呪胎戴天、そして
恵の幼馴染のお名前は?
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金曜日、時刻は22時を回ろうというところ。8月も下旬に差し掛かる時期、夜になれば鈴虫たちが賑やかに騒がしく秋の気配を告げ始めている。
五条に直談判して以来、以前よりも祓除の任務に出る機会が増えてきた芙蓉ではあるが、それでも他の学生よりも回数はまだまだ少ない。翌日は授業が休み、なのに同じフロアの2人ー釘崎と真希はそれぞれ任務で不在。
このフロアで音を立てるのは自分だけ、という静かな時間。複数人でお喋りしたり賑やかに過ごすのも良いが、のんびり過ごすのも悪くない。何か本でも読みたいと思い、芙蓉は伏黒の部屋を訪れる事にした。前日から今日の午後まで任務で不在にしていた伏黒は久しぶりに土日が休みだと言っていた。本が読みたいのも事実だが、伏黒の顔も見たいという気持ちもあっての事だった。
1階へ降り、伏黒の部屋のドアをそっとノックする。程なくして声が聞こえ、ドアが開く。
「…お。どうした?」
「本、読みたいなって思って。…まだ起きてる?」
「あぁ、良いぜ」
特に断る理由もないー伏黒はドアを大きく開けた。
「お邪魔します」
自分の部屋とは違うルームフレグランス、それに混じる伏黒の匂い。部屋を何度訪れても慣れる事はなく、芙蓉は少しだけ鼓動が早まるのを感じた。
「どんなのが良いんだ?」
芙蓉に背を向けるようにして本棚を眺めている伏黒。芙蓉は思わずその背に頬を寄せる。
「…なんだ、どうした?」
「ん…、恵の充電」
「なんだよそれ」
伏黒は笑みを浮かべながら振り返った。ほんの少しだけ頬を染めた芙蓉を引き寄せ抱き締めるー久しぶりの感覚に思わず腕に力が入る。芙蓉の匂いに鼻腔をくすぐられ、伏黒は自身とは違う香りに芙蓉を強く意識する。
小さく息を吐くと、腕の中の芙蓉が見上げていた。
「…?、…ん、っ」
伏黒は芙蓉へ口付けた。部屋着の無防備さが何とも言えない感情を煽る。伏黒が離れると、芙蓉は照れ隠しのように少し笑っていて、以前と変わらない彼女に安心感を覚えた。任務で擦り減らした気持ちが癒えるようだ。
「最近無理してないか?」
伏黒が任務に出る前にはなかった芙蓉の顔に増えた痣をなぞって言えば、あ、これ、とまた照れたように笑う。
「…真希さんの横薙ぎを避け損ねちゃって…」
痣だけでよく済んだと思う反面、真希の超人的な反射神経が動きを緩め、衝撃を軽減してくれたのだろう事が窺える。鍛錬にケガは付きもの、わかっていても心配になるのはどうしようもない。
「ケガには注意しろよ、任務にも出られなくなる」
「うん、そうなんだけど…、やっぱり早くみんなに追い付きたいし…、がんばらないと」
「…」
芙蓉の想いを聞かされる度、伏黒は毎回何とも言えない複雑な気持ちになる。術師としての成長を応援しているし、彼女の成長が喜ばしいのは間違いないのだが、それに伴い危険に遭遇する可能性も高くなってくる。
「恵?」
伏黒はベッドに腰を下ろした。
「…芙蓉がレベルアップするのは良い事、嬉しい事なのは間違いねぇけど、」
そのまま後ろに倒れ込み、伏黒はうん、と伸びをする。
「…やっぱり心配になるんだよな」
そう言って芙蓉の様子を窺えば、戸惑っているのが手に取るようにわかった。俯く芙蓉に少し言い過ぎたかと、伏黒は彼女に向けて手招きをした。
「っひゃぁ!」
予想もしなかった出来事に芙蓉は頓狂な声を上げた。伏黒に手を引かれてバランスを崩し、伏黒の上に倒れ込むー彼を見下ろす状況に混乱していた。
「や、恵っ、ヤダ、重いから、」
「そんなにヤワじゃねぇ。…俺にも芙蓉の充電させろ」
ジタバタと暴れる芙蓉を宥め、観念したようにおとなしくなった彼女を伏黒は確りと抱き締めた。
