かぶき町で牛乳配達をする女の子
牛乳(人生)は噛んで飲め
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【am.5:30】
真暗だった空が少しづつ白んで、眠らないこの街にも朝が来る。昨晩この街へ帰ってきた***は、今朝も早くから牛乳配達のアルバイト。四時前から働いて、ようやくさっき仕事が終わった。
自転車をこいで自宅へ帰る。少し休んだら支度をして、万事屋へ行こうと考えていると、大橋に差し掛かっていた。今日も橋の真ん中で綺麗な朝日を眺めていこうと思いながら、ペダルをこぐ。
しかしその橋の真ん中に、見慣れない男がいた驚きで、***の足が止まる。
一年前の銀時と同じように、その男は橋の手すりから身を乗り出していた。茶色い上下の作務衣を着て、下駄は片方脱げている。上半身のほとんどが手すりの向こう側で、裸足の片足を今まさに手すりにかけようとしていた。
―――ガシャンッ!!!
自転車が横に倒れる。***は急いでその男に駆け寄ると、着物を後ろから両手でぎゅっとつかんだ。
「おおおじさん!はははははやまらないで!!!」
「やめろぉぉぉ!俺は死ぬ!死ぬんだぁぁぁ!!!」
後ろから腰にしがみつく***をふり払うように、男が振り返る。***もぱっと顔を上げて、男の顔を見る。サングラスをした顔をびしょびしょに濡らして、大泣きをしていた。
「わわわわわっ!おじさん、ほんとに落ちちゃうから!動かないで!!ワケを聞かせて!!」
「ワケなんてあるかッ!こんな糞みてぇな人生、生きてたって意味がねぇ!死んだほうがマシだ!殺せ、殺せよぉぉぉ!!!」
大暴れする男がどんどん手すりの向こうへ身を乗り出していく。片足をかけて手すりの上によじ登る。***の細い腕は、なすすべもなくふり払われて、最初は腰につかまっていたはずが、気付くと足首にすがりついていた。
男は手すりの上に両足で立つと、下駄で***の手をぱしりと弾いた。
「嬢ちゃん……最後に引き留めてくれてありがとうよ、こんな人生に未練はねぇんだ、ひと思いに逝かせてくれっ!」
そう言った男が思い切り手すりを蹴ると、そのまま落ちていく。
「あ!!!」と大きな声で叫んだ***が、落ちていく男の腕をつかもうと、手すりによじ登る。気が付くと***の身体の大部分も、橋の向こう側へと乗り出していた。
落ちていく男の腕を両手でつかみ、安心したのもつかの間、ぐらりと***の身体が前に傾く。視界いっぱいに下の川が広がってはじめて、自分も落ちていることに気づいた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
――――し、死んじゃう!!!!!
名も知らないグラサンの男と一緒に、川に落ちて死ぬのが人生の最期なんて……そんなの無念すぎる。
誰か助けて、と思いながら叫び声を上げた時、後ろから着物の帯を誰かにつかまれた。そのまま強い力でひっぱりあげられる。***がつかんでいた男の襟首にも、大きな手が伸びてきて、ふたり同時に橋の上に持ち上げられる。
「きゃぁぁぁっ!!!」
背中からひっぱりあげられた***の腰に、力強い腕が回って抱きとめられる。視界の端で、グラサンの男が後ろに放り投げられて、橋の反対側の手すりにぶつかって倒れるのが見えた。
***を抱き留めた人物がよろけて、ふたり一緒に後ろ向きに倒れてしまう。ぎゅっと目を閉じて衝撃に備えたが、***の背中は大きな胸にぼすんと受け止められた。尻餅をついた後ろの人間の足の間で、***はぺたりと座り込んだ。
「お前、何やってんの……」
「ぎ、銀ちゃん!!!」
頭の上から降ってきた声を聞いて、ぱっと目を開けて振り返ると、そこにはいちばん会いたかった人がいた。
銀時は頭をガシガシと掻きながら、呆れかえった顔で、***を見下ろしている。
「はぁぁぁぁ~……なに***、なんなの!?なんでお前、長谷川さんと一緒に身投げしてんだよ!あんな酔っ払いのマダオ、命がけで助けてどーすんだよ!馬鹿かお前は、馬鹿なんですかぁぁぁ!?」
「えっ!?あの人が長谷川さん!?去年この川で死んじゃった長谷川さん!?」
「死んでねーよ!お前が会ってないだけで生きてたよ!河川敷とか公園とかゴミ捨て場とか、立派なマイホームでちゃーんと生きてたっつーの!マダオはなぁ、こんな橋から落ちて死ぬほどヤワじゃねぇんだよ!それを勝手に助けようとして、お前ひとりがおっちぬなんざ、笑い話にもなんねぇだろうが!この馬鹿!!!」
