このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

承アン



今朝起きると枕元に一通の手紙があった。
ジョセフやアブドゥル、花京院に聞いてみてもわからないと口にしてから暗い顔でなにか真剣に話していた。


「カミサマからの手紙じゃねえの」

ポルナレフは机に肘をつきながら冗談混じりで答える。いつもならこんな馬鹿みたいな事を返されたら怒ってしまうかもしれないが、今はそれが一番納得のいくものだった。

「ふんっポルナレフにしたらいい事いうじゃない」

呆れた顔で何か言いたそうにしたが、悪戯っ子のような顔で耳打ちしてくる。

(おめぇさん気づかないのか?さっきから……ほら)

目線で示すその先には、帽子を深く被って壁にもたれ掛かる学ラン姿の青年が。少女はその青年を見つけると赤面して目線が泳ぎ出す。

(俺なんかよりもあっちのお兄さんとお喋りする方が楽しいぜ)

眺めているだけでこれだけ動揺しているのだから無茶だと反論する前に、体が勝手に椅子から立ち上がり背中を押されるように青年の元へ向かってしまう。次第にスピードも上がり少女は自分の体を制御する事が出来ない。

「え?!どうしてやだやだ!!JOJO止まれない!」

承太郎にぶつかる直前背中を押していた力がピタリと消えて後ろにいたポルナレフの悲鳴が聞こえる。だが押していた力が消えても前へ進む力が衰える事なくそのまま飛び込む。
ぽふんっと承太郎の腹部に顔を埋める。この状況に恥ずかしさが込み上げ離れる事ができなくなった。

ふわっと体が浮き上がる。脇に手を入れられて抱き上げられたのだ。目線が合う位置まで持ち上げられしばらくじろじろと顔を見つめられた後下ろされてしまった。

「怪我、ねえならよかったぜ」

そういってその場から離れようとしたので横へついていく。私はなにくわぬ顔で手を繋ぐ。
大きな手が私の手を包み返す。とても優しい力で包む。
顔を見上げて帽子の中を見る。怒っているというよりも優しい物を守るような、そんな表情が読み取れて口許が緩む。

「あのね、今朝こういう手紙が枕元にあったの、きっと誰かのイタズラだと思うんだけどね。」

手紙を見せた後穏やかだった承太郎はいなくなり、怒りではりつめた空気を醸し出す承太郎がいた。私には理由がよくわからないけど、握り返してくれた事が嬉しくて用があると言ってどこかへ向かった承太郎を見送ったのだ。


《承太郎が貴方を見ている時は、構ってあげると幸せになるでしょう。》


手紙の主は一体誰だったのだろう。でもこの手紙のお陰で私は幸せになれたよ。
3/3ページ