした目をする。
「おいヅラァ、な~んでオメーが俺の誕生日会に来てんだよ。指名手配のテロリストがこんなとこで油売ってる場合じゃねーだろ、帰れよ」
「ヅラじゃない桂だ。なにを言うか銀時、武士たるもの旧友の誕生日には必ずはせ参じて祝うのが務めというものだろう。誕生日おめでとう銀時くん、これからもズッ友だよ」
「いやいやいや、オメーと友達んなった覚えねーから。なんだよズッ友って。バカか、お前はバカなのか。ひとの誕生日より、テメェのめでたい脳みそを祝ってろっつーの!!」
ギャンギャンと騒いでも桂はどこ吹く風で、万事屋のリビングを眺めていた。飾り付けられた部屋はパーティーに訪れた人々でひしめき合っている。
神楽は白米片手にからあげに食らいつく。新八は隣のお妙に卵焼きを差し出されて青ざめている。長谷川さんはタダ酒が飲めると喜び、キャサリンと酌をしあって既にできあがっていた。お登勢が通りがかった***に声をかける。***ちゃん少しは座りなよ、と言う心配そうな声が銀時にも聞こえた。しかし***は席につかず、お登勢におずおずと小皿を差し出した。
「お登勢さん、これ召し上がりませんか?こないだ教えてもらったぬか漬け、やってみたんです」
「ヤダよ***ちゃん、アンタみたいな若い子が本当にぬか床なんて始めたのかい?どれ、ちょっと食べてみようかね」
キュウリの輪切り片手に笑いあうふたりは、まるで母娘のよう。それを銀時はテーブルの反対側の端から見ていた。お登勢が感心したようにうなずき、***は弾けるような笑顔になる。そして立ち上がり台所へと向かった。軽い足取りで居間を出ていく***の背中で、エプロンの腰紐がぴょんぴょんと跳ねる。その姿を並んで眺めていた桂が「ほう」と感嘆の声を漏らした。
「うーん……今のはなかなかに良い眺めだったな。前から思っていたが***殿はやはり、新妻っぽいあの恰好がよく似合う。そうは思わんか、なぁ銀時?」
「なぁ銀時?じゃねーよ、ヅラてめぇ、ひとさまの女をやらしい目で見んのやめてくれる?人妻好きだか知らねぇけど、アイツのエプロン姿で勝手にムラムラしないでくれる?ぶっ殺されてぇのか?っつーか、アイツ人妻じゃねーから。あんなんガキだぞガキ!エプロンしたとこで、しょせん中学生の調理実習だっつーの!!」
「え、銀ちゃん、何が調理実習なんですか?」
「どわぁぁあ!!っんだよ***、びっくりさせんなよ!!」
知らぬ間に***が横にいて、からあげの盛られた大皿を手に立っていた。それをテーブルの真ん中にドンと置き、ふぅ、とおでこの汗をぬぐう。その手をつかんで「いい加減、お前も座れよ」と促すと、嬉しそうに笑って銀時と桂の間にちょこんと腰を下ろした。
「銀ちゃん、お料理は足りてますか?」
「じゅーぶん足りてるっつーの。もう腹ァぱんぱんで、はち切れる寸前だわ」
なら良かったとくすくす笑った***が、隣の桂に「お酒つぎましょうか?」なんて聞くものだから、銀時はギョッとした。止める間もなく***が瓶を傾けて、だらしなく鼻の下を伸ばす桂のグラスにビールを注いだ。
———くそっ……!ただでさえこの恰好のコイツを誰にも見せたくねぇっつーのに、なんでヅラみてぇな変態野郎が隣にいんだよコノヤロー!!!