「ひぃッ!ごめんなさいぃぃ!!!」
勢いよく銀時に説教されて、***は慌てて謝る。
二週間ぶりに会ったのに、会いたくて会いたくてたまらなかった人なのに。再会してそうそうお説教をくらうなんて、とても悲しい。
***は眉を八の字に下げて、銀時の足の中で座り込んだまま、しょんぼりと肩を落とす。長谷川にすがりついた時に、ぶつけた膝や、下駄で蹴られた手のひらの皮が擦りむけて、ひりひりと痛む。
「はぁ~…俺がいたからよかったものの……去年もそーだったけど、ひ弱な***がひとりで男引っ張り上げるなんざ、無茶だっつーの。落ちたら捻挫じゃすまねーぞ」
そう言いながら銀時が、***の手のひらを取って、擦りむいた傷についた砂をはらう。ぴりっとした痛みが走る。
「いッ……」
かすり傷から走った強い痛みに驚いて、涙がじわっと目に浮かぶ。
「っと、……あぁ~…なんだ、なんか銀さんもびっくりして?強く言いすぎたみたいな?……まぁ、あれだな、なんつーかその……おかえり」
伏し目がちに握った手のひらの傷を見たまま、銀時が言う。その言葉を聞いて、***はぱっと顔を上げる。
目をそらしたままの銀時を眺めて、この人は本当に不器用で、素直じゃないな、と***は思う。どうでもいいことはべらべら喋るくせに、大切なことを言う時には少し無口になって、目も見てくれない。そうだった、ずっと前から。一年前に出会った時から。
銀時の気まずそうな顔を見た***は、おかしくなって吹き出してしまう。
「っぷ……あは、あはは…やだ、銀ちゃん、おかしい」
「あぁ!?っんだよ、なに笑ってんだよ!ふざんけんなっつーの……一緒に飲んでた長谷川さんがいねぇなと思って探したら、***と身投げしてるって意味分かんねぇよ」
「あははっ、やだぁ!ごめんなさいっ…でもなんかおかしくって……」
手を銀時に握られたまま、***はけらけらと笑う。その顔を見て、最初こそ眉間にシワを寄せていた銀時だが、「なんなんだよ」と言って呆れた顔になる。しばらくすると銀時も***につられて、声もなく笑ってしまう。
擦りむけた***の手を離して、後ろ手に両手をつく。少し視線を離して、足の間で笑い続ける***を眺めた。気が付くと昇っていた朝陽が、***の顔を照らす。明るい光の中で笑っている無邪気な顔を見て、銀時はあれ、と思う。
なんかこいつ…―――
「はぁ…あぁ、おかしい、銀ちゃんはやっぱり銀ちゃんだね。久しぶりに会っても変わってないから、ほっとして笑えてきちゃいました」
「おい***、男子三日会わざれば刮目して見よって言うだろ、よく見ろよ、銀さんのイケメンに磨きがかかってね?ちょっと髪の毛ストレートになってね?サラサラヘアーになってね?」
「なってないです。ふわふわくるくるの天パです」
「オイィィィィ!だぁれがクルクルパーだってぇぇぇ!?もっぺん橋から落としてやろうか!!!」
両肩をつかんで持ち上げようとする銀時に、***は笑いながら「きゃー!やめてください!」と言って、すがりつく。
ふたりしてふざけながら、げらげらと笑う。ふと笑い声が止んで、大きな手で肩をつかまれたままの***が、銀時をじっと見上げる。
「銀ちゃん、助けてくれてありがとう……あと、えぇっと……た、ただいま」
顔を赤く染めて、***が照れた顔をして言う。腕の中のその顔が、二週間前に見送った時より少し変わっていて、銀時は目を見開く。どう言葉にしていいのか分からないが、以前よりその顔や瞳が、キラキラと輝いているように見えるのだ。
「***、お前、なんか、……田舎でなんかあったろ?」
「へっ!!?なななんも無いよ!なんも無いです!」
突然の銀時の質問と、疑いの目で見られていることに驚いて、***は目を丸くして固まる。脳裏に別れ際に母に告げた言葉が蘇る。
―――お母さん、私……銀ちゃんのことが好き
その銀時が目の前に、すぐ近くに顔を寄せていることに心臓が飛び跳ねて、ボンと頭に血がのぼる。顔が熱くて真っ赤になっていることが、見なくても分かる。
「いーや、嘘だ!あれだな、神楽が言ってた昔の男に再会したんだろ!そんでひと晩のアバンチュールを経て、お子ちゃまだった***もひと皮むけて、億万長者の太郎の女になったってことだな!!?」
「はぁ!?億万長者の太郎って誰!?昔の男なんていないです!アバンチュールなんてあるわけないでしょ、家族にしか会ってないんですから!」
