波の国
主人公の名前
設定NARUTOの夢小説。
カカシ寄りのほのぼのになる予定。
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カカシも回復し、ようやく第七班が揃ってタズナの護衛に出れるようになった。ただし、ナルトは木登り修行の疲れが出たのか、起きてこれずタズナの家に置いて来られている。
橋まではそんなに遠くない距離で、何の問題もなく到着した。が、橋に着いてから異変に気づく。
工事をしていた男たちが橋の上で気絶して倒れている。そんな彼らに、何があった!とタズナが駆け寄って行く。
ケイたちは辺りに注意を向けた。一見変なところはないように見えたが、次第に視界が悪くなり霧が立ち込めていく。
『これって、もしかして』
霧隠れの術。再不斬の得意な術だ。
「またせたな」
霧が立ち込めたところで、再不斬の声が聞こえたと思ったら、ケイたちの周りに4人の再不斬が現れた。
「またガキを連れて来たのか」
可哀想に震えてるじゃねえかと馬鹿にしたように言われ、サスケが武者震いだよと言い返す。
カカシはサスケに向かって、やれと笑った。サスケが素早い動きで一気に仕掛け、あっという間に再不斬の水分身を倒す。と、ライバル出現だなと再不斬がお面の子と一緒に姿を見せた。
どの面下げて来てんのよ、とサクラがお面の子に文句を言っている。カカシが追いつめた再不斬を仕留めに来たように見せて、本当は助けに来ていたお面の子。もう隠す気もない様で、堂々としている。
『タズナさんは下がっててね』
「おう。もちろんじゃ」
ケイはタズナに声をかけてクナイを構える。再不斬の強さはこの間の戦闘で目の当たりにしているが、お面の子、名前は白と言うらしいが、この子の実力はまだ未知数だった。
サスケが前に出て、オレがやると白に対抗する。木登り修行の成果が出ているようで、サスケは白を翻弄していた。
サスケの成長に、目を奪われていたケイだったが、タズナを守るという任務を思い出して気持ちを引き締める。
白を囮にして再不斬本人が直接狙ってくる可能性もあるからだ。
サスケと白の戦いは初めはサスケの優勢だったが、白の秘術が出てからは形勢が逆転してしまった。
カカシが助けに入ろうとする気配を感じ取った再不斬が、お前が助けに入ればそいつらを殺すとケイ達のほうを見る。これでカカシは迂闊に動くことができなくなった。
白の魔鏡氷晶に閉じ込められたサスケの叫び声が響く。中で何が起きているのか心配になったサクラが、ここ任せてもいい?と呟く。
『いいよ。私もサスケのこと心配だから。行ってあげて』
「ありがとう!すぐ戻るわ!」
サクラは走り出しサスケの元へと向かった。途中、白が弾き飛ばしたサスケのクナイを拾って、それをサスケへと投げ渡す。しかし、鏡から身を乗り出した白がクナイを掴んだ。とそこへどこからか飛んできた手裏剣が白のお面へと直撃する。その衝撃で鏡から白が引きずり出された。
煙と共に、うずまきナルト、ただいま見参!とナルトが姿を現す。これにはカカシやサスケから注意が入った。忍ならもっと慎重に行動しろと。
助けに入ったつもりが状況を悪化させていることにナルトは落ち込んでいるが、今はそれどころではない。
『サスケと協力して白の術を破れればいいけど。あっ!』
ケイはナルトが魔鏡氷晶の中に入る瞬間を目撃してしまった。残念なことに距離があるため止めることが叶わず、サスケの罵声が耳に届く。
忍なら相手の意表を突けとカカシによく言われるが、まさか仲間の意表まで突くなんて。さすがは意外性ナンバーワンとカカシに言わせるだけはある。
「あいつ何しに来たのよ!」
『おかえりサクラ。ほんとにね。でもナルトのおかげでサスケの元気が戻った気がする』
なんだかんだと協力しながら戦う様子が鏡の隙間から見える。その姿を見て、ケイは少し安心した。
それでも劣勢には変わりなく、おまけにあの白の術は血継限界だと分かった。写輪眼と同種の血のつながりによって受け継がれる術。
「そろそろオレたちも決着をつけようか」
カカシが再不斬に言い放つ。今はまだナルトもサスケも戦えているが、それもいつまで持つか分からない。カカシとしてみれば早く加勢に行きたいところだ。
「そうだな。あいつらは白には絶対に勝てねえ。だから、心配なんだろう?」
『なんで絶対って言いきれるの?血継限界って言っても、サスケだって』
再不斬の自信にケイは苛立って突っかかる。やめろとカカシは制して、続けた。
「あいつらにはまだ人を殺める精神力がないからだ」
「白にはあいつがガキの頃から、オレのすべてを叩き込んでいる」
経験の差が勝負を決めているということか、とケイは理解した。それでも、あの2人が負けるなんて想像もしたくない。
そんなことを考えているうちに、カカシと再不斬が動いた。カカシの写輪眼を恐れた再不斬が先に仕掛けてくる。霧のせいでガードが遅れたカカシは傷を負いクナイを刺された手から血を滴らせた。
『カカシ先生!』
「お前たちはタズナさんから離れるな!こいつはオレが殺る!」
再不斬と睨み合いながらカカシの鋭い声が響く。サクラとタズナを囲むように陣を組みなおしクナイを構えた。