「オイィィィ!***~!!ヅラなんざに酌してねーで、俺にもビールつげよぉ!これ俺の誕生日会なんだけど!?今日の主役は銀さんなんですけどぉ!?分かってますかぁぁ!?」
はいはい、と呆れたように言って***がこちらに向き直る。その背後の桂に向かって銀時は「シッシッ」と手で払うそぶりをした。
さらに***を桂から遠ざけようと、肩に手を回してぐいっと引き寄せる。テーブルの下であぐらをかく銀時のひざに、正座する***の太ももがトンッと当たった。衣服越しでも太もものふんわりした柔らかさが、ひざ頭に伝わってきた。机に肘をついて視線は遠くを泳ぎながらも、全神経が***に触れているひざの一点に集まった。
———あ~~~、直接さわりてぇぇぇ~~……
パーティーはそれなりに楽しい。飯はうまいし酒も飲める。気心知れた顔ぶれに「おめでとう」と言われるのも、まぁ悪くない。
だが銀時は***との時間を心待ちにしていた。去年の誕生日に交わした約束を***は覚えていた。それはつまり、今夜はふたりきりになれることを意味する。それを思うと自然と口元が緩んで、気を抜くとデレデレとだらしない顔になりそうだった。
この宴会が終われば、神楽が寝た後で***の家へ向かうだろう。あの四畳半の部屋についたら、どんな風に楽しもうかと想像を巡らせながら、銀時は隣の***をじろじろと見た。
「神楽ちゃん、からあげおかわりする?あれ、新八くん、なんか顔色悪いけどどうしたの?ちょっと長谷川さん、お手洗いはそっちじゃなくて奥ですよ」
他の面々の心配ばかりしている***は、銀時の視線に気づかない。触れ合っている脚にも、全く意識がいっていないようだ。その無防備な横顔を見ていたら悪戯心が芽生えて、銀時はおもむろにひざ頭を動かすと、***の脚にぐりぐりと押し付けた。
「ん?……銀ちゃん、どうしたの?」
はてなマークを浮かべた***に問われても、銀時は頬杖をついて知らんふりをした。後ずさって離れようとする細い腰に腕を回して、ぐいっと引き戻す。「えっ」と驚いている***の耳に唇を寄せて、周りには聞こえない声で銀時はぼそぼそと囁いた。
「***、声、出すなよ」
「へ……、ゎッ!?」
銀時が上体を傾けて寄りかかったら、ぐらついた***の正座が崩れた。着物の裾から靴下履きの小さな足が飛び出す。その足首をつかんで親指から小指までの輪郭を、銀時の大きな手がゆっくりとなぞった。居心地悪そうにもぞもぞする***を横目に、ほくそ笑んだ銀時は靴下を引っ張って脱がせた。
「ゃッ!?ぎ、っっ……!」
柔らかな足裏の中指の先から、土踏まずを通ってかかとのてっぺんまで、骨ばった指先でツーッとなぞったら、***は息を飲んで一瞬だけギュッと目をつむった。くすぐったそうに肩をすくめて、ほっぺたがほんのり赤くなる。怒ったように唇を尖らせても、上目づかいで銀時をうかがう困り顔は眉が八の字に下がって情けない。やめてよ、とコソコソ言う声は震えていた。
「ぷっ!***のその顔おもしれー」
「銀ちゃん、何をっ……ひゃあ!」
足首をつかんだまま、もう一方の手で裾をめくってふくらはぎをくすぐる。弱点だらけの身体のなかでも、***は特に脚が弱い。それを知っててわざと触るのは楽しくて仕方がなかった。
「***殿、どうかしたか?変な声を出して」
「かかかかか、桂さんっ!ど、どうもしませんよ!ちょっとからあげが熱かっただけです!あ、エリザベスさんに、お料理を取ってあげてください!」
慌てて桂の気をそらした***が、銀時の手首をつかんだ。しかし振り返った時にはもう払われて、勢いづいた大きな手が着物の中にまで入ってきていた。
「ちょっ、やめ、……ッ!!」
汗ばんだ手のひら全体で、すべすべした太ももを包んだら***の肩がびくびくっと震えた。その反応が情事の時と似ていて、銀時はニヤニヤと笑った。ついに顔を真っ赤にした***が、着物の上から銀時の手を抑えつけようとするが、奥まで入ってくる図々しさに打ち負ける。横座りのせいで着物の合わせが開いているから、ひざの間まで簡単に到達できた。
