chains
硝子さんの友達の名前は?
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「随分遅くなっちゃったけど」
その言葉と大きな手が差し出してきたのは、夏の思い出が詰まった髪飾り。
ファミレスの店員に席を案内され、飲み物を手元に置いてひと息ついた時だった。大切にしていた髪飾りが手元に戻ってきたのは喜ばしい事ではあるが、正直なところ小夜にとっては何とも言えない心持ちだった。
「…もしかして…、ずっと持ち歩いてたんですか…?」
「ぅん…、まぁ、そうだね。…寮の部屋には悟が勝手に入る事が多くてね。無断であちこち漁ったりする事があるから、置いておくのはちょっと心配で」
そう言ってから、夏油はさすがに苦し過ぎたか、と額を掻いた。だが五条が夏油の部屋に入って室内を漁るのは事実であるし、そこで彼が気になった物について詮索されるのも事実。おずおずと夏油が小夜の様子を窺う。と、彼女はにこりと笑った。
「大事に持っていてくれて、ありがとうございました」
息を詰める様に小夜の言葉を待っていた夏油は安堵から小さく息を吐いた。
「…前にも言ったかもしれないけど、この髪飾り、私が小さい時に祖母が作ってくれた物なんです。…今となっては、形見になっちゃって」
小夜の話を改めて聞き、夏油は過去の自身の行動を褒めたい思いだったー偉いぞ、自分。
「それから…、助けてくれてありがとうございました」
「気にしないで、私は当然の事をしただけだよ」
夏油はそう返して小夜を見る。ほんの少しだけ、彼女の顔が赤らんでいる様に見えた。照れているのか恥じらんでいるのか、そんな彼女に加虐心が湧いたというかちょっかいをかけたくなったというかー所謂キュートアグレッション、いう感覚に、夏油は手元のアイスコーヒーをひと口飲んだ。
「…どうかした?」
「あ、いえ…、…なんだか、信じられないっていうか、現実感がないっていうか…」
「?」
夏油が首を傾げると、小夜は笑わないでくださいね、と言い置いて口を開く。
「…だって…、その、…みんなで行った花火大会の帰り、私だけはぐれちゃって…、知らない男の人に声かけられて、裏道の方に連れて行かれたところを助けてもらって…。…しかも、助けてくれた夏油さんがあんな、強い人だなんて思いもしなかったし…。そんなの、ドラマとか映画のお話みたいじゃないですか…」
小夜にしては珍しく、矢継ぎ早に思いを言葉にしていく。尻窄みになる様に最後まで言い切ると、グラスに注がれたアイスティをストローでぐるぐる混ぜ始めた。何かを考えているのか照れ隠しか、彼女の癖の様な行動を見て、夏油は笑った。
「私も、趣味の格闘技が役立つとは思わなかったよ」
え、と目を瞬かせる小夜に構わず、夏油は頬杖を付いて身を乗り出す様にして彼女を見る。
「…独学だけどね。こう見えて普段からトレーニングしてるんだよ。意外だった?」
何と言ったら良いかー小夜は再び手元のグラスに視線を落とす。アイスティをひと口飲み、何かを考えるような顔をしてから上目遣いで夏油を見る。
「…夏油さんて、ギャップ…すごいですね」
「…そうかな?」
ちょっとだけ揶揄おうと思ったはずが、こちらを見上げてくる小夜が可愛い過ぎて目に毒だと、夏油は決して不自然にならない様に姿勢を正し、落ち着きを求める様に自身のコーヒーを口にした。
高校生の男女が向かい合って座り、互いに黙って俯き加減で飲み物を飲んでいるーそんな今の状況を客観視した夏油は変に可笑しく思えてきて顔を上げた。
「小夜ちゃん、…ちょっと聞きたいんだけど」
「…はい?」
顔を上げた小夜の頬はまだ少し赤らんでいる。
「…結構気にしてる?…あの時、歩けなくなってー」
