wanderers
猪野くんの同級生のお名前は?
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家へ戻る道すがら、ちはるはバーのマスターに言われた言葉を思い出していた。
ー今度またあの2人を連れておいでよ。忙しいなら1人ずつでも良いし。僕も少し話をしてみたいなー
「…そんな事ってある…?」
マスターとて人間、人に興味を持つのは当然、何らおかしくない事ではあるが、ちはるとしてはよりによって、という気分である。
猪野はともかく、問題は七海である。実際のところ、顔を合わせたのはたったの2回。ちはる自身も彼の人となりをよく知らないのに、第三者が話をしてみたいとは。
「…とりあえず猪野っちに連絡かなぁ…」
正直なところ、皆それほど暇は無いはずで、たまの休みや空いた時間くらいは自分で好きなように時間を使いたいはずだ。同期の猪野はともかく、問題は七海ー同じ事ばかりがぐるぐる回る。
自宅に着くと、ちはるは早々にシャワーを浴びて寝る支度を済ませる。時刻は23時になるところだった。
さすがにこんな時間に連絡するのは失礼だと、また明日にしようとベッドへ潜り込んだ。
ちはるが任務帰りにバーで食事をしてから1週間近くが過ぎていた。祓除の任務か高専での学生の補助業務か、どちらが自分の主たる仕事かわからなくなるくらい、目まぐるしい毎日を過ごしていた。
「うぉーいちはる〜」
名を呼ばれてそちらを見れば猪野が手を振っている。顔を合わせるのは久しぶりだった。
「久しぶり、何してんの?」
「イヤ、そこはまず“お疲れ”じゃない?」
「オツカレサマデゴザイマス」
「棒読みの労いって地味にヘコむんだけど」
猪野と話していて、ちはるはバーのマスターの話を今まで忘れていた事に気が付いた。
「ねぇ猪野っち、この後空いてる?」
「おう、特に予定はねぇよ?」
「じゃあラーメン食べに行こ。女1人でラーメンって結構ハードル高いのよ」
「…昨日ラーメン食ったんだけど…」
「オゴリでビールに車付き、どお?」
「乗った!」
ちはるの業務が終わると、2人は高専を出てちはるの希望していたラーメン店へ向かう。人気店らしく、2人が到着した時には既に列が出来ていた。列に並んでいる間、2人は互いの近況報告をするー何処へ任務へ行ったとか、プライベートで何があったとか。2人が案内されたのはテーブル席、ちはるはラーメン単品、猪野はビールにラーメンチャーハンセットと餃子を注文した。
「は〜美味ぇ〜。悪ぃねちはるサン、ゴチになります」
「どーぞどーぞ、いつもお世話になってますから」
ちはるは猪野がビールのツマミに注文した餃子を摘む。
ビールを飲む猪野を眺めながら、ちはるはバーのマスターの話を思い返していた。問題は七海ー何度反芻したかわからない言葉。ちはるがどう切り出そうか考えていると猪野が口火を切った。
「ちはる、何か悩み?」
「…なんで?」
「昔からそうじゃん。何かあると飯行こうって」
どうやら猪野には見抜かれていたようで、ちはるは苦笑した。彼の気遣いをありがたく思った。
「…悩みっていうかさ、」
「お待たせしました〜!」
「…とりあえず食おうぜ」
「…そうね」
2人は熱々のラーメンを啜った。
会計を済ませて2人は店を出た。入店を待つ列はまだ続いていた。その列を横目に、2人はコインパーキングに停めたちはるの車目指して歩いて行く。
「…で、何かあった?」
「…、こないだ3人で行ったバーに行ったんだけど、」
ちはるはバーのマスターとの話ーマスターが猪野と七海に興味を持ったらしく、話をしてみたいと言っていた、という事を言えば猪野はとても喜んだ。
「俺も常連になれるって事?」
「猪野っちホントポジティブだよね」
「え、だってそーゆー事じゃん?」
考えようによっては間違いではないと言えるが、ちはるの問題は猪野ではなくー
「…問題は七海さんよ。私七海さんの事よく知らないし。猪野っちは全然心配してない」
「ふむ。…んじゃ、今度会った時話してみるわ。で、七海サンの返事をちはるに連絡する、それでどーよ?」
猪野の提案にちはるは頷き、よろしくと念押した。
「つーかさ。連絡先交換すればいいのに、七海サンと」
「は?」
「…なんとなくだけど、七海サン、ちはるの事気に掛けてる感じすんだよな」
「そりゃ猪野っちと私は同期だもん、」
「や、そーゆー感じじゃなくて」
「…どーゆー感じ?」
「なんて言やぁいいかな…。…つーかさ、ちはるとしては七海サンの事どー思ってんの?」
「…、どう、って…」
恐らく猪野からの問い掛けでは過去イチの難問。ちはるは辛うじて声を絞り出した。
「…どう答えたら良い…?」
「あー聞き方悪かったか。どんな人だと思ってんの?」
ちはるは安堵した。個人を“どう思うか”と“どんな人だと思うか”では意味合いがかなり変わってくる。
「…とりあえずの印象としては大人?…で、控えめで聞き上手?…あと、ちょっとミステリアスだよね。生活感殆どないし。まだ2回しか会ってないけど」
「なるほどな。…七海サン、ビックリするくらい紳士よ。んで感情的にならずにいつも冷静、しっかり物事見て判断してさぁ。俺が女なら絶対惚れてるね」
「…うん、猪野っちとほぼ正反対なのは良くわかった」
「誰がガサツで感情的だって?」