「んー?どした***、顔赤くねー?」
「って……、ぎ、んちゃんがっ……!!」
「俺?俺がどーしたよ?」
わざとらしく問いかけたら、茹でタコのような***が必死に言い返そうとする。しかし周りの目を気にして言葉が続かなかった。
酔い騒ぐ他の者たちは、テーブルの下で繰り広げられる攻防を知る由もない。みんな料理や酒や歓談に夢中で、***のあわあわと泣きそうな顔にも、銀時のいやらしくニヤつく目つきにも、誰ひとり気づいていなかった。耳の後ろまで赤くして口をぱくぱくとさせる***に銀時は顔を寄せて、静かに低い声で囁いた。
「俺がどーしたって、***?お前こそ、この脚どーしたんだよ?ちょ~っと触っただけでガタガタ震えちまってさぁ~」
「だっ、だって……くすぐったいから」
「くすぐったい?そりゃちげーだろ、お前、ほんとは感じてんだろ?こんな人前だっつーのに銀さんの手で触られて、全身びくびくして気持ちよくなっちゃってんだろ~?」
「ち、ちが、やっ……!」
きゅっと閉じながらも震える***のひざを、銀時の手が割り開いた。ずいっと差し込んだ指先が内ももの肉にむにゅっと埋まったら、小さな身体がびくんっと跳ねた。くつくつと笑いながら更に奥へと手を伸ばす。あと数センチでショーツまでたどり着きそうだ。
はわわ、と声すら出ない***を見下ろして、銀時は笑い転げそうなほど愉快だった。さくらんぼのように色づいた小さな耳たぶに唇をくっつけて、熱っぽい声で言った。
「なぁ、***さぁ……この奥どーなってんの?もしかして、もうびしょびしょに濡れちまってる?」
「っっ……!!~~~~~っ、だ、だめッ、」
「駄目じゃねーくせに、嘘つき」
へらへら笑いながら、さらに手を押し進めようとした瞬間だった。ふるふると震えながらうつむいていた***が、顔を上げてキッと銀時を睨んだ。突然、食べかけのからあげにグサッと箸を突き立てると、ずいっと差し出してきて銀時の口にむぎゅっと押し当てた。
「んがッ!おまっ、***、なにす、」
「ダダダダ、ダメだよ銀ちゃん!こっ、これ最後のいっこだから!神楽ちゃん、大変!!銀ちゃんがからあげ、食べちゃったよ!!!」
「なっ……!!!」
***の意図に気づいた時にはもう遅くて、テーブルを乗り越えて飛びかかってきた神楽に馬乗りになられていた。仰向けに倒れた銀時のみぞおちに拳をめり込ませて「ゴラァァァ!私のからあげ、返すネェェェェ!!!」と叫んでいる。
「オイ待て神楽ッ!死ぬ!死ぬってェェェ!!!」
「おんどりゃァァァ!!」
ボコボコと殴る神楽の肩越しに、潤んだ目をした***が立ち上がるのが見えた。未練がましく片方だけ靴下の脱げた足首をつかんで引き留めようとしたら、***が大声で叫んだ。
「も、もう触らないで!!!」
怪力娘のパンチを浴びて全身が痛い。だが指先にはまだ、ついさっきまで感じていた***の太ももの柔らかさと熱が残っている。
俺、誕生日なのに。
なんでこんな目にあってんだろ。
片手に***の靴下を握ったまま、銀時は鼻血をダラダラと流した。自業自得だと分かりながらも、パタパタと逃げていく***を恨めしい目で追いかけた。
遠ざかる背中でエプロンの腰紐が相変わらず楽しげに揺れている。どっかの人妻好きの変態が言うとおり、***のその姿はずっと見てたくなるような愛らしさがあった。
———んな無防備に男をそそる恰好すっから、つい手ぇ出したくなっちまうんだっつーの……
ちぇっ、と小さくつぶやいて唇を尖らせた銀時は、流れ続ける鼻血を***の靴下で拭った。
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【(2)膝があたる】to be continued.