そこでまたしても霧が濃ゆくなる。再不斬がさらに霧隠れの術を発動させたためだった。
『こんなに霧が濃ゆくなったら何も見えないんじゃ』
そう呟いた時だ。シュッと何者かが近づく気配がして、気づいた時にはカカシが目の前で再不斬に斬られていた。
サクラから悲鳴が上がる。ケイは目の前が真っ赤になった。それほどまでにカカシの出血は多かった。
カカシを斬ったあと再不斬はまたも姿をくらます。
「お前たちそこから絶対に動くなよ!」
ひどい怪我を負ったにも拘わらず、カカシは怯むことなく再不斬を追って離れていく。
どれほどの時間が経ったのだろう。霧の中では時間の感覚もおかしくなって、本当は10分も経ってないのかもしれないが、ケイにとってはもう何時間も経ったかのようだった。
突如、霧の一点がチッチッチと音を立てながら輝く。
『なに、あの光?何かの術?』
「もう、何がどうなってるのよ。サスケくんたちも先生も大丈夫なのかしら」
サクラがそわそわとし始める。みんなのことが心配なのだ。
ずっと悲鳴や、金属音が響いていれば落ち着かないのも無理はない。
音を立てていた光も一瞬で横に移動したかと思えば、激しく光った後消えてしまった。
少し視界がクリアになる。やっとカカシの姿が見えたと思えば、白の体に腕を突き刺した状態だった。
そんな状態のカカシを再不斬は白ごと斬ろうと振りかぶる。それをカカシは白を抱えて後ろに飛び避けた。
『どうしてこんな状況に。ナルトたちは?』
白と戦っていたのはナルトたちだったはずなのに、その白を倒したのはどう見てもカカシだ。
魔鏡氷晶があったほうへ視線を向けるとそこには倒れているサスケと、ボロボロのナルトがいた。
タズナがわしも一緒に行こうとケイとサクラの手を引いてくれたおかげでサスケたちのほうへと近づいて行った。
千本が全身に刺さったサスケ。眠るように横たわっている姿は生きているのか死んでいるのか判断が出来ない。サクラが泣きながらサスケへ縋りついた。悲しげなサクラの声はやむことなく、タズナは横でつらそうな表情をしていたたまれないようだった。
『ナルト。何があったの』
「サスケはオレをかばって。白も再不斬をかばって飛び出していったんだ」
そうだったの、とケイは辛そうにしているナルトに寄り添った。
悲しみにくれる中、カカシは再不斬とまだ戦っていた。白の死がきっかけになったのか、再不斬はカカシについていけなくなって今や片腕を使えなくされている。残りの腕もカカシに使えなくされ、戦える状態ではないように見えた。
そんな中、思いもよらない人物が現れた。波の国を支配しているガトーだ。再不斬を始末しに手下を引き連れて来たのだ。
ガトーの裏切りでタズナを狙う必要がなくなった再不斬は、カカシに戦う理由がなくなったと殺気を解く。
そういえばこいつには借りがあったと、ガトーは地面に倒れている白を蹴りつける。それにはナルトが怒りを表した。
「お前は何も思わねえのかよ!仲間だったんだろ!」
再不斬が何も言わないことにさらにナルトは怒りをぶつける。
「あいつはお前のことが大好きだったんだぞ!それでも何にも思わねえのかよ!」
白のことを思い、ナルトが心の限りに叫ぶ。その声に再不斬は涙していた。忍は道具と言っていた再不斬も、心の奥では道具になりきれず、白を大切に思っていた証拠だった。
ナルトにクナイを借り、再不斬はガトーの元へと走り出す。口に咥えたクナイで次々を敵を蹴散らす姿はまさに鬼人だった。
『強い人たちでしたね』
「ああ。ナルト顔を背けるな!必死に生きた男の最後だ」
「う゛ん」
最後まで互いを思いあって散っていった。再不斬と白、2人の強さをケイは目に焼きつけた。
「ナルトー!サスケくんはちゃんと生きてるわー!」
サクラが嬉しそうな声で手を振っている。その隣にはしっかりと立っているサスケの姿。分かりやすいように片手を上げている。
「そうか。サスケも無事か」
やはり、白はナルトたちを殺すつもりはなかったのか。再不斬の言う通りだった。
「お前ら安心しすぎ!このくそ忍者ども!せっかくの金づる殺しちまいやがって」
気を抜いていたところにガトーの残党が迫ってきた。そこに一矢が撃ち込まれる。
矢が飛んできた方向を見れば、そこにはイナリと波の国の人々が武器を手に集まっている。
「英雄ってのは遅れて登場するもんだからね!」
イナリはへへっと笑っている。タズナがその姿を嬉しそうに見ていた。
ナルトは加勢するってばよと影分身の術を発動する。それくらいならとカカシも負けじと影分身の術を発動した。
多くの影分身たちと波の国の人々の勢いにおされて、ガトーの残党は我先にと逃げ出した。
橋の上には戦いに勝った喜びの声が響いていた。
敵がいなくなり、カカシが再不斬の元へと向かう。まだ息のあった再不斬はカカシに頼みがあると呟いた。
「あいつの顔が見てえんだ」
ああ、とカカシは再不斬を抱えて白の元へと運ぶ。空からは季節外れの雪が降ってきていた。
カカシはそっと白の隣に再不斬を下す。穏やかな顔をしている白へ再不斬は手を伸ばした。
「ずっと傍にいたんだ。せめて、最後もお前の傍で。…出来るなら、お前と同じところに行きてえな…オレも」
それが鬼人と呼ばれた再不斬の最後の言葉だった。