「んなこと言っても銀さんの目は誤魔化せねぇよ、その顔のツヤ!その肌のハリ!キラキラしてんもん、天ぷら油でも塗ったみてぇにテカテカしてんもん!おかしいっつーの!ぜってぇ太郎となんかあっただろ!これで金持ちになった***は、万事屋みてぇな甲斐性無しの無職集団とは縁切りってか!!!」
「はぁぁぁ!?なに言ってんですか!そ、そんなことあるわけないでしょ!そんなこと言うなんてひどいよ!……わ、私がこの二週間、どれだけ万事屋のみんなに会いたかったか…………ぎ、銀ちゃんにどれだけ会いたかったか、知りもしないで!!!」
「へっ!?」
今度は銀時が目を丸くして固まる番だった。両肩をつかまれ揺さぶられながらも、***は顔を真っ赤にして、銀時のことを睨んでいた。その目があまりにも真剣で、さっきまで口からべらべらと出てきた言葉が、ひとつも出てこなくなる。
戸惑った目で自分を見つめる銀時の顔を見て、***は「ああ、もう」と真っ赤な顔を横にひと振りした。
もう駄目だ……、と***は内心つぶやく。久々に再会したと思ったら説教されて、更にはこんな意味不明な言いがかりをつけられて、こんな変な人、銀時以外に見たことない。それなのに***の胸は、ますます高鳴る一方だ。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、***を見つめている銀時の顔を、朝陽が照らす。一年前と同じように、あちらこちらに跳ねる銀色の髪が、きらきらと光っているのが綺麗で、目が離せない。自分の両肩を強くつかむ大きな手が熱い。手の触れたところからその温度が身体に染みこんできて、心臓が早鐘を打つ。
ドクンドクンと鳴る鼓動が、「好き、好き、大好き!」と訴えている。
もう駄目だ、こらえきれない、と心の声が***を突き動かす。こんなに変な人なのに、こんなにときめいて、こんなに近くにいたくて、こんなに好きだと思っている。
***は銀時の目をじっと見つめて、止めていた息を更につめるように短く吸うと、蚊のなくような小さな声でつぶやいた。
―――銀ちゃん、私、銀ちゃんのことが好きだよ
顔どころか首元まで熱いくらいだから、いつもからかわれる通り、茹でダコみたいになっているだろう。***は自分がどんな顔をして銀時を見ているのか分からない。きっとすごく変な顔をしている。眉間にシワを寄せて、ヤケドしそうなほど真っ赤にほほを染めて。こんな顔を見られるのはすごく恥ずかしい。
それでも口から言葉が勝手に飛び出していく。この気持ちを言わずにいられない。震えるほど恥ずかしい。でもいま伝えなければ一生言えないかもしれない。そんな強い思いに動かされて、唇が動いた。
銀時は相変わらず目を点にして***を見ている。全く微動だにせず、口をぽかんと開けて。
「私、ぎ、銀ちゃんのことが好き、……好きなんですけど、あの、き、聞いてる?」
「……はっ!?おま、お前急に何言ってんだよ!酔っ払ってんのか!?」
「よ、酔ってなんかないです!銀ちゃんが、変なことばっかり言うから!だからっ……な、なんか言っちゃったんだもん!好きなんだもん、銀ちゃんのことが好きなんだもん!!銀ちゃんの馬鹿ぁ!!!」
「はぁぁぁぁ!?なんなんだよお前!告白すんのかキレんのかどっちかにしろよ!!好きってなんだよ!いきなり意味わかんねぇだろーが!そもそも***には太郎がいるんじゃねぇのかよ!」
「だから太郎って誰!?私は!銀ちゃんのことが!好きなんです!!!」
肩をつかんでいた銀時の手が、ばっと離れる。後ろに身を引いて、片手で口元を抑えた銀時の顔に、一瞬だけさっと赤みがさした。
その顔を見て***は、銀ちゃんも照れたりするんだと冷静になる。いつも自分ばかりがからかわれていたから、からかう側の銀時が恥ずかしがるなんて、すごく新鮮だ。めずらしい物を見たという感じで、興味津々な目で***は銀時をじっと見つめる。
「いや、***ちゃん、その、そーゆー無垢な目で銀さんを見ないでくれる?ポーカーフェイスを気取ってるけど、こう見えてめっさ恥ずかしいから、めっさ気まずいから!」
「……なんで銀ちゃんが恥ずかしがるんですか、私が告白したのに……ねぇ、それって銀ちゃんも、」
いぶかしげな顔で話す***の言葉を、突然「俺は死ぬんだぁぁぁぁ!!!」という長谷川の叫び声が遮った。息をつめてぱっと振り向くと、長谷川が再び手すりの上に立って、飛び降りようとしていた。