((その数センチに何もかも奪われる))
山のように盛られた料理が少しずつ減っていく。たくさんのグラスがジュースや酒で満ち、そして減ってを何度も繰り返す。大きなテーブルに広がる景色は、誕生日パーティーが滞りなく進んでいる証拠だ。
「***殿、すこし休んだらどうだ。最初の乾杯をしたきり動きっぱなしじゃないか。料理を運ぶばかりで、まだ何も食べてないだろう?」
「桂さん、お気づかいありがとうございます。でも、あともう一回、からあげを揚げてこないと……あ、ホラ、神楽ちゃんがもう食べ終わっちゃうから」
ごゆっくり、と笑って***が離れていくので、桂はやれやれと首を振った。艶のあるストレートの長髪がサラサラと揺れた。その隣で天然パーマの毛先をあちこちに跳ねさせた銀時が、じとっとした目をする。
「おいヅラァ、な~んでオメーが俺の誕生日会に来てんだよ。指名手配のテロリストがこんなとこで油売ってる場合じゃねーだろ、帰れよ」
「ヅラじゃない桂だ。なにを言うか銀時、武士たるもの旧友の誕生日には必ずはせ参じて祝うのが務めというものだろう。誕生日おめでとう銀時くん、これからもズッ友だよ」
「いやいやいや、オメーと友達んなった覚えねーから。なんだよズッ友って。バカか、お前はバカなのか。ひとの誕生日より、テメェのめでたい脳みそを祝ってろっつーの!!」
ギャンギャンと騒いでも桂はどこ吹く風で、万事屋のリビングを眺めていた。飾り付けられた部屋はパーティーに訪れた人々でひしめき合っている。
神楽は白米片手にからあげに食らいつく。新八は隣のお妙に卵焼きを差し出されて青ざめている。長谷川さんはタダ酒が飲めると喜び、キャサリンと酌をしあって既にできあがっていた。お登勢が通りがかった***に声をかける。***ちゃん少しは座りなよ、と言う心配そうな声が銀時にも聞こえた。しかし***は席につかず、お登勢におずおずと小皿を差し出した。
「お登勢さん、これ召し上がりませんか?こないだ教えてもらったぬか漬け、やってみたんです」
「ヤダよ***ちゃん、アンタみたいな若い子が本当にぬか床なんて始めたのかい?どれ、ちょっと食べてみようかね」
キュウリの輪切り片手に笑いあうふたりは、まるで母娘のよう。それを銀時はテーブルの反対側の端から見ていた。お登勢が感心したようにうなずき、***は弾けるような笑顔になる。そして立ち上がり台所へと向かった。軽い足取りで居間を出ていく***の背中で、エプロンの腰紐がぴょんぴょんと跳ねる。その姿を並んで眺めていた桂が「ほう」と感嘆の声を漏らした。
「うーん……今のはなかなかに良い眺めだったな。前から思っていたが***殿はやはり、新妻っぽいあの恰好がよく似合う。そうは思わんか、なぁ銀時?」
「なぁ銀時?じゃねーよ、ヅラてめぇ、ひとさまの女をやらしい目で見んのやめてくれる?人妻好きだか知らねぇけど、アイツのエプロン姿で勝手にムラムラしないでくれる?ぶっ殺されてぇのか?っつーか、アイツ人妻じゃねーから。あんなんガキだぞガキ!エプロンしたとこで、しょせん中学生の調理実習だっつーの!!」
「え、銀ちゃん、何が調理実習なんですか?」
「どわぁぁあ!!っんだよ***、びっくりさせんなよ!!」
知らぬ間に***が横にいて、からあげの盛られた大皿を手に立っていた。それをテーブルの真ん中にドンと置き、ふぅ、とおでこの汗をぬぐう。その手をつかんで「いい加減、お前も座れよ」と促すと、嬉しそうに笑って銀時と桂の間にちょこんと腰を下ろした。
「銀ちゃん、お料理は足りてますか?」
「じゅーぶん足りてるっつーの。もう腹ァぱんぱんで、はち切れる寸前だわ」
なら良かったとくすくす笑った***が、隣の桂に「お酒つぎましょうか?」なんて聞くものだから、銀時はギョッとした。止める間もなく***が瓶を傾けて、だらしなく鼻の下を伸ばす桂のグラスにビールを注いだ。
———くそっ……!ただでさえこの恰好のコイツを誰にも見せたくねぇっつーのに、なんでヅラみてぇな変態野郎が隣にいんだよコノヤロー!!!
