進境
恵の幼馴染のお名前は?
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「…ホラ、一応私、悟くんの親戚じゃない?最近知ったんだけど、五条って呪術界では結構大きい家系だって言うし…、だから少しくらいは、術師として出来る事があるんじゃないかと思って…」
芙蓉の口からは伏黒を安心させようとしているのだろう言葉が次々と出てくるが、伏黒にとってはもうどうでも良かった。伏黒は繋いでいた芙蓉の手を優しく握る。
「芙蓉」
まるで叱られる事に怯える子供のように、芙蓉は恐々と伏黒を見上げる。伏黒は伏黒で、そんな彼女の様子を見て笑った。
「もう何も言わねぇよ。…これからは近くにいられるんだ、何かあれば俺が助ける」
この先、芙蓉の事は何が何でも守ってやりたいー津美紀を守れなかった、という想いがそうさせるのだろうーというのが伏黒の本音だが、物理的にそれは限界があるし、術師として生きる事を決めた芙蓉にとって成長の機会を奪う事になる。術師として生きる事を決めたのなら、強くなって生き抜いていくしかない。それに関して呪術師に例外はなくー本当に殺伐とした世界だ。
「… 芙蓉は結構頑固なトコがあるからな、決めたらそう簡単に引かねぇもんな」
そう言われて芙蓉は頬を膨らませるが、それでいいんだ、という伏黒の言葉に少々驚いた。
「前に言ったろ?誰かに言われたからとか、なんとなくで術師にはなるなって。…それだけ芙蓉の意思が決まってるんだ、俺がどうこう言う権利はねぇ」
「恵…、」
「但し。…1人で何もかも抱え込もうとするな。何かあったら俺に言え。愚痴でも文句でも不満でも、何でも俺が受け止めてやる。…とにかく自分の事を大事にする、それだけは絶対忘れないでくれ」
繋ぎ合わせている手に、僅かに痛みを感じた芙蓉は、それだけ伏黒が自身の身を案じてくれている事がよく理解できたと同時に、その想いに応えられるようにならなくてはと、気持ちを新たにした。
「ありがとう。絶対、一端の術師になってみせるから」
「俺も負けてらんねぇな」
伏黒がそう笑って見せると、芙蓉もやっと安心したように笑みを浮かべた。
「あぁ、それと」
何を言われるのだろうと、芙蓉の表情が僅かに強張る。
「芙蓉にはあんまり言いたくねぇが…、五条先生の言う事は話半分に聞いとけ。…あの人、基本適当だからな」
「あ…うん…、自分の事は自分で伝える事にするね」
それぞれが担任の顔を思い浮かべていた。
「…だいぶ暗くなってきたな」
夜になれば遊歩道を照らす外灯が目覚めたように瞬き始めていた。少し離れたところから上品とは言い難い笑い声が聞こえてくる。絡まれると面倒だと思いながら伏黒はスマホで時間を確認するー18時を回っていた。
「…晩飯、どうする?」
「せっかくだから食べて帰ろうよ。…なんだか今日はすごく贅沢な気分」
「? どこが贅沢なんだよ?」
「ん、1日中恵の事独り占めしてるから」
「何言ってんだ」
伏黒は再び芙蓉の手を取り、確りと繋ぎ合わせた。芙蓉が無事であった事、こうしてまた隣を歩ける事に、大きな喜びを噛み締めていた。
公園を後にした2人は混み合ってきた街に戻って夕食をとる事にした。少しずつ飲食店に人が入り始める時間帯、その混雑を避けるように早々と手近な店で夕食を済ませる。朝来た時と同じように、電車とバスを乗り継いで高専へ向かう。
