wanderers
猪野くんの同級生のお名前は?
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19時を少し回ったところで3人はホテルを出発した。猪野が行ってみたいという店へ向かう。観光都市、という事もあり街は様々な人々で賑わっていた。
「ちはる…、これってこっちで合ってる?」
スマホを見ながら先を歩いている猪野がちはるを振り返る。合ってるよ、とちはるが短く答えると、今度は七海が声をかけてきた。
「…気分が優れない様ですが」
ちはるは思わず七海を見上げた。サングラスを外した彼の、色素の薄い瞳が彼女を見ていた。
「…この辺りにはあまり良い思い出がないので」
「くれぐれも無理はしないようにして下さい」
「…そうですね」
会話が切れたタイミングを見計らった様に、店に着いたと猪野が声を上げた。表通りから少し外れた場所にあるせいか、さほど待つ事なく3人は案内された。
注文は猪野に任せ、ちはるは普段より遅いペースでビールを飲んでいた。あまり食欲が出ないちはるとは反対に、猪野も七海も西側の料理を口にする機会が少ない事も手伝ってか、2人の箸はよく進んでいた。
「ちはる、食わないと大きくなれないぞ」
「これ以上大きくなったら困るわよ」
「だいじょぶだって、ちはるはもっと食っても問題ねぇから。これ美味いよ」
差し出された皿を受け取りながら、同期に気を遣わせてしまったとちはるは箸を持った。料理を口に運ぶと、な、美味いだろ、と猪野が声をかけてきて、七海がこちらもどうぞと皿を差し出してくれるー2人に気を遣わせて、こんな陰鬱な気持ちに振り回されて、自分が馬鹿みたいだーちはるはビールをひと息に呷った。
開き直った様な感覚ながら、ちはるは少しだけ気が晴れてきたと自覚していた。程良く酔った猪野の相手をしていると、七海がそろそろホテルに戻りましょう、と声を上げた。時間は22時を回っていた。
「猪野っち、帰るよ」
「私は会計を済ませてきます。…お手数ですが、水野さんは猪野くんを頼みます」
ちはるの返事を待たずに七海は支払いへ向かってしまい、ちはるは猪野の手を引いて入口まで移動した。
「アッ、すんません!」
猪野が店を出たところで誰かとぶつかった。それに気付いた猪野はすぐ謝罪を口にしたが、相手ー男性3人組ーは立ち止まったままその場を動こうとしなかった。
「アレぇ?見た事ある面じゃん?」
「…ハァ?誰?」
「久しぶりじゃねぇか」
覚えのない3人に首を傾げる猪野はぶつかった相手を見、ちはるを見るーちはるは無表情だった。
「…去ね」
「そう冷たい事言うなよ」
「まぁまぁお兄サンたち、ここはお互い帰りましょ」
余計なトラブルを収める様に、猪野が穏やかに声をかけるも、相手も酒が入っているのか引く様子はなかった。
「ぁん?なんだてめぇ」
「猪野っち、相手にしなくて良いから」
「なんだ、また逃げんのかよ?」
「…だから何?私はアンタらみたいなクズと同じ空気を吸いたくないのよ」
「っこのクソが…!」
煽られた男は力任せにちはるを突き飛ばした。ちはるがいくら鍛えているといっても力の男女差は存在する。
「ちはる!」
「…何の騒ぎですか?」
「、七海さん」
ちはるが突き飛ばされた先に七海が現れ、彼女の身体を受け止めた。
「…大丈夫ですか?」
ちはるが頷くと、七海は目の前の男を見据えた。
「猪野くん、警察を呼びましょうか。少々面倒ではありますが、話が通じない様なので」
七海の言葉に男たちは悪態を吐きながらその場を去って行った。猪野がふっと息を吐いた。
「…すみません」
「ケガはありませんか?」
「…はい」
「んじゃ、タクシー拾ってサクッと帰りましょ!」
すっかり酔いが覚めたらしい猪野は早足で通りを抜けて行く。その後を七海とちはるが追う。
