進境
恵の幼馴染のお名前は?
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最初に入ったショップから数えて4件目の店を出た。なかなかコレと言ったウェアが見つからないようで、芙蓉の表情は冴えない。
「…渋谷に行ってみるか?」
他にも店はたくさんあるが、伏黒からちょっとした気分転換も兼ねての提案だった。
「今何時?」
11時半前、という伏黒の返事。芙蓉は伏黒の提案を受け、渋谷に移動しようとなった。原宿から渋谷までは歩いて行こうとなり、昼食について話しながら歩く。
「恵はお腹空いた?」
「そうだな、普通に食えるくらいには」
「何食べる?私結構お腹空いてきちゃって」
繁華街という事もあって、目移りする程に様々な店が並ぶし、目当ての店があればすぐに見つかるだろう。
「クレープ…美味しそう」
「飯食えなくなるからやめとけ」
「じゃあクレープをごはんに」
「俺はならねぇ」
「じゃあ半分コしよ?」
「…」
どうしてもクレープが食べたいらしい芙蓉は食い下がり、伏黒も渋々の体で了承した。大いに喜んだ芙蓉はクレープを買いに向かう。
伏黒の言いつけ通りに芙蓉はクレープを食べ過ぎる事なく間食を済ませ、渋谷へ辿り着いた2人は手近な店から見て回り、昼時を避けて昼食をとる。
その後、幸いにして芙蓉がこの日一番の目的としていたウェアはすぐに見つける事が出来た。まだ十分に買い物して回る時間はある。
「芙蓉」
芙蓉が見てみたいと言って入った雑貨店を出た後、改まったように伏黒が口を開く。
「何か欲しいものはないか?」
芙蓉は並んで隣を歩く伏黒を見上げた。
「え?急にどうして?」
「ん…、入学祝いと思って」
思いがけない伏黒の申し出に驚いた芙蓉はすごい勢いで首を横に振る。
「そんな、気持ちだけで十分だよ」
「芙蓉にはずっと世話になりっぱなしだからな」
「それはお互い様じゃない」
「俺の方が世話になってる」
ああ言えばこう言うーまさに押し問答だった。珍しくどうあっても引く様子のない伏黒に負け、芙蓉は念押しするように本当になんでも良いの、と尋ねれば、なんでもいいとの返事がくる。
「…じゃあ、…アクセサリーがいいな」
リングは目立つから付けっぱなしに出来ない、イヤリングも同様、何処かで落としても困る。そんな条件をクリア出来そうな物となるとネックレスが妥当と言えた。付けても服で隠れるし、任務の時だってつけていけそうだ。その旨を伝えると、伏黒は歩いている時に目星をつけていたのだろう、芙蓉の手を引いて迷う事なくジュエリーショップへ向かう。芙蓉は芙蓉で自身が想像していたよりもハイクラスの店である事に驚いていた。
「ちょっと恵、こんな高そうなお店じゃなくても、」
「金の心配ならしなくていい」
頼もしい伏黒の言葉に芙蓉は何も言えなかった。高専入学時には2級術師となった伏黒は単独で任務に当たる事が出来る。危険な任務を単独で行う分、報酬も上がってくる。そんな彼の趣味は読書で、何かを物を買うとすれば本がほとんど。他に金を使うとしたら、中学卒業まで住んでいたアパートの家賃くらい。同年代と比べたら十分に金を持っているだろう事は想像がつく。
ーそれでも。高校生という立場の自分たちがこんな高そうなお店に入って良いのだろうかと幾分不安げな表情の芙蓉を余所に、伏黒は平然と店に足を踏み入れた。
いらっしゃいませ、と全身黒の落ち着いたスーツを着こなした店員が声をかけてきて、自分たちは場違いではないかと更に不安になる芙蓉。そんな彼女に好きなものを選んでいいと言っても動かないだろうと踏んだ伏黒は店員に声をかけ、予算と彼女に似合う物を見繕うように伝える。やや年嵩の女性店員は嫌な顔する事なく笑顔で応対した。少々お待ち下さいませ、と言い置いてカウンターから出したネックレスをトレイに並べていく。
「こちらでいかがでしょうか」
優しい笑みを湛えた女性は芙蓉を呼んだ。デザインに違いはあるものの、シンプルながら上品なデザインのネックレスが数本カウンターに並べられている。芙蓉は目を輝かせてそれらを眺める。
「…どうしよう…!恵はどれが良いと思う?」
「…そう言われてもな…」
伏黒は悩みながらもシンプルなデザインのもの、可愛らしいデザインのものを選ぶも、それも良いよねと、芙蓉から返事にならない返事がくる。そんなやり取りを微笑ましく見ていた店員が、こちらはいかがですかとシンプルなデザインのものを提案してきた。
「こちらのネックレスでしたらペアもできますよ」
そう言って近くのショーケースから、トップのサイズが異なる同じデザインのネックレスを出して見せる。
「…じゃあこれを。そっちもお願いします」
「え!」
驚きの声をあげた芙蓉。確かに、伏黒とのペアの物に多少の憧れはあったものの、伏黒があまり物に執着しないというか、物で互いを縛らないというかーとにかく互いに信頼しているから、そのようなものがなくてもと思っているのだろうと、勝手にそう思っていたのだ。
