銀ちゃんを愛する女の子
甘くるしいほどのキスを君と
おなまえをどうぞ
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【(1)唇をくっつける】
「なぁ、***、お前まだ怒ってんの?」
「怒ってないけど……でもこれ、どうするんですか?」
「どーするって、そりゃ、食うだろ」
「食うって……あの、私これ一生懸命作ったんですよ?みんなで食べようと思って」
万事屋のリビングのソファで向かい合って、眉間にシワを寄せた***と、唇を尖らせた銀時が見つめ合う。***だって、今日が誕生日の主役を前にこんなに不機嫌な顔はしたくない。
しかし、しかるべき理由があるのだ。
「んな怖ぇ顔すんなよ、***~~。お前が俺の為に作ったケーキなんだから、ちょっとくらい食べたって別にいーだろ?しかもすっげぇデカいし、そりゃテンション上がってつまみ食いくらいすんだろフツー。ひと口食ってもバレねぇかなーって最初はちまちま食ってたんだよ?そしたら神楽まで手ぇ出してきやがるから、もうちょいもうちょいって形整えてたらぁ、知らねぇうちにこんなミニサイズになってたんですよねぇ……ほんっとすいまっせぇぇぇん!!!」
「ミニサイズどころかロウソク位しかないよ!昨日も言ったけど、このケーキは銀ちゃんだけじゃなくて、今夜のお誕生日会でみんなに食べてもらう分だったんです!もぉぉぉ~!あんなにおっきく作ったのに全部食べちゃうなんて、信じられないよ!」
この元・特大ケーキを作るのは、ものすごく大変だった。誕生日会の人数に合わせて通常サイズより3倍、いや5倍は大きい。スポンジも生クリームも徹夜で手作りして、完成まで2日もかかった。
今朝の牛乳配達後に万事屋の冷蔵庫に預けて、わずか半日で銀時と神楽の腹に消えてしまうなんて予想もしなかった。スーパーのアルバイトを終えて、さぁパーティーだとワクワクしながら万事屋にやって来た***を、新八が青い顔で出迎えた。リビングで汗をダラダラ垂らして硬直する銀時と神楽を見て、悪い予感がした。
「***さん、どうか冷静に聞いてください……」
「し、新八くん、どうしたの?何があったの?」
「***さん手作りのケーキをですね、ふたりが食べちゃったみたいで、その、このようになりまして……」
ハハハ、苦笑いをした新八が取り出したケーキの残骸を見て、***は卒倒しそうになった。
銀ちゃん、食べちゃダメって言ったじゃないですか!と声を荒げながらも、極度の甘いもの好きの銀時と大食漢の神楽のいる家にケーキを預けたのが間違いだったと後悔したのが30分前のこと。
そして今、ロウソク1本も立てられないほど小さくなった憐れなケーキを見つめて、***は「はぁ」とため息をつく。
「銀ちゃん、食べてしまったものは仕方がないけど、後で新八くんと神楽ちゃんにも、代わりのケーキを買いに行かせてごめんねって一緒に謝りましょうね?」
「へーへー分かったよ……てか、なんで俺、誕生日にこんな怒られなきゃなんねーの?自分のケーキ食べただけなのにさぁ。銀さんは別に、集まって祝ってくれなんて、誰にも頼んでもねぇっつーのぉぉぉ!!!」
子どものように不貞腐れた銀時が、極小サイズのケーキの端から生クリームを指ですくった。それを舌先でぺろりと舐めとると、さらに不服そうな顔になって、***に向かって言った。
「それとさぁ、去年も言ったけど、生クリームに入れる砂糖の量もっと多くしろよ***~!これじゃ全っ然甘さが足りねぇだろーが!」
「えぇっ、じゅ、十分甘いよ!それだけ食べといて、よくそんなこと言えますね!」
「いや、お前も食ってみれば分かるって、ホラ!」
白いホイップクリームを指先につけた銀時が、***に迫ってくる。恥ずかしさに赤くなった***は、顔の前で両手を振って逃げた。
近づいてくる銀時に「いいですって」と言って後ずさったが、気付けばソファの隅に追い詰められていた。座っている***の正面に立った銀時が、ソファの背もたれに手をついて阻むから、身動きが取れなくなった。
