wanderers
猪野くんの同級生のお名前は?
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翌日、現場の調査を終えて宿泊先の自室へ戻って来た七海はソファに座ると大きく息を吐いた。
現場の調査と言っても、この日は最新の紙面地図とタブレット内のデジタル地図を突き合わせ、現場の山へのアクセス口を確認しただけで終わってしまった。
想像していた以上に現場は広く、正に神出鬼没という表現が当てはまる呪霊。闇雲に現場を歩き回っては先に行方不明となった術師の二の舞となるだろうー祓除を完了するには時間がかかりそうだった。
不意にドアを叩く音が聞こえ、七海はサングラスを外し、少しだけ重くなった身体で立ち上がった。
「すんません七海サン」
「…どうかしましたか?」
「ちはる宛に何か届くらしいじゃないスか、見に行ってみません?アイツ、今ロビーにいるみたいなんで」
そういえばそんな事を言っていたなと思い出しながら、目の前の猪野を見る。目を輝かせているーこれは断ったら余計に面倒だろうなと思った七海は、彼の提案に仕方なく同意する事にした。
2人がロビーに着くと、大ぶりの箱を抱えたちはるが荷物を運んできた業者らしい男と何かしら話をしながら外に出るところだった。
彼女を視線で追う様に七海がロビーの窓から外を見ると、大きめのパネルバンが停まっていた。隣に居たはずの猪野はちはるを追って小走りで入口に向かっている。
「七海サン七海サン!」
手招きしている猪野に小さく息を吐き、七海は気怠さを覚えながらそちらに足を向ける。外に出ると、先程七海が見たバンの中から1台のバイクが姿を見せ、リフトから降ろされてちはるの前に運ばれているところだった。
差し出された書類にちはるがサインすると業者はさっさと車に乗り込んで行ってしまった。
それを見送るとちはるはバイクのスタンドを外し、駐車場までへ移動させようとバイクを押し始めた。
「ちはる!」
名を呼ばれてそちらを見ると、目を丸くした猪野、疲れた表情の七海がいた。と、先に説明しておくべきだったと今更ながらの思いがちはるの頭を巡り始める。
「…えっと…」
口籠もるちはるに七海は大きく息を吐いた。
「…事情を説明してもらいましょうか」
「はい…」
七海はホテルのフロント係に声を掛け、ミーティングルームを借りた。大きなテーブルに椅子が並び、七海と猪野が並んで座り、向かいに座ったちはるは尋問を受けるのはこんな感じなんだろうかと息を吐き、口を開く。
「…勝手な事してすみません」
「…一応聞くけどさ、1人でツーリング行こうとか思ってたワケじゃねぇよな?」
「それは無いよ」
だよな、と口を尖らせて呟く猪野。ちはるが彼の隣の七海に視線を移すと、サングラスを外した色素の薄い目が真っ直ぐに見つめていて、少々居心地の悪さを覚えた。
「…私なりにいろいろ考えてみて、なんですけど」
ちはるの言葉に七海は僅かに頷き、先を促した。
「今回の任務に有効活用できると思って」
「…バイクが?」
「行方不明になった術師と補助監督、私たちが呪霊と遭遇したポイントはバラバラで、呪霊の居場所を特定するのは困難です。あんな広い山の中を歩いて探すなんて時間ばかりかかるし、効率も悪い」
「…まーな、五条さんみてぇな術式持ってりゃ山ごと吹っ飛ばしてすぐ終わるかもしれねぇけど…、そーいうワケにもいかねぇしな」
「…猪野くん」
悪戯を咎められた子供の様に、猪野はすんません、と照れた子供の様にへへ、笑った。
「ま、歩きが無理なら車、だよな」
猪野の合いの手にちはるは頷いた。
「けど昨日の状況だと、車から降りてっていう余裕はなかったし、何より人手が必要」
