進境
恵の幼馴染のお名前は?
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芙蓉が高専に入学して、初めての週末。
任務に出ていた伏黒も、実技を課されていた芙蓉も、大きなケガをする事なく土日を迎える事ができた。
普段よりも遅い時間に起きた芙蓉はまずシャワーを浴びた。好きな音楽を流して髪を乾かし、肌の保湿をして日焼け止めを塗る。肌に馴染む間に簡単な朝食を済ませる。朝食の片付けが済むと洗面台に向かい、歯を磨く。続いてフェイスパウダーを軽く叩いて仕上げに色付きリップを塗る。時間は9時20分ー少し急がないと、とクローゼットへ向かう。さて今日はパンツとスカート、どちらを着ようと迷ったが、あまり気を遣わず動けるようにとパンツを選ぶ。トップスは半袖、これだけでは少し肌寒いので薄手の上着を重ねる。選んだ服を身につけ、鏡の前でひと回りして最後に顔を覗き込む。フェイスパウダーのおかげで小さなアザを上手くカバーすることが出来ていた。ショルダーバッグを下げて靴を選ぶ。スニーカーも良いけど、と思いながら履き慣れたヒールのないパンプスを突っ掛けて部屋を出た。
パタパタと急ぎ足で階段を降りて1階の共有スペースへ向かえば、私服姿の伏黒が本を読んでいた。
「おはよ」
「おう」
声をかければ伏黒は本を閉じて立ち上がり、芙蓉に向き直った。じゃあ行こう、と伏黒に声をかけるも彼は動かず、芙蓉を観察するようにじっと見つめている。芙蓉は自分の服装がおかしかったかと不安になった。
「…どこか、変?」
「あ、いや…、悪ぃ」
たった3カ月会わなかっただけで、こんなにも雰囲気が変わるものだろうかと、伏黒は思わず芙蓉から目を逸らしてしまった。率直に言うなら、今日の芙蓉はとても大人びていて綺麗だと思った。そして先程嗅ぎ取ってしまった芙蓉の香りーシャンプーだろうか、近付かないとわからないくらいの香りに伏黒は鼓動の早まりを感じていた。伏黒は不自然にならない程度に深呼吸をした。ちらと芙蓉を見遣れば、明るかった表情に僅かな翳りが見え、伏黒は内心慌てた。
「あー…、その。…よく、似合って、る」
突然降ってきた伏黒の言葉に、芙蓉は思わず彼を見上げた。視線を逸らす伏黒の頬が、ほんの少しだけ赤くなっているようにも見えた。伏黒が言葉にしてくれた事が嬉しくもあり、恥ずかしくもあり。
「…ありがと」
「…。…行くか」
伏黒は黙って歩き出した。それが照れ隠しだというのはわかっている。芙蓉は笑みを浮かべながら後を追った。
「…今日は何を買うんだ?」
当初、買い物は明日、今日は部屋の片付けと予定していたが、どうやら明日天気が悪くなるらしいという事で予定を入れ替えての外出となった。
2人は駅へ向かう為にバスに揺られている。
「うん、今日絶対買いたいのは実技で使うジャージとシャツ…かな。あと、時間があれば雑貨とか見たいな」
「場所はどうする?」
「…人が多いけど、渋谷か原宿かなって…、いい?」
その辺りが妥当だろうなと思う反面、本当に人が多いんだよなー本音を言えばあまり気が進まないが、久しぶりの芙蓉との外出、一緒に買い物。了承すれば、芙蓉は本当に嬉しそうに笑った。
駅でバスを降り、都心へ向かう電車に乗り込む。週末という事もあってやはり人の流れは多い。まずは原宿に降りる事とした。
「恵、この辺りは詳しい?」
「路線としてなら。買い物はあまり。…釘崎はよくこの辺りに行ってるらしいな」
「うん、任務が無ければ週末には必ず買い物に行くって言ってたよ」
この日、釘崎は確か任務に出ているはずだと伏黒は思った。別に見られてどうというわけではないが、何となく避けたいと思うのはプライベートの時間だからなのか、芙蓉と一緒の時間を邪魔されたくないからか。いずれにせよ、今日は気兼ねなく過ごせる。混み合う駅前の交差点での信号待ちの間、伏黒は芙蓉の手を取った。
「…はぐれると面倒だろ」
子供じみた言い訳だなと内心、伏黒は自嘲した。仮に芙蓉とはぐれたとしても、彼女の呪力を辿ればすぐに見つけ出せる、それはきっと芙蓉もわかっていると思う。それでも伏黒の手を優しく握り返してくる芙蓉がとても愛らしい。信号が変われば一斉に動き出す人波に乗るように、2人もゆっくりと歩き出す。
人の多さにはウンザリするが、こうして2人で歩いていると、“普通の”生活を送っているような気がして、またこうして2人で過ごせる時間を得られた事がとても嬉しくて、芙蓉は久しぶりの感覚に頬が緩む。
「恵」
「ん?」
「ありがとう」
「…まだ来たばっかで何も買ってねぇぞ」
そう言う伏黒の顔は穏やかで、楽しそうにも見える。久しぶりに俺も何か買おうかなと呟く伏黒に、芙蓉は人混みが苦手な彼の気遣いに感謝しつつ、軽い足取りで彼の手を引いて近くのアパレルショップへ向かった。