「おら、ちょっと食ってみろって」
「や、ちょっ、うわゎっ!」
伸びてきた指で唇にちょんっとクリームをつけられた。わぁっと声を上げると下唇からホイップが垂れそうになって、慌てて舐め取ろうと***がほんの少し舌先を出した瞬間、銀時がぱくりと噛みつくように口付けてきた。
「ふぁっ!?……あっ、んぅッ……!!」
レシピどおりに作ったホイップクリームは十分甘かった。その甘さを乗せた銀時の舌が、口の中に入ってくる。ほほの内側や舌にクリームをなすりつけるみたいな、ねっとりとした深いキスで***はくらくらと眩暈を起こしそうになる。
頭の奥が痺れるような砂糖の甘さが広がる。それを味わうように銀時は顔の角度を何度も変えて、口づけを深めた。絡め合った舌からクリームの味が薄れた頃、ようやくふたりの顔は離れた。
「あー、なんか、こーやって***と一緒に食うと、このクリームも結構甘ぇかも」
「なっ……なに言ってんですか、恥ずかしいからもうやめてよ」
イチゴのように赤くなった***が、銀時の胸を両手でぐいぐいと押し返す。しかしヘラヘラと笑って見下ろされるばかりでびくともしない。うぅっ、と悔しげな***に向かって、銀時は得意そうに言った。
「次また作る時は、もっと砂糖入れんの忘れんなよ。お前が俺に言われたこと忘れるなんて珍しくね?あ、もしかして反抗期ですかぁ、***さぁ~ん?」
「ち、ちがっ……だから、これは皆で食べる分だから、それで、そのっ……」
気まずくなった***がふいっと視線を逸らす。すると何かに勘づいた銀時が、意地悪な顔でずいっと距離を詰めて、***のほっぺたを両手でつかんだ。じっと見つめ合った赤い瞳は爛々と輝いて、まるで大好物を見つけた少年のように嬉しそうだった。
「オイオイオイ……っつーこたァ何、俺だけの分があんの?このでっけぇケーキとは別に、銀さんだけが食べていいヤツがあるってことかよ、なぁっ!?」
「ゔっ……あるには、あるんだけど、でも……あ、後でお家に取りに行って、びっくりさせようと思ってたんですっ……も、もぉ~~~、銀ちゃんのせいで、サプライズ大失敗だよぉ!」
がっくりと肩を落として、泣きそうに言った***の顔をつかんだまま、銀時は上機嫌に叫んだ。
「ふぅ~~ん、***の家にあるんだぁぁぁ!家にあるってことは、家に来いっつーことだよなぁぁぁ!!ほんっと分かりにくいことしやがってお前はぁぁぁ~……ったく、しょーがねーから誕生日会が終わったら行ってやらぁぁぁ!主役は忙しくっていけねぇなぁぁぁ~!!」
ゲラゲラと笑った銀時を見上げて、***は「あぁ」とため息をつく。自宅の冷蔵庫に眠る、銀時のためだけに作ったケーキが脳裏に浮かんだ。ホイップクリームには規定の量の3倍、たっぷりとお砂糖を入れた。スポンジだって普通より甘めに焼いて、デコレーションのイチゴも甘いシロップでコーティングした。そんな糖分過多なケーキはきっと、銀時にしか食べられない。
「***、去年の約束ちゃんと覚えてんじゃん」
「え、去年の約束、って、なんでしたっけ……?」
「だからぁ……去年、次の誕生日は***のこと貰うっつったろー?お前それ覚えてて、わざわざ銀さん用のケーキ、家に置いてきたんだろ?あの狭ぇ部屋に大好きな彼氏をお招きして、ケーキと一緒に***も食べてぇって、おいしくいただかれるっつーサプライズなんだろ?ぶははっ、初心な顔して実はめっさ期待してんじゃん***ちゃんたらぁぁ、かぁわいいヤツめ~~~!!」
「ちちちち違うよ!こ、このケーキが大きくて、冷蔵庫に入りきらないから持ってきただけで、別にお家に来て欲しいとかそういうんじゃなっ、んっ、むぐぐッ!?」
慌てて反論する***の口に、銀時が小さなケーキの残りをポイっと放り込んだ。口の中が生クリームとスポンジでいっぱいになって声を失っていると、ソファに膝をついた銀時が***の目の前に身を乗り出してきた。
「ハイハイ、***の気持ちはよ~く分かったから、銀さんがちゃんと食べてやっからぁ、今はちょっと黙れって……」