「言わないでくださいっ!」
話を振った夏油だったが、思いもしなかった小夜のリアクションに目を丸くした。そんな彼の顔を見て、小夜は慌てて頭を下げる。
「…ごめんなさい、大きな声出しちゃって…、助けてくれたのに、本当にすみません…」
華奢な身体を更に小さくして謝罪を口にする小夜、今度は夏油が慌てて首を振った。
「小夜ちゃんは悪くないよ、謝らないで。私の方こそごめんね…、あの時嫌な思いをさせていたかもしれないと思ってね。もしそうなら謝るのは私の方だ」
そこまで言って夏油は恐る恐る小夜の顔を窺い見た。小夜は驚いた様な顔をして首を振る。
「そんな事ないです、むしろ感謝してます。…本当に、怖かったので…、もし、夏油さんが来てくれなかったらって思うと…」
「…じゃあ…少なくとも、あの時の私はヒーローになれた…って事かな」
なんと嬉しい話だろうか。夏油は上機嫌を押し込めながらコーヒーを飲む。
「…そんなヒーローさんに、何かお礼がしたいんです」
コーヒーを吹き出しそうになるのを堪えた夏油は軽く咳き込んだ。小夜の顔を見れば至って真剣で、随分義理堅いんだなと意外な面を見た気がした。
「…気にしなくて良いよ、気持ちだけでも十分嬉しい」
「そんな…、本当に申し訳ないですから」
引き下がる様子のない小夜を前に、夏油は考えを巡らせる。別に何か物が欲しいわけでもなく、今の自分が欲しているのは目の前の愛らしい小夜と過ごす時間だ。彼女の事を理解し、そして自身の事を理解してもらう。
そして、ゆくゆくはー
「…夏油さん?」
控えめな声に、夏油の意識は引き戻された。首を傾げてこちらを見ている小夜を見て、恋は盲目、とはよく言ったものだと夏油は苦笑した。
「あぁ、ごめんごめん」
夏油はコーヒーをひと口飲むと、小夜に向き直る。
「…さっき小夜ちゃんが言ってくれた、私にお礼がしたいって事なんだけど」
「はい!」
「…1日、私の外出に付き合ってくれないかな?」
その言葉と大きな手が差し出してきたのは、夏の思い出が詰まった髪飾り。
ファミレスの店員に席を案内され、飲み物を手元に置いてひと息ついた時だった。大切にしていた髪飾りが手元に戻ってきたのは喜ばしい事ではあるが、正直なところ小夜にとっては何とも言えない心持ちだった。
「…もしかして…、ずっと持ち歩いてたんですか…?」
「ぅん…、まぁ、そうだね。…寮の部屋には悟が勝手に入る事が多くてね。無断であちこち漁ったりする事があるから、置いておくのはちょっと心配で」
そう言ってから、夏油はさすがに苦し過ぎたか、と額を掻いた。だが五条が夏油の部屋に入って室内を漁るのは事実であるし、そこで彼が気になった物について詮索されるのも事実。おずおずと夏油が小夜の様子を窺う。と、彼女はにこりと笑った。
「大事に持っていてくれて、ありがとうございました」
息を詰める様に小夜の言葉を待っていた夏油は安堵から小さく息を吐いた。
「…前にも言ったかもしれないけど、この髪飾り、私が小さい時に祖母が作ってくれた物なんです。…今となっては、形見になっちゃって」
小夜の話を改めて聞き、夏油は過去の自身の行動を褒めたい思いだったー偉いぞ、自分。
「それから…、助けてくれてありがとうございました」
「気にしないで、私は当然の事をしただけだよ」
夏油はそう返して小夜を見る。ほんの少しだけ、彼女の顔が赤らんでいる様に見えた。照れているのか恥じらんでいるのか、そんな彼女に加虐心が湧いたというかちょっかいをかけたくなったというかー所謂キュートアグレッション、いう感覚に、夏油は手元のアイスコーヒーをひと口飲んだ。
「…どうかした?」
「あ、いえ…、…なんだか、信じられないっていうか、現実感がないっていうか…」
