始めまして、初めまして
猪野くんの同級生のお名前は?
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偶然にも猪野と再会し、初対面の七海を交えて飲みに行った日の翌日、ちはるは高専東京校の事務員と共に彼女の住居の契約の為、不動産屋を訪れていた。
高専内でも寝泊まりは出来るのだが、ちはるは外での生活を選んだ。高専に入るまでは実家暮らし、学生時代は寮生活。高専を卒業してからは実家の意向に逆らう事が出来ず、再び実家暮らし。常に誰かしらに管理されているような生活を強いられてきたちはるにとって、一人暮らしが出来るというのは正に夢のような話だった。
車を持っているちはるにとって、場所は駅から遠かろうが街から離れていようが何処でも良かった。元々高専も辺鄙な場所にあるのだ、学生時代の苦労に比べたらどうという事はない。街から少し離れたその物件は格安と言える価格で、想像以上の広い部屋を借りる事ができた。
入居がすぐ出来るという事で、ちはるは早速引っ越しの段取りを考えるー家電や家具は何を揃えるか、実家から持ち出す物は何がどれくらいあるか、等々。
ちはるが高専の教員として正式に活動するにはまだまだ時間があると伊地知は言っていたが、実際のところ最近は学生があまり集まっていないというのが実情らしかった。その為、手が空いている教員は祓除の任務に出ているとかで、高専側としてはちはるの教員としての活動は生活基盤が整ってからでも良いが、任務にはすぐにでも出てもらいたいというのが本音なのだろう。
賃貸の契約を済ませ、不動産屋から部屋の鍵を受け取ったちはるは、事務員と共に一旦高専へ戻った。
借りた部屋の間取り図を眺めながら、まずは寝る場所の確保と食料の保管を最優先事項とし、ちはるは車のキーを手に部屋を出た。
高専の補助監督が術師の送迎に使っている車の駐車場の一角にちはるの車は停まっている。高専の敷地は広く、この事に関して文句を言う者はいない。という以前に学長からも許可を得ているのだ、何も問題はない。
ロックを解除して車に乗り込む。
「…?」
視界の端に、何か白いモノが入り込んだ。車のシートはダークグレー、なんだろうと後ろを振り返るとコンビニの袋だった。手元に引っ張り中を覗けば、漫画雑誌、ポテチ、エナジードリンク。ちはるは息を吐いた。
とりあえず後回し、と袋を助手席に放り出し、ちはるはエンジンを回して車を発進させた。
行き先は家電量販店と家具店、その前に昼食を何処かで済ませよう、何がいいかなと高専の敷地を抜けた。
数十分車を走らせ、ちはるはショッピングモールに車を停め、モール内のカフェで食事をとる事にした。ランチには少々早い時間、待つ事なく案内され、“本日のおすすめ”と強めの圧をかけてくるランチセットを注文した。
通されたのは窓際のカウンター席で、この日は天気も良く、ショッピングモール上階にあるこのカフェからの眺めは悪くなかったー時折飛ぶ鳥に紛れて視界に入り込んでくる蝿頭を除けば。これだけ人が集まっているのだ、蝿頭が出るのも当然と言える。窓の外だし、放っておいても問題はないーちはるは視線を逸らした。
「お待たせしました」
店員が運んで来たランチは予想していたよりも美味しそうだった。ちはるは手を合わせて食事を始める。
半分くらい食べたところで、デニムのポケットでスマホが着信を告げ始めた。メールかメッセージアプリかと思っていたが、マナーモードでブルブルと振動し続けているスマホを仕方なしに引っ張り出す。“猪野っち”の表示と通話の着信を告げるディスプレイにちはるは眉を顰めて“終了”をタップし、続いてメッセージアプリを開く。
『今外。掛け直す』
そう送ればすぐに既読がつく。ちはるはスマホをポケットに戻し、食事を再開する。が、メッセージを送って10分も経たない内に、スマホは再び通話の着信を知らせ始めた。ちはるは少々苛立ちを覚えたが、もしかしたら高専からかもしれないと思って、渋々ポケットからスマホを取り出してディスプレイを確認するー“猪野っち”。
思わず舌打ちが出た。ちはるは再び着信を切り、店員に食後のコーヒーを頼んだ。
ランチタイムが台無しーちはるはコーヒーを早々に飲み干し、会計を済ませて店を出た。会計の間もちはるを呼び続けていたスマホを取り出し、通話を繋ぐ。
『やっと出』
「あのさ、ちゃんと日本語理解してんの?今外だから掛け直すって連絡したじゃない」
『や、急ぎの用事でさ』
「そんなの猪野っちの都合でしょ、私には私の都合があるの、それ無視するとか失礼でしょマジで」
正論で捲し立てるちはるに、猪野は素直に本気でスミマセンゴメンナサイ、と謝罪を口にした。
「…で、どーしたの?昨日忘れてった漫画とポテチ?」
ため息混じりにちはるが言えば、猪野は嘘、マジで、とコンビニの袋を丸ごと忘れた事にも気が付いていないようだった。ちはるは再びため息を吐いた。
『それより大事な用事!七海サンから連絡来てさ、車にネクタイピンがなかったかって』
「んー?どうかな?」
『悪いけど急いで探してよ!』
「…今外だから後でね」
『んもぅ!とにかく頼むぜ!』
「ハイハイ、また後で連絡するね」