目を白黒させる***に銀時が近づいてきて、さっきよりもっと深く口づける。生クリームとスポンジと少しの苺が、銀時の舌でゆっくりと溶かされていく。ふたりの唾液と混ざり合った全てが、***の口の中でびちゃびちゃに溶けて、ただ甘ったるいだけの液体になった。長く深いキスに***はなすすべもなく、銀時の胸元のシャツをぎゅうっと掴んだ。
「んぅっ、あ、っぎ、ひぁっ……!!」
ほほの内側まで舐めつくされて、息もできない***は苦しげに喘いだ。されるがままに舌を引っ張り出されて、甘いドロドロごと銀時に吸われてしまう。
気が触れそうなほど甘くるしいキスが、ようやく終わる。唾液が白い糸を引いて、唇が離れると銀時の喉がごくんと鳴った。はぁ、とケーキの香りのする吐息が***の鼻をかすめる。
息苦しさとヤケドしそうなほどの顔の熱さに、***が呆然としていると、急に銀時が耳元に唇を寄せてきた。さらりと髪を割って首筋をつかんだ長い指が、***の顔を動かなくさせた。
「なー、***……」
ぼそっとささやく声は、うんと低くて熱っぽい。
それは銀時が***にしか聞かせない声。キスよりももっと深く、身体を求めている時だけに出す、色っぽい声だった。
「お前の家にあるケーキで、おんなじことしてぇ」
「っっ……!ゃ、やだぁっ……、」
食べてもいないケーキの甘さが口に浮かんで頭痛がする。それを口に含んでキスをすると想像したら、それだけで***は意識が飛びそうになった。
頭からボンッと湯気が出そうなほど顔が真っ赤だ。今のキスだけでも限界なのに無理だよぉ、と眉を八の字に下げて戸惑う***を見下ろして、銀時は楽しそうにニヤついていた。
「お前に拒否権なんて無ぇって去年言ったよな。俺、今日誕生日だから。食いてぇもんは全部食うから。***のこともぜぇ~んぶ食いつくすからぁ。んじゃ、とりあえずごちそーさん。でもって、いただきま~す!」
「んぎぎぎぎ、銀ちゃんの馬鹿!」
———いまの3倍、もしくはもっと甘いキスなんてされたら私、気を失って倒れちゃうよ……ああ、でも、きっと、あんなに熱っぽい声で「***」って呼ばれたら、拒めないんだろうな。銀ちゃんのことが好きで好きでたまらなくて、どんなに苦しいキスでも、結局は夢中になっちゃうから……
脳みそまで溶けるような甘ったるいキスをして、身体の奥までとろとろになって、何もかも分からなくなっても、言うべきことをちゃんと伝えられるだろうか。心臓をバクバクさせながら、***はぼんやりと考えていた。
真っ赤になって恥ずかしがる***を、馬鹿にするように指さして、銀時はゲラゲラと笑い続けている。その姿をじとっと睨みながら、***は予行練習のように何度も何度も、心の中でつぶやいたのだ。
———銀ちゃん、お誕生日、おめでとう!
(甘くるしいほどのキスを、君と!)
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【(1)唇をくっつける】to be continued.
((ただそれだけでこんなにも甘いなんて))
『甘くるしいほどのキスを君と』(20201010/坂田銀時誕生日記念作品)
第1話をお読み頂きありがとうございます!
銀ちゃんのお誕生日、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
ケーキやいちご牛乳をご賞味されましたでしょうか。
こちらのお誕生日記念のお話は、一応まだ続く予定です。のんびりと1年くらいかけてゴールできたらいいなぁと思っています。長篇も並行しているので、ほんとに時々気まぐれのように更新すると思います。
なんにせよおもちは、銀ちゃんお誕生日おめでとうスキスキ大好き愛してる!という気持ちいっぱいで、今後もお話書いて行こうと思っております。
気長にお付き合い頂けたら幸いです!
♡(スキ)押下やコメント等いただけると大変励みになります。
もし気が向いたらどうぞよろしくお願い致します!
