決戦、交流会
恵の幼馴染のお名前は?
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順調に鍛錬をこなし、芙蓉は体術・術式共にスキルアップしていた。元々の運動神経の良さ、五条家の血筋だろう武術に関するセンスの良さも見られ、提案されたトンファーの扱いにも慣れてきた。体術に関しては“下手踏まなきゃ良い感じ”という真希のお墨付き。発案した術式の運用、及び呪力効率の最適化も上手くいっていた。
9月に入り、いよいよ明日は京都校との交流会。
この日は早めに鍛錬を終え、明日に備えてゆっくり休んでおけという真希の気遣いを受け取った芙蓉、食事と入浴を済ませ、後は寝るだけという状況になった。普段より少し早めにベッドに潜り込むも、全然眠れる気がしない。結局ベッドを抜け出し、何だか不安、どうしようと芙蓉は伏黒の部屋を訪れていた。
「うー…」
「……」
フローリングに敷かれたラグの上、芙蓉は体育座りで意味もなく声を出しては本を読んでいる伏黒に睨まれる、という事を繰り返していた。芙蓉がモヤついた気持ちを上手く言葉に出来ずにいる状態なのは伏黒もわかっているが、何度もやられては文句のひとつも言いたくなる。椅子に座っていた伏黒は小さく息を吐いて本を閉じた。
「…受験の時を思い出すな。高校受験の前の日も今みたいに不安そうな顔をしてたな」
「けど受験と明日の交流会は別じゃん」
「基本的には同じだ。自分の力を信じるしかねぇだろ」
「…それはそうだけど…」
蚊の鳴くような声で芙蓉が呟けば、伏黒はやれやれと立ち上がってラグに座り、芙蓉と向かい合う。
「…何に不安を感じてる?ケガをするかもとか、思い通りにいかないかもとか…、いろいろあると思うが」
「うん…それは両方とも当てはまるかな…。…たぶん、わからないから不安なのかも」
「具体的に、何がわからない?」
絡まった糸を解くように、伏黒は芙蓉の気持ちを丁寧に引き出していく。幼子に接するように急かす事なく、芙蓉が自身の思いを言葉に出来るように。
「…交流会自体、何をやるかっていうのは先輩達が教えてくれたし…、京都校の人たちがどんな感じかっていうのも聞いたし…」
そこでまた芙蓉は考え込み、黙り込む。
「…特に芙蓉が不安がる事は無いように思えるけどな」
俯きがちに考え続けていた芙蓉が顔を上げれば、伏黒は彼女を優しく抱き締めた。
「… 芙蓉は今日まで必死に鍛錬を積んで、術式のコントロールが出来るようになって、任務にも出るようになった。失敗しながらも自分なりに考えて、武具の扱いも術式の扱いも覚えた。真希さんからの評価も良いし、俺は術式も問題ないと思ってる。そこまでがんばったのは間違いなく芙蓉自身だし、がんばった自分に自信を持ってもおかしくないはずだ」
伏黒が紡ぐひと言ひと言に芙蓉は頷いていく。
「それに明日は任務じゃない。仮に何か失敗しても死ぬワケじゃないんだ。気楽に行こうぜ」
漸く芙蓉の顔に笑顔が戻ってきた。いつも通りが大事だ、と伏黒は徐に立ち上がる。程なくして戻ってきた伏黒の手には芙蓉の入学祝いとして買ったペアのネックレス。伏黒はそれをつけて見せる。
「明日は俺もコレをつけてく。それならどうだ?」
ダメ押しのように芙蓉の気持ちを上げる伏黒の言葉に、芙蓉は笑顔で大きく頷いた。
「ありがとう。…やっぱり恵のところに来て良かった。おかげでだいぶ落ち着いてきた気がする。…受験の時もそうだったけど、恵の声かけってすごく落ち着くし安心するんだよね」
「…芙蓉の事は理解してるつもりだ」
「…うん。…恵、」
「ん?」
「いつもありがとう。…何回言っても足りないくらい」
芙蓉は伏黒に笑って見せた。屈託のない笑顔に伏黒は思わず芙蓉を再び抱き締めた。
「感謝するのは俺の方だ。…芙蓉がいつも変わらない態度で居てくれて、気持ちが安定するし…、前に芙蓉が充電って言ってたのが良くわかる気がする」
「またいつでも充電して」
くすくす笑う芙蓉につられ、自然と笑みが溢れる。芙蓉の心配事がなくなって、自分は充電が出来るなんて一石二鳥だな、などと笑い合った。
「さて、そろそろ寝るとするか。せっかく確保出来た時間は大事にしないとな」
「うん。明日はがんばろうね」
「ケガしない程度にな」
2人はまた顔を見合わせ笑い合う。ずっとこの居心地の良い時間を過ごしていたいと名残惜しく思いながら、伏黒は芙蓉を部屋に戻るよう、しっかり眠るよう促した。