「ははは長谷川さん!!!駄目ですってば!!!」
そう言って立ち上がり、長谷川に駆け寄ろうとした***の腕を、銀時の大きな手がつかんで引き留めた。
「だぁから、長谷川さんは落ちても死なねぇーの、危ねぇからほっとけって」
「で、でも銀ちゃん!助けないとっ!」
眉を八の字に下げて、慌てた顔で大きな手をふりほどこうとする***を、座ったままの銀時が下から睨み上げる。
「お前は本当に……」と呆れるようにつぶやく声が聞こえたかと思うと、つかまれた腕をぐいっと引っ張られる。銀時の方へと前のめりに倒れこんで、顔から地面に倒れこむ。地面に顔がつく前に、いつか感じたことのある感覚が膝や腹に走った。
これは……と思った瞬間には既に、***の身体は軽々と、銀時の肩にかつぎあげられていた。そのまま銀時が立ちあがる。
「わわわっ!ちょっ…銀ちゃん!おろしてぇ!」
「駄目ですぅ~、おろしたらお前また長谷川さん助けようとして、橋から落ちんだろーが」
そういうと銀時は***をかついだまま、手すりに立つ長谷川のもとへと近寄っていく。後ろ向きのせいで***には何も見えず、ばたばたするしかできない。
「長谷川さんよぉ、今日のヤケ酒も明日にゃ祝い酒かもしんねぇーよ。まぁ、また飲もうや」
よいしょ、と言いながら銀時が持ち上げた片足で、長谷川の背中をドンと蹴る。「あぁぁぁぁぁ」という悲鳴と共に川へと落ちていく。落下中に叫んだ「そりゃないよ銀さぁ~ん」という声が***の耳にも届いた。
「え、えぇぇぇ!?ちょっと銀ちゃん何したんですか?落とした?いま長谷川さんのこと落としました?助けなきゃ駄目だよ!こんな人生、生きてても意味ないって泣いてたの!話を聞いてあげなきゃ、」
「あぁ?なに言ってんだよ、***。そりゃ長ぇ人生のうち一日くらいはそーゆー日もあんだろーが、泣いて橋から飛び降りてぇ日もあんだろ。それも人生なんだ、よく噛んで味わえば栄養になるっつーの、牛乳といっしょで」
銀時の言葉を聞いて、はっとして***は動きを止める。
一年前のこと、銀ちゃんも覚えてるんだ…――――
そう思うと涙が出そうなほど、嬉しさと切なさがこみあげてくる。長谷川さんを助けないと、という考えが一瞬で頭からぽーんと抜けて、銀時のことを好きだという気持ちが、噴水のように溢れだしてくる。さっき勢いで伝えてしまって、まだ答えを聞いていないというのに。
「……なぁ、こう見えて銀さんさっきまで長谷川さんと飲んでたからぁ、結構酒が入ってるっつーか、酔ってるっつーか、このままいくと二日酔い確定だからぁ……***のさっきのアレ、アレな、酔いがさめたらもっぺん言ってくんね?」
「さっきのアレって……」
首だけ持ち上げて銀時の方を振り返るが、銀時は前だけを見て***を見ない。朝日に照らされた銀色の髪が、ふわふわと揺れるだけだ。
「もぉ…死ぬほど恥ずかしかったのに……女の子の告白をアレ呼ばわりって、しかも後でもう一回言えなんて……信じられないです」
「っんだよ、二回言うほどは好きじゃねぇってのかよ、そんなら最初から言うなっつーの」
「違うよ!何回だって言えます!す、好きだもん、銀ちゃんのことが!!」
再び顔を真っ赤に染めながら、必死になって***が言った言葉を聞いて、ようやく銀時が首を回して後ろを見る。視線がかち合って恥ずかしいけれど、目をそらせない。
「はっ、まぁた茹でダコみてぇになりやがって……こんまま万事屋に強制連行すっから、二日酔いが終わったら、もっぺん聞かせろよ」
「……うん!うん、わかったよ銀ちゃん、何回でも、何度でも聞かせてあげますから……」
だから、ちゃんと受け止めてね―――
まるで祈るような思いで、***は心の中でつぶやいた。
朝日に照らされた道を、***を肩にかついだまま銀時が歩き出す。やっぱりこの街の朝が好き。この街を好きにさせてくれた、銀時のことが大好き。溢れる思いが、気を抜くと飛び出してきそうで、***はぎゅっと唇を噛んでこらえる。首を持ち上げて、もう一度振り返ると、銀時もこちらを見ていた。
「おはよーさん」
気だるげな、でもいつも通りの温かさをこめて、***を見つめる赤い瞳。この瞳をずっと近くで見ていたい。そのためにならどんな恥ずかしさも、どんな苦しい思いも、何度も噛んで飲みこんで、乗り越えていける気がする。
それが***の恋で、***の人生だから。牛乳といっしょで。
「おはようございます、銀ちゃん!」
(大好きだよ、銀ちゃん!!!)
