呪胎戴天、そして
恵の幼馴染のお名前は?
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クラスメイトが1人少なくなった事にも漸く慣れ始めた8月。芙蓉は術式の扱いが格段に上達し、安定して思い通りに発現出来るまでになっていた。術式が安定してくれば気になってくるのが体術面。こちらは相変わらず真希にシゴかれるという日々を送っていた。
勿論鍛錬の合間にも祓除の任務は入ってくる。初夏が繁忙期と言われているのもあって、校内での鍛錬に出てくるのが2人だけ、という日もあるくらいだ。
そんなある日の事、扉をノックする為に握った拳に力を入れようとした刹那、苛立ったような女の声が通路に響き渡った。伏黒は2日前に片付けた任務の報告書を提出しに事務室を訪れていた。
「どうして私は任務に出してもらえないの?いつ聞いてもまた今度って、そればっかりじゃない!」
「タイミングが合わないだけだって、気にし過ぎぃ」
伏黒は扉に背を向けた。聞こえてきた女の声が幼馴染のものだとわかったが、自分が介入して良い話ではないし、何より芙蓉自身の問題だと判断した。恐らく小憎らしい担任は自身の存在に気付いていると思うが、出直そうと自室へと戻る事にした。
部屋の外に居ながら些か居心地の悪さを感じた伏黒よりも気の毒なのが、2人と同じ事務室内に居合わせた伊地知だった。補助監督として術師の割り当て、遣り繰りを司っている彼が戦々恐々、細い身体を更に縮こまらせているのは言うまでも無い。
「術式だってコントロール出来るようになったし、祓除もできるのに、任務に出られないっておかしいよ!」
芙蓉が入学した当初から彼女の術式がどのようなものか知らされ、祓除の任務から外すよう五条に強く言われてその通りにやっているだけなのに、伊地知は自身が責められているような気分になって胃痛を堪えていた。
「わかったわかった、仕方ないねぇ」
軽い調子で言いながら五条は手近にある書類を手に取り、任務の予定を確認していく。そんな様子に胃痛が増すのを感じた伊地知は、思わずデスクに常備している胃薬に手を伸ばした。
「伊地知ぃ、明後日の七海の任務さぁ、」
「っはい⁉︎」
薬を流し込んだところで声をかけられ、慌てて返事をして軽く咳き込んだ。そんな伊地知に構う事なく、五条はスマホを取り出し操作すると耳へ当てる。
「芙蓉も同行させるから。…あ、七海?明後日の任務さぁ、僕の可愛い生徒も同行する事になったからよろしくねぇ。詳しい話は伊地知にでも聞いて。それじゃね〜」
電話口で何か声が聞こえたが、五条はそのまま通話を切って芙蓉に向き直った。
「聞いてたね?明後日、七海と任務!」
有無を言わせぬ物言いに、芙蓉は面食らって何も言えなかった。五条は文字通り突っ立ったままの芙蓉を事務室から送り出す。程なくして伊地知のスマホに着信が入るー彼の胃痛はピークを迎えていた。
「お疲れ様です、伊地知です。…あぁ、七海さん…」
スマホを耳に当てたまま、伊地知はキリキリ痛む胃を労わるように胃部に手を添えながら五条を見遣る。そんな伊地知の、恨めしさの籠った視線に気付いた五条は、用事を思い出したなどとわざとらしい言い訳をブツブツ言いながら立ち上がる。
「伊地知、七海には“本人に直接聞け”って言っといて」
その方がいろいろ話してくれると思うから、とだけ残して軽快な足取りで事務室を出て行ってしまった。
『…伊地知くん?聞いてますか?』
「あ、すみません…、先程の、五条さんの件ですよね」
『えぇ。どういう事ですか?』
「申し訳ありません、私も詳しく聞かされていないんですが…」
か細く消え入りそうな伊地知の声に、七海は小さく息を吐いた。何度も謝罪を口にする伊地知に、毎度ながら五条に振り回されっぱなしで気の毒だと彼に同情した。
『ただ、今回同行するのは高峰さんでして…。五条さんが、本人に直接聞くようにと仰っていました。その方がいろいろ話してくれると思うから、と…』
七海は以前高専内で会った、五条のハトコだという女子生徒の顔を思い出した。
「…。そうですか、わかりました」
では当日、と通話を切る。七海はため息を吐くと、五条からの電話で中断された読みかけの本に手を伸ばした。
一方、部屋から追い出された格好となった芙蓉は、自分が言い出した事ながら突然の決定に戸惑い、伊地知と七海に申し訳なさを感じていた。経緯はともかく決まってしまった以上、やるからには全力で取り組まなければと自身を奮い立たせた。
任務当日。予定していた時間よりも早く起きた芙蓉は幾分緊張していた。任務に出るのは7月の少年院以来、そして同行者は七海。以前高専内で話をしたが、ビジネスライクで少々とっつきにくいという印象を受けた。が、ただそれだけで、七海は決して悪い人ではない、むしろ真面目で物事に対し真摯に向き合い、信頼できる人だというのはよくわかっている。それでも何処か落ち着かないのは、恐らく久しぶりの任務のせいだろう。予定されている出発時刻よりも早い時間ではあるが、準備を済ませた芙蓉は首から下げたネックレスに任務の成功と無事を願い、ひと撫でして静かに部屋を出た。
