決戦、交流会
恵の幼馴染のお名前は?
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狗巻と共に呪霊狩りを優先するよう指示された芙蓉は深い森の中、先を進む狗巻を追っていた。周辺では呪力の衝突が感じられ、それぞれのペアが京都校の学生達とぶつかっているのだろう事が想像される。芙蓉は内心、呪霊相手で良かったと思っていた。あまり口には出来ないが、誰かを傷付けるような事はしたくない。そんな考えは甘いというのは十分理解しているし、これから先はどんな事があるかもわからない。それでもやっぱりー
「すじこ」
狗巻の言葉に芙蓉は足を止めた。相変わらず彼の言葉はよく理解出来ないが、とにかく何かあるのだろうと辺りを伺う。と、1体の呪霊が狗巻の頭上から顔を出す。
「先輩!」
狗巻が反応するよりも早く芙蓉は術式を発現、呪霊の動きを止める。口元を隠すファスナーを開けていた狗巻が呪霊に向けて言葉を放つ。
「潰 れ ろ」
呪霊は忽ちに霧散した。芙蓉はふっと安堵の息を吐いた。伏黒から事前に狗巻の呪言を防ぐ方法を教わっていたものの、いざ本人の側で実践するとなると緊張感が全然違う。上手く出来なかったらスクラップされてしまう可能性が大いにあるというワケだ。
「しゃけしゃけ」
目を細める狗巻は芙蓉の動きを褒めているようだった。ありがとうございます、と芙蓉が頭を下げれば、狗巻は親指を立ててグッドサインを出していた。安堵しながら彼に笑みを向けたところで、芙蓉は周辺の動きが沈静し始めている事に気が付いた。
「…だいぶ静かになりましたね」
と、こちらに向かってくる気配を感じてそちらを振り返れば、伏黒の式神である玉犬だった。
「あれ?黒?」
何かを咥えている事に気付いた芙蓉が玉犬・黒からそれを受け取ったと同時に悲鳴を上げた。人間の物ではないが、スマホを握った何かの腕。
「ツナツナ」
芙蓉が投げ出した腕を狗巻が拾い上げ、スマホを操作する。すると何かを閃いたようで、狗巻は芙蓉に耳を指差して見せるー耳を守れと言うように。呪言を使うのだろうと理解した芙蓉は準備が出来ると彼に合図をする。
『はい、役立たず三輪です』
「眠 れ」
狗巻は通話を切った。こんな使い方もあるのかと感心して芙蓉が見ていると、狗巻は黒をひと撫でして伏黒の元へ戻るように口を開く。黒は影へと戻っていった。
さて、次は何処にー
芙蓉がそう思った刹那、強い呪いの気配が感じられ、狗巻を振り返った。狗巻も気配を感じ取っていたようで頷き合う。少しずつ濃くなってくる呪いの気配に全身の皮膚が粟立つ感覚を堪えるーこっちに来る。
狗巻は口元を覆うファスナーに手をかけ、芙蓉はトンファーを構え、臨戦態勢を取る。
「こんぶ…」
ねっとりと身体に纏わり付くような気配の中、目を凝らす。木の陰から一瞬だけ姿を見せた呪霊はすぐに霧散し、息つく間もなく、その背後から更に大きな気配の呪いが姿を見せる。芙蓉はその呪霊の、今まで見た事もないくらいの大きさに一瞬たじろいだ。
「しゃけ いくら 明太子、…高菜」
ファスナーを開けた狗巻の言葉。芙蓉はその時初めて正確に彼の言葉を理解出来た。
「嫌です。先輩を残して行けるワケないですよ」
強大な呪いということは肌感覚で理解している。が、以前経験した宿儺の気配に比べたらー。芙蓉は微かに震えている指先に力を込め、トンファーを握り締めた。
力の差は最初からわかっていた。祓うとか、退けるとか、そういう問題ではない。とにかく距離を取る。誰でもいいから身内と合流して、応援を求める。特級呪霊相手に今の狗巻と芙蓉にはそれしか方法がなかった。
何処をどう通ったかとか、体力の限界とか、身体の痛みとか。そんな事を考えている状況ではなかった。
後ろから死が迫っている。止まれば、死ぬ。
ただひたすらに走り続け、術式を使う。狗巻の呪言で動きを止め、芙蓉の鏡壁で足止めをして、走る。芙蓉は時折狗巻に反転術式を施す。特級相手に、狗巻への反動は想像以上に大きかった。走りながらの反転術式は上手く呪力が安定しないが、それでもやらないよりはマシだった。反転術式を使うのは芙蓉の方にも身体に負担が掛かる。反転術式を施してもらった狗巻が僅かによろめく芙蓉を支えて走る。その繰り返しだった。
どれくらい走ったか、2人の前に高専の建物が見えてきた。一旦身を隠して体勢を整えられれば、という狗巻の考えを読み取ったように、その呪霊は大きな力を発現させて建物を飲み込もうとしたー成長する植物が周りの物を覆い尽くし踏み潰していくように。
先手を取られた形となった狗巻は芙蓉の手を取り、上へ上へと伸びていく植物の力を利用して建物の屋根へ駆け上がった。長屋のように隣接している建物に高低差はあれど、基本的に屋根の上は障害物がない。2人は屋根の上を再びひた走る。
「狗巻先輩⁉︎っ、芙蓉⁉︎」
掛けられた声を辿れば、中庭のような場所で伏黒と京都校の加茂が対峙しているところだった。その2人にも呪霊の手が迫る。
