進境
恵の幼馴染のお名前は?
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さて、この状況をどうしたものかー。
伏黒は隣で俯いたまま何も言わない芙蓉を見ながら頭をフル回転させていた。
芙蓉はとにかく他人に気を遣う。もっと自分を優先しても良いと思うくらいに。かといってそれが母性本能だとか自己犠牲だとか、そう言われると少々違う気もする。責任感があって自分の意思はしっかり持っているし、嫌な事にはハッキリ拒絶もする。
「… 芙蓉、…呪霊に襲われたのは自分のせいだとか思ってねぇよな?」
伏黒の言葉に、芙蓉が膝を抱える腕に力を込めたのを見逃さなかったーやっぱり。伏黒は息を吐いた。
「芙蓉。…呪霊が人を襲う理由、何だと思う」
「…。強くなる為、じゃないの?」
「呪霊は人間の負の感情から生まれる。けど、人間が居なくなったら自分達は存在しなくなるよな」
「…うん、そうだよね…、なんだろ」
「…理由なんかねぇんだよ」
芙蓉は伏せていた身体を起こして伏黒を見た。
「目を合わせりゃ襲ってくるのは動物だって同じだ。その辺の不良でもいるだろ、目が合うと絡んでくる奴」
「…動物はわかるけど…、」
“中学生の頃は恵もそうだったんじゃないの?”と伏黒をじっと見つめる芙蓉の顔に書いてあるような気がして、伏黒はひとつ咳払いをした。
「呪霊に合理性を求めるのは間違ってる。少なくとも呪霊に襲われる事に関して、誰がどうっていうのはあり得ない。…確かに芙蓉は呪霊が見える、存在を知覚出来るから、どうしても自分のせいで、って思うかもしれねぇけど、この友達は自分がケガしたって芙蓉の事心配してくれる、また一緒に出かけようって言ってくれるくらいの友達なんだ。必要以上に自分の事責める事はねぇよ」
芙蓉は伏黒の言葉を聞きながら頷き、涙を拭っていた。
「悪ぃ、泣かせるつもりはなかった」
芙蓉は黙って首を振った。落ち着いたところで顔を上げる。とてもスッキリした表情だった。
「…とりあえず明日はゆっくり休んだ方がいい」
「ううん、大丈夫。…恵のおかげで、泣いてだいぶ気持ちがスッキリしたから」
「無理すんなよ」
「…やっぱり私には時間がないから。早く術式をマスターして、みんなに追い付かないと」
これ以上は何言っても無駄だなー伏黒は内心ため息をつく。かと言ってこのまま闇雲に鍛錬するのは効率が悪い。何か良い方法はー。
「…五条先生だ」
「え?」
「芙蓉は自分の術式がどんなのか知ってるのか?」
「…え、と…?」
芙蓉が過去に一度だけ術式を発現した時、伏黒はその様子を見ていない。術式を発現させるに当たり、術式のイメージをする事は非常に重要な要素となる。
「明日にでも五条先生に術式を見てもらえ。自分の術式をイメージ出来るようになればやり易くなると思う」
「? どういう事?」
「…知らなかったのか?」
「…?」
「まぁいい。五条先生に言えばわかる」
今日はもう寝るぞと伏黒は立ち上がった。芙蓉も慌てて立ち上がり、寮の出入り口へ歩き始めた伏黒を追う。
「今日は余計な事考えねぇでしっかり寝ろよ」
「…うん。…ありがとう…、おやすみ」
「おう」
芙蓉は階段を昇り、自室へ戻る。伏黒に言われた事を思い返し、明日こそはと自身を奮起させ、伏黒の言葉を守って寝る事にした。話を聴いてもらえた事、涙を吐き出した事で気持ちはとても晴れやかだった。
翌日、放課後。
「え?自分の術式を知りたいって?」
タイミング良くこの日は出張から高専に戻って来ていた五条を捕まえるなり、芙蓉は伏黒に言われたように、自身の術式について尋ねてみた。
「…ふーむ。そうねぇ…」
「ざっくりとでもいいから知りたいの。…全然、イメージが出来なくて」
「まぁ、芙蓉は他の術師とはちょっと違ってゆっくりなスタートだからねぇ」
五条は1人納得したように頷いている。芙蓉はそんな五条の様子を窺うしか出来ずにいた。
「…芙蓉の術式は和真くん譲りのものだよ」
「お父さんの?」
「そう。名前は忘れちゃったけど、かなり上手く使いこなしてたよ」
「どんな術式なの?」
「鏡の性質を持った壁を作る」
「…鏡の、壁」
「そ。あとは自分で知るのが一番だよ」
それだけ言うと、会議めんどくさ〜いなどと言いながら五条は行ってしまった。そんな彼の後ろ姿を見ながら、芙蓉は五条の言葉を反芻した。ざっくりとでもいいからと言ったのは自分ではあるが、ちょっと乱暴すぎやしないかと思いながらイメージを広げる。鏡の壁ーミラーハウス。あれこれ考えながら芙蓉は寮へ向けて歩き始める。僅かではあるが、術式のヒントを得たのは間違いない。今夜一晩考えてみようと部屋へ戻った。
果たして芙蓉は伏黒や五条の助言を受け、翌日の鍛錬を終える間際に術式を発現させる事に成功し、とりあえず呪骸からの攻撃を防ぐ事が出来るようになった。
「やっとスタート地点に立てた感じだな」
