呪胎戴天、そして
恵の幼馴染のお名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私は七海建人、初めまして」
愛想もなく、だからと言って威圧感を感じさせるわけでもない。淡々と言葉を紡いでいるという印象だ。
「俺、猪野琢真、よろしく!」
七海とは対照的に人懐っこい笑顔で元気が良く、好青年といった体で、本当に呪術師なのだろうかと思える。
「私、高峰芙蓉と言います。先日は助けていただき、ありがとうございました。…お礼を言えずじまいだったので、お会い出来て本当に良かったです」
芙蓉が丁寧に頭を下げると、七海はいえ、と短く言う。
「私たちは呪術師としての任務を果たしただけです」
七海の言葉に間違いはないのだが、愛想のない言葉に芙蓉がどう返事をしていいか、頭の中の持てる限りの言葉を探していると、タイミングが良いのか悪いのか、スマホの着信音が響く。
「すみません、失礼します」
伊地知が何度も頭を下げながらスマホを取り出し、少し離れた場所で通話を繋ぎ話し始めた。相変わらず忙しそうな伊地知を横目に、芙蓉はこれからどうしよう、と本格的に悩み始めた。
「畏まる事はないですよ。私も彼も高専の出身です。今後任務に出る事があれば、また会う事もあるでしょう」
芙蓉の心情を察したかのように、七海は先程よりもほんの少しだけ柔らかい声で言った。
「…それが私、最近やっと術式のコントロールが出来るようになったばかりで…」
「最初から完璧に出来る人など、」
不意に七海の言葉が止まり、芙蓉は改めて七海の顔を見上げた。相変わらずサングラスで表情を読み取れないものの、先程よりも険しい顔で芙蓉の後方を見ている。何事かと芙蓉も振り返ろうとした。
「ちょっと七海ぃ〜、僕の可愛い生徒に手を出さないでくれる〜?」
芙蓉が振り返るよりも早く、両肩に手が乗り、頭の上から声が降ってきたーこんな事をするのは彼しかいない。
「あ、五条サン、お疲れ様っす!」
「変な言い方やめてよ」
「ただ話をしていただけです」
三者三様、突如現れた五条に言葉を投げかける。
「珍しいね〜、ていうか芙蓉と接点あったっけ?」
「私が高専入る前、呪霊に襲われた時に、」
「あぁ〜、アレね〜、珍しく七海が受けた任務でミスったってやつ」
「…アレハオレノセイデス」
随分前の出来事を今日1日で2人に突かれた猪野は遠い目をして呟く。そんな彼を五条も七海も気遣う様子はなく、芙蓉は少しだけ猪野を気の毒に思った。
「いや〜、僕のハトコが世話になったねぇ」
「えっマジ?」
一瞬にして猪野が会話に戻ってきた。猪野はまじまじと芙蓉と五条の顔を見比べる。
「ん〜似てるっちゃ似てる?」
「猪野くん。人の顔をジロジロ見るのは不躾ですよ。
…高峰さんは五条家の血縁であると」
「まぁそゆこと。ま、芙蓉に五条だからどうっていうのは関係ないから、面倒見てあげてよ」
「あの…お話し中、誠に申し訳ないのですが」
通話を終えたらしい伊地知が青ざめた顔で声をかけた。
「…都内で任務に出ている術師が負傷し、その応援要請の依頼がありまして…」
「あー、僕は忙しいから無理無理」
さっさと五条はその場を離れて何処かへ行ってしまった。五条の行動に呆然とする芙蓉、泣きそうな顔の伊地知。七海はため息を吐いた。
「仕方ありませんね。…猪野くんはどうしますか?」
「七海サンが行くなら当然行きますよ」
「ありがとうございます…!」
伊地知は安堵と喜びの表情で、車を準備してきますと走り出した。では行きましょう、とその後を追うように七海が、続いて猪野も歩き出す。
「あ、気を付けてください、ね」
「サンキュー!」
軽い調子で返事をする猪野。七海は足を止めて振り返った。芙蓉は首を傾げた。
「貴女も無理をしないように。痣だらけの顔では周りも心配しますよ。…ではこれで」
七海の言葉を聞いて芙蓉はふと、自身の格好に思い至った。体術の鍛錬でケガをして、そのまま汗まみれ土埃まみれの姿で家入に手当てをしてもらいー。
「…っ」
自身の軽率な行動を改めて後悔した。汚い格好で命の恩人へ挨拶をしてしまい、芙蓉は顔に熱が集まるのを感じた。まさに穴があったら入りたいー芙蓉は一目散に寮の部屋を目指して駆け出した。もう気になってしまったらどうにも恥ずかしくて、誰にも会いたくないと息を切らせて寮棟へ飛び込んだ。とりあえずここまでくれば、と思ってひと息つく。
「…大丈夫か?」
聞き慣れた声ながら、芙蓉は飛び上がった。自販機で飲み物を買ったところだったらしい伏黒が取り乱した様子の芙蓉に声をかける。
「いやー!」
伏黒を振り返る事なく芙蓉は階段を駆け上がった。とりあえずシャワーを浴びて、落ち着いてから謝ろうー部屋に入るとすぐシャワールームへ飛び込んだ。
「…は…?」
顔を合わせただけ、声をかけただけの芙蓉に拒否される格好となった伏黒は彼女に何か悪い事をしてしまったかと本気で悩み、暫くその場に呆然と立ち尽くしていた。通りかかった狗巻に声をかけられてやっと部屋へ戻り、落ち着いた芙蓉から事情を聞かされるまで、かなり落ち込んでいたとかいないとか。
