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硝子さんの友達の名前は?
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僅かな沈黙。遂に言った、言ってしまったと、夏油はテーブルの下で拳を握った。今回の提案が上手くいこうがいくまいが、小夜に対する気持ちは変わらないし、きっとまた何か折に触れて、機会があれば彼女を誘うだろうと他人事の様に夏油は思っていたー諦めるつもりはない。目の前の小夜は大きな目を丸くした。
「私と、ですか…?」
「勿論。小夜ちゃん以外の誰が行くんだい?」
そう言って笑う夏油だが、内心とても穏やかではない。処刑台を見上げる囚人はこんな気持ちなのだろうかと、落ち着かない気持ちで唇を舐めた。
「いつ、ですか?土日はちょっと予定があって」
そう言いながら小夜はバッグから手帳を引っ張り出してテーブルに置く。夏油の提案に前向きな小夜の姿勢に夏油は自身の視界が明るくなった様に感じていた。
「そうだね…、次の土曜日は?」
「ごめんなさい、その日は友達と予定があって…、日曜日なら空いてるんですけど」
日曜日は任務だったなと夏油は首を振った。
「翌週はどう?…翌週なら日曜日かな」
「その週は親戚のところに行く予定なんです」
「うーん…」
彼女のスケジュール状況については想定外だった。夏油は次第に焦りを感じ始める。
「…あ、ちょっと先になるんですけど、再来週の土曜日、硝子と会う予定なんです。ご都合良かったら、その時にご一緒するのはどうですか?」
小夜の提案は大変ありがたいものであったが、夏油にとっては何と返事をしていいかー彼女に悪気がないのは重々理解している。
「ん…、私の方はまだ先の予定が確定していないんだ。わかったら連絡する形でも構わないかな?ごめんね、私から言い出した事なのに」
「あ、いえ、…お誘いいただいたのに、すみません」
約束を取り付ける事は出来なかったが、空気が悪くなる事なく、彼女が前向きな姿勢でいてくれる事にひとまず安堵した夏油は、気を取り直して別の話題を振ろうとした。が、それは彼の携帯の着信音に遮られた。ちら、と画面を見遣ると夏油は小さく息を吐く。
「あの…、気にしないで出てください」
私飲み物とって来ますね、と言って自身のグラスと夏油のグラスを手に席を立つ小夜の気遣いに礼を述べた。夏油は携帯を手に取り、声の大きさに気を遣いながら応答する。相手は先程帰らせたはずの補助監督だった。
『あ!夏油さん、何度もすみません、』
「そうですね、任務も終わったし今はフリーのはずですよね。報告書ならすぐ出しますよ。今日はたいした案件ではなかったので、それ程難しい事はないはず」
『……』
相手が黙り込んだ事に夏油は再び息を吐いた。
「…それとも他に何か急ぎの用ですか?先程私も用があると伝えたはずですが」
『っも、申し訳、ありません…』
補助監督が余計な事を言い出す前に封じにかかる。もし別件で任務の依頼や応援要請があれば、担任の夜蛾から直接連絡が来るはずである。基本的に補助監督から任務以外の用件は有り得ないー夏油は息を吐いた。小夜が戻って来るのが目に入る。
「…何かありましたら担任を通してください」
それだけ言って、夏油は補助監督の返事も待たずに通話を切った。小夜の手がアイスコーヒーの入ったグラスを夏油の前に置く。
「…大丈夫でした?」
心配そうに小首を傾げて様子を窺う小夜が堪らなく可愛らしい。夏油は不自然にならない様に口元を緩めた。
「ありがとう、大丈夫。問題ないよ」
小夜は夏油の向かいに座り、新しく淹れたアイスティを飲む。彼女を見、それに倣うように夏油もアイスコーヒーを口にした。
「ところで…、そろそろ暗くなってくるけど、小夜ちゃん、時間は大丈夫かい?」
店の外を眺める夏油につられて小夜も外を見る。夏の太陽はすっかり傾き、秋を感じさせる夕空に変わっていて、昼と夜の色が混ざり合うところだった。
「…時間が経つのは早いですね」