「オイィィィ!***~!!ヅラなんざに酌してねーで、俺にもビールつげよぉ!これ俺の誕生日会なんだけど!?今日の主役は銀さんなんですけどぉ!?分かってますかぁぁ!?」
はいはい、と呆れたように言って***がこちらに向き直る。その背後の桂に向かって銀時は「シッシッ」と手で払うそぶりをした。
さらに***を桂から遠ざけようと、肩に手を回してぐいっと引き寄せる。テーブルの下であぐらをかく銀時のひざに、正座する***の太ももがトンッと当たった。衣服越しでも太もものふんわりした柔らかさが、ひざ頭に伝わってきた。机に肘をついて視線は遠くを泳ぎながらも、全神経が***に触れているひざの一点に集まった。
———あ~~~、直接さわりてぇぇぇ~~……
パーティーはそれなりに楽しい。飯はうまいし酒も飲める。気心知れた顔ぶれに「おめでとう」と言われるのも、まぁ悪くない。
だが銀時は***との時間を心待ちにしていた。去年の誕生日に交わした約束を***は覚えていた。それはつまり、今夜はふたりきりになれることを意味する。それを思うと自然と口元が緩んで、気を抜くとデレデレとだらしない顔になりそうだった。
この宴会が終われば、神楽が寝た後で***の家へ向かうだろう。あの四畳半の部屋についたら、どんな風に楽しもうかと想像を巡らせながら、銀時は隣の***をじろじろと見た。
「神楽ちゃん、からあげおかわりする?あれ、新八くん、なんか顔色悪いけどどうしたの?ちょっと長谷川さん、お手洗いはそっちじゃなくて奥ですよ」
他の面々の心配ばかりしている***は、銀時の視線に気づかない。触れ合っている脚にも、全く意識がいっていないようだ。その無防備な横顔を見ていたら悪戯心が芽生えて、銀時はおもむろにひざ頭を動かすと、***の脚にぐりぐりと押し付けた。
「ん?……銀ちゃん、どうしたの?」
はてなマークを浮かべた***に問われても、銀時は頬杖をついて知らんふりをした。後ずさって離れようとする細い腰に腕を回して、ぐいっと引き戻す。「えっ」と驚いている***の耳に唇を寄せて、周りには聞こえない声で銀時はぼそぼそと囁いた。
「***、声、出すなよ」
「へ……、ゎッ!?」
銀時が上体を傾けて寄りかかったら、ぐらついた***の正座が崩れた。着物の裾から靴下履きの小さな足が飛び出す。その足首をつかんで親指から小指までの輪郭を、銀時の大きな手がゆっくりとなぞった。居心地悪そうにもぞもぞする***を横目に、ほくそ笑んだ銀時は靴下を引っ張って脱がせた。
「ゃッ!?ぎ、っっ……!」
柔らかな足裏の中指の先から、土踏まずを通ってかかとのてっぺんまで、骨ばった指先でツーッとなぞったら、***は息を飲んで一瞬だけギュッと目をつむった。くすぐったそうに肩をすくめて、ほっぺたがほんのり赤くなる。怒ったように唇を尖らせても、上目づかいで銀時をうかがう困り顔は眉が八の字に下がって情けない。やめてよ、とコソコソ言う声は震えていた。
「ぷっ!***のその顔おもしれー」
「銀ちゃん、何をっ……ひゃあ!」
足首をつかんだまま、もう一方の手で裾をめくってふくらはぎをくすぐる。弱点だらけの身体のなかでも、***は特に脚が弱い。それを知っててわざと触るのは楽しくて仕方がなかった。
「***殿、どうかしたか?変な声を出して」
「かかかかか、桂さんっ!ど、どうもしませんよ!ちょっとからあげが熱かっただけです!あ、エリザベスさんに、お料理を取ってあげてください!」
慌てて桂の気をそらした***が、銀時の手首をつかんだ。しかし振り返った時にはもう払われて、勢いづいた大きな手が着物の中にまで入ってきていた。
「ちょっ、やめ、……ッ!!」
汗ばんだ手のひら全体で、すべすべした太ももを包んだら***の肩がびくびくっと震えた。その反応が情事の時と似ていて、銀時はニヤニヤと笑った。ついに顔を真っ赤にした***が、着物の上から銀時の手を抑えつけようとするが、奥まで入ってくる図々しさに打ち負ける。横座りのせいで着物の合わせが開いているから、ひざの間まで簡単に到達できた。