やや一方的にちはるは通話を切った。なんだか気が削がれた感覚だった。思わず大きく息を吐くと、先程食事をとったカフェの側、人が増えて来た事に気付き、ちはるはとりあえずその場を離れる事にした。
高専内でも寝泊まりは出来るのだが、ちはるは外での生活を選んだ。高専に入るまでは実家暮らし、学生時代は寮生活。高専を卒業してからは実家の意向に逆らう事が出来ず、再び実家暮らし。常に誰かしらに管理されているような生活を強いられてきたちはるにとって、一人暮らしが出来るというのは正に夢のような話だった。
車を持っているちはるにとって、場所は駅から遠かろうが街から離れていようが何処でも良かった。元々高専も辺鄙な場所にあるのだ、学生時代の苦労に比べたらどうという事はない。街から少し離れたその物件は格安と言える価格で、想像以上の広い部屋を借りる事ができた。
入居がすぐ出来るという事で、ちはるは早速引っ越しの段取りを考えるー家電や家具は何を揃えるか、実家から持ち出す物は何がどれくらいあるか、等々。
ちはるが高専の教員として正式に活動するにはまだまだ時間があると伊地知は言っていたが、実際のところ最近は学生があまり集まっていないというのが実情らしかった。その為、手が空いている教員は祓除の任務に出ているとかで、高専側としてはちはるの教員としての活動は生活基盤が整ってからでも良いが、任務にはすぐにでも出てもらいたいというのが本音なのだろう。
賃貸の契約を済ませ、不動産屋から部屋の鍵を受け取ったちはるは、事務員と共に一旦高専へ戻った。
借りた部屋の間取り図を眺めながら、まずは寝る場所の確保と食料の保管を最優先事項とし、ちはるは車のキーを手に部屋を出た。
高専の補助監督が術師の送迎に使っている車の駐車場の一角にちはるの車は停まっている。高専の敷地は広く、この事に関して文句を言う者はいない。という以前に学長からも許可を得ているのだ、何も問題はない。
ロックを解除して車に乗り込む。
「…?」
視界の端に、何か白いモノが入り込んだ。車のシートはダークグレー、なんだろうと後ろを振り返るとコンビニの袋だった。手元に引っ張り中を覗けば、漫画雑誌、ポテチ、エナジードリンク。ちはるは息を吐いた。
とりあえず後回し、と袋を助手席に放り出し、ちはるはエンジンを回して車を発進させた。
行き先は家電量販店と家具店、その前に昼食を何処かで済ませよう、何がいいかなと高専の敷地を抜けた。
数十分車を走らせ、ちはるはショッピングモールに車を停め、モール内のカフェで食事をとる事にした。ランチには少々早い時間、待つ事なく案内され、“本日のおすすめ”と強めの圧をかけてくるランチセットを注文した。
通されたのは窓際のカウンター席で、この日は天気も良く、ショッピングモール上階にあるこのカフェからの眺めは悪くなかったー時折飛ぶ鳥に紛れて視界に入り込んでくる蝿頭を除けば。これだけ人が集まっているのだ、蝿頭が出るのも当然と言える。窓の外だし、放っておいても問題はないーちはるは視線を逸らした。
「お待たせしました」
店員が運んで来たランチは予想していたよりも美味しそうだった。ちはるは手を合わせて食事を始める。
半分くらい食べたところで、デニムのポケットでスマホが着信を告げ始めた。メールかメッセージアプリかと思っていたが、マナーモードでブルブルと振動し続けているスマホを仕方なしに引っ張り出す。“猪野っち”の表示と通話の着信を告げるディスプレイにちはるは眉を顰めて“終了”をタップし、続いてメッセージアプリを開く。
『今外。掛け直す』
そう送ればすぐに既読がつく。ちはるはスマホをポケットに戻し、食事を再開する。が、メッセージを送って10分も経たない内に、スマホは再び通話の着信を知らせ始めた。ちはるは少々苛立ちを覚えたが、もしかしたら高専からかもしれないと思って、渋々ポケットからスマホを取り出してディスプレイを確認するー“猪野っち”。
思わず舌打ちが出た。ちはるは再び着信を切り、店員に食後のコーヒーを頼んだ。
ランチタイムが台無しーちはるはコーヒーを早々に飲み干し、会計を済ませて店を出た。会計の間もちはるを呼び続けていたスマホを取り出し、通話を繋ぐ。
『やっと出』
「あのさ、ちゃんと日本語理解してんの?今外だから掛け直すって連絡したじゃない」
『や、急ぎの用事でさ』
「そんなの猪野っちの都合でしょ、私には私の都合があるの、それ無視するとか失礼でしょマジで」
正論で捲し立てるちはるに、猪野は素直に本気でスミマセンゴメンナサイ、と謝罪を口にした。
「…で、どーしたの?昨日忘れてった漫画とポテチ?」
ため息混じりにちはるが言えば、猪野は嘘、マジで、とコンビニの袋を丸ごと忘れた事にも気が付いていないようだった。ちはるは再びため息を吐いた。
『それより大事な用事!七海サンから連絡来てさ、車にネクタイピンがなかったかって』
「んー?どうかな?」
『悪いけど急いで探してよ!』
「…今外だから後でね」
『んもぅ!とにかく頼むぜ!』
「ハイハイ、また後で連絡するね」
やや一方的にちはるは通話を切った。なんだか気が削がれた感覚だった。思わず大きく息を吐くと、先程食事をとったカフェの側、人が増えて来た事に気付き、ちはるはとりあえずその場を離れる事にした。