暫くの間、抱き枕さながら伏黒の腕の中でじっとしていた芙蓉は、ね、恵、と声をかける。
「ん」
「…恵もさ、…その、私の充電したいとか…、そう思う時って、あるの?」
「…なかったらこんな事しねぇよ」
「どんな時?」
「秘密」
そう言う伏黒の口元は笑いを堪えているようにも見えて、つられるように笑いが込み上げ芙蓉は吹き出した。
「じゃあ私も秘密にしとこ」
「…教えてくれるのか?」
「恵が教えてくれたらね」
芙蓉は笑いながら伏黒の胸に擦り寄った。規則的に打つ鼓動を心地良く思うと同時に、絶対に失いたくない存在だと再認識する。自分の術式を磨くのは勿論、誰もが使えるわけではない他者への反転術式も確実に扱えるようにしなくては宝の持ち腐れ、家入に師事しなくてはー。
「何考えてんだよ?」
「ん…、内緒」
ふふ、と笑ってみせる芙蓉に伏黒は口を尖らせ拗ねて見せる。他の誰かの前では絶対にそんな事をしないのに、自分の前では様々な表情を見せてくれるーそんな彼に対し、堪らなく愛おしさが膨らんできて、芙蓉は身体を起こして伏黒を見つめる。
「…ん?」
何も言わない芙蓉に何か言いかけた伏黒。
「…!」
前触れもなく、芙蓉は伏黒の唇にそっと触れるだけのキスをした。突然の芙蓉の行動に驚いた様子の伏黒だったが、はにかむ彼女が可愛くて。
「っ、たく」
伏黒は芙蓉を身体に乗せたまま起き上がり、お返しと言わんばかりに彼女を抱き締め、何度も口付けた。みるみる内に顔を赤くした芙蓉に悪戯心が芽生えた伏黒は、そのまま唇を滑らせ彼女の首にも口付ける。
「っ、だめっ!」
真っ赤な顔で抵抗して見せれば、伏黒は笑っていた。
「こんなトコで襲うつもりはねぇから安心しろ」
そう耳元で囁く伏黒に安堵しつつ、自分の中に湧き起こってしまった複雑な感情にも気が付き、芙蓉は戸惑いと共に大きく息を吐いた。赤くなった顔を隠すように、芙蓉は伏黒の胸元へ顔を埋める。少々悪戯が過ぎたかと、伏黒は口元を緩めながらも芙蓉を優しく抱き締めた。
五条に直談判して以来、以前よりも祓除の任務に出る機会が増えてきた芙蓉ではあるが、それでも他の学生よりも回数はまだまだ少ない。翌日は授業が休み、なのに同じフロアの2人ー釘崎と真希はそれぞれ任務で不在。
このフロアで音を立てるのは自分だけ、という静かな時間。複数人でお喋りしたり賑やかに過ごすのも良いが、のんびり過ごすのも悪くない。何か本でも読みたいと思い、芙蓉は伏黒の部屋を訪れる事にした。前日から今日の午後まで任務で不在にしていた伏黒は久しぶりに土日が休みだと言っていた。本が読みたいのも事実だが、伏黒の顔も見たいという気持ちもあっての事だった。
1階へ降り、伏黒の部屋のドアをそっとノックする。程なくして声が聞こえ、ドアが開く。
「…お。どうした?」
「本、読みたいなって思って。…まだ起きてる?」
「あぁ、良いぜ」
特に断る理由もないー伏黒はドアを大きく開けた。
「お邪魔します」
自分の部屋とは違うルームフレグランス、それに混じる伏黒の匂い。部屋を何度訪れても慣れる事はなく、芙蓉は少しだけ鼓動が早まるのを感じた。
「どんなのが良いんだ?」
芙蓉に背を向けるようにして本棚を眺めている伏黒。芙蓉は思わずその背に頬を寄せる。
「…なんだ、どうした?」
「ん…、恵の充電」
「なんだよそれ」
伏黒は笑みを浮かべながら振り返った。ほんの少しだけ頬を染めた芙蓉を引き寄せ抱き締めるー久しぶりの感覚に思わず腕に力が入る。芙蓉の匂いに鼻腔をくすぐられ、伏黒は自身とは違う香りに芙蓉を強く意識する。
小さく息を吐くと、腕の中の芙蓉が見上げていた。
「…?、…ん、っ」