---------------------------------
no.34【am.5:30】end
『牛乳(人生)は噛んで飲め』end
next『鼻から牛乳(純情)』
題字♡ちゃさき様
真暗だった空が少しづつ白んで、眠らないこの街にも朝が来る。昨晩この街へ帰ってきた***は、今朝も早くから牛乳配達のアルバイト。四時前から働いて、ようやくさっき仕事が終わった。
自転車をこいで自宅へ帰る。少し休んだら支度をして、万事屋へ行こうと考えていると、大橋に差し掛かっていた。今日も橋の真ん中で綺麗な朝日を眺めていこうと思いながら、ペダルをこぐ。
しかしその橋の真ん中に、見慣れない男がいた驚きで、***の足が止まる。
一年前の銀時と同じように、その男は橋の手すりから身を乗り出していた。茶色い上下の作務衣を着て、下駄は片方脱げている。上半身のほとんどが手すりの向こう側で、裸足の片足を今まさに手すりにかけようとしていた。
―――ガシャンッ!!!
自転車が横に倒れる。***は急いでその男に駆け寄ると、着物を後ろから両手でぎゅっとつかんだ。
「おおおじさん!はははははやまらないで!!!」
「やめろぉぉぉ!俺は死ぬ!死ぬんだぁぁぁ!!!」
後ろから腰にしがみつく***をふり払うように、男が振り返る。***もぱっと顔を上げて、男の顔を見る。サングラスをした顔をびしょびしょに濡らして、大泣きをしていた。
「わわわわわっ!おじさん、ほんとに落ちちゃうから!動かないで!!ワケを聞かせて!!」
「ワケなんてあるかッ!こんな糞みてぇな人生、生きてたって意味がねぇ!死んだほうがマシだ!殺せ、殺せよぉぉぉ!!!」
大暴れする男がどんどん手すりの向こうへ身を乗り出していく。片足をかけて手すりの上によじ登る。***の細い腕は、なすすべもなくふり払われて、最初は腰につかまっていたはずが、気付くと足首にすがりついていた。
男は手すりの上に両足で立つと、下駄で***の手をぱしりと弾いた。
「嬢ちゃん……最後に引き留めてくれてありがとうよ、こんな人生に未練はねぇんだ、ひと思いに逝かせてくれっ!」
そう言った男が思い切り手すりを蹴ると、そのまま落ちていく。
「あ!!!」と大きな声で叫んだ***が、落ちていく男の腕をつかもうと、手すりによじ登る。気が付くと***の身体の大部分も、橋の向こう側へと乗り出していた。
落ちていく男の腕を両手でつかみ、安心したのもつかの間、ぐらりと***の身体が前に傾く。視界いっぱいに下の川が広がってはじめて、自分も落ちていることに気づいた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
――――し、死んじゃう!!!!!
名も知らないグラサンの男と一緒に、川に落ちて死ぬのが人生の最期なんて……そんなの無念すぎる。
誰か助けて、と思いながら叫び声を上げた時、後ろから着物の帯を誰かにつかまれた。そのまま強い力でひっぱりあげられる。***がつかんでいた男の襟首にも、大きな手が伸びてきて、ふたり同時に橋の上に持ち上げられる。
「きゃぁぁぁっ!!!」
背中からひっぱりあげられた***の腰に、力強い腕が回って抱きとめられる。視界の端で、グラサンの男が後ろに放り投げられて、橋の反対側の手すりにぶつかって倒れるのが見えた。
***を抱き留めた人物がよろけて、ふたり一緒に後ろ向きに倒れてしまう。ぎゅっと目を閉じて衝撃に備えたが、***の背中は大きな胸にぼすんと受け止められた。尻餅をついた後ろの人間の足の間で、***はぺたりと座り込んだ。
「お前、何やってんの……」
「ぎ、銀ちゃん!!!」
頭の上から降ってきた声を聞いて、ぱっと目を開けて振り返ると、そこにはいちばん会いたかった人がいた。
銀時は頭をガシガシと掻きながら、呆れかえった顔で、***を見下ろしている。
「はぁぁぁぁ~……なに***、なんなの!?なんでお前、長谷川さんと一緒に身投げしてんだよ!あんな酔っ払いのマダオ、命がけで助けてどーすんだよ!馬鹿かお前は、馬鹿なんですかぁぁぁ!?」
「えっ!?あの人が長谷川さん!?去年この川で死んじゃった長谷川さん!?」
「死んでねーよ!お前が会ってないだけで生きてたよ!河川敷とか公園とかゴミ捨て場とか、立派なマイホームでちゃーんと生きてたっつーの!マダオはなぁ、こんな橋から落ちて死ぬほどヤワじゃねぇんだよ!それを勝手に助けようとして、お前ひとりがおっちぬなんざ、笑い話にもなんねぇだろうが!この馬鹿!!!」
「ひぃッ!ごめんなさいぃぃ!!!」