「んー?どした***、顔赤くねー?」
「って……、ぎ、んちゃんがっ……!!」
「俺?俺がどーしたよ?」
わざとらしく問いかけたら、茹でタコのような***が必死に言い返そうとする。しかし周りの目を気にして言葉が続かなかった。
酔い騒ぐ他の者たちは、テーブルの下で繰り広げられる攻防を知る由もない。みんな料理や酒や歓談に夢中で、***のあわあわと泣きそうな顔にも、銀時のいやらしくニヤつく目つきにも、誰ひとり気づいていなかった。耳の後ろまで赤くして口をぱくぱくとさせる***に銀時は顔を寄せて、静かに低い声で囁いた。
「俺がどーしたって、***?お前こそ、この脚どーしたんだよ?ちょ~っと触っただけでガタガタ震えちまってさぁ~」
「だっ、だって……くすぐったいから」
「くすぐったい?そりゃちげーだろ、お前、ほんとは感じてんだろ?こんな人前だっつーのに銀さんの手で触られて、全身びくびくして気持ちよくなっちゃってんだろ~?」
「ち、ちが、やっ……!」
きゅっと閉じながらも震える***のひざを、銀時の手が割り開いた。ずいっと差し込んだ指先が内ももの肉にむにゅっと埋まったら、小さな身体がびくんっと跳ねた。くつくつと笑いながら更に奥へと手を伸ばす。あと数センチでショーツまでたどり着きそうだ。
はわわ、と声すら出ない***を見下ろして、銀時は笑い転げそうなほど愉快だった。さくらんぼのように色づいた小さな耳たぶに唇をくっつけて、熱っぽい声で言った。
「なぁ、***さぁ……この奥どーなってんの?もしかして、もうびしょびしょに濡れちまってる?」
「っっ……!!~~~~~っ、だ、だめッ、」
「駄目じゃねーくせに、嘘つき」
へらへら笑いながら、さらに手を押し進めようとした瞬間だった。ふるふると震えながらうつむいていた***が、顔を上げてキッと銀時を睨んだ。突然、食べかけのからあげにグサッと箸を突き立てると、ずいっと差し出してきて銀時の口にむぎゅっと押し当てた。
「んがッ!おまっ、***、なにす、」
「ダダダダ、ダメだよ銀ちゃん!こっ、これ最後のいっこだから!神楽ちゃん、大変!!銀ちゃんがからあげ、食べちゃったよ!!!」
「なっ……!!!」
***の意図に気づいた時にはもう遅くて、テーブルを乗り越えて飛びかかってきた神楽に馬乗りになられていた。仰向けに倒れた銀時のみぞおちに拳をめり込ませて「ゴラァァァ!私のからあげ、返すネェェェェ!!!」と叫んでいる。
「オイ待て神楽ッ!死ぬ!死ぬってェェェ!!!」
「おんどりゃァァァ!!」
ボコボコと殴る神楽の肩越しに、潤んだ目をした***が立ち上がるのが見えた。未練がましく片方だけ靴下の脱げた足首をつかんで引き留めようとしたら、***が大声で叫んだ。
「も、もう触らないで!!!」
怪力娘のパンチを浴びて全身が痛い。だが指先にはまだ、ついさっきまで感じていた***の太ももの柔らかさと熱が残っている。
俺、誕生日なのに。
なんでこんな目にあってんだろ。
片手に***の靴下を握ったまま、銀時は鼻血をダラダラと流した。自業自得だと分かりながらも、パタパタと逃げていく***を恨めしい目で追いかけた。
遠ざかる背中でエプロンの腰紐が相変わらず楽しげに揺れている。どっかの人妻好きの変態が言うとおり、***のその姿はずっと見てたくなるような愛らしさがあった。
———んな無防備に男をそそる恰好すっから、つい手ぇ出したくなっちまうんだっつーの……
ちぇっ、と小さくつぶやいて唇を尖らせた銀時は、流れ続ける鼻血を***の靴下で拭った。
--------------------------------------------------
【(2)膝があたる】to be continued.
((その数センチに何もかも奪われる))