(2020-10-10 / おもち)
「なぁ、***、お前まだ怒ってんの?」
「怒ってないけど……でもこれ、どうするんですか?」
「どーするって、そりゃ、食うだろ」
「食うって……あの、私これ一生懸命作ったんですよ?みんなで食べようと思って」
万事屋のリビングのソファで向かい合って、眉間にシワを寄せた***と、唇を尖らせた銀時が見つめ合う。***だって、今日が誕生日の主役を前にこんなに不機嫌な顔はしたくない。
しかし、しかるべき理由があるのだ。
「んな怖ぇ顔すんなよ、***~~。お前が俺の為に作ったケーキなんだから、ちょっとくらい食べたって別にいーだろ?しかもすっげぇデカいし、そりゃテンション上がってつまみ食いくらいすんだろフツー。ひと口食ってもバレねぇかなーって最初はちまちま食ってたんだよ?そしたら神楽まで手ぇ出してきやがるから、もうちょいもうちょいって形整えてたらぁ、知らねぇうちにこんなミニサイズになってたんですよねぇ……ほんっとすいまっせぇぇぇん!!!」
「ミニサイズどころかロウソク位しかないよ!昨日も言ったけど、このケーキは銀ちゃんだけじゃなくて、今夜のお誕生日会でみんなに食べてもらう分だったんです!もぉぉぉ~!あんなにおっきく作ったのに全部食べちゃうなんて、信じられないよ!」
この元・特大ケーキを作るのは、ものすごく大変だった。誕生日会の人数に合わせて通常サイズより3倍、いや5倍は大きい。スポンジも生クリームも徹夜で手作りして、完成まで2日もかかった。
今朝の牛乳配達後に万事屋の冷蔵庫に預けて、わずか半日で銀時と神楽の腹に消えてしまうなんて予想もしなかった。スーパーのアルバイトを終えて、さぁパーティーだとワクワクしながら万事屋にやって来た***を、新八が青い顔で出迎えた。リビングで汗をダラダラ垂らして硬直する銀時と神楽を見て、悪い予感がした。
「***さん、どうか冷静に聞いてください……」
「し、新八くん、どうしたの?何があったの?」
「***さん手作りのケーキをですね、ふたりが食べちゃったみたいで、その、このようになりまして……」
ハハハ、苦笑いをした新八が取り出したケーキの残骸を見て、***は卒倒しそうになった。
銀ちゃん、食べちゃダメって言ったじゃないですか!と声を荒げながらも、極度の甘いもの好きの銀時と大食漢の神楽のいる家にケーキを預けたのが間違いだったと後悔したのが30分前のこと。
そして今、ロウソク1本も立てられないほど小さくなった憐れなケーキを見つめて、***は「はぁ」とため息をつく。
「銀ちゃん、食べてしまったものは仕方がないけど、後で新八くんと神楽ちゃんにも、代わりのケーキを買いに行かせてごめんねって一緒に謝りましょうね?」
「へーへー分かったよ……てか、なんで俺、誕生日にこんな怒られなきゃなんねーの?自分のケーキ食べただけなのにさぁ。銀さんは別に、集まって祝ってくれなんて、誰にも頼んでもねぇっつーのぉぉぉ!!!」
子どものように不貞腐れた銀時が、極小サイズのケーキの端から生クリームを指ですくった。それを舌先でぺろりと舐めとると、さらに不服そうな顔になって、***に向かって言った。
「それとさぁ、去年も言ったけど、生クリームに入れる砂糖の量もっと多くしろよ***~!これじゃ全っ然甘さが足りねぇだろーが!」
「えぇっ、じゅ、十分甘いよ!それだけ食べといて、よくそんなこと言えますね!」
「いや、お前も食ってみれば分かるって、ホラ!」
白いホイップクリームを指先につけた銀時が、***に迫ってくる。恥ずかしさに赤くなった***は、顔の前で両手を振って逃げた。
近づいてくる銀時に「いいですって」と言って後ずさったが、気付けばソファの隅に追い詰められていた。座っている***の正面に立った銀時が、ソファの背もたれに手をついて阻むから、身動きが取れなくなった。
「おら、ちょっと食ってみろって」
「や、ちょっ、うわゎっ!」