愛想もなく、だからと言って威圧感を感じさせるわけでもない。淡々と言葉を紡いでいるという印象だ。
「俺、猪野琢真、よろしく!」
七海とは対照的に人懐っこい笑顔で元気が良く、好青年といった体で、本当に呪術師なのだろうかと思える。
「私、高峰芙蓉と言います。先日は助けていただき、ありがとうございました。…お礼を言えずじまいだったので、お会い出来て本当に良かったです」
芙蓉が丁寧に頭を下げると、七海はいえ、と短く言う。
「私たちは呪術師としての任務を果たしただけです」
七海の言葉に間違いはないのだが、愛想のない言葉に芙蓉がどう返事をしていいか、頭の中の持てる限りの言葉を探していると、タイミングが良いのか悪いのか、スマホの着信音が響く。
「すみません、失礼します」
伊地知が何度も頭を下げながらスマホを取り出し、少し離れた場所で通話を繋ぎ話し始めた。相変わらず忙しそうな伊地知を横目に、芙蓉はこれからどうしよう、と本格的に悩み始めた。
「畏まる事はないですよ。私も彼も高専の出身です。今後任務に出る事があれば、また会う事もあるでしょう」
芙蓉の心情を察したかのように、七海は先程よりもほんの少しだけ柔らかい声で言った。
「…それが私、最近やっと術式のコントロールが出来るようになったばかりで…」
「最初から完璧に出来る人など、」
不意に七海の言葉が止まり、芙蓉は改めて七海の顔を見上げた。相変わらずサングラスで表情を読み取れないものの、先程よりも険しい顔で芙蓉の後方を見ている。何事かと芙蓉も振り返ろうとした。
「ちょっと七海ぃ〜、僕の可愛い生徒に手を出さないでくれる〜?」
芙蓉が振り返るよりも早く、両肩に手が乗り、頭の上から声が降ってきたーこんな事をするのは彼しかいない。
「あ、五条サン、お疲れ様っす!」
「変な言い方やめてよ」
「ただ話をしていただけです」
三者三様、突如現れた五条に言葉を投げかける。
「珍しいね〜、ていうか芙蓉と接点あったっけ?」
「私が高専入る前、呪霊に襲われた時に、」
「あぁ〜、アレね〜、珍しく七海が受けた任務でミスったってやつ」
「…アレハオレノセイデス」
随分前の出来事を今日1日で2人に突かれた猪野は遠い目をして呟く。そんな彼を五条も七海も気遣う様子はなく、芙蓉は少しだけ猪野を気の毒に思った。
「いや〜、僕のハトコが世話になったねぇ」
「えっマジ?」
一瞬にして猪野が会話に戻ってきた。猪野はまじまじと芙蓉と五条の顔を見比べる。
「ん〜似てるっちゃ似てる?」
「猪野くん。人の顔をジロジロ見るのは不躾ですよ。
…高峰さんは五条家の血縁であると」
「まぁそゆこと。ま、芙蓉に五条だからどうっていうのは関係ないから、面倒見てあげてよ」
「あの…お話し中、誠に申し訳ないのですが」
通話を終えたらしい伊地知が青ざめた顔で声をかけた。
「…都内で任務に出ている術師が負傷し、その応援要請の依頼がありまして…」
「あー、僕は忙しいから無理無理」
さっさと五条はその場を離れて何処かへ行ってしまった。五条の行動に呆然とする芙蓉、泣きそうな顔の伊地知。七海はため息を吐いた。
「仕方ありませんね。…猪野くんはどうしますか?」
「七海サンが行くなら当然行きますよ」
「ありがとうございます…!」
伊地知は安堵と喜びの表情で、車を準備してきますと走り出した。では行きましょう、とその後を追うように七海が、続いて猪野も歩き出す。
「あ、気を付けてください、ね」
「サンキュー!」
軽い調子で返事をする猪野。七海は足を止めて振り返った。芙蓉は首を傾げた。
「貴女も無理をしないように。痣だらけの顔では周りも心配しますよ。…ではこれで」
七海の言葉を聞いて芙蓉はふと、自身の格好に思い至った。体術の鍛錬でケガをして、そのまま汗まみれ土埃まみれの姿で家入に手当てをしてもらいー。
「…っ」
自身の軽率な行動を改めて後悔した。汚い格好で命の恩人へ挨拶をしてしまい、芙蓉は顔に熱が集まるのを感じた。まさに穴があったら入りたいー芙蓉は一目散に寮の部屋を目指して駆け出した。もう気になってしまったらどうにも恥ずかしくて、誰にも会いたくないと息を切らせて寮棟へ飛び込んだ。とりあえずここまでくれば、と思ってひと息つく。
「…大丈夫か?」
聞き慣れた声ながら、芙蓉は飛び上がった。自販機で飲み物を買ったところだったらしい伏黒が取り乱した様子の芙蓉に声をかける。
「いやー!」
伏黒を振り返る事なく芙蓉は階段を駆け上がった。とりあえずシャワーを浴びて、落ち着いてから謝ろうー部屋に入るとすぐシャワールームへ飛び込んだ。
「…は…?」
顔を合わせただけ、声をかけただけの芙蓉に拒否される格好となった伏黒は彼女に何か悪い事をしてしまったかと本気で悩み、暫くその場に呆然と立ち尽くしていた。通りかかった狗巻に声をかけられてやっと部屋へ戻り、落ち着いた芙蓉から事情を聞かされるまで、かなり落ち込んでいたとかいないとか。