時計を見て小夜は苦笑した。暗くなる前には帰るつもりだと言う小夜、互いにドリンクを飲み終えたら店を出ようという事に決めた。雑談をしながらも、小夜より一足早く飲み終えた夏油は素早く伝票を引っ掴んだ。
「っあ、」
「今日は私が。…小夜ちゃんが友達と過ごす時間だったのを私に割いてもらったワケだしね」
「でも誘ったのは私ですし、」
「良いから。…私としては、小夜ちゃんと過ごした分としては安過ぎて申し訳ないくらいだけどね」
2人は店を出ると駅に向かって歩き出す。学校帰りの学生や買い物をしている親子連れが殆どだった通りには仕事帰りのサラリーマンが目立って増え、駅前に並ぶ飲み屋の灯りが瞬き始めていた。
家まで送ろうかと言う夏油の提案に、小夜は驚いた顔を見せながら首を振った。
「家は隣の駅だし、それ程遠くないですから」
お気遣いありがとうございます、と頭を下げる小夜に、夏油は家に着いたら連絡する様に言い置いて、彼女が電車へと乗り込むのを見届けてから自身も反対方向の電車に乗り込んだ。
「…どーいう風の吹き回し?」
やや大振りの紙袋を差し出してくる夏油を家入は怪訝そうに一瞥した。寮に戻ってすぐ、夏油は自販機に飲み物を買いに行く彼女を見つけて声をかけた。袋には家入が嗜む銘柄のパッケージが覗き、家入はため息を吐く。
「…私と小夜の友情を何だと思ってんの」
「私はまだ何も言っていないんだが、」
「書類出しに事務室行った時、補助監督が休憩所で半泣きで話してんのが聞こえた」
「……」
「お前がそこまでするのは小夜が居たからとしか考えられないだろ。補助監督もいい迷惑だよ」
「任務中なら兎も角、任務が終わってからの事なんだ、問題ないだろう?…プライベートまで詮索しようなんて、あの補助監督も如何と思うけどね」
夏油の言い分に頷きつつ家入は肩を竦めた。そして夏油の手から紙袋を引ったくる。
「…近々泊まりでの実習が入るかもってヤガセンに言われてんだよねー。先の話で詳しくは未定だけど」
「…という事は、?」
「知らないよ。…じゃ、私やる事あるから」
これはもしかするともしかするかもしれないチャンスだと、夏油は携帯を手に嬉々として鼻歌交じりに、軽くスキップをしながら部屋に戻る。そんな同期で親友の姿を目の当たりにした五条は声を掛けるのを躊躇したとか。
「私と、ですか…?」
「勿論。小夜ちゃん以外の誰が行くんだい?」
そう言って笑う夏油だが、内心とても穏やかではない。処刑台を見上げる囚人はこんな気持ちなのだろうかと、落ち着かない気持ちで唇を舐めた。
「いつ、ですか?土日はちょっと予定があって」
そう言いながら小夜はバッグから手帳を引っ張り出してテーブルに置く。夏油の提案に前向きな小夜の姿勢に夏油は自身の視界が明るくなった様に感じていた。
「そうだね…、次の土曜日は?」
「ごめんなさい、その日は友達と予定があって…、日曜日なら空いてるんですけど」
日曜日は任務だったなと夏油は首を振った。
「翌週はどう?…翌週なら日曜日かな」
「その週は親戚のところに行く予定なんです」
「うーん…」
彼女のスケジュール状況については想定外だった。夏油は次第に焦りを感じ始める。
「…あ、ちょっと先になるんですけど、再来週の土曜日、硝子と会う予定なんです。ご都合良かったら、その時にご一緒するのはどうですか?」
小夜の提案は大変ありがたいものであったが、夏油にとっては何と返事をしていいかー彼女に悪気がないのは重々理解している。
「ん…、私の方はまだ先の予定が確定していないんだ。わかったら連絡する形でも構わないかな?ごめんね、私から言い出した事なのに」
「あ、いえ、…お誘いいただいたのに、すみません」
約束を取り付ける事は出来なかったが、空気が悪くなる事なく、彼女が前向きな姿勢でいてくれる事にひとまず安堵した夏油は、気を取り直して別の話題を振ろうとした。が、それは彼の携帯の着信音に遮られた。ちら、と画面を見遣ると夏油は小さく息を吐く。
「あの…、気にしないで出てください」