高専最寄りのバス停で降り、そこからは歩いて行くのだが、すっかり日が落ちて辺りは真っ暗。所々で存在を主張している外灯に妙な不安感や恐怖心を煽られーているのは芙蓉だけのようで、伏黒は平然と歩いて行く。
「? どうかしたか?」
疲れたのか、荷物持つぞと芙蓉を気遣う。
「あ、ありがとう…、恵、」
「ん?」
「…怖くない?ここ…」
「別に。…高専行くにはこの道しかねぇんだ、文句言っても仕方ねぇだろ」
何でもないように話す伏黒。確かに彼の言う通りなのだが、歩いて行かなくては帰れないのだが。
「…何か出てきたらどうしよう…」
「出てきたとしてもタヌキくらいだ、心配すんな」
ほら、と伏黒は芙蓉に手を差し出す。
「…つーかそもそも術師目指してんのに、暗がりが怖いとかどーなんだよ」
芙蓉が手を握ったのを合図のように、2人は歩き出す。
「オバケとかだったら嫌じゃん」
「オバケも呪霊もたいして変わんねぇよ」
道路の周りに生い茂っている木々が風に揺れる度に、繋いでいる手に力が入る。そんな芙蓉の様子に思わず笑みが溢れてしまう伏黒。
「…もしタヌキとかオバケとか呪霊とかが出たとしても、俺が祓ってやるから心配すんな」
頼もしい言葉、相変わらずの優しさに、またこうして一緒に歩ける事が出来て本当に良かったー芙蓉は怯えていた自身の気持ちが落ち着いてくるのを感じた。
あと5分もかからずに高専の正門に辿り着くところで芙蓉は伏黒に声をかける。どうかしたか、と心配そうに見つめてくる伏黒に対し、ほんの少しだけ罪悪感を覚えながら、芙蓉は勇気を振り絞って口を開く。
「…ね、恵、…、ハグ、して」
思いもしなかった芙蓉の言葉に目を瞬かせながらも伏黒は口元に笑みを浮かべ、両手を広げて芙蓉に向き直る。
「…仕方ねぇな」
芙蓉は伏黒の腕の中へと飛び込んだ。自身を受け止めてくれる頼もしい身体、優しく包み込んでくれる腕、そして大好きな伏黒の匂い。鼓動が早まるのを感じながら、再び共に歩いて行ける大切な存在を確りと抱き締めた。
芙蓉の口からは伏黒を安心させようとしているのだろう言葉が次々と出てくるが、伏黒にとってはもうどうでも良かった。伏黒は繋いでいた芙蓉の手を優しく握る。
「芙蓉」
まるで叱られる事に怯える子供のように、芙蓉は恐々と伏黒を見上げる。伏黒は伏黒で、そんな彼女の様子を見て笑った。
「もう何も言わねぇよ。…これからは近くにいられるんだ、何かあれば俺が助ける」
この先、芙蓉の事は何が何でも守ってやりたいー津美紀を守れなかった、という想いがそうさせるのだろうーというのが伏黒の本音だが、物理的にそれは限界があるし、術師として生きる事を決めた芙蓉にとって成長の機会を奪う事になる。術師として生きる事を決めたのなら、強くなって生き抜いていくしかない。それに関して呪術師に例外はなくー本当に殺伐とした世界だ。
「… 芙蓉は結構頑固なトコがあるからな、決めたらそう簡単に引かねぇもんな」
そう言われて芙蓉は頬を膨らませるが、それでいいんだ、という伏黒の言葉に少々驚いた。
「前に言ったろ?誰かに言われたからとか、なんとなくで術師にはなるなって。…それだけ芙蓉の意思が決まってるんだ、俺がどうこう言う権利はねぇ」
「恵…、」
「但し。…1人で何もかも抱え込もうとするな。何かあったら俺に言え。愚痴でも文句でも不満でも、何でも俺が受け止めてやる。…とにかく自分の事を大事にする、それだけは絶対忘れないでくれ」
繋ぎ合わせている手に、僅かに痛みを感じた芙蓉は、それだけ伏黒が自身の身を案じてくれている事がよく理解できたと同時に、その想いに応えられるようにならなくてはと、気持ちを新たにした。