芙蓉が部屋へ戻り、静寂が支配する部屋の中、伏黒は日中のミーティングを反芻した。変更が無ければ、東堂を相手にする事になるかもしれない。そうなったら先日の、東堂にやられたケガの分くらいはやり返してやろうなどと思いながら読みかけの本を片付けた。
さぁ明日、と思う反面、気負うことなくいつも通りに、という相反する感情の中、伏黒はベッドに潜り込んだ。
9月に入り、いよいよ明日は京都校との交流会。
この日は早めに鍛錬を終え、明日に備えてゆっくり休んでおけという真希の気遣いを受け取った芙蓉、食事と入浴を済ませ、後は寝るだけという状況になった。普段より少し早めにベッドに潜り込むも、全然眠れる気がしない。結局ベッドを抜け出し、何だか不安、どうしようと芙蓉は伏黒の部屋を訪れていた。
「うー…」
「……」
フローリングに敷かれたラグの上、芙蓉は体育座りで意味もなく声を出しては本を読んでいる伏黒に睨まれる、という事を繰り返していた。芙蓉がモヤついた気持ちを上手く言葉に出来ずにいる状態なのは伏黒もわかっているが、何度もやられては文句のひとつも言いたくなる。椅子に座っていた伏黒は小さく息を吐いて本を閉じた。
「…受験の時を思い出すな。高校受験の前の日も今みたいに不安そうな顔をしてたな」
「けど受験と明日の交流会は別じゃん」
「基本的には同じだ。自分の力を信じるしかねぇだろ」
「…それはそうだけど…」
蚊の鳴くような声で芙蓉が呟けば、伏黒はやれやれと立ち上がってラグに座り、芙蓉と向かい合う。
「…何に不安を感じてる?ケガをするかもとか、思い通りにいかないかもとか…、いろいろあると思うが」
「うん…それは両方とも当てはまるかな…。…たぶん、わからないから不安なのかも」
「具体的に、何がわからない?」
絡まった糸を解くように、伏黒は芙蓉の気持ちを丁寧に引き出していく。幼子に接するように急かす事なく、芙蓉が自身の思いを言葉に出来るように。
「…交流会自体、何をやるかっていうのは先輩達が教えてくれたし…、京都校の人たちがどんな感じかっていうのも聞いたし…」
そこでまた芙蓉は考え込み、黙り込む。
「…特に芙蓉が不安がる事は無いように思えるけどな」
俯きがちに考え続けていた芙蓉が顔を上げれば、伏黒は彼女を優しく抱き締めた。
「… 芙蓉は今日まで必死に鍛錬を積んで、術式のコントロールが出来るようになって、任務にも出るようになった。失敗しながらも自分なりに考えて、武具の扱いも術式の扱いも覚えた。真希さんからの評価も良いし、俺は術式も問題ないと思ってる。そこまでがんばったのは間違いなく芙蓉自身だし、がんばった自分に自信を持ってもおかしくないはずだ」
伏黒が紡ぐひと言ひと言に芙蓉は頷いていく。
「それに明日は任務じゃない。仮に何か失敗しても死ぬワケじゃないんだ。気楽に行こうぜ」
漸く芙蓉の顔に笑顔が戻ってきた。いつも通りが大事だ、と伏黒は徐に立ち上がる。程なくして戻ってきた伏黒の手には芙蓉の入学祝いとして買ったペアのネックレス。伏黒はそれをつけて見せる。
「明日は俺もコレをつけてく。それならどうだ?」
ダメ押しのように芙蓉の気持ちを上げる伏黒の言葉に、芙蓉は笑顔で大きく頷いた。
「ありがとう。…やっぱり恵のところに来て良かった。おかげでだいぶ落ち着いてきた気がする。…受験の時もそうだったけど、恵の声かけってすごく落ち着くし安心するんだよね」
「…芙蓉の事は理解してるつもりだ」
「…うん。…恵、」
「ん?」
「いつもありがとう。…何回言っても足りないくらい」
芙蓉は伏黒に笑って見せた。屈託のない笑顔に伏黒は思わず芙蓉を再び抱き締めた。
「感謝するのは俺の方だ。…芙蓉がいつも変わらない態度で居てくれて、気持ちが安定するし…、前に芙蓉が充電って言ってたのが良くわかる気がする」
「またいつでも充電して」
くすくす笑う芙蓉につられ、自然と笑みが溢れる。芙蓉の心配事がなくなって、自分は充電が出来るなんて一石二鳥だな、などと笑い合った。
「さて、そろそろ寝るとするか。せっかく確保出来た時間は大事にしないとな」
「うん。明日はがんばろうね」
「ケガしない程度にな」
2人はまた顔を見合わせ笑い合う。ずっとこの居心地の良い時間を過ごしていたいと名残惜しく思いながら、伏黒は芙蓉を部屋に戻るよう、しっかり眠るよう促した。
芙蓉が部屋へ戻り、静寂が支配する部屋の中、伏黒は日中のミーティングを反芻した。変更が無ければ、東堂を相手にする事になるかもしれない。そうなったら先日の、東堂にやられたケガの分くらいはやり返してやろうなどと思いながら読みかけの本を片付けた。
さぁ明日、と思う反面、気負うことなくいつも通りに、という相反する感情の中、伏黒はベッドに潜り込んだ。