術式が発現させる事が出来た喜びもありつつ、伏黒の言葉に、芙蓉は気が引き締まる思いだった。
伏黒は隣で俯いたまま何も言わない芙蓉を見ながら頭をフル回転させていた。
芙蓉はとにかく他人に気を遣う。もっと自分を優先しても良いと思うくらいに。かといってそれが母性本能だとか自己犠牲だとか、そう言われると少々違う気もする。責任感があって自分の意思はしっかり持っているし、嫌な事にはハッキリ拒絶もする。
「… 芙蓉、…呪霊に襲われたのは自分のせいだとか思ってねぇよな?」
伏黒の言葉に、芙蓉が膝を抱える腕に力を込めたのを見逃さなかったーやっぱり。伏黒は息を吐いた。
「芙蓉。…呪霊が人を襲う理由、何だと思う」
「…。強くなる為、じゃないの?」
「呪霊は人間の負の感情から生まれる。けど、人間が居なくなったら自分達は存在しなくなるよな」
「…うん、そうだよね…、なんだろ」
「…理由なんかねぇんだよ」
芙蓉は伏せていた身体を起こして伏黒を見た。
「目を合わせりゃ襲ってくるのは動物だって同じだ。その辺の不良でもいるだろ、目が合うと絡んでくる奴」
「…動物はわかるけど…、」
“中学生の頃は恵もそうだったんじゃないの?”と伏黒をじっと見つめる芙蓉の顔に書いてあるような気がして、伏黒はひとつ咳払いをした。
「呪霊に合理性を求めるのは間違ってる。少なくとも呪霊に襲われる事に関して、誰がどうっていうのはあり得ない。…確かに芙蓉は呪霊が見える、存在を知覚出来るから、どうしても自分のせいで、って思うかもしれねぇけど、この友達は自分がケガしたって芙蓉の事心配してくれる、また一緒に出かけようって言ってくれるくらいの友達なんだ。必要以上に自分の事責める事はねぇよ」
芙蓉は伏黒の言葉を聞きながら頷き、涙を拭っていた。
「悪ぃ、泣かせるつもりはなかった」
芙蓉は黙って首を振った。落ち着いたところで顔を上げる。とてもスッキリした表情だった。
「…とりあえず明日はゆっくり休んだ方がいい」
「ううん、大丈夫。…恵のおかげで、泣いてだいぶ気持ちがスッキリしたから」
「無理すんなよ」
「…やっぱり私には時間がないから。早く術式をマスターして、みんなに追い付かないと」
これ以上は何言っても無駄だなー伏黒は内心ため息をつく。かと言ってこのまま闇雲に鍛錬するのは効率が悪い。何か良い方法はー。
「…五条先生だ」
「え?」
「芙蓉は自分の術式がどんなのか知ってるのか?」
「…え、と…?」
芙蓉が過去に一度だけ術式を発現した時、伏黒はその様子を見ていない。術式を発現させるに当たり、術式のイメージをする事は非常に重要な要素となる。
「明日にでも五条先生に術式を見てもらえ。自分の術式をイメージ出来るようになればやり易くなると思う」
「? どういう事?」
「…知らなかったのか?」
「…?」
「まぁいい。五条先生に言えばわかる」
今日はもう寝るぞと伏黒は立ち上がった。芙蓉も慌てて立ち上がり、寮の出入り口へ歩き始めた伏黒を追う。
「今日は余計な事考えねぇでしっかり寝ろよ」
「…うん。…ありがとう…、おやすみ」
「おう」
芙蓉は階段を昇り、自室へ戻る。伏黒に言われた事を思い返し、明日こそはと自身を奮起させ、伏黒の言葉を守って寝る事にした。話を聴いてもらえた事、涙を吐き出した事で気持ちはとても晴れやかだった。
翌日、放課後。
「え?自分の術式を知りたいって?」
タイミング良くこの日は出張から高専に戻って来ていた五条を捕まえるなり、芙蓉は伏黒に言われたように、自身の術式について尋ねてみた。
「…ふーむ。そうねぇ…」
「ざっくりとでもいいから知りたいの。…全然、イメージが出来なくて」
「まぁ、芙蓉は他の術師とはちょっと違ってゆっくりなスタートだからねぇ」
五条は1人納得したように頷いている。芙蓉はそんな五条の様子を窺うしか出来ずにいた。
「…芙蓉の術式は和真くん譲りのものだよ」
「お父さんの?」
「そう。名前は忘れちゃったけど、かなり上手く使いこなしてたよ」
「どんな術式なの?」
「鏡の性質を持った壁を作る」
「…鏡の、壁」
「そ。あとは自分で知るのが一番だよ」
それだけ言うと、会議めんどくさ〜いなどと言いながら五条は行ってしまった。そんな彼の後ろ姿を見ながら、芙蓉は五条の言葉を反芻した。ざっくりとでもいいからと言ったのは自分ではあるが、ちょっと乱暴すぎやしないかと思いながらイメージを広げる。鏡の壁ーミラーハウス。あれこれ考えながら芙蓉は寮へ向けて歩き始める。僅かではあるが、術式のヒントを得たのは間違いない。今夜一晩考えてみようと部屋へ戻った。
果たして芙蓉は伏黒や五条の助言を受け、翌日の鍛錬を終える間際に術式を発現させる事に成功し、とりあえず呪骸からの攻撃を防ぐ事が出来るようになった。
「やっとスタート地点に立てた感じだな」
術式が発現させる事が出来た喜びもありつつ、伏黒の言葉に、芙蓉は気が引き締まる思いだった。