「…恵…、いいの?」
「俺が欲しいと思ったから買っただけだ」
どうしてこんなカッコいい事をさらりと言えるのだろうー芙蓉は軽い目眩を覚えた。
「…渋谷に行ってみるか?」
他にも店はたくさんあるが、伏黒からちょっとした気分転換も兼ねての提案だった。
「今何時?」
11時半前、という伏黒の返事。芙蓉は伏黒の提案を受け、渋谷に移動しようとなった。原宿から渋谷までは歩いて行こうとなり、昼食について話しながら歩く。
「恵はお腹空いた?」
「そうだな、普通に食えるくらいには」
「何食べる?私結構お腹空いてきちゃって」
繁華街という事もあって、目移りする程に様々な店が並ぶし、目当ての店があればすぐに見つかるだろう。
「クレープ…美味しそう」
「飯食えなくなるからやめとけ」
「じゃあクレープをごはんに」
「俺はならねぇ」
「じゃあ半分コしよ?」
「…」
どうしてもクレープが食べたいらしい芙蓉は食い下がり、伏黒も渋々の体で了承した。大いに喜んだ芙蓉はクレープを買いに向かう。
伏黒の言いつけ通りに芙蓉はクレープを食べ過ぎる事なく間食を済ませ、渋谷へ辿り着いた2人は手近な店から見て回り、昼時を避けて昼食をとる。
その後、幸いにして芙蓉がこの日一番の目的としていたウェアはすぐに見つける事が出来た。まだ十分に買い物して回る時間はある。
「芙蓉」
芙蓉が見てみたいと言って入った雑貨店を出た後、改まったように伏黒が口を開く。
「何か欲しいものはないか?」
芙蓉は並んで隣を歩く伏黒を見上げた。
「え?急にどうして?」
「ん…、入学祝いと思って」
思いがけない伏黒の申し出に驚いた芙蓉はすごい勢いで首を横に振る。
「そんな、気持ちだけで十分だよ」
「芙蓉にはずっと世話になりっぱなしだからな」
「それはお互い様じゃない」
「俺の方が世話になってる」
ああ言えばこう言うーまさに押し問答だった。珍しくどうあっても引く様子のない伏黒に負け、芙蓉は念押しするように本当になんでも良いの、と尋ねれば、なんでもいいとの返事がくる。
「…じゃあ、…アクセサリーがいいな」
リングは目立つから付けっぱなしに出来ない、イヤリングも同様、何処かで落としても困る。そんな条件をクリア出来そうな物となるとネックレスが妥当と言えた。付けても服で隠れるし、任務の時だってつけていけそうだ。その旨を伝えると、伏黒は歩いている時に目星をつけていたのだろう、芙蓉の手を引いて迷う事なくジュエリーショップへ向かう。芙蓉は芙蓉で自身が想像していたよりもハイクラスの店である事に驚いていた。
「ちょっと恵、こんな高そうなお店じゃなくても、」
「金の心配ならしなくていい」
頼もしい伏黒の言葉に芙蓉は何も言えなかった。高専入学時には2級術師となった伏黒は単独で任務に当たる事が出来る。危険な任務を単独で行う分、報酬も上がってくる。そんな彼の趣味は読書で、何かを物を買うとすれば本がほとんど。他に金を使うとしたら、中学卒業まで住んでいたアパートの家賃くらい。同年代と比べたら十分に金を持っているだろう事は想像がつく。
ーそれでも。高校生という立場の自分たちがこんな高そうなお店に入って良いのだろうかと幾分不安げな表情の芙蓉を余所に、伏黒は平然と店に足を踏み入れた。
いらっしゃいませ、と全身黒の落ち着いたスーツを着こなした店員が声をかけてきて、自分たちは場違いではないかと更に不安になる芙蓉。そんな彼女に好きなものを選んでいいと言っても動かないだろうと踏んだ伏黒は店員に声をかけ、予算と彼女に似合う物を見繕うように伝える。やや年嵩の女性店員は嫌な顔する事なく笑顔で応対した。少々お待ち下さいませ、と言い置いてカウンターから出したネックレスをトレイに並べていく。
「こちらでいかがでしょうか」
優しい笑みを湛えた女性は芙蓉を呼んだ。デザインに違いはあるものの、シンプルながら上品なデザインのネックレスが数本カウンターに並べられている。芙蓉は目を輝かせてそれらを眺める。
「…どうしよう…!恵はどれが良いと思う?」
「…そう言われてもな…」
伏黒は悩みながらもシンプルなデザインのもの、可愛らしいデザインのものを選ぶも、それも良いよねと、芙蓉から返事にならない返事がくる。そんなやり取りを微笑ましく見ていた店員が、こちらはいかがですかとシンプルなデザインのものを提案してきた。
「こちらのネックレスでしたらペアもできますよ」
そう言って近くのショーケースから、トップのサイズが異なる同じデザインのネックレスを出して見せる。
「…じゃあこれを。そっちもお願いします」
「え!」
驚きの声をあげた芙蓉。確かに、伏黒とのペアの物に多少の憧れはあったものの、伏黒があまり物に執着しないというか、物で互いを縛らないというかーとにかく互いに信頼しているから、そのようなものがなくてもと思っているのだろうと、勝手にそう思っていたのだ。
「…恵…、いいの?」
「俺が欲しいと思ったから買っただけだ」
どうしてこんなカッコいい事をさらりと言えるのだろうー芙蓉は軽い目眩を覚えた。