2人が猪野に追いついた時にはもう彼はタクシーを捕まえていた。助手席に七海、2人は後部座席に乗り込む。
やっぱり出歩くんじゃなかったーそう思っても仕方がない事を考えながら、ちはるは隣の猪野を見遣る。本当に眠っているのか狸寝入りか、彼はドアの方に身体を預ける様にして目を閉じていた。
ホテルに着いて3人はエレベーターに乗る。それぞれ隣同士の部屋の前で、猪野はいつもと変わらぬ様子でお疲れっした、と2人に声をかけて部屋に入っていく。ちはるもお疲れ様でした、と返事をして部屋に入るーオートロックのドアが閉まった音を聞いて大きく息を吐いた。
「……」
持っていたバッグを下ろし、中から小さなポーチと今し方使ったばかりのカードキーだけを持ってちはるは再び部屋を出た。そのままフロントを抜け、一旦ホテルの外へ出ると、すぐ隣の雑居ビルの非常階段を上り始めた。途中、スマホを持ってくるべきだったかと頭を過ったが、今更戻る気にもなれず、そのまま最上階へ向かう。
幾分風が強い中、ちはるはポーチから煙草を取り出して火を点けた。ふわっと独特の匂いが広がる。外を眺める様に手摺に凭れ、深呼吸のついでに煙草の煙を肺いっぱいに吸い込む。ちはるは自身の気持ちに向き合っていた。考えに没頭していたわけではないが、あまり周囲に注意を払っていなかった。
「っ!」
彼女が立つ非常階段へのドアが突然開き、ちはるは振り向くと本当に驚いたードアから姿を見せたのは七海だった。彼は何も言わずちはるの隣に並ぶ。
「…やはり京都も暑いですね」
ちはるは煙草の火を消そうと携帯灰皿を取り出すも、七海はお構いなく、と彼女を止めた。
「…家入さんの前では吸わない事をお勧めしますよ。かなり無理をして禁煙をしているそうなので」
「……」
七海はちはるを振り返った。ちはるは言葉を探している様にも見える。彼女は煙草に口をつけた。
「…貴女の様子が気になっただけです」
「……」
七海の鼻に煙草の匂いが強く感じられ、煙が消えると匂いも薄くなったーちはるは煙草の火を消した。
「…さっきの連中…、高専の時の同期だったんです」
「ちはる…、これってこっちで合ってる?」
スマホを見ながら先を歩いている猪野がちはるを振り返る。合ってるよ、とちはるが短く答えると、今度は七海が声をかけてきた。
「…気分が優れない様ですが」
ちはるは思わず七海を見上げた。サングラスを外した彼の、色素の薄い瞳が彼女を見ていた。
「…この辺りにはあまり良い思い出がないので」
「くれぐれも無理はしないようにして下さい」
「…そうですね」
会話が切れたタイミングを見計らった様に、店に着いたと猪野が声を上げた。表通りから少し外れた場所にあるせいか、さほど待つ事なく3人は案内された。
注文は猪野に任せ、ちはるは普段より遅いペースでビールを飲んでいた。あまり食欲が出ないちはるとは反対に、猪野も七海も西側の料理を口にする機会が少ない事も手伝ってか、2人の箸はよく進んでいた。
「ちはる、食わないと大きくなれないぞ」
「これ以上大きくなったら困るわよ」
「だいじょぶだって、ちはるはもっと食っても問題ねぇから。これ美味いよ」
差し出された皿を受け取りながら、同期に気を遣わせてしまったとちはるは箸を持った。料理を口に運ぶと、な、美味いだろ、と猪野が声をかけてきて、七海がこちらもどうぞと皿を差し出してくれるー2人に気を遣わせて、こんな陰鬱な気持ちに振り回されて、自分が馬鹿みたいだーちはるはビールをひと息に呷った。
開き直った様な感覚ながら、ちはるは少しだけ気が晴れてきたと自覚していた。程良く酔った猪野の相手をしていると、七海がそろそろホテルに戻りましょう、と声を上げた。時間は22時を回っていた。
「猪野っち、帰るよ」
「私は会計を済ませてきます。…お手数ですが、水野さんは猪野くんを頼みます」
