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硝子さんの友達の名前は?
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9月に入ったというのに、相変わらず真夏の暑さを振り撒いている太陽。荒廃した建物の隙間から差し込む強い光と暑さに夏油はため息を吐き、先程手に入れたばかりの呪霊玉を飲み込んだ。
これで今日の任務は終わり、補助監督の待つ車へと向かう。車の外でずっと待機していたのだろう、この日同行した女性補助監督は赤らんだ顔で汗を拭っていた。
「…車内で待機していてくださって結構ですよ」
VIP待遇の様にドアを開けてくれる補助監督に夏油がそう声をかけると、彼女は首を振った。車内からは心地良く冷えた空気が感じられる。
「暑い中任務に出ているのに、私だけ涼しい思いをしているのも気が引けます」
「…お気遣い、ありがとうございます」
夏油にとっては社交辞令、補助監督は機嫌を良くした様子で運転席に乗り込む。車はゆっくりと出発した。
以前、家入が小夜に話した通り、顔面偏差値が高い夏油と五条。女性補助監督の間で人気があり、接点を持ちたいとか顔を覚えてもらいたいという者が多いらしい。夏油自身もそれを知ってはいるが、今の彼にとっては至極どうでも良い事になっていた。以前であれば世間話に乗っていたが、ここ最近そんな会話も避ける様に、任務の移動中は携帯を眺める事が多くなっていた。
夏油を乗せた車は街中に差し掛かった。夕方から夜へと移ろう時間、道路は渋滞しつつあり、車の進むペースが徐々に遅くなっていた。
歩くのとほぼ同じ速さで流れる車窓、夏油はぼんやりと外を眺めた。自分と同じ年頃の、多くの学生達が歩いている。楽しげな彼らの向かう先を見れば、この付近は駅前だという事に気が付く。
「…すみません停めてください」
突然の言葉に補助監督は驚きながらも、少し空いた車道脇に車を停車させた。
「何かありましたか?」
「…蝿頭が多い気がしませんか」
補助監督の返事も待たず、夏油は車を降りた。
少し歩き、商業ビルの他に大小様々な店舗が並ぶ通りを眺める。この辺りで事故や事件があっただろうか。問題となる呪物の類があるのか、何か呪いを寄せるものがあるのか。任務に対し少々生真面目な部分がある夏油、この付近を警戒地域として頭に叩き込む。
今のところは急を要する状況ではないと判断し、夏油が車に戻ろうとした、その時。
数人の女子高生が楽しそうに談笑しながら歩いてくるのが目に入り、その中に彼が想い焦がれる存在ー小夜がいた。夏油は思わずそちらへ足を向けた。
「…小夜ちゃん」
通りの良い声に話が止まり、小夜を含めたその場の目が夏油に集まった。
「っえ…、夏油、さん…⁉︎」
「久しぶりだね」
突然塩顔のイケメンに声をかけられ、小夜以外の面々が悲鳴に似た黄色い歓声を上げた。
「えっ誰々⁉︎」
「小夜の彼氏⁉︎」
「マジカッコ良いんだけど⁉︎」
「ていうか彼氏いるとか聞いてないし!」
盛り上がる声に小夜は戸惑いの表情を見せる。夏油は家入の同期、友達の友達だとか知り合いと言うには距離が遠過ぎる気がするし、かと言って友達と言う程近いわけでもない。どう言えば良いか。
「小夜ちゃんは私の同期の親友でね。私にとっても大切な友人だよ」
戸惑う小夜に代わり、端的に、且つ一同を納得させた夏油の言葉。小夜は小さく息を吐いた。
「突然声をかけてごめんね、小夜ちゃんが偶然通りかかったのを見かけたから声をかけさせてもらったよ」
「あ、いえ…」
何とも言えない距離感と夏油の言葉に小夜は曖昧に返事をした。と、小夜の友人の1人が声を上げた。
「みんなゴメン!私これからバイトあるから行くね!」
その言葉を皮切りにした様に、1人、また1人と理由を付けその場を立ち去って行く。
「あ、百合香、」
小夜は最後の1人に慌てて声をかける。百合香は小夜を振り返り、夏油をチラと見上げて小夜に視線を戻した。
「…せっかくなんだもん、少し話してから彼と解散しなよ。…私の勘、絶対その方が良いから」
「え、ちょっ…!」
百合香はコソッと耳打ちすると、満面の笑みで手を振ると走ってその場を去っていってしまった。
「……」
その場に取り残された小夜、そして夏油。
「…すまない、私が声をかけたばかりに」
「そんな、大丈夫ですから気にしないでください!」
小夜は慌てて首を振った。実際のところ、友人達と買い物に行った帰りで、それぞれ帰途につく途中だったのは間違いない。小夜が夏油を見上げると、今まで見た事がないくらいの申し訳なさそうな表情をしていた。
「…あの…、少し、お茶でも飲んで行きますか?…あ、夏油さんにお時間あればですけど…」
小夜からの申し出に夏油は舞い上がる程の思いだった。夏油が嬉々と返事しようとしたところで彼の携帯が鳴る。水を差された気分ながら携帯を取り出すと、任務に同行していた補助監督からだった。
「ごめんね、少し待ってて。…はい、夏油です」
『あっ、夏油さん今何処にー』
「用が出来たので先に戻っていて下さい」
補助監督が何か返事をする前に夏油は電話を切った。
「お待たせ小夜ちゃん」
「…大丈夫なんですか?忙しいならまた今度でも…」
「大丈夫。さ、何処に行こうか?」