勿論鍛錬の合間にも祓除の任務は入ってくる。初夏が繁忙期と言われているのもあって、校内での鍛錬に出てくるのが2人だけ、という日もあるくらいだ。
そんなある日の事、扉をノックする為に握った拳に力を入れようとした刹那、苛立ったような女の声が通路に響き渡った。伏黒は2日前に片付けた任務の報告書を提出しに事務室を訪れていた。
「どうして私は任務に出してもらえないの?いつ聞いてもまた今度って、そればっかりじゃない!」
「タイミングが合わないだけだって、気にし過ぎぃ」
伏黒は扉に背を向けた。聞こえてきた女の声が幼馴染のものだとわかったが、自分が介入して良い話ではないし、何より芙蓉自身の問題だと判断した。恐らく小憎らしい担任は自身の存在に気付いていると思うが、出直そうと自室へと戻る事にした。
部屋の外に居ながら些か居心地の悪さを感じた伏黒よりも気の毒なのが、2人と同じ事務室内に居合わせた伊地知だった。補助監督として術師の割り当て、遣り繰りを司っている彼が戦々恐々、細い身体を更に縮こまらせているのは言うまでも無い。
「術式だってコントロール出来るようになったし、祓除もできるのに、任務に出られないっておかしいよ!」
芙蓉が入学した当初から彼女の術式がどのようなものか知らされ、祓除の任務から外すよう五条に強く言われてその通りにやっているだけなのに、伊地知は自身が責められているような気分になって胃痛を堪えていた。
「わかったわかった、仕方ないねぇ」
軽い調子で言いながら五条は手近にある書類を手に取り、任務の予定を確認していく。そんな様子に胃痛が増すのを感じた伊地知は、思わずデスクに常備している胃薬に手を伸ばした。
「伊地知ぃ、明後日の七海の任務さぁ、」
「っはい⁉︎」
薬を流し込んだところで声をかけられ、慌てて返事をして軽く咳き込んだ。そんな伊地知に構う事なく、五条はスマホを取り出し操作すると耳へ当てる。
「芙蓉も同行させるから。…あ、七海?明後日の任務さぁ、僕の可愛い生徒も同行する事になったからよろしくねぇ。詳しい話は伊地知にでも聞いて。それじゃね〜」
電話口で何か声が聞こえたが、五条はそのまま通話を切って芙蓉に向き直った。
「聞いてたね?明後日、七海と任務!」
有無を言わせぬ物言いに、芙蓉は面食らって何も言えなかった。五条は文字通り突っ立ったままの芙蓉を事務室から送り出す。程なくして伊地知のスマホに着信が入るー彼の胃痛はピークを迎えていた。
「お疲れ様です、伊地知です。…あぁ、七海さん…」
スマホを耳に当てたまま、伊地知はキリキリ痛む胃を労わるように胃部に手を添えながら五条を見遣る。そんな伊地知の、恨めしさの籠った視線に気付いた五条は、用事を思い出したなどとわざとらしい言い訳をブツブツ言いながら立ち上がる。
「伊地知、七海には“本人に直接聞け”って言っといて」
その方がいろいろ話してくれると思うから、とだけ残して軽快な足取りで事務室を出て行ってしまった。
『…伊地知くん?聞いてますか?』
「あ、すみません…、先程の、五条さんの件ですよね」
『えぇ。どういう事ですか?』
「申し訳ありません、私も詳しく聞かされていないんですが…」
か細く消え入りそうな伊地知の声に、七海は小さく息を吐いた。何度も謝罪を口にする伊地知に、毎度ながら五条に振り回されっぱなしで気の毒だと彼に同情した。
『ただ、今回同行するのは高峰さんでして…。五条さんが、本人に直接聞くようにと仰っていました。その方がいろいろ話してくれると思うから、と…』
七海は以前高専内で会った、五条のハトコだという女子生徒の顔を思い出した。
「…。そうですか、わかりました」
では当日、と通話を切る。七海はため息を吐くと、五条からの電話で中断された読みかけの本に手を伸ばした。
一方、部屋から追い出された格好となった芙蓉は、自分が言い出した事ながら突然の決定に戸惑い、伊地知と七海に申し訳なさを感じていた。経緯はともかく決まってしまった以上、やるからには全力で取り組まなければと自身を奮い立たせた。
任務当日。予定していた時間よりも早く起きた芙蓉は幾分緊張していた。任務に出るのは7月の少年院以来、そして同行者は七海。以前高専内で話をしたが、ビジネスライクで少々とっつきにくいという印象を受けた。が、ただそれだけで、七海は決して悪い人ではない、むしろ真面目で物事に対し真摯に向き合い、信頼できる人だというのはよくわかっている。それでも何処か落ち着かないのは、恐らく久しぶりの任務のせいだろう。予定されている出発時刻よりも早い時間ではあるが、準備を済ませた芙蓉は首から下げたネックレスに任務の成功と無事を願い、ひと撫でして静かに部屋を出た。