ーーシロが目を覚ます前。

サンジとルフィはナミの元を訪れていた。隣にはシロが寝ている。

「もう体はいいのかい？ナミさん」

「熱も下がったし、だいぶ楽になったわ！」

「そりゃー良かった！ここまで登ったかいがあったな、シロ」

未だ目覚めないシロに、ルフィがにかっと笑いかける。そのシロのボロボロな姿を見てサンジは優しく頭を撫でる。

「無理させちまったな。俺を担いだせいで…。キツかっただろう」

ボロボロになった指先を見て、サンジが顔を歪ませる。

「こいつも頑張ってたからな！お前ら、一緒にゆっくりしてていいからな！俺はちょっと城の中を探検してくる。さっきおもしろトナカイ見つけたんだ」

2人がもう安心だと分かると、ルフィはさっそく好奇心が抑えられない、いつものルフィになっていた。

「分かったわよ。物壊したりしないでよね」

ナミの許可を得ると、ルフィはすぐさまどこかに走り去っていく。
サンジはまだシロが心配なのか、その場から離れない。

「珍しいわよね、サンジくんが男の子に優しくするなんて」

「えっ？ああ。なんでかな？弟みたいな感じなのかも。もしかして、ナミさんやきもち焼いてくれてる？」

ナミの言葉にサンジも不思議そうにしていた。がすぐに切り替えてナミにハートを飛ばす。

「んなわけあるか！まあ、年下だしその気持ちは分かるわ。なんか構いたくなるのよねー」

過去の話を聞いて、今までの人生を考えると、これからは楽しく過ごさせてあげたいと思ってしまう。実際、初めて会った時は乏しかった表情も柔らかくなって、たまに笑顔も見れるようになってきた。

「俺の飯も美味しいって言って食ってくれるし、何よりみんなの名前を呼ぶようになったな」

「そうなの？私意識がはっきりしなかったから気づかなかったわ。そういえば、ずっとルフィの名前しか呼んでなかった気がする」

初めに心を開いたのがルフィだった為か、ルフィの名前はすぐ呼ぶようになったが、他のクルーに対してはなかなか名前を呼ばなかった。

「早く起きて、私の名前呼んでくれないかしら？」

ふにふにとシロのほっぺたをつつくナミを見て、サンジは羨ましいなと思う。
それはシロに対してではなく、ナミに対して。それに気づいたサンジは、ぶわっと顔を赤くして「ちょっと俺も散歩してくる！」と部屋から急いで出て行った。

「何今の反応？変なの？」

1人残されたナミはシロが目覚めるまで、思う存分構い倒したのだった。