進境
恵の幼馴染のお名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねぇねぇねぇねぇ!今日から転校生が来るよ〜!紹介するからみんな喜んで!」
この日、ホームルームの為に教室に入って来た五条は妙なテンションで生徒に声をかけた。
6月、間もなく下旬に差し掛かる頃。
今日から高専の1年は4人となるらしいー今年は人数が多いんだな、と伏黒は思った。4月に入学した伏黒は2カ月間1人だった。6月に入り、任務で出向いた仙台で想定外のトラブルに遭い、そこで出会った現地の男子生徒ー虎杖悠仁が高専に転入する事になった。そして彼が東京に越して来た翌日には、家庭の事情で入学が遅れたという女子生徒ー釘崎野薔薇が転入。ひと学年当たり2、3人が普通だと言われているのに、4人ともなると当たり年と言われてもおかしくないくらいだ。
五条の言葉に歓声を上げたのは虎杖で、伏黒と釘崎はふーん、そうですか、などと冷めた反応を見せる。
「同級生が増えるんだよぉ?嬉しくないのぉ?」
五条の言葉に反応するのはやはり虎杖のみ。伏黒と釘崎の反応に不服なのか、五条は口を尖らせる。
「もぉ、仕方ないねぇ。…入っといで〜!」
五条がドアに声を向かって声をかければ、静かにドアが滑り開くー3人の目が集まる。
「っ、」
伏黒が息を飲んだのを目敏い虎杖は見逃さなかった。どうかした、と声をかけようとする虎杖を遮るように、五条が転入生へ自己紹介を促す。
「高峰芙蓉です、」
よろしくお願いしますと、やや緊張した面持ちで深々と頭を下げる。五条は上機嫌に口を開く。
「それぞれ自己紹介してもらいたいところなんだけど、いろいろ難しいお年頃だから僕が簡単に紹介するよ。こっちから、東北出身のカントリー娘、釘崎野薔薇」
「なっ、ちょっと!」
「で、こっちが宿儺の器、虎杖悠仁」
「よろしくな!」
「それで最後、」
「俺はいいでしょう」
のんびりとした口調の五条とは反対に、不機嫌さを思い切り張り付けた顔で伏黒はぶっきらぼうにキッパリと言った。当人以外の面々は冷えた空気に些か居心地の悪さを覚えたようだが、五条は気にする様子もない。
「…ま、それもそうだね。それじゃみんな、仲良くするんだよ。さて、1限目は実技、準備出来たら外ね」
それじゃ解散、と五条は手をヒラヒラさせながら教室を出て行った。芙蓉は宛てがわれた席に着き、荷物を置く。4人しか居ない教室、窓際から釘崎、虎杖、伏黒と並んでいて、芙蓉の席は釘崎と虎杖の間の席だ。
「…ソレ、片付けたら外行こうか」
不意に掛けられた声に芙蓉は顔を上げる。穏やかな笑みを浮かべた釘崎が立ち上がった。
「あ…と、釘崎さ」
「野薔薇でいいわ。女同士、よろしくね、芙蓉」
凛とした美しさと強さを感じさせる釘崎につられて芙蓉は笑顔を見せた。新しいクラスメイトの雰囲気に安堵しつつ、手早く荷物を片付けて立ち上がる。
「よっし、じゃあ外行こうぜ!」
「何そんなに張り切ってんのよ」
虎杖が先立って教室を出、続いて釘崎と芙蓉、最後に伏黒が続く。縦に並んで廊下を歩いていく。
「なぁなぁ高峰、伏黒と知り合い?」
「そうよ、アンタ自己紹介しなかったわよね」
虎杖は芙蓉を振り返り、釘崎は伏黒を振り返る。伏黒は小さくため息をつく。それを聞いた芙蓉は伏黒を振り返り、苦笑いを浮かべると2人に向けて口を開く。
「幼馴染、なの」
「「はぁ⁉︎マジで⁉︎」」
つくづく息が合う2人だと伏黒は再びため息をつく。
「アンタ、幼馴染が入学するなら先に言いなさいよ」
「そうだぜ伏黒、黙ってるなんて水臭いぜ」
