真偽
猪野くんの同級生のお名前は?
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ずっしりと重たくなった胃を抱えてちはるは七海、猪野と共にホテルに戻って来た。
普段の食事量を上回る量の料理を出され、もっと食べるのを手伝う様猪野に促された結果だった。
「水野さん、大丈夫ですか?」
「…なんとか…」
「あれくらい食うの普通だろ?ちはるが食わな過ぎ」
「…食べ盛りのアンタと一緒にしないでよ」
無理せず休むようにと七海の言葉を受け、部屋に戻ったちはるはベッドに腰を下ろした。酒も入り、横になってしまいたい思いもあるが、今は良くない気がすると思ったちはるは、荷物の中からタブレットを取り出した。
今日の移動中には先程済ませた任務の概要しか目を通せていなかった。このまま重たい胃を抱えて寝るわけにもいかないし、丁度いいータブレットを起動する。
2件目の明日は数年間に倒産した旅館。
3件目は山奥の一軒家。
4件目は山間の廃病院。
5件目ーと、ドアを叩く音が聞こえた。
「…はい?」
ちはるはタブレットをベッドに放ってゆっくりと立ち上がり、ドアを開ける。七海だった。
「…お休みのところ申し訳ありません。明日の任務の等級が上昇した可能性があるとの連絡がありました」
明日の任務ー予定では朝9時に補助監督が迎え来て現場に向かう予定だったはずだと、ちはるは先程頭に入れた概要を思い出した。
「早めに現場へ向かう様にとの指示で、明日7時にはここを出る事にしたいと思います」
ちはるはそんな判断も必要なのかという驚きと戸惑いを腹の奥に押し留め、七海に話の続きを促す。
「補助監督とは現場で合流…出来れば良いところかと。恐らく到着し次第、任務に取り掛かる事になると思いますのでそのつもりで」
「…わかりました」
少しだけ緊張したちはるの声に、サングラスを外していた七海はふっと表情を少しだけ緩めた。
「…まだ1日目が終わったばかりです。不慣れな事に戸惑い、緊張するのは当然の事と思いますが、今回は単独任務ではありません。それぞれの足りないところはカバーし合えば良い、それだけの事です。…今日のところはゆっくりお休みください」
静かにドアが閉められ、ちはるは何とも表現し難い気持ちを抱えてベッドへ戻った。再びタブレットを手に取るも、文字の上を視線が滑るだけで何も頭に入って来ない。タブレットの電源を落とした。
ちはるは徐にトランクに手を伸ばし、小さなポーチを手に部屋を出た。通路の隅にある非常階段を1階分上り、フロアの真ん中に設置された喫煙所に滑り込んだ。
他に利用する人が居ないのか、それとも宿泊客がいないのか、喫煙所内はとても綺麗だった。
煙草を咥えて火を点ける。ひとつ、息を吸って吐く。
ややあって、またひとつ、息を吸って吐く。
頭から血の気が引く様な感覚に、ちはるは煙草を灰皿に押し付けた。ひとつ、息を吐くと喫煙所を出た。
素早く階段を降りて通路に出ると、自分の部屋の前に人影が見えたー猪野だった。
「猪野っち?」
「ちはる!…どこ行ってたんだよ、ノックしても反応ねぇから電話しようと思ってたトコだったんだよ」
「…何かあった?」
「…この不良」
一瞬、ちはるは何を言われているかわからず首を傾げるも、猪野が匂いを嗅ぐ仕草をした事から、それとなく喫煙を咎められているのだと思い至った。
「…もうそんな歳じゃないわよ」
「…少しくらい我慢しろよ。…ところで胃の具合はどーよ?ちょっと辛そうだったから、フロントのオネーサンから胃薬貰ってきたんだよ」
「…。…ありがと」
ちはるは猪野が差し出していた小さな包みを彼の手からするりと抜き取った。少なくともこれで猪野の用事は済んだはずなのだが、彼はその場から動こうとしない。
「…何?…明日の連絡は聞いたよ、」
「大丈夫かよ?」
何が、と言いかけたちはるの口が止まった。猪野が珍しく真剣な顔で、ちはるの想いを見透せないかと彼女をじっと見つめていた。ちはるはひとつ、息を吐いた。
「…これからの任務の事でしょ。…とりあえず苦手意識が抜けてないのは自覚してるから、」
「じゃあ尚更、」
「忘れられないからって、いつまで逃げ回ってるワケにもいかないでしょ。昇級もあるし、…向き合わないと」
猪野は口を噤んだまま、ちはるを見つめている。
「…明日も早いんだから、もう寝よ」
「ちはる、」
「…なんか猪野っちらしくないよ」
そう言ってちはるは猪野の胸板を軽く小突いた。
「あのなぁ、」
「おやすみ!」
ちはるは猪野を遮る様にドアを開錠して部屋に滑り込んだ。オートロックの鍵がかかる音を聞いて、ちはるは大きく息を吐いた。部屋の奥へ進み、冷蔵庫から水を出して猪野が寄越した胃薬をひと息に流し込んだ。
手早く就寝準備を済ませてベッドへと潜り込むと照明を消した。暗く静かな部屋の中、ちはるの意識が無意識に内側へ、ゆっくりと沈んでいく。
学生時代の自分。祓除の現場。任務の失敗ーそして。
