出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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少し早めの夕食を済ませた五条、伏黒、芙蓉の3人は、あまり人気のない河原にやって来た。夜の帳が降り始め、街灯の少ない河原は花火をやるには絶好の場所だった。五条は鼻歌交じりにいそいそと花火の入った袋を破る勢いで花火を次々とばら撒いていく。
「ねぇ悟くん、ここって花火して大丈夫なの?」
至極真っ当な質問に、一瞬五条は言葉に詰まる。
「大丈夫でしょ。…たぶん」
バーベキューとかやる人もいるでしょ、たぶん、などとなんとも頼りない返事ではあるが、もうこの状況で花火をやらないという選択肢は無さそうだ。
各々が手近な花火を1、2本手に取り、五条が準備したキャンドルに翳して火を点ける。シュッ、と勢いよく炎が吹き出し、色とりどりに辺りを照らしていく。
「…綺麗」
芙蓉の持つ花火が発するカラフルな炎が、隣に立つ伏黒の顔を照らした。この夏休みの間で、伏黒は一気に逞しくなったようだ。外見じゃなく、内面が大きく成長したような。炎の薄明かりの下、伏黒の顔にできた傷が薄くなっているのが見えて安心したのも束の間、目が合った。芙蓉は気恥ずかしさを誤魔化すように笑顔を見せながらも、顔が少し熱くなるのを感じた。
五条家で夏休みを過ごしている間、芙蓉はずっと伏黒の事が心配で気が気でなかった。
過去に何度か五条家を訪れている芙蓉はある時、あまりの退屈さから1人で家の中をあちこち探検して回った事がある。ほとんどの部屋が和室で、どこを見ても同じ作りで面白くないーと、家の中心辺りに、地下へ繋がる階段を見つけた。芙蓉は地下室という物珍しさと好奇心からその仄暗い階段を降り、降りた先の突き当たり、薄く開いていた扉の隙間から部屋の中をそっと覗く。
「っ!!」
明らかに人のモノではない目があった。部屋の中は暗いのに、今まで見た事がないくらいに巨大な目が見えたー芙蓉は恐怖と驚きで文字通り飛び上がり、必死に階段を駆け上がってやっとの事で泣きながら母親に飛びついた。その時に初めて、五条家は少し特別な家だということを教えられた。
そしてその次の日には祖父に呼ばれ、五条家と芙蓉の父親についての話をされた。
芙蓉の父親は高峰和真と言い、高峰家の当主だという。五条家とは昔から協力関係にあり、その結び付きと子孫の能力向上を強固なものにするために婚姻関係を結んでいるそうで、それぞれの家で年頃の者同士を結婚させている。直近で選ばれたのが芙蓉の母・千浪だった。呪術師の家系に産まれた千浪だが、術式をコントロールする事がどうにも不得手だったそうで、五条家にいる間は呪符や呪具に呪力を籠める、未確認の呪霊の存在を探知・調査するなど、祓除のバックアップに徹していた。
一方父親の和真は、呪いを祓うにはあまり向いていない術式を持っている、祓除には不向きだろうなどと言われていたそうだが、自身の術式を研究・昇華させ、高峰家の当主に選ばれた優秀な呪術師だったという。千浪と結婚し、芙蓉が4歳になる年、和真はとある小さな村へ祓除の任務に出た。が、その任務に出たきり、彼は戻って来なかった。後日、和真の後詰めとしてその村を訪れた呪術師が言うには、和真の姿はどこを探しても見つからなかったが、村の呪霊はいなくなっていたという。その1件以来当主不在となった高峰家。当主の妻、という立場の千浪は和真の弟に家を託し、芙蓉を連れて家を出る事に決め、今に至るー。
話を聞かされた当時は確かまだ5歳だった芙蓉にとって、話の半分以上よく理解出来なかったが、今になってハッキリ理解しているのは、自分にも呪術師の血が流れているという事だ。以前、五条が芙蓉の事を“持っている側”だと言っているのを聞いた事があったーとなると、“アレ”が見える事に合点がいく。つまり“アレ”が見える伏黒も自分も呪術師で、もしかしたら父と同じく、伏黒もいつか戻って来なくなってしまうのではないかーそんな想いに頭の片隅を占領されたまま夏休みを過ごしていた。その想いを抱えきれず、夏休み最後の今日、芙蓉は思い切って五条に打ち明けた。話を聞いた五条は笑いながら絶対ないよ、と断言した。
「大丈夫、恵は芙蓉を置いていなくなったりしないよ。僕も2人が大きくなるまでは守ってあげるから」
「火、消えてるぞ」
一気に思考が現実に引き戻される。声の言うとおり、手に持っていた花火はすでに短く、燃え尽きていた。
「ほら」
気を付けろよ、とすっかりおとなしくなった花火を取り上げられ、代わりに火のついた花火を手渡される。芙蓉が呆けた顔で伏黒を見ていると、伏黒は幾分不機嫌そうな顔を見せる。
「どうかしたのか?」