「補助監督を危険に晒すわけにいきません」
ちはるはにこりと笑った。
「そこでバイクが有効じゃないかって思ったんです。バイクは車よりも機動性が高い。遭遇したその場で祓う事は出来なくても、誘引して私たちに優位な状況を作る事も可能かと」
「囮作戦かぁ…」
七海と猪野はなるほどと頷くも、七海は表情を崩す事なく口を開く。
「話はわかりました…が、少々気になる点が」
「はい」
「バイクの運転を出来るのは水野さん1人。貴女が山を走り回り、呪霊を誘き出す、という事になります」
「勿論そのつもりです」
真剣な七海の目がちはるを射る様に見つめる。
「場合によってはその場で呪霊と対峙する可能性もあります。…貴女の祓除スタイルは主にクロスボウを使った遠隔攻撃。昨日の呪霊が相手では少々不利な状況になる事が予想されます。そしてもしそうなった場合、誘引ポイントで待機している我々への連絡はどうなりますか?この作戦では連携が不可欠です」
「……」
七海からの指摘にちはるは口を噤んだ。常に単独で任務を遂行している弱みが露呈したかたちとなった。黙ったままのちはるに七海は僅かに口を緩めた。
「アイディアは非常に素晴らしいと思いますよ」
そう言って七海は改めてちはると猪野を見た。
「誘引役は2人にしましょう。仮に呪霊と対峙する事になっても水野さんのバックアップも可能ですし、連絡手段も確保できる。…2人乗りは可能ですか?」
「2人乗りならアレよりでかいバイクの方が良くね?」
「猪野っちが言いたい事はわかるけど、何でも大きい方が良いってわけじゃないよ。大きいとパワーはあるけど小回りが利かなくなるし、重くて大変なのよ」
「…何よか弱い事言っちゃって」
「仕方ないでしょ、生物学的に私は女なんだから」
口をへの字にして不満を見せるちはるに猪野は笑っていたが、七海は表情を崩さず口を開く。
「水野さんのバックアップは私が行きましょう」
思いもしなかった七海の言葉に、猪野とちはるは目を見開き、驚いた顔で七海を見た。
現場の調査と言っても、この日は最新の紙面地図とタブレット内のデジタル地図を突き合わせ、現場の山へのアクセス口を確認しただけで終わってしまった。
想像していた以上に現場は広く、正に神出鬼没という表現が当てはまる呪霊。闇雲に現場を歩き回っては先に行方不明となった術師の二の舞となるだろうー祓除を完了するには時間がかかりそうだった。
不意にドアを叩く音が聞こえ、七海はサングラスを外し、少しだけ重くなった身体で立ち上がった。
「すんません七海サン」
「…どうかしましたか?」
「ちはる宛に何か届くらしいじゃないスか、見に行ってみません?アイツ、今ロビーにいるみたいなんで」
そういえばそんな事を言っていたなと思い出しながら、目の前の猪野を見る。目を輝かせているーこれは断ったら余計に面倒だろうなと思った七海は、彼の提案に仕方なく同意する事にした。
2人がロビーに着くと、大ぶりの箱を抱えたちはるが荷物を運んできた業者らしい男と何かしら話をしながら外に出るところだった。
彼女を視線で追う様に七海がロビーの窓から外を見ると、大きめのパネルバンが停まっていた。隣に居たはずの猪野はちはるを追って小走りで入口に向かっている。
「七海サン七海サン!」
手招きしている猪野に小さく息を吐き、七海は気怠さを覚えながらそちらに足を向ける。外に出ると、先程七海が見たバンの中から1台のバイクが姿を見せ、リフトから降ろされてちはるの前に運ばれているところだった。
差し出された書類にちはるがサインすると業者はさっさと車に乗り込んで行ってしまった。
それを見送るとちはるはバイクのスタンドを外し、駐車場までへ移動させようとバイクを押し始めた。
「ちはる!」
