出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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小学生になって初めての夏休みはいい思い出がないー宿題として出されていた絵日記には書ける事がなく、仕方なく伏黒は芙蓉と津美紀の日記を見せてもらい、2人の内容に手を加え、辻褄を合わせてどうにか指示されていた最低限の数日分書き上げた。
漢字ドリルや計算ドリル、読書感想文なんかは朝早く起きて少しずつ進めていった甲斐があり、終わりそうもない、などという苦しい思いをせずに済んだ。
伏黒にとって、そんな夏休みの宿題よりも厄介だったのは芙蓉の親戚であるあの男だった。
年齢も体格もこちらの方が小さく、正に大人と子供、力の差は歴然であるにも関わらず、彼は手加減という言葉を知らないようで徹底的に伏黒をシゴキ通した。自由時間と称して日曜日だけは自由に過ごして良いと言われていたが、そんなものは宿題と身体の休息の為に使われるだけで、自由などとは程遠いものだった。とにかく身体中アザだらけ傷だらけの夏休みー。
夏休み期間をあと3日残して五条から解放された伏黒は夏休みがもう終わる、本当に良かったと、戻ってきたアパートで1人大きく息を吐いた。一方津美紀は伏黒とは対照的に、五条家では実に楽しく過ごせたようで、帰宅してからももう少し滞在していたかった、また行きたいと、名残惜しさがあるようだった。
あとの3日間は身体を休める為にゆっくり過ごそうーそう思っていたところの、夏休み最後の日。
伏黒は津美紀と昼食を済ませ、買い物に行くという津美紀を見送ると横になって本を読み始めた。程よい満腹感と疲労感に誘われて、ページを捲る手がゆっくりになり、ウトウトと瞼が閉じかける。このまま気持ちよく眠ってしまおう、睡魔に抵抗する事なく伏黒が意識を手放そうとした時。
「恵〜いる〜?」
その声に伏黒の眠気は一気に吹き飛んだ。
スチール製の薄いドアをガンガン叩く音に、もうしばらくは聞きたくなかったあの男の声。
「居留守とか無駄だからね〜?恵の呪力でわかっちゃうんだからね〜」
ほらほらぁ、観念して開けなよ〜などと言いながらまだドアを叩いている。
「ちょっとやめようよ悟くん、恵は寝てるかもしれないじゃない」
芙蓉の、少し控えめなトーンで五条を諌める声も聞こえる。伏黒は本を閉じてテーブルに置くと、渋々玄関に向かう。ドアを開けると五条は満面の笑みで、芙蓉は申し訳なさそうな顔で立っていた。
「ほぉら居たでしょ!」
「もぅ。…ごめんね、恵」
「いや…、で?」
何か用?とぶっきらぼうに尋ねる。どう見ても五条が芙蓉を連れて来たのに間違いない。
「ジャーン!夏休み最後の思い出作ろ!」
嬉しそうな五条が両手を掲げた。その手にはパンパンに膨れたビニール袋、その中は全て手持ち花火ー伏黒の、開いた口が塞がらなかった。
「…悟くんが、夏休みの間、恵はずっとがんばってたからって」
「このまま恵の夏休みを終わらせたら、僕めっちゃ嫌な奴でしょ?」
もうめっちゃ嫌な奴だよー伏黒は、喉元まで出かかったその言葉を飲み込む事にする。
「…津美紀が買い物に出てる。行くなら津美紀が戻ってからだ」
「じゃ、お邪魔しまーす」
五条は津美紀が戻るまで待つつもりなのだろう、何の断りもなく部屋に入る。さすがにそれは失礼だと芙蓉が止めにかかるが、もう五条はテーブルの前に座っていた。伏黒はひとつため息を吐き、芙蓉にも入室を促した。
3人がテーブルを囲むと、津美紀はすぐに戻ってきた。来客には驚いたようだったが、ちょっと相談があるんだけどと前置いて口を開く。