やや戸惑った様子の小夜の背を押し、夏油は上機嫌で近くのファミレスに向けて小夜の歩幅に合わせてゆっくりと歩き出した。未だ纏わり付く暑さと、任務の終盤に飲み込んだ呪霊玉の不快感が少し、和らいだ気がした。
これで今日の任務は終わり、補助監督の待つ車へと向かう。車の外でずっと待機していたのだろう、この日同行した女性補助監督は赤らんだ顔で汗を拭っていた。
「…車内で待機していてくださって結構ですよ」
VIP待遇の様にドアを開けてくれる補助監督に夏油がそう声をかけると、彼女は首を振った。車内からは心地良く冷えた空気が感じられる。
「暑い中任務に出ているのに、私だけ涼しい思いをしているのも気が引けます」
「…お気遣い、ありがとうございます」
夏油にとっては社交辞令、補助監督は機嫌を良くした様子で運転席に乗り込む。車はゆっくりと出発した。
以前、家入が小夜に話した通り、顔面偏差値が高い夏油と五条。女性補助監督の間で人気があり、接点を持ちたいとか顔を覚えてもらいたいという者が多いらしい。夏油自身もそれを知ってはいるが、今の彼にとっては至極どうでも良い事になっていた。以前であれば世間話に乗っていたが、ここ最近そんな会話も避ける様に、任務の移動中は携帯を眺める事が多くなっていた。
夏油を乗せた車は街中に差し掛かった。夕方から夜へと移ろう時間、道路は渋滞しつつあり、車の進むペースが徐々に遅くなっていた。
歩くのとほぼ同じ速さで流れる車窓、夏油はぼんやりと外を眺めた。自分と同じ年頃の、多くの学生達が歩いている。楽しげな彼らの向かう先を見れば、この付近は駅前だという事に気が付く。
「…すみません停めてください」
突然の言葉に補助監督は驚きながらも、少し空いた車道脇に車を停車させた。
「何かありましたか?」
「…蝿頭が多い気がしませんか」
補助監督の返事も待たず、夏油は車を降りた。
少し歩き、商業ビルの他に大小様々な店舗が並ぶ通りを眺める。この辺りで事故や事件があっただろうか。問題となる呪物の類があるのか、何か呪いを寄せるものがあるのか。任務に対し少々生真面目な部分がある夏油、この付近を警戒地域として頭に叩き込む。
今のところは急を要する状況ではないと判断し、夏油が車に戻ろうとした、その時。
数人の女子高生が楽しそうに談笑しながら歩いてくるのが目に入り、その中に彼が想い焦がれる存在ー小夜がいた。夏油は思わずそちらへ足を向けた。
「…小夜ちゃん」
通りの良い声に話が止まり、小夜を含めたその場の目が夏油に集まった。
「っえ…、夏油、さん…⁉︎」
「久しぶりだね」
突然塩顔のイケメンに声をかけられ、小夜以外の面々が悲鳴に似た黄色い歓声を上げた。
「えっ誰々⁉︎」
「小夜の彼氏⁉︎」
「マジカッコ良いんだけど⁉︎」
「ていうか彼氏いるとか聞いてないし!」
盛り上がる声に小夜は戸惑いの表情を見せる。夏油は家入の同期、友達の友達だとか知り合いと言うには距離が遠過ぎる気がするし、かと言って友達と言う程近いわけでもない。どう言えば良いか。
「小夜ちゃんは私の同期の親友でね。私にとっても大切な友人だよ」
戸惑う小夜に代わり、端的に、且つ一同を納得させた夏油の言葉。小夜は小さく息を吐いた。
「突然声をかけてごめんね、小夜ちゃんが偶然通りかかったのを見かけたから声をかけさせてもらったよ」
「あ、いえ…」
何とも言えない距離感と夏油の言葉に小夜は曖昧に返事をした。と、小夜の友人の1人が声を上げた。
「みんなゴメン!私これからバイトあるから行くね!」
その言葉を皮切りにした様に、1人、また1人と理由を付けその場を立ち去って行く。
「あ、百合香、」
小夜は最後の1人に慌てて声をかける。百合香は小夜を振り返り、夏油をチラと見上げて小夜に視線を戻した。
「…せっかくなんだもん、少し話してから彼と解散しなよ。…私の勘、絶対その方が良いから」
「え、ちょっ…!」
百合香はコソッと耳打ちすると、満面の笑みで手を振ると走ってその場を去っていってしまった。
「……」
その場に取り残された小夜、そして夏油。
「…すまない、私が声をかけたばかりに」
「そんな、大丈夫ですから気にしないでください!」
小夜は慌てて首を振った。実際のところ、友人達と買い物に行った帰りで、それぞれ帰途につく途中だったのは間違いない。小夜が夏油を見上げると、今まで見た事がないくらいの申し訳なさそうな表情をしていた。
「…あの…、少し、お茶でも飲んで行きますか?…あ、夏油さんにお時間あればですけど…」
小夜からの申し出に夏油は舞い上がる程の思いだった。夏油が嬉々と返事しようとしたところで彼の携帯が鳴る。水を差された気分ながら携帯を取り出すと、任務に同行していた補助監督からだった。
「ごめんね、少し待ってて。…はい、夏油です」
『あっ、夏油さん今何処にー』
「用が出来たので先に戻っていて下さい」
補助監督が何か返事をする前に夏油は電話を切った。
「お待たせ小夜ちゃん」
「…大丈夫なんですか?忙しいならまた今度でも…」
「大丈夫。さ、何処に行こうか?」
やや戸惑った様子の小夜の背を押し、夏油は上機嫌で近くのファミレスに向けて小夜の歩幅に合わせてゆっくりと歩き出した。未だ纏わり付く暑さと、任務の終盤に飲み込んだ呪霊玉の不快感が少し、和らいだ気がした。
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