ちはるは寝返りを打った。ベッドサイドに置いたスマホを手に取り、時間を見る。23:37ー早く寝なくちゃ。
一度開いた目を、もう一度ゆっくりと閉じた。
普段の食事量を上回る量の料理を出され、もっと食べるのを手伝う様猪野に促された結果だった。
「水野さん、大丈夫ですか?」
「…なんとか…」
「あれくらい食うの普通だろ?ちはるが食わな過ぎ」
「…食べ盛りのアンタと一緒にしないでよ」
無理せず休むようにと七海の言葉を受け、部屋に戻ったちはるはベッドに腰を下ろした。酒も入り、横になってしまいたい思いもあるが、今は良くない気がすると思ったちはるは、荷物の中からタブレットを取り出した。
今日の移動中には先程済ませた任務の概要しか目を通せていなかった。このまま重たい胃を抱えて寝るわけにもいかないし、丁度いいータブレットを起動する。
2件目の明日は数年間に倒産した旅館。
3件目は山奥の一軒家。
4件目は山間の廃病院。
5件目ーと、ドアを叩く音が聞こえた。
「…はい?」
ちはるはタブレットをベッドに放ってゆっくりと立ち上がり、ドアを開ける。七海だった。
「…お休みのところ申し訳ありません。明日の任務の等級が上昇した可能性があるとの連絡がありました」
明日の任務ー予定では朝9時に補助監督が迎え来て現場に向かう予定だったはずだと、ちはるは先程頭に入れた概要を思い出した。
「早めに現場へ向かう様にとの指示で、明日7時にはここを出る事にしたいと思います」
ちはるはそんな判断も必要なのかという驚きと戸惑いを腹の奥に押し留め、七海に話の続きを促す。
「補助監督とは現場で合流…出来れば良いところかと。恐らく到着し次第、任務に取り掛かる事になると思いますのでそのつもりで」
「…わかりました」
少しだけ緊張したちはるの声に、サングラスを外していた七海はふっと表情を少しだけ緩めた。
「…まだ1日目が終わったばかりです。不慣れな事に戸惑い、緊張するのは当然の事と思いますが、今回は単独任務ではありません。それぞれの足りないところはカバーし合えば良い、それだけの事です。…今日のところはゆっくりお休みください」
静かにドアが閉められ、ちはるは何とも表現し難い気持ちを抱えてベッドへ戻った。再びタブレットを手に取るも、文字の上を視線が滑るだけで何も頭に入って来ない。タブレットの電源を落とした。
ちはるは徐にトランクに手を伸ばし、小さなポーチを手に部屋を出た。通路の隅にある非常階段を1階分上り、フロアの真ん中に設置された喫煙所に滑り込んだ。
他に利用する人が居ないのか、それとも宿泊客がいないのか、喫煙所内はとても綺麗だった。
煙草を咥えて火を点ける。ひとつ、息を吸って吐く。
ややあって、またひとつ、息を吸って吐く。
頭から血の気が引く様な感覚に、ちはるは煙草を灰皿に押し付けた。ひとつ、息を吐くと喫煙所を出た。
素早く階段を降りて通路に出ると、自分の部屋の前に人影が見えたー猪野だった。
「猪野っち?」
「ちはる!…どこ行ってたんだよ、ノックしても反応ねぇから電話しようと思ってたトコだったんだよ」
「…何かあった?」
「…この不良」
一瞬、ちはるは何を言われているかわからず首を傾げるも、猪野が匂いを嗅ぐ仕草をした事から、それとなく喫煙を咎められているのだと思い至った。
「…もうそんな歳じゃないわよ」
「…少しくらい我慢しろよ。…ところで胃の具合はどーよ?ちょっと辛そうだったから、フロントのオネーサンから胃薬貰ってきたんだよ」
「…。…ありがと」
ちはるは猪野が差し出していた小さな包みを彼の手からするりと抜き取った。少なくともこれで猪野の用事は済んだはずなのだが、彼はその場から動こうとしない。
「…何?…明日の連絡は聞いたよ、」
「大丈夫かよ?」
何が、と言いかけたちはるの口が止まった。猪野が珍しく真剣な顔で、ちはるの想いを見透せないかと彼女をじっと見つめていた。ちはるはひとつ、息を吐いた。
「…これからの任務の事でしょ。…とりあえず苦手意識が抜けてないのは自覚してるから、」
「じゃあ尚更、」
「忘れられないからって、いつまで逃げ回ってるワケにもいかないでしょ。昇級もあるし、…向き合わないと」
猪野は口を噤んだまま、ちはるを見つめている。
「…明日も早いんだから、もう寝よ」
「ちはる、」
「…なんか猪野っちらしくないよ」
そう言ってちはるは猪野の胸板を軽く小突いた。
「あのなぁ、」
「おやすみ!」
ちはるは猪野を遮る様にドアを開錠して部屋に滑り込んだ。オートロックの鍵がかかる音を聞いて、ちはるは大きく息を吐いた。部屋の奥へ進み、冷蔵庫から水を出して猪野が寄越した胃薬をひと息に流し込んだ。
手早く就寝準備を済ませてベッドへと潜り込むと照明を消した。暗く静かな部屋の中、ちはるの意識が無意識に内側へ、ゆっくりと沈んでいく。
学生時代の自分。祓除の現場。任務の失敗ーそして。
ちはるは寝返りを打った。ベッドサイドに置いたスマホを手に取り、時間を見る。23:37ー早く寝なくちゃ。
一度開いた目を、もう一度ゆっくりと閉じた。