ちはるの返事を待たずに七海は支払いへ向かってしまい、ちはるは猪野の手を引いて入口まで移動した。
「アッ、すんません!」
猪野が店を出たところで誰かとぶつかった。それに気付いた猪野はすぐ謝罪を口にしたが、相手ー男性3人組ーは立ち止まったままその場を動こうとしなかった。
「アレぇ?見た事ある面じゃん?」
「…ハァ?誰?」
「久しぶりじゃねぇか」
覚えのない3人に首を傾げる猪野はぶつかった相手を見、ちはるを見るーちはるは無表情だった。
「…去ね」
「そう冷たい事言うなよ」
「まぁまぁお兄サンたち、ここはお互い帰りましょ」
余計なトラブルを収める様に、猪野が穏やかに声をかけるも、相手も酒が入っているのか引く様子はなかった。
「ぁん?なんだてめぇ」
「猪野っち、相手にしなくて良いから」
「なんだ、また逃げんのかよ?」
「…だから何?私はアンタらみたいなクズと同じ空気を吸いたくないのよ」
「っこのクソが…!」
煽られた男は力任せにちはるを突き飛ばした。ちはるがいくら鍛えているといっても力の男女差は存在する。
「ちはる!」
「…何の騒ぎですか?」
「、七海さん」
ちはるが突き飛ばされた先に七海が現れ、彼女の身体を受け止めた。
「…大丈夫ですか?」
ちはるが頷くと、七海は目の前の男を見据えた。
「猪野くん、警察を呼びましょうか。少々面倒ではありますが、話が通じない様なので」
七海の言葉に男たちは悪態を吐きながらその場を去って行った。猪野がふっと息を吐いた。
「…すみません」
「ケガはありませんか?」
「…はい」
「んじゃ、タクシー拾ってサクッと帰りましょ!」
すっかり酔いが覚めたらしい猪野は早足で通りを抜けて行く。その後を七海とちはるが追う。
2人が猪野に追いついた時にはもう彼はタクシーを捕まえていた。助手席に七海、2人は後部座席に乗り込む。
やっぱり出歩くんじゃなかったーそう思っても仕方がない事を考えながら、ちはるは隣の猪野を見遣る。本当に眠っているのか狸寝入りか、彼はドアの方に身体を預ける様にして目を閉じていた。
ホテルに着いて3人はエレベーターに乗る。それぞれ隣同士の部屋の前で、猪野はいつもと変わらぬ様子でお疲れっした、と2人に声をかけて部屋に入っていく。ちはるもお疲れ様でした、と返事をして部屋に入るーオートロックのドアが閉まった音を聞いて大きく息を吐いた。
「……」
持っていたバッグを下ろし、中から小さなポーチと今し方使ったばかりのカードキーだけを持ってちはるは再び部屋を出た。そのままフロントを抜け、一旦ホテルの外へ出ると、すぐ隣の雑居ビルの非常階段を上り始めた。途中、スマホを持ってくるべきだったかと頭を過ったが、今更戻る気にもなれず、そのまま最上階へ向かう。
幾分風が強い中、ちはるはポーチから煙草を取り出して火を点けた。ふわっと独特の匂いが広がる。外を眺める様に手摺に凭れ、深呼吸のついでに煙草の煙を肺いっぱいに吸い込む。ちはるは自身の気持ちに向き合っていた。考えに没頭していたわけではないが、あまり周囲に注意を払っていなかった。
「っ!」
彼女が立つ非常階段へのドアが突然開き、ちはるは振り向くと本当に驚いたードアから姿を見せたのは七海だった。彼は何も言わずちはるの隣に並ぶ。
「…やはり京都も暑いですね」
ちはるは煙草の火を消そうと携帯灰皿を取り出すも、七海はお構いなく、と彼女を止めた。
「…家入さんの前では吸わない事をお勧めしますよ。かなり無理をして禁煙をしているそうなので」
「……」
七海はちはるを振り返った。ちはるは言葉を探している様にも見える。彼女は煙草に口をつけた。
「…貴女の様子が気になっただけです」
「……」
七海の鼻に煙草の匂いが強く感じられ、煙が消えると匂いも薄くなったーちはるは煙草の火を消した。
「…さっきの連中…、高専の時の同期だったんです」