私飲み物とって来ますね、と言って自身のグラスと夏油のグラスを手に席を立つ小夜の気遣いに礼を述べた。夏油は携帯を手に取り、声の大きさに気を遣いながら応答する。相手は先程帰らせたはずの補助監督だった。
『あ!夏油さん、何度もすみません、』
「そうですね、任務も終わったし今はフリーのはずですよね。報告書ならすぐ出しますよ。今日はたいした案件ではなかったので、それ程難しい事はないはず」
『……』
相手が黙り込んだ事に夏油は再び息を吐いた。
「…それとも他に何か急ぎの用ですか?先程私も用があると伝えたはずですが」
『っも、申し訳、ありません…』
補助監督が余計な事を言い出す前に封じにかかる。もし別件で任務の依頼や応援要請があれば、担任の夜蛾から直接連絡が来るはずである。基本的に補助監督から任務以外の用件は有り得ないー夏油は息を吐いた。小夜が戻って来るのが目に入る。
「…何かありましたら担任を通してください」
それだけ言って、夏油は補助監督の返事も待たずに通話を切った。小夜の手がアイスコーヒーの入ったグラスを夏油の前に置く。
「…大丈夫でした?」
心配そうに小首を傾げて様子を窺う小夜が堪らなく可愛らしい。夏油は不自然にならない様に口元を緩めた。
「ありがとう、大丈夫。問題ないよ」
小夜は夏油の向かいに座り、新しく淹れたアイスティを飲む。彼女を見、それに倣うように夏油もアイスコーヒーを口にした。
「ところで…、そろそろ暗くなってくるけど、小夜ちゃん、時間は大丈夫かい?」
店の外を眺める夏油につられて小夜も外を見る。夏の太陽はすっかり傾き、秋を感じさせる夕空に変わっていて、昼と夜の色が混ざり合うところだった。
「…時間が経つのは早いですね」
時計を見て小夜は苦笑した。暗くなる前には帰るつもりだと言う小夜、互いにドリンクを飲み終えたら店を出ようという事に決めた。雑談をしながらも、小夜より一足早く飲み終えた夏油は素早く伝票を引っ掴んだ。
「っあ、」
「今日は私が。…小夜ちゃんが友達と過ごす時間だったのを私に割いてもらったワケだしね」
「でも誘ったのは私ですし、」
「良いから。…私としては、小夜ちゃんと過ごした分としては安過ぎて申し訳ないくらいだけどね」
2人は店を出ると駅に向かって歩き出す。学校帰りの学生や買い物をしている親子連れが殆どだった通りには仕事帰りのサラリーマンが目立って増え、駅前に並ぶ飲み屋の灯りが瞬き始めていた。
家まで送ろうかと言う夏油の提案に、小夜は驚いた顔を見せながら首を振った。
「家は隣の駅だし、それ程遠くないですから」
お気遣いありがとうございます、と頭を下げる小夜に、夏油は家に着いたら連絡する様に言い置いて、彼女が電車へと乗り込むのを見届けてから自身も反対方向の電車に乗り込んだ。
「…どーいう風の吹き回し?」
やや大振りの紙袋を差し出してくる夏油を家入は怪訝そうに一瞥した。寮に戻ってすぐ、夏油は自販機に飲み物を買いに行く彼女を見つけて声をかけた。袋には家入が嗜む銘柄のパッケージが覗き、家入はため息を吐く。
「…私と小夜の友情を何だと思ってんの」
「私はまだ何も言っていないんだが、」
「書類出しに事務室行った時、補助監督が休憩所で半泣きで話してんのが聞こえた」
「……」
「お前がそこまでするのは小夜が居たからとしか考えられないだろ。補助監督もいい迷惑だよ」
「任務中なら兎も角、任務が終わってからの事なんだ、問題ないだろう?…プライベートまで詮索しようなんて、あの補助監督も如何と思うけどね」
夏油の言い分に頷きつつ家入は肩を竦めた。そして夏油の手から紙袋を引ったくる。
「…近々泊まりでの実習が入るかもってヤガセンに言われてんだよねー。先の話で詳しくは未定だけど」
「…という事は、?」
「知らないよ。…じゃ、私やる事あるから」
これはもしかするともしかするかもしれないチャンスだと、夏油は携帯を手に嬉々として鼻歌交じりに、軽くスキップをしながら部屋に戻る。そんな同期で親友の姿を目の当たりにした五条は声を掛けるのを躊躇したとか。
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