伸びてきた指で唇にちょんっとクリームをつけられた。わぁっと声を上げると下唇からホイップが垂れそうになって、慌てて舐め取ろうと***がほんの少し舌先を出した瞬間、銀時がぱくりと噛みつくように口付けてきた。
「ふぁっ!?……あっ、んぅッ……!!」
レシピどおりに作ったホイップクリームは十分甘かった。その甘さを乗せた銀時の舌が、口の中に入ってくる。ほほの内側や舌にクリームをなすりつけるみたいな、ねっとりとした深いキスで***はくらくらと眩暈を起こしそうになる。
頭の奥が痺れるような砂糖の甘さが広がる。それを味わうように銀時は顔の角度を何度も変えて、口づけを深めた。絡め合った舌からクリームの味が薄れた頃、ようやくふたりの顔は離れた。
「あー、なんか、こーやって***と一緒に食うと、このクリームも結構甘ぇかも」
「なっ……なに言ってんですか、恥ずかしいからもうやめてよ」
イチゴのように赤くなった***が、銀時の胸を両手でぐいぐいと押し返す。しかしヘラヘラと笑って見下ろされるばかりでびくともしない。うぅっ、と悔しげな***に向かって、銀時は得意そうに言った。
「次また作る時は、もっと砂糖入れんの忘れんなよ。お前が俺に言われたこと忘れるなんて珍しくね?あ、もしかして反抗期ですかぁ、***さぁ~ん?」
「ち、ちがっ……だから、これは皆で食べる分だから、それで、そのっ……」
気まずくなった***がふいっと視線を逸らす。すると何かに勘づいた銀時が、意地悪な顔でずいっと距離を詰めて、***のほっぺたを両手でつかんだ。じっと見つめ合った赤い瞳は爛々と輝いて、まるで大好物を見つけた少年のように嬉しそうだった。
「オイオイオイ……っつーこたァ何、俺だけの分があんの?このでっけぇケーキとは別に、銀さんだけが食べていいヤツがあるってことかよ、なぁっ!?」
「ゔっ……あるには、あるんだけど、でも……あ、後でお家に取りに行って、びっくりさせようと思ってたんですっ……も、もぉ~~~、銀ちゃんのせいで、サプライズ大失敗だよぉ!」
がっくりと肩を落として、泣きそうに言った***の顔をつかんだまま、銀時は上機嫌に叫んだ。
「ふぅ~~ん、***の家にあるんだぁぁぁ!家にあるってことは、家に来いっつーことだよなぁぁぁ!!ほんっと分かりにくいことしやがってお前はぁぁぁ~……ったく、しょーがねーから誕生日会が終わったら行ってやらぁぁぁ!主役は忙しくっていけねぇなぁぁぁ~!!」
ゲラゲラと笑った銀時を見上げて、***は「あぁ」とため息をつく。自宅の冷蔵庫に眠る、銀時のためだけに作ったケーキが脳裏に浮かんだ。ホイップクリームには規定の量の3倍、たっぷりとお砂糖を入れた。スポンジだって普通より甘めに焼いて、デコレーションのイチゴも甘いシロップでコーティングした。そんな糖分過多なケーキはきっと、銀時にしか食べられない。
「***、去年の約束ちゃんと覚えてんじゃん」
「え、去年の約束、って、なんでしたっけ……?」
「だからぁ……去年、次の誕生日は***のこと貰うっつったろー?お前それ覚えてて、わざわざ銀さん用のケーキ、家に置いてきたんだろ?あの狭ぇ部屋に大好きな彼氏をお招きして、ケーキと一緒に***も食べてぇって、おいしくいただかれるっつーサプライズなんだろ?ぶははっ、初心な顔して実はめっさ期待してんじゃん***ちゃんたらぁぁ、かぁわいいヤツめ~~~!!」
「ちちちち違うよ!こ、このケーキが大きくて、冷蔵庫に入りきらないから持ってきただけで、別にお家に来て欲しいとかそういうんじゃなっ、んっ、むぐぐッ!?」
慌てて反論する***の口に、銀時が小さなケーキの残りをポイっと放り込んだ。口の中が生クリームとスポンジでいっぱいになって声を失っていると、ソファに膝をついた銀時が***の目の前に身を乗り出してきた。
「ハイハイ、***の気持ちはよ~く分かったから、銀さんがちゃんと食べてやっからぁ、今はちょっと黙れって……」