「ありがとう。絶対、一端の術師になってみせるから」
「俺も負けてらんねぇな」
伏黒がそう笑って見せると、芙蓉もやっと安心したように笑みを浮かべた。
「あぁ、それと」
何を言われるのだろうと、芙蓉の表情が僅かに強張る。
「芙蓉にはあんまり言いたくねぇが…、五条先生の言う事は話半分に聞いとけ。…あの人、基本適当だからな」
「あ…うん…、自分の事は自分で伝える事にするね」
それぞれが担任の顔を思い浮かべていた。
「…だいぶ暗くなってきたな」
夜になれば遊歩道を照らす外灯が目覚めたように瞬き始めていた。少し離れたところから上品とは言い難い笑い声が聞こえてくる。絡まれると面倒だと思いながら伏黒はスマホで時間を確認するー18時を回っていた。
「…晩飯、どうする?」
「せっかくだから食べて帰ろうよ。…なんだか今日はすごく贅沢な気分」
「? どこが贅沢なんだよ?」
「ん、1日中恵の事独り占めしてるから」
「何言ってんだ」
伏黒は再び芙蓉の手を取り、確りと繋ぎ合わせた。芙蓉が無事であった事、こうしてまた隣を歩ける事に、大きな喜びを噛み締めていた。
公園を後にした2人は混み合ってきた街に戻って夕食をとる事にした。少しずつ飲食店に人が入り始める時間帯、その混雑を避けるように早々と手近な店で夕食を済ませる。朝来た時と同じように、電車とバスを乗り継いで高専へ向かう。
高専最寄りのバス停で降り、そこからは歩いて行くのだが、すっかり日が落ちて辺りは真っ暗。所々で存在を主張している外灯に妙な不安感や恐怖心を煽られーているのは芙蓉だけのようで、伏黒は平然と歩いて行く。
「? どうかしたか?」
疲れたのか、荷物持つぞと芙蓉を気遣う。
「あ、ありがとう…、恵、」
「ん?」
「…怖くない?ここ…」
「別に。…高専行くにはこの道しかねぇんだ、文句言っても仕方ねぇだろ」
何でもないように話す伏黒。確かに彼の言う通りなのだが、歩いて行かなくては帰れないのだが。
「…何か出てきたらどうしよう…」
「出てきたとしてもタヌキくらいだ、心配すんな」
ほら、と伏黒は芙蓉に手を差し出す。
「…つーかそもそも術師目指してんのに、暗がりが怖いとかどーなんだよ」
芙蓉が手を握ったのを合図のように、2人は歩き出す。
「オバケとかだったら嫌じゃん」
「オバケも呪霊もたいして変わんねぇよ」
道路の周りに生い茂っている木々が風に揺れる度に、繋いでいる手に力が入る。そんな芙蓉の様子に思わず笑みが溢れてしまう伏黒。
「…もしタヌキとかオバケとか呪霊とかが出たとしても、俺が祓ってやるから心配すんな」
頼もしい言葉、相変わらずの優しさに、またこうして一緒に歩ける事が出来て本当に良かったー芙蓉は怯えていた自身の気持ちが落ち着いてくるのを感じた。
あと5分もかからずに高専の正門に辿り着くところで芙蓉は伏黒に声をかける。どうかしたか、と心配そうに見つめてくる伏黒に対し、ほんの少しだけ罪悪感を覚えながら、芙蓉は勇気を振り絞って口を開く。
「…ね、恵、…、ハグ、して」
思いもしなかった芙蓉の言葉に目を瞬かせながらも伏黒は口元に笑みを浮かべ、両手を広げて芙蓉に向き直る。
「…仕方ねぇな」
芙蓉は伏黒の腕の中へと飛び込んだ。自身を受け止めてくれる頼もしい身体、優しく包み込んでくれる腕、そして大好きな伏黒の匂い。鼓動が早まるのを感じながら、再び共に歩いて行ける大切な存在を確りと抱き締めた。