勢いよく銀時に説教されて、***は慌てて謝る。
二週間ぶりに会ったのに、会いたくて会いたくてたまらなかった人なのに。再会してそうそうお説教をくらうなんて、とても悲しい。
***は眉を八の字に下げて、銀時の足の中で座り込んだまま、しょんぼりと肩を落とす。長谷川にすがりついた時に、ぶつけた膝や、下駄で蹴られた手のひらの皮が擦りむけて、ひりひりと痛む。
「はぁ~…俺がいたからよかったものの……去年もそーだったけど、ひ弱な***がひとりで男引っ張り上げるなんざ、無茶だっつーの。落ちたら捻挫じゃすまねーぞ」
そう言いながら銀時が、***の手のひらを取って、擦りむいた傷についた砂をはらう。ぴりっとした痛みが走る。
「いッ……」
かすり傷から走った強い痛みに驚いて、涙がじわっと目に浮かぶ。
「っと、……あぁ~…なんだ、なんか銀さんもびっくりして?強く言いすぎたみたいな?……まぁ、あれだな、なんつーかその……おかえり」
伏し目がちに握った手のひらの傷を見たまま、銀時が言う。その言葉を聞いて、***はぱっと顔を上げる。
目をそらしたままの銀時を眺めて、この人は本当に不器用で、素直じゃないな、と***は思う。どうでもいいことはべらべら喋るくせに、大切なことを言う時には少し無口になって、目も見てくれない。そうだった、ずっと前から。一年前に出会った時から。
銀時の気まずそうな顔を見た***は、おかしくなって吹き出してしまう。
「っぷ……あは、あはは…やだ、銀ちゃん、おかしい」
「あぁ!?っんだよ、なに笑ってんだよ!ふざんけんなっつーの……一緒に飲んでた長谷川さんがいねぇなと思って探したら、***と身投げしてるって意味分かんねぇよ」
「あははっ、やだぁ!ごめんなさいっ…でもなんかおかしくって……」
手を銀時に握られたまま、***はけらけらと笑う。その顔を見て、最初こそ眉間にシワを寄せていた銀時だが、「なんなんだよ」と言って呆れた顔になる。しばらくすると銀時も***につられて、声もなく笑ってしまう。
擦りむけた***の手を離して、後ろ手に両手をつく。少し視線を離して、足の間で笑い続ける***を眺めた。気が付くと昇っていた朝陽が、***の顔を照らす。明るい光の中で笑っている無邪気な顔を見て、銀時はあれ、と思う。
なんかこいつ…―――
「はぁ…あぁ、おかしい、銀ちゃんはやっぱり銀ちゃんだね。久しぶりに会っても変わってないから、ほっとして笑えてきちゃいました」
「おい***、男子三日会わざれば刮目して見よって言うだろ、よく見ろよ、銀さんのイケメンに磨きがかかってね?ちょっと髪の毛ストレートになってね?サラサラヘアーになってね?」
「なってないです。ふわふわくるくるの天パです」
「オイィィィィ!だぁれがクルクルパーだってぇぇぇ!?もっぺん橋から落としてやろうか!!!」
両肩をつかんで持ち上げようとする銀時に、***は笑いながら「きゃー!やめてください!」と言って、すがりつく。
ふたりしてふざけながら、げらげらと笑う。ふと笑い声が止んで、大きな手で肩をつかまれたままの***が、銀時をじっと見上げる。
「銀ちゃん、助けてくれてありがとう……あと、えぇっと……た、ただいま」
顔を赤く染めて、***が照れた顔をして言う。腕の中のその顔が、二週間前に見送った時より少し変わっていて、銀時は目を見開く。どう言葉にしていいのか分からないが、以前よりその顔や瞳が、キラキラと輝いているように見えるのだ。
「***、お前、なんか、……田舎でなんかあったろ?」
「へっ!!?なななんも無いよ!なんも無いです!」
突然の銀時の質問と、疑いの目で見られていることに驚いて、***は目を丸くして固まる。脳裏に別れ際に母に告げた言葉が蘇る。
―――お母さん、私……銀ちゃんのことが好き
その銀時が目の前に、すぐ近くに顔を寄せていることに心臓が飛び跳ねて、ボンと頭に血がのぼる。顔が熱くて真っ赤になっていることが、見なくても分かる。
「いーや、嘘だ!あれだな、神楽が言ってた昔の男に再会したんだろ!そんでひと晩のアバンチュールを経て、お子ちゃまだった***もひと皮むけて、億万長者の太郎の女になったってことだな!!?」
「はぁ!?億万長者の太郎って誰!?昔の男なんていないです!アバンチュールなんてあるわけないでしょ、家族にしか会ってないんですから!」
「んなこと言っても銀さんの目は誤魔化せねぇよ、その顔のツヤ!その肌のハリ!キラキラしてんもん、天ぷら油でも塗ったみてぇにテカテカしてんもん!おかしいっつーの!ぜってぇ太郎となんかあっただろ!これで金持ちになった***は、万事屋みてぇな甲斐性無しの無職集団とは縁切りってか!!!」