目を白黒させる***に銀時が近づいてきて、さっきよりもっと深く口づける。生クリームとスポンジと少しの苺が、銀時の舌でゆっくりと溶かされていく。ふたりの唾液と混ざり合った全てが、***の口の中でびちゃびちゃに溶けて、ただ甘ったるいだけの液体になった。長く深いキスに***はなすすべもなく、銀時の胸元のシャツをぎゅうっと掴んだ。
「んぅっ、あ、っぎ、ひぁっ……!!」
ほほの内側まで舐めつくされて、息もできない***は苦しげに喘いだ。されるがままに舌を引っ張り出されて、甘いドロドロごと銀時に吸われてしまう。
気が触れそうなほど甘くるしいキスが、ようやく終わる。唾液が白い糸を引いて、唇が離れると銀時の喉がごくんと鳴った。はぁ、とケーキの香りのする吐息が***の鼻をかすめる。
息苦しさとヤケドしそうなほどの顔の熱さに、***が呆然としていると、急に銀時が耳元に唇を寄せてきた。さらりと髪を割って首筋をつかんだ長い指が、***の顔を動かなくさせた。
「なー、***……」
ぼそっとささやく声は、うんと低くて熱っぽい。
それは銀時が***にしか聞かせない声。キスよりももっと深く、身体を求めている時だけに出す、色っぽい声だった。
「お前の家にあるケーキで、おんなじことしてぇ」
「っっ……!ゃ、やだぁっ……、」
食べてもいないケーキの甘さが口に浮かんで頭痛がする。それを口に含んでキスをすると想像したら、それだけで***は意識が飛びそうになった。
頭からボンッと湯気が出そうなほど顔が真っ赤だ。今のキスだけでも限界なのに無理だよぉ、と眉を八の字に下げて戸惑う***を見下ろして、銀時は楽しそうにニヤついていた。
「お前に拒否権なんて無ぇって去年言ったよな。俺、今日誕生日だから。食いてぇもんは全部食うから。***のこともぜぇ~んぶ食いつくすからぁ。んじゃ、とりあえずごちそーさん。でもって、いただきま~す!」
「んぎぎぎぎ、銀ちゃんの馬鹿!」
———いまの3倍、もしくはもっと甘いキスなんてされたら私、気を失って倒れちゃうよ……ああ、でも、きっと、あんなに熱っぽい声で「***」って呼ばれたら、拒めないんだろうな。銀ちゃんのことが好きで好きでたまらなくて、どんなに苦しいキスでも、結局は夢中になっちゃうから……
脳みそまで溶けるような甘ったるいキスをして、身体の奥までとろとろになって、何もかも分からなくなっても、言うべきことをちゃんと伝えられるだろうか。心臓をバクバクさせながら、***はぼんやりと考えていた。
真っ赤になって恥ずかしがる***を、馬鹿にするように指さして、銀時はゲラゲラと笑い続けている。その姿をじとっと睨みながら、***は予行練習のように何度も何度も、心の中でつぶやいたのだ。
———銀ちゃん、お誕生日、おめでとう!
(甘くるしいほどのキスを、君と!)
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【(1)唇をくっつける】to be continued.
((ただそれだけでこんなにも甘いなんて))
『甘くるしいほどのキスを君と』(20201010/坂田銀時誕生日記念作品)
第1話をお読み頂きありがとうございます!
銀ちゃんのお誕生日、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
ケーキやいちご牛乳をご賞味されましたでしょうか。
こちらのお誕生日記念のお話は、一応まだ続く予定です。のんびりと1年くらいかけてゴールできたらいいなぁと思っています。長篇も並行しているので、ほんとに時々気まぐれのように更新すると思います。
なんにせよおもちは、銀ちゃんお誕生日おめでとうスキスキ大好き愛してる!という気持ちいっぱいで、今後もお話書いて行こうと思っております。
気長にお付き合い頂けたら幸いです!
♡(スキ)押下やコメント等いただけると大変励みになります。
もし気が向いたらどうぞよろしくお願い致します!
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