「?」
夏油が首を傾げると、小夜は笑わないでくださいね、と言い置いて口を開く。
「…だって…、その、…みんなで行った花火大会の帰り、私だけはぐれちゃって…、知らない男の人に声かけられて、裏道の方に連れて行かれたところを助けてもらって…。…しかも、助けてくれた夏油さんがあんな、強い人だなんて思いもしなかったし…。そんなの、ドラマとか映画のお話みたいじゃないですか…」
小夜にしては珍しく、矢継ぎ早に思いを言葉にしていく。尻窄みになる様に最後まで言い切ると、グラスに注がれたアイスティをストローでぐるぐる混ぜ始めた。何かを考えているのか照れ隠しか、彼女の癖の様な行動を見て、夏油は笑った。
「私も、趣味の格闘技が役立つとは思わなかったよ」
え、と目を瞬かせる小夜に構わず、夏油は頬杖を付いて身を乗り出す様にして彼女を見る。
「…独学だけどね。こう見えて普段からトレーニングしてるんだよ。意外だった?」
何と言ったら良いかー小夜は再び手元のグラスに視線を落とす。アイスティをひと口飲み、何かを考えるような顔をしてから上目遣いで夏油を見る。
「…夏油さんて、ギャップ…すごいですね」
「…そうかな?」
ちょっとだけ揶揄おうと思ったはずが、こちらを見上げてくる小夜が可愛い過ぎて目に毒だと、夏油は決して不自然にならない様に姿勢を正し、落ち着きを求める様に自身のコーヒーを口にした。
高校生の男女が向かい合って座り、互いに黙って俯き加減で飲み物を飲んでいるーそんな今の状況を客観視した夏油は変に可笑しく思えてきて顔を上げた。
「小夜ちゃん、…ちょっと聞きたいんだけど」
「…はい?」
顔を上げた小夜の頬はまだ少し赤らんでいる。
「…結構気にしてる?…あの時、歩けなくなってー」
「言わないでくださいっ!」
話を振った夏油だったが、思いもしなかった小夜のリアクションに目を丸くした。そんな彼の顔を見て、小夜は慌てて頭を下げる。
「…ごめんなさい、大きな声出しちゃって…、助けてくれたのに、本当にすみません…」
華奢な身体を更に小さくして謝罪を口にする小夜、今度は夏油が慌てて首を振った。
「小夜ちゃんは悪くないよ、謝らないで。私の方こそごめんね…、あの時嫌な思いをさせていたかもしれないと思ってね。もしそうなら謝るのは私の方だ」
そこまで言って夏油は恐る恐る小夜の顔を窺い見た。小夜は驚いた様な顔をして首を振る。
「そんな事ないです、むしろ感謝してます。…本当に、怖かったので…、もし、夏油さんが来てくれなかったらって思うと…」
「…じゃあ…少なくとも、あの時の私はヒーローになれた…って事かな」
なんと嬉しい話だろうか。夏油は上機嫌を押し込めながらコーヒーを飲む。
「…そんなヒーローさんに、何かお礼がしたいんです」
コーヒーを吹き出しそうになるのを堪えた夏油は軽く咳き込んだ。小夜の顔を見れば至って真剣で、随分義理堅いんだなと意外な面を見た気がした。
「…気にしなくて良いよ、気持ちだけでも十分嬉しい」
「そんな…、本当に申し訳ないですから」
引き下がる様子のない小夜を前に、夏油は考えを巡らせる。別に何か物が欲しいわけでもなく、今の自分が欲しているのは目の前の愛らしい小夜と過ごす時間だ。彼女の事を理解し、そして自身の事を理解してもらう。
そして、ゆくゆくはー
「…夏油さん?」
控えめな声に、夏油の意識は引き戻された。首を傾げてこちらを見ている小夜を見て、恋は盲目、とはよく言ったものだと夏油は苦笑した。
「あぁ、ごめんごめん」
夏油はコーヒーをひと口飲むと、小夜に向き直る。
「…さっき小夜ちゃんが言ってくれた、私にお礼がしたいって事なんだけど」
「はい!」
「…1日、私の外出に付き合ってくれないかな?」