「はぁぁぁ!?なに言ってんですか!そ、そんなことあるわけないでしょ!そんなこと言うなんてひどいよ!……わ、私がこの二週間、どれだけ万事屋のみんなに会いたかったか…………ぎ、銀ちゃんにどれだけ会いたかったか、知りもしないで!!!」
「へっ!?」
今度は銀時が目を丸くして固まる番だった。両肩をつかまれ揺さぶられながらも、***は顔を真っ赤にして、銀時のことを睨んでいた。その目があまりにも真剣で、さっきまで口からべらべらと出てきた言葉が、ひとつも出てこなくなる。
戸惑った目で自分を見つめる銀時の顔を見て、***は「ああ、もう」と真っ赤な顔を横にひと振りした。
もう駄目だ……、と***は内心つぶやく。久々に再会したと思ったら説教されて、更にはこんな意味不明な言いがかりをつけられて、こんな変な人、銀時以外に見たことない。それなのに***の胸は、ますます高鳴る一方だ。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、***を見つめている銀時の顔を、朝陽が照らす。一年前と同じように、あちらこちらに跳ねる銀色の髪が、きらきらと光っているのが綺麗で、目が離せない。自分の両肩を強くつかむ大きな手が熱い。手の触れたところからその温度が身体に染みこんできて、心臓が早鐘を打つ。
ドクンドクンと鳴る鼓動が、「好き、好き、大好き!」と訴えている。
もう駄目だ、こらえきれない、と心の声が***を突き動かす。こんなに変な人なのに、こんなにときめいて、こんなに近くにいたくて、こんなに好きだと思っている。
***は銀時の目をじっと見つめて、止めていた息を更につめるように短く吸うと、蚊のなくような小さな声でつぶやいた。
―――銀ちゃん、私、銀ちゃんのことが好きだよ
顔どころか首元まで熱いくらいだから、いつもからかわれる通り、茹でダコみたいになっているだろう。***は自分がどんな顔をして銀時を見ているのか分からない。きっとすごく変な顔をしている。眉間にシワを寄せて、ヤケドしそうなほど真っ赤にほほを染めて。こんな顔を見られるのはすごく恥ずかしい。
それでも口から言葉が勝手に飛び出していく。この気持ちを言わずにいられない。震えるほど恥ずかしい。でもいま伝えなければ一生言えないかもしれない。そんな強い思いに動かされて、唇が動いた。
銀時は相変わらず目を点にして***を見ている。全く微動だにせず、口をぽかんと開けて。
「私、ぎ、銀ちゃんのことが好き、……好きなんですけど、あの、き、聞いてる?」
「……はっ!?おま、お前急に何言ってんだよ!酔っ払ってんのか!?」
「よ、酔ってなんかないです!銀ちゃんが、変なことばっかり言うから!だからっ……な、なんか言っちゃったんだもん!好きなんだもん、銀ちゃんのことが好きなんだもん!!銀ちゃんの馬鹿ぁ!!!」
「はぁぁぁぁ!?なんなんだよお前!告白すんのかキレんのかどっちかにしろよ!!好きってなんだよ!いきなり意味わかんねぇだろーが!そもそも***には太郎がいるんじゃねぇのかよ!」
「だから太郎って誰!?私は!銀ちゃんのことが!好きなんです!!!」
肩をつかんでいた銀時の手が、ばっと離れる。後ろに身を引いて、片手で口元を抑えた銀時の顔に、一瞬だけさっと赤みがさした。
その顔を見て***は、銀ちゃんも照れたりするんだと冷静になる。いつも自分ばかりがからかわれていたから、からかう側の銀時が恥ずかしがるなんて、すごく新鮮だ。めずらしい物を見たという感じで、興味津々な目で***は銀時をじっと見つめる。
「いや、***ちゃん、その、そーゆー無垢な目で銀さんを見ないでくれる?ポーカーフェイスを気取ってるけど、こう見えてめっさ恥ずかしいから、めっさ気まずいから!」
「……なんで銀ちゃんが恥ずかしがるんですか、私が告白したのに……ねぇ、それって銀ちゃんも、」
いぶかしげな顔で話す***の言葉を、突然「俺は死ぬんだぁぁぁぁ!!!」という長谷川の叫び声が遮った。息をつめてぱっと振り向くと、長谷川が再び手すりの上に立って、飛び降りようとしていた。
「ははは長谷川さん!!!駄目ですってば!!!」
そう言って立ち上がり、長谷川に駆け寄ろうとした***の腕を、銀時の大きな手がつかんで引き留めた。
「だぁから、長谷川さんは落ちても死なねぇーの、危ねぇからほっとけって」
「で、でも銀ちゃん!助けないとっ!」
眉を八の字に下げて、慌てた顔で大きな手をふりほどこうとする***を、座ったままの銀時が下から睨み上げる。