「俺だって知らなかったんだよ」
2人に捲し立てられ、ムッとしたように伏黒が言い返し、連絡くらいしろよと芙蓉に言えば。
「え…、話、聞いてない…?」
芙蓉は驚きと戸惑いを見せる。
「…何が」
「…悟くんが、引越しとか準備で忙しいだろうから、恵に伝えといてくれるって…言ってくれたんだけど…」
申し訳なさから言葉尻が小さくなっていく芙蓉の言葉。伏黒は盛大にため息をついた。
呪いに襲われ、五条が芙蓉の家を訪れた日の翌日、芙蓉は母・千浪と共に父方の実家を訪れた。五条から与えられた3つの選択肢の内、選べるのは1つだけ。自分の人生が懸かっているように思えて、もう立ち止まっては居られないー芙蓉は自身の父親を追う事にした。優れた術師と言われた父がどんな術師だったのか、どんな信念を持った術師だったのか。どんな事でも良い、自身の糧と出来るものがあればと、縋る気持ちでの行動だった。
芙蓉は高峰家の当主を代行している叔父からは呪術師としての父を、行方不明となった現場の村人からは父の人となりを聞く事が出来た。話の中の父はとても思い遣りのある心優しい呪術師だと芙蓉は思った。術式を持って生まれたというのは、自分にしか出来ない事があるという事だ、というのが父の口癖だったらしい。家の中では上下なく平等に家人に接し、祓除の任務へ出向けば自身より他者の安寧を何よりも優先したという。父にとって最後の任務先となった村の人間は、あんな出来た人はそうそう居ないと口を揃えて言っていた。時間をかけて村人の不安を取り除くように接し、誰1人として呪いの被害を受けた者は居なかったというー父を除いて。
芙蓉は一度でいいから、そんな父に会ってみたいと思った。が、父は生死不明、自身の想いが実現するのかはわからない。けれど、可能性はゼロではない。いつか会える事を信じて、父に恥じない生き方をしていきたい。
芙蓉は自宅に戻ると、五条に連絡を入れる事にした。
この日、ホームルームの為に教室に入って来た五条は妙なテンションで生徒に声をかけた。
6月、間もなく下旬に差し掛かる頃。
今日から高専の1年は4人となるらしいー今年は人数が多いんだな、と伏黒は思った。4月に入学した伏黒は2カ月間1人だった。6月に入り、任務で出向いた仙台で想定外のトラブルに遭い、そこで出会った現地の男子生徒ー虎杖悠仁が高専に転入する事になった。そして彼が東京に越して来た翌日には、家庭の事情で入学が遅れたという女子生徒ー釘崎野薔薇が転入。ひと学年当たり2、3人が普通だと言われているのに、4人ともなると当たり年と言われてもおかしくないくらいだ。
五条の言葉に歓声を上げたのは虎杖で、伏黒と釘崎はふーん、そうですか、などと冷めた反応を見せる。
「同級生が増えるんだよぉ?嬉しくないのぉ?」
五条の言葉に反応するのはやはり虎杖のみ。伏黒と釘崎の反応に不服なのか、五条は口を尖らせる。
「もぉ、仕方ないねぇ。…入っといで〜!」
五条がドアに声を向かって声をかければ、静かにドアが滑り開くー3人の目が集まる。
「っ、」
伏黒が息を飲んだのを目敏い虎杖は見逃さなかった。どうかした、と声をかけようとする虎杖を遮るように、五条が転入生へ自己紹介を促す。
「高峰芙蓉です、」
よろしくお願いしますと、やや緊張した面持ちで深々と頭を下げる。五条は上機嫌に口を開く。
「それぞれ自己紹介してもらいたいところなんだけど、いろいろ難しいお年頃だから僕が簡単に紹介するよ。こっちから、東北出身のカントリー娘、釘崎野薔薇」
「なっ、ちょっと!」
「で、こっちが宿儺の器、虎杖悠仁」
「よろしくな!」
「それで最後、」