名を呼ばれてそちらを見ると、目を丸くした猪野、疲れた表情の七海がいた。と、先に説明しておくべきだったと今更ながらの思いがちはるの頭を巡り始める。
「…えっと…」
口籠もるちはるに七海は大きく息を吐いた。
「…事情を説明してもらいましょうか」
「はい…」
七海はホテルのフロント係に声を掛け、ミーティングルームを借りた。大きなテーブルに椅子が並び、七海と猪野が並んで座り、向かいに座ったちはるは尋問を受けるのはこんな感じなんだろうかと息を吐き、口を開く。
「…勝手な事してすみません」
「…一応聞くけどさ、1人でツーリング行こうとか思ってたワケじゃねぇよな?」
「それは無いよ」
だよな、と口を尖らせて呟く猪野。ちはるが彼の隣の七海に視線を移すと、サングラスを外した色素の薄い目が真っ直ぐに見つめていて、少々居心地の悪さを覚えた。
「…私なりにいろいろ考えてみて、なんですけど」
ちはるの言葉に七海は僅かに頷き、先を促した。
「今回の任務に有効活用できると思って」
「…バイクが?」
「行方不明になった術師と補助監督、私たちが呪霊と遭遇したポイントはバラバラで、呪霊の居場所を特定するのは困難です。あんな広い山の中を歩いて探すなんて時間ばかりかかるし、効率も悪い」
「…まーな、五条さんみてぇな術式持ってりゃ山ごと吹っ飛ばしてすぐ終わるかもしれねぇけど…、そーいうワケにもいかねぇしな」
「…猪野くん」
悪戯を咎められた子供の様に、猪野はすんません、と照れた子供の様にへへ、笑った。
「ま、歩きが無理なら車、だよな」
猪野の合いの手にちはるは頷いた。
「けど昨日の状況だと、車から降りてっていう余裕はなかったし、何より人手が必要」
「補助監督を危険に晒すわけにいきません」
ちはるはにこりと笑った。
「そこでバイクが有効じゃないかって思ったんです。バイクは車よりも機動性が高い。遭遇したその場で祓う事は出来なくても、誘引して私たちに優位な状況を作る事も可能かと」
「囮作戦かぁ…」
七海と猪野はなるほどと頷くも、七海は表情を崩す事なく口を開く。
「話はわかりました…が、少々気になる点が」
「はい」
「バイクの運転を出来るのは水野さん1人。貴女が山を走り回り、呪霊を誘き出す、という事になります」
「勿論そのつもりです」
真剣な七海の目がちはるを射る様に見つめる。
「場合によってはその場で呪霊と対峙する可能性もあります。…貴女の祓除スタイルは主にクロスボウを使った遠隔攻撃。昨日の呪霊が相手では少々不利な状況になる事が予想されます。そしてもしそうなった場合、誘引ポイントで待機している我々への連絡はどうなりますか?この作戦では連携が不可欠です」
「……」
七海からの指摘にちはるは口を噤んだ。常に単独で任務を遂行している弱みが露呈したかたちとなった。黙ったままのちはるに七海は僅かに口を緩めた。
「アイディアは非常に素晴らしいと思いますよ」
そう言って七海は改めてちはると猪野を見た。
「誘引役は2人にしましょう。仮に呪霊と対峙する事になっても水野さんのバックアップも可能ですし、連絡手段も確保できる。…2人乗りは可能ですか?」
「2人乗りならアレよりでかいバイクの方が良くね?」
「猪野っちが言いたい事はわかるけど、何でも大きい方が良いってわけじゃないよ。大きいとパワーはあるけど小回りが利かなくなるし、重くて大変なのよ」
「…何よか弱い事言っちゃって」
「仕方ないでしょ、生物学的に私は女なんだから」
口をへの字にして不満を見せるちはるに猪野は笑っていたが、七海は表情を崩さず口を開く。
「水野さんのバックアップは私が行きましょう」
思いもしなかった七海の言葉に、猪野とちはるは目を見開き、驚いた顔で七海を見た。