「お前は本当に……」と呆れるようにつぶやく声が聞こえたかと思うと、つかまれた腕をぐいっと引っ張られる。銀時の方へと前のめりに倒れこんで、顔から地面に倒れこむ。地面に顔がつく前に、いつか感じたことのある感覚が膝や腹に走った。
これは……と思った瞬間には既に、***の身体は軽々と、銀時の肩にかつぎあげられていた。そのまま銀時が立ちあがる。
「わわわっ!ちょっ…銀ちゃん!おろしてぇ!」
「駄目ですぅ~、おろしたらお前また長谷川さん助けようとして、橋から落ちんだろーが」
そういうと銀時は***をかついだまま、手すりに立つ長谷川のもとへと近寄っていく。後ろ向きのせいで***には何も見えず、ばたばたするしかできない。
「長谷川さんよぉ、今日のヤケ酒も明日にゃ祝い酒かもしんねぇーよ。まぁ、また飲もうや」
よいしょ、と言いながら銀時が持ち上げた片足で、長谷川の背中をドンと蹴る。「あぁぁぁぁぁ」という悲鳴と共に川へと落ちていく。落下中に叫んだ「そりゃないよ銀さぁ~ん」という声が***の耳にも届いた。
「え、えぇぇぇ!?ちょっと銀ちゃん何したんですか?落とした?いま長谷川さんのこと落としました?助けなきゃ駄目だよ!こんな人生、生きてても意味ないって泣いてたの!話を聞いてあげなきゃ、」
「あぁ?なに言ってんだよ、***。そりゃ長ぇ人生のうち一日くらいはそーゆー日もあんだろーが、泣いて橋から飛び降りてぇ日もあんだろ。それも人生なんだ、よく噛んで味わえば栄養になるっつーの、牛乳といっしょで」
銀時の言葉を聞いて、はっとして***は動きを止める。
一年前のこと、銀ちゃんも覚えてるんだ…――――
そう思うと涙が出そうなほど、嬉しさと切なさがこみあげてくる。長谷川さんを助けないと、という考えが一瞬で頭からぽーんと抜けて、銀時のことを好きだという気持ちが、噴水のように溢れだしてくる。さっき勢いで伝えてしまって、まだ答えを聞いていないというのに。
「……なぁ、こう見えて銀さんさっきまで長谷川さんと飲んでたからぁ、結構酒が入ってるっつーか、酔ってるっつーか、このままいくと二日酔い確定だからぁ……***のさっきのアレ、アレな、酔いがさめたらもっぺん言ってくんね?」
「さっきのアレって……」
首だけ持ち上げて銀時の方を振り返るが、銀時は前だけを見て***を見ない。朝日に照らされた銀色の髪が、ふわふわと揺れるだけだ。
「もぉ…死ぬほど恥ずかしかったのに……女の子の告白をアレ呼ばわりって、しかも後でもう一回言えなんて……信じられないです」
「っんだよ、二回言うほどは好きじゃねぇってのかよ、そんなら最初から言うなっつーの」
「違うよ!何回だって言えます!す、好きだもん、銀ちゃんのことが!!」
再び顔を真っ赤に染めながら、必死になって***が言った言葉を聞いて、ようやく銀時が首を回して後ろを見る。視線がかち合って恥ずかしいけれど、目をそらせない。
「はっ、まぁた茹でダコみてぇになりやがって……こんまま万事屋に強制連行すっから、二日酔いが終わったら、もっぺん聞かせろよ」
「……うん!うん、わかったよ銀ちゃん、何回でも、何度でも聞かせてあげますから……」
だから、ちゃんと受け止めてね―――
まるで祈るような思いで、***は心の中でつぶやいた。
朝日に照らされた道を、***を肩にかついだまま銀時が歩き出す。やっぱりこの街の朝が好き。この街を好きにさせてくれた、銀時のことが大好き。溢れる思いが、気を抜くと飛び出してきそうで、***はぎゅっと唇を噛んでこらえる。首を持ち上げて、もう一度振り返ると、銀時もこちらを見ていた。
「おはよーさん」
気だるげな、でもいつも通りの温かさをこめて、***を見つめる赤い瞳。この瞳をずっと近くで見ていたい。そのためにならどんな恥ずかしさも、どんな苦しい思いも、何度も噛んで飲みこんで、乗り越えていける気がする。
それが***の恋で、***の人生だから。牛乳といっしょで。
「おはようございます、銀ちゃん!」
(大好きだよ、銀ちゃん!!!)
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no.34【am.5:30】end
『牛乳(人生)は噛んで飲め』end
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題字♡ちゃさき様
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