「逃 げ ろ」
狗巻の放った呪言が2人の脚を走らせた。間一髪で危機を逃れた伏黒と加茂。狗巻と芙蓉は2人を追いかけ、最優先としていた身内との合流に成功した。伏黒、加茂、狗巻と共に改めてその呪霊と対峙した芙蓉。再び震え始めた指先を強く握りしめた。
「すじこ」
狗巻の言葉に芙蓉は足を止めた。相変わらず彼の言葉はよく理解出来ないが、とにかく何かあるのだろうと辺りを伺う。と、1体の呪霊が狗巻の頭上から顔を出す。
「先輩!」
狗巻が反応するよりも早く芙蓉は術式を発現、呪霊の動きを止める。口元を隠すファスナーを開けていた狗巻が呪霊に向けて言葉を放つ。
「潰 れ ろ」
呪霊は忽ちに霧散した。芙蓉はふっと安堵の息を吐いた。伏黒から事前に狗巻の呪言を防ぐ方法を教わっていたものの、いざ本人の側で実践するとなると緊張感が全然違う。上手く出来なかったらスクラップされてしまう可能性が大いにあるというワケだ。
「しゃけしゃけ」
目を細める狗巻は芙蓉の動きを褒めているようだった。ありがとうございます、と芙蓉が頭を下げれば、狗巻は親指を立ててグッドサインを出していた。安堵しながら彼に笑みを向けたところで、芙蓉は周辺の動きが沈静し始めている事に気が付いた。
「…だいぶ静かになりましたね」
と、こちらに向かってくる気配を感じてそちらを振り返れば、伏黒の式神である玉犬だった。
「あれ?黒?」
何かを咥えている事に気付いた芙蓉が玉犬・黒からそれを受け取ったと同時に悲鳴を上げた。人間の物ではないが、スマホを握った何かの腕。
「ツナツナ」
芙蓉が投げ出した腕を狗巻が拾い上げ、スマホを操作する。すると何かを閃いたようで、狗巻は芙蓉に耳を指差して見せるー耳を守れと言うように。呪言を使うのだろうと理解した芙蓉は準備が出来ると彼に合図をする。
『はい、役立たず三輪です』
「眠 れ」
狗巻は通話を切った。こんな使い方もあるのかと感心して芙蓉が見ていると、狗巻は黒をひと撫でして伏黒の元へ戻るように口を開く。黒は影へと戻っていった。
さて、次は何処にー
芙蓉がそう思った刹那、強い呪いの気配が感じられ、狗巻を振り返った。狗巻も気配を感じ取っていたようで頷き合う。少しずつ濃くなってくる呪いの気配に全身の皮膚が粟立つ感覚を堪えるーこっちに来る。
狗巻は口元を覆うファスナーに手をかけ、芙蓉はトンファーを構え、臨戦態勢を取る。
「こんぶ…」
ねっとりと身体に纏わり付くような気配の中、目を凝らす。木の陰から一瞬だけ姿を見せた呪霊はすぐに霧散し、息つく間もなく、その背後から更に大きな気配の呪いが姿を見せる。芙蓉はその呪霊の、今まで見た事もないくらいの大きさに一瞬たじろいだ。
「しゃけ いくら 明太子、…高菜」
ファスナーを開けた狗巻の言葉。芙蓉はその時初めて正確に彼の言葉を理解出来た。
「嫌です。先輩を残して行けるワケないですよ」
強大な呪いということは肌感覚で理解している。が、以前経験した宿儺の気配に比べたらー。芙蓉は微かに震えている指先に力を込め、トンファーを握り締めた。
力の差は最初からわかっていた。祓うとか、退けるとか、そういう問題ではない。とにかく距離を取る。誰でもいいから身内と合流して、応援を求める。特級呪霊相手に今の狗巻と芙蓉にはそれしか方法がなかった。
何処をどう通ったかとか、体力の限界とか、身体の痛みとか。そんな事を考えている状況ではなかった。
後ろから死が迫っている。止まれば、死ぬ。
ただひたすらに走り続け、術式を使う。狗巻の呪言で動きを止め、芙蓉の鏡壁で足止めをして、走る。芙蓉は時折狗巻に反転術式を施す。特級相手に、狗巻への反動は想像以上に大きかった。走りながらの反転術式は上手く呪力が安定しないが、それでもやらないよりはマシだった。反転術式を使うのは芙蓉の方にも身体に負担が掛かる。反転術式を施してもらった狗巻が僅かによろめく芙蓉を支えて走る。その繰り返しだった。
どれくらい走ったか、2人の前に高専の建物が見えてきた。一旦身を隠して体勢を整えられれば、という狗巻の考えを読み取ったように、その呪霊は大きな力を発現させて建物を飲み込もうとしたー成長する植物が周りの物を覆い尽くし踏み潰していくように。
先手を取られた形となった狗巻は芙蓉の手を取り、上へ上へと伸びていく植物の力を利用して建物の屋根へ駆け上がった。長屋のように隣接している建物に高低差はあれど、基本的に屋根の上は障害物がない。2人は屋根の上を再びひた走る。
「狗巻先輩⁉︎っ、芙蓉⁉︎」
掛けられた声を辿れば、中庭のような場所で伏黒と京都校の加茂が対峙しているところだった。その2人にも呪霊の手が迫る。
「逃 げ ろ」
狗巻の放った呪言が2人の脚を走らせた。間一髪で危機を逃れた伏黒と加茂。狗巻と芙蓉は2人を追いかけ、最優先としていた身内との合流に成功した。伏黒、加茂、狗巻と共に改めてその呪霊と対峙した芙蓉。再び震え始めた指先を強く握りしめた。