伏黒は芙蓉へ口付けた。部屋着の無防備さが何とも言えない感情を煽る。伏黒が離れると、芙蓉は照れ隠しのように少し笑っていて、以前と変わらない彼女に安心感を覚えた。任務で擦り減らした気持ちが癒えるようだ。
「最近無理してないか?」
伏黒が任務に出る前にはなかった芙蓉の顔に増えた痣をなぞって言えば、あ、これ、とまた照れたように笑う。
「…真希さんの横薙ぎを避け損ねちゃって…」
痣だけでよく済んだと思う反面、真希の超人的な反射神経が動きを緩め、衝撃を軽減してくれたのだろう事が窺える。鍛錬にケガは付きもの、わかっていても心配になるのはどうしようもない。
「ケガには注意しろよ、任務にも出られなくなる」
「うん、そうなんだけど…、やっぱり早くみんなに追い付きたいし…、がんばらないと」
「…」
芙蓉の想いを聞かされる度、伏黒は毎回何とも言えない複雑な気持ちになる。術師としての成長を応援しているし、彼女の成長が喜ばしいのは間違いないのだが、それに伴い危険に遭遇する可能性も高くなってくる。
「恵?」
伏黒はベッドに腰を下ろした。
「…芙蓉がレベルアップするのは良い事、嬉しい事なのは間違いねぇけど、」
そのまま後ろに倒れ込み、伏黒はうん、と伸びをする。
「…やっぱり心配になるんだよな」
そう言って芙蓉の様子を窺えば、戸惑っているのが手に取るようにわかった。俯く芙蓉に少し言い過ぎたかと、伏黒は彼女に向けて手招きをした。
「っひゃぁ!」
予想もしなかった出来事に芙蓉は頓狂な声を上げた。伏黒に手を引かれてバランスを崩し、伏黒の上に倒れ込むー彼を見下ろす状況に混乱していた。
「や、恵っ、ヤダ、重いから、」
「そんなにヤワじゃねぇ。…俺にも芙蓉の充電させろ」
ジタバタと暴れる芙蓉を宥め、観念したようにおとなしくなった彼女を伏黒は確りと抱き締めた。
暫くの間、抱き枕さながら伏黒の腕の中でじっとしていた芙蓉は、ね、恵、と声をかける。
「ん」
「…恵もさ、…その、私の充電したいとか…、そう思う時って、あるの?」
「…なかったらこんな事しねぇよ」
「どんな時?」
「秘密」
そう言う伏黒の口元は笑いを堪えているようにも見えて、つられるように笑いが込み上げ芙蓉は吹き出した。
「じゃあ私も秘密にしとこ」
「…教えてくれるのか?」
「恵が教えてくれたらね」
芙蓉は笑いながら伏黒の胸に擦り寄った。規則的に打つ鼓動を心地良く思うと同時に、絶対に失いたくない存在だと再認識する。自分の術式を磨くのは勿論、誰もが使えるわけではない他者への反転術式も確実に扱えるようにしなくては宝の持ち腐れ、家入に師事しなくてはー。
「何考えてんだよ?」
「ん…、内緒」
ふふ、と笑ってみせる芙蓉に伏黒は口を尖らせ拗ねて見せる。他の誰かの前では絶対にそんな事をしないのに、自分の前では様々な表情を見せてくれるーそんな彼に対し、堪らなく愛おしさが膨らんできて、芙蓉は身体を起こして伏黒を見つめる。
「…ん?」
何も言わない芙蓉に何か言いかけた伏黒。
「…!」
前触れもなく、芙蓉は伏黒の唇にそっと触れるだけのキスをした。突然の芙蓉の行動に驚いた様子の伏黒だったが、はにかむ彼女が可愛くて。
「っ、たく」
伏黒は芙蓉を身体に乗せたまま起き上がり、お返しと言わんばかりに彼女を抱き締め、何度も口付けた。みるみる内に顔を赤くした芙蓉に悪戯心が芽生えた伏黒は、そのまま唇を滑らせ彼女の首にも口付ける。
「っ、だめっ!」
真っ赤な顔で抵抗して見せれば、伏黒は笑っていた。
「こんなトコで襲うつもりはねぇから安心しろ」
そう耳元で囁く伏黒に安堵しつつ、自分の中に湧き起こってしまった複雑な感情にも気が付き、芙蓉は戸惑いと共に大きく息を吐いた。赤くなった顔を隠すように、芙蓉は伏黒の胸元へ顔を埋める。少々悪戯が過ぎたかと、伏黒は口元を緩めながらも芙蓉を優しく抱き締めた。