がっくりと肩を落とす猪野。
「…ま、そーゆーとこが猪野っちの良いとこ」
ちはるは笑うと、早く帰ろと猪野の背を押した。
ー今度またあの2人を連れておいでよ。忙しいなら1人ずつでも良いし。僕も少し話をしてみたいなー
「…そんな事ってある…?」
マスターとて人間、人に興味を持つのは当然、何らおかしくない事ではあるが、ちはるとしてはよりによって、という気分である。
猪野はともかく、問題は七海である。実際のところ、顔を合わせたのはたったの2回。ちはる自身も彼の人となりをよく知らないのに、第三者が話をしてみたいとは。
「…とりあえず猪野っちに連絡かなぁ…」
正直なところ、皆それほど暇は無いはずで、たまの休みや空いた時間くらいは自分で好きなように時間を使いたいはずだ。同期の猪野はともかく、問題は七海ー同じ事ばかりがぐるぐる回る。
自宅に着くと、ちはるは早々にシャワーを浴びて寝る支度を済ませる。時刻は23時になるところだった。
さすがにこんな時間に連絡するのは失礼だと、また明日にしようとベッドへ潜り込んだ。
ちはるが任務帰りにバーで食事をしてから1週間近くが過ぎていた。祓除の任務か高専での学生の補助業務か、どちらが自分の主たる仕事かわからなくなるくらい、目まぐるしい毎日を過ごしていた。
「うぉーいちはる〜」
名を呼ばれてそちらを見れば猪野が手を振っている。顔を合わせるのは久しぶりだった。
「久しぶり、何してんの?」
「イヤ、そこはまず“お疲れ”じゃない?」
「オツカレサマデゴザイマス」
「棒読みの労いって地味にヘコむんだけど」
猪野と話していて、ちはるはバーのマスターの話を今まで忘れていた事に気が付いた。
「ねぇ猪野っち、この後空いてる?」
「おう、特に予定はねぇよ?」
「じゃあラーメン食べに行こ。女1人でラーメンって結構ハードル高いのよ」
「…昨日ラーメン食ったんだけど…」
「オゴリでビールに車付き、どお?」
「乗った!」
ちはるの業務が終わると、2人は高専を出てちはるの希望していたラーメン店へ向かう。人気店らしく、2人が到着した時には既に列が出来ていた。列に並んでいる間、2人は互いの近況報告をするー何処へ任務へ行ったとか、プライベートで何があったとか。2人が案内されたのはテーブル席、ちはるはラーメン単品、猪野はビールにラーメンチャーハンセットと餃子を注文した。
「は〜美味ぇ〜。悪ぃねちはるサン、ゴチになります」
「どーぞどーぞ、いつもお世話になってますから」
ちはるは猪野がビールのツマミに注文した餃子を摘む。
ビールを飲む猪野を眺めながら、ちはるはバーのマスターの話を思い返していた。問題は七海ー何度反芻したかわからない言葉。ちはるがどう切り出そうか考えていると猪野が口火を切った。
「ちはる、何か悩み?」
「…なんで?」
「昔からそうじゃん。何かあると飯行こうって」
どうやら猪野には見抜かれていたようで、ちはるは苦笑した。彼の気遣いをありがたく思った。
「…悩みっていうかさ、」
「お待たせしました〜!」
「…とりあえず食おうぜ」
「…そうね」
2人は熱々のラーメンを啜った。
会計を済ませて2人は店を出た。入店を待つ列はまだ続いていた。その列を横目に、2人はコインパーキングに停めたちはるの車目指して歩いて行く。
「…で、何かあった?」
「…、こないだ3人で行ったバーに行ったんだけど、」
ちはるはバーのマスターとの話ーマスターが猪野と七海に興味を持ったらしく、話をしてみたいと言っていた、という事を言えば猪野はとても喜んだ。
「俺も常連になれるって事?」
「猪野っちホントポジティブだよね」
「え、だってそーゆー事じゃん?」
考えようによっては間違いではないと言えるが、ちはるの問題は猪野ではなくー
「…問題は七海さんよ。私七海さんの事よく知らないし。猪野っちは全然心配してない」
「ふむ。…んじゃ、今度会った時話してみるわ。で、七海サンの返事をちはるに連絡する、それでどーよ?」
猪野の提案にちはるは頷き、よろしくと念押した。
「つーかさ。連絡先交換すればいいのに、七海サンと」
「は?」
「…なんとなくだけど、七海サン、ちはるの事気に掛けてる感じすんだよな」
「そりゃ猪野っちと私は同期だもん、」
「や、そーゆー感じじゃなくて」
「…どーゆー感じ?」
「なんて言やぁいいかな…。…つーかさ、ちはるとしては七海サンの事どー思ってんの?」
「…、どう、って…」
恐らく猪野からの問い掛けでは過去イチの難問。ちはるは辛うじて声を絞り出した。
「…どう答えたら良い…?」
「あー聞き方悪かったか。どんな人だと思ってんの?」
ちはるは安堵した。個人を“どう思うか”と“どんな人だと思うか”では意味合いがかなり変わってくる。
「…とりあえずの印象としては大人?…で、控えめで聞き上手?…あと、ちょっとミステリアスだよね。生活感殆どないし。まだ2回しか会ってないけど」
「なるほどな。…七海サン、ビックリするくらい紳士よ。んで感情的にならずにいつも冷静、しっかり物事見て判断してさぁ。俺が女なら絶対惚れてるね」
「…うん、猪野っちとほぼ正反対なのは良くわかった」
「誰がガサツで感情的だって?」
がっくりと肩を落とす猪野。
「…ま、そーゆーとこが猪野っちの良いとこ」
ちはるは笑うと、早く帰ろと猪野の背を押した。