任務に出ていた伏黒も、実技を課されていた芙蓉も、大きなケガをする事なく土日を迎える事ができた。
普段よりも遅い時間に起きた芙蓉はまずシャワーを浴びた。好きな音楽を流して髪を乾かし、肌の保湿をして日焼け止めを塗る。肌に馴染む間に簡単な朝食を済ませる。朝食の片付けが済むと洗面台に向かい、歯を磨く。続いてフェイスパウダーを軽く叩いて仕上げに色付きリップを塗る。時間は9時20分ー少し急がないと、とクローゼットへ向かう。さて今日はパンツとスカート、どちらを着ようと迷ったが、あまり気を遣わず動けるようにとパンツを選ぶ。トップスは半袖、これだけでは少し肌寒いので薄手の上着を重ねる。選んだ服を身につけ、鏡の前でひと回りして最後に顔を覗き込む。フェイスパウダーのおかげで小さなアザを上手くカバーすることが出来ていた。ショルダーバッグを下げて靴を選ぶ。スニーカーも良いけど、と思いながら履き慣れたヒールのないパンプスを突っ掛けて部屋を出た。
パタパタと急ぎ足で階段を降りて1階の共有スペースへ向かえば、私服姿の伏黒が本を読んでいた。
「おはよ」
「おう」
声をかければ伏黒は本を閉じて立ち上がり、芙蓉に向き直った。じゃあ行こう、と伏黒に声をかけるも彼は動かず、芙蓉を観察するようにじっと見つめている。芙蓉は自分の服装がおかしかったかと不安になった。
「…どこか、変?」
「あ、いや…、悪ぃ」
たった3カ月会わなかっただけで、こんなにも雰囲気が変わるものだろうかと、伏黒は思わず芙蓉から目を逸らしてしまった。率直に言うなら、今日の芙蓉はとても大人びていて綺麗だと思った。そして先程嗅ぎ取ってしまった芙蓉の香りーシャンプーだろうか、近付かないとわからないくらいの香りに伏黒は鼓動の早まりを感じていた。伏黒は不自然にならない程度に深呼吸をした。ちらと芙蓉を見遣れば、明るかった表情に僅かな翳りが見え、伏黒は内心慌てた。
「あー…、その。…よく、似合って、る」
突然降ってきた伏黒の言葉に、芙蓉は思わず彼を見上げた。視線を逸らす伏黒の頬が、ほんの少しだけ赤くなっているようにも見えた。伏黒が言葉にしてくれた事が嬉しくもあり、恥ずかしくもあり。
「…ありがと」
「…。…行くか」
伏黒は黙って歩き出した。それが照れ隠しだというのはわかっている。芙蓉は笑みを浮かべながら後を追った。
「…今日は何を買うんだ?」
当初、買い物は明日、今日は部屋の片付けと予定していたが、どうやら明日天気が悪くなるらしいという事で予定を入れ替えての外出となった。
2人は駅へ向かう為にバスに揺られている。
「うん、今日絶対買いたいのは実技で使うジャージとシャツ…かな。あと、時間があれば雑貨とか見たいな」
「場所はどうする?」
「…人が多いけど、渋谷か原宿かなって…、いい?」
その辺りが妥当だろうなと思う反面、本当に人が多いんだよなー本音を言えばあまり気が進まないが、久しぶりの芙蓉との外出、一緒に買い物。了承すれば、芙蓉は本当に嬉しそうに笑った。
駅でバスを降り、都心へ向かう電車に乗り込む。週末という事もあってやはり人の流れは多い。まずは原宿に降りる事とした。
「恵、この辺りは詳しい?」
「路線としてなら。買い物はあまり。…釘崎はよくこの辺りに行ってるらしいな」
「うん、任務が無ければ週末には必ず買い物に行くって言ってたよ」
この日、釘崎は確か任務に出ているはずだと伏黒は思った。別に見られてどうというわけではないが、何となく避けたいと思うのはプライベートの時間だからなのか、芙蓉と一緒の時間を邪魔されたくないからか。いずれにせよ、今日は気兼ねなく過ごせる。混み合う駅前の交差点での信号待ちの間、伏黒は芙蓉の手を取った。
「…はぐれると面倒だろ」
子供じみた言い訳だなと内心、伏黒は自嘲した。仮に芙蓉とはぐれたとしても、彼女の呪力を辿ればすぐに見つけ出せる、それはきっと芙蓉もわかっていると思う。それでも伏黒の手を優しく握り返してくる芙蓉がとても愛らしい。信号が変われば一斉に動き出す人波に乗るように、2人もゆっくりと歩き出す。
人の多さにはウンザリするが、こうして2人で歩いていると、“普通の”生活を送っているような気がして、またこうして2人で過ごせる時間を得られた事がとても嬉しくて、芙蓉は久しぶりの感覚に頬が緩む。
「恵」
「ん?」
「ありがとう」
「…まだ来たばっかで何も買ってねぇぞ」
そう言う伏黒の顔は穏やかで、楽しそうにも見える。久しぶりに俺も何か買おうかなと呟く伏黒に、芙蓉は人混みが苦手な彼の気遣いに感謝しつつ、軽い足取りで彼の手を引いて近くのアパレルショップへ向かった。