ぶっきらぼうではあるが、“お前に元気がないと心配になる”というようなニュアンスが込められていると感じたのは自分の思い込みだろうか。
「なんでもない。…大丈夫、ありがとう」
満面の笑みで答える芙蓉に、伏黒は怪訝そうな表情を見せたのも束の間、安堵したかのように口元に薄く笑みを見せた。
「ねぇ悟くん、ここって花火して大丈夫なの?」
至極真っ当な質問に、一瞬五条は言葉に詰まる。
「大丈夫でしょ。…たぶん」
バーベキューとかやる人もいるでしょ、たぶん、などとなんとも頼りない返事ではあるが、もうこの状況で花火をやらないという選択肢は無さそうだ。
各々が手近な花火を1、2本手に取り、五条が準備したキャンドルに翳して火を点ける。シュッ、と勢いよく炎が吹き出し、色とりどりに辺りを照らしていく。
「…綺麗」
芙蓉の持つ花火が発するカラフルな炎が、隣に立つ伏黒の顔を照らした。この夏休みの間で、伏黒は一気に逞しくなったようだ。外見じゃなく、内面が大きく成長したような。炎の薄明かりの下、伏黒の顔にできた傷が薄くなっているのが見えて安心したのも束の間、目が合った。芙蓉は気恥ずかしさを誤魔化すように笑顔を見せながらも、顔が少し熱くなるのを感じた。
五条家で夏休みを過ごしている間、芙蓉はずっと伏黒の事が心配で気が気でなかった。
過去に何度か五条家を訪れている芙蓉はある時、あまりの退屈さから1人で家の中をあちこち探検して回った事がある。ほとんどの部屋が和室で、どこを見ても同じ作りで面白くないーと、家の中心辺りに、地下へ繋がる階段を見つけた。芙蓉は地下室という物珍しさと好奇心からその仄暗い階段を降り、降りた先の突き当たり、薄く開いていた扉の隙間から部屋の中をそっと覗く。
「っ!!」
明らかに人のモノではない目があった。部屋の中は暗いのに、今まで見た事がないくらいに巨大な目が見えたー芙蓉は恐怖と驚きで文字通り飛び上がり、必死に階段を駆け上がってやっとの事で泣きながら母親に飛びついた。その時に初めて、五条家は少し特別な家だということを教えられた。
そしてその次の日には祖父に呼ばれ、五条家と芙蓉の父親についての話をされた。
芙蓉の父親は高峰和真と言い、高峰家の当主だという。五条家とは昔から協力関係にあり、その結び付きと子孫の能力向上を強固なものにするために婚姻関係を結んでいるそうで、それぞれの家で年頃の者同士を結婚させている。直近で選ばれたのが芙蓉の母・千浪だった。呪術師の家系に産まれた千浪だが、術式をコントロールする事がどうにも不得手だったそうで、五条家にいる間は呪符や呪具に呪力を籠める、未確認の呪霊の存在を探知・調査するなど、祓除のバックアップに徹していた。
一方父親の和真は、呪いを祓うにはあまり向いていない術式を持っている、祓除には不向きだろうなどと言われていたそうだが、自身の術式を研究・昇華させ、高峰家の当主に選ばれた優秀な呪術師だったという。千浪と結婚し、芙蓉が4歳になる年、和真はとある小さな村へ祓除の任務に出た。が、その任務に出たきり、彼は戻って来なかった。後日、和真の後詰めとしてその村を訪れた呪術師が言うには、和真の姿はどこを探しても見つからなかったが、村の呪霊はいなくなっていたという。その1件以来当主不在となった高峰家。当主の妻、という立場の千浪は和真の弟に家を託し、芙蓉を連れて家を出る事に決め、今に至るー。
話を聞かされた当時は確かまだ5歳だった芙蓉にとって、話の半分以上よく理解出来なかったが、今になってハッキリ理解しているのは、自分にも呪術師の血が流れているという事だ。以前、五条が芙蓉の事を“持っている側”だと言っているのを聞いた事があったーとなると、“アレ”が見える事に合点がいく。つまり“アレ”が見える伏黒も自分も呪術師で、もしかしたら父と同じく、伏黒もいつか戻って来なくなってしまうのではないかーそんな想いに頭の片隅を占領されたまま夏休みを過ごしていた。その想いを抱えきれず、夏休み最後の今日、芙蓉は思い切って五条に打ち明けた。話を聞いた五条は笑いながら絶対ないよ、と断言した。
「大丈夫、恵は芙蓉を置いていなくなったりしないよ。僕も2人が大きくなるまでは守ってあげるから」
「火、消えてるぞ」
一気に思考が現実に引き戻される。声の言うとおり、手に持っていた花火はすでに短く、燃え尽きていた。
「ほら」
気を付けろよ、とすっかりおとなしくなった花火を取り上げられ、代わりに火のついた花火を手渡される。芙蓉が呆けた顔で伏黒を見ていると、伏黒は幾分不機嫌そうな顔を見せる。
「どうかしたのか?」
ぶっきらぼうではあるが、“お前に元気がないと心配になる”というようなニュアンスが込められていると感じたのは自分の思い込みだろうか。
「なんでもない。…大丈夫、ありがとう」
満面の笑みで答える芙蓉に、伏黒は怪訝そうな表情を見せたのも束の間、安堵したかのように口元に薄く笑みを見せた。