「俺はいいでしょう」
のんびりとした口調の五条とは反対に、不機嫌さを思い切り張り付けた顔で伏黒はぶっきらぼうにキッパリと言った。当人以外の面々は冷えた空気に些か居心地の悪さを覚えたようだが、五条は気にする様子もない。
「…ま、それもそうだね。それじゃみんな、仲良くするんだよ。さて、1限目は実技、準備出来たら外ね」
それじゃ解散、と五条は手をヒラヒラさせながら教室を出て行った。芙蓉は宛てがわれた席に着き、荷物を置く。4人しか居ない教室、窓際から釘崎、虎杖、伏黒と並んでいて、芙蓉の席は釘崎と虎杖の間の席だ。
「…ソレ、片付けたら外行こうか」
不意に掛けられた声に芙蓉は顔を上げる。穏やかな笑みを浮かべた釘崎が立ち上がった。
「あ…と、釘崎さ」
「野薔薇でいいわ。女同士、よろしくね、芙蓉」
凛とした美しさと強さを感じさせる釘崎につられて芙蓉は笑顔を見せた。新しいクラスメイトの雰囲気に安堵しつつ、手早く荷物を片付けて立ち上がる。
「よっし、じゃあ外行こうぜ!」
「何そんなに張り切ってんのよ」
虎杖が先立って教室を出、続いて釘崎と芙蓉、最後に伏黒が続く。縦に並んで廊下を歩いていく。
「なぁなぁ高峰、伏黒と知り合い?」
「そうよ、アンタ自己紹介しなかったわよね」
虎杖は芙蓉を振り返り、釘崎は伏黒を振り返る。伏黒は小さくため息をつく。それを聞いた芙蓉は伏黒を振り返り、苦笑いを浮かべると2人に向けて口を開く。
「幼馴染、なの」
「「はぁ⁉︎マジで⁉︎」」
つくづく息が合う2人だと伏黒は再びため息をつく。
「アンタ、幼馴染が入学するなら先に言いなさいよ」
「そうだぜ伏黒、黙ってるなんて水臭いぜ」
「俺だって知らなかったんだよ」
2人に捲し立てられ、ムッとしたように伏黒が言い返し、連絡くらいしろよと芙蓉に言えば。
「え…、話、聞いてない…?」
芙蓉は驚きと戸惑いを見せる。
「…何が」
「…悟くんが、引越しとか準備で忙しいだろうから、恵に伝えといてくれるって…言ってくれたんだけど…」
申し訳なさから言葉尻が小さくなっていく芙蓉の言葉。伏黒は盛大にため息をついた。
呪いに襲われ、五条が芙蓉の家を訪れた日の翌日、芙蓉は母・千浪と共に父方の実家を訪れた。五条から与えられた3つの選択肢の内、選べるのは1つだけ。自分の人生が懸かっているように思えて、もう立ち止まっては居られないー芙蓉は自身の父親を追う事にした。優れた術師と言われた父がどんな術師だったのか、どんな信念を持った術師だったのか。どんな事でも良い、自身の糧と出来るものがあればと、縋る気持ちでの行動だった。
芙蓉は高峰家の当主を代行している叔父からは呪術師としての父を、行方不明となった現場の村人からは父の人となりを聞く事が出来た。話の中の父はとても思い遣りのある心優しい呪術師だと芙蓉は思った。術式を持って生まれたというのは、自分にしか出来ない事があるという事だ、というのが父の口癖だったらしい。家の中では上下なく平等に家人に接し、祓除の任務へ出向けば自身より他者の安寧を何よりも優先したという。父にとって最後の任務先となった村の人間は、あんな出来た人はそうそう居ないと口を揃えて言っていた。時間をかけて村人の不安を取り除くように接し、誰1人として呪いの被害を受けた者は居なかったというー父を除いて。
芙蓉は一度でいいから、そんな父に会ってみたいと思った。が、父は生死不明、自身の想いが実現するのかはわからない。けれど、可能性はゼロではない。いつか会える事を信じて、父に恥じない生き方をしていきたい。
芙蓉は自宅に戻ると、五条に連絡を入れる事にした。