「買い物してたら同じクラスの友達とお母さんに会って、もし良かったらごはん食べに来ないかって誘われたんだけど…」
五条と芙蓉の手前、言葉尻が小さくなっている。伏黒も知っているその津美紀の友達の家には伏黒自身も何度か行った事があったし、友達もその家族も津美紀を大切にしてくれている事は充分に感じられた。津美紀1人で行ったって何ら問題はない。
「いいんじゃないか、行ってきても。…たまには俺抜きでゆっくりして来いよ」
伏黒の言葉に、津美紀は芙蓉と五条を見る。
「いいよいいよ、たまにはそんな時があっても良いでしょ。恵の事は僕がちゃぁーんと見ててあげるから心配しなくていいよ」
五条の言葉に後押しされ、漸く津美紀は笑顔を見せた。買って来た物を片付けると、津美紀は行ってきますと元気良く笑顔で部屋を出て行った。
「よし、じゃあ津美紀ちゃんいないけど、3人でこの花火全部片付けるから、そのつもりで。さ、まずはちょっと早いけど腹ごしらえね。恵、芙蓉、晩飯何がいい?」
五条の言葉に、2人は幾分血の気の引いた顔を見合わせた。
漢字ドリルや計算ドリル、読書感想文なんかは朝早く起きて少しずつ進めていった甲斐があり、終わりそうもない、などという苦しい思いをせずに済んだ。
伏黒にとって、そんな夏休みの宿題よりも厄介だったのは芙蓉の親戚であるあの男だった。
年齢も体格もこちらの方が小さく、正に大人と子供、力の差は歴然であるにも関わらず、彼は手加減という言葉を知らないようで徹底的に伏黒をシゴキ通した。自由時間と称して日曜日だけは自由に過ごして良いと言われていたが、そんなものは宿題と身体の休息の為に使われるだけで、自由などとは程遠いものだった。とにかく身体中アザだらけ傷だらけの夏休みー。
夏休み期間をあと3日残して五条から解放された伏黒は夏休みがもう終わる、本当に良かったと、戻ってきたアパートで1人大きく息を吐いた。一方津美紀は伏黒とは対照的に、五条家では実に楽しく過ごせたようで、帰宅してからももう少し滞在していたかった、また行きたいと、名残惜しさがあるようだった。
あとの3日間は身体を休める為にゆっくり過ごそうーそう思っていたところの、夏休み最後の日。
伏黒は津美紀と昼食を済ませ、買い物に行くという津美紀を見送ると横になって本を読み始めた。程よい満腹感と疲労感に誘われて、ページを捲る手がゆっくりになり、ウトウトと瞼が閉じかける。このまま気持ちよく眠ってしまおう、睡魔に抵抗する事なく伏黒が意識を手放そうとした時。
「恵〜いる〜?」
その声に伏黒の眠気は一気に吹き飛んだ。
スチール製の薄いドアをガンガン叩く音に、もうしばらくは聞きたくなかったあの男の声。
「居留守とか無駄だからね〜?恵の呪力でわかっちゃうんだからね〜」
ほらほらぁ、観念して開けなよ〜などと言いながらまだドアを叩いている。
「ちょっとやめようよ悟くん、恵は寝てるかもしれないじゃない」
芙蓉の、少し控えめなトーンで五条を諌める声も聞こえる。伏黒は本を閉じてテーブルに置くと、渋々玄関に向かう。ドアを開けると五条は満面の笑みで、芙蓉は申し訳なさそうな顔で立っていた。
「ほぉら居たでしょ!」
「もぅ。…ごめんね、恵」
「いや…、で?」
何か用?とぶっきらぼうに尋ねる。どう見ても五条が芙蓉を連れて来たのに間違いない。
「ジャーン!夏休み最後の思い出作ろ!」
嬉しそうな五条が両手を掲げた。その手にはパンパンに膨れたビニール袋、その中は全て手持ち花火ー伏黒の、開いた口が塞がらなかった。
「…悟くんが、夏休みの間、恵はずっとがんばってたからって」
「このまま恵の夏休みを終わらせたら、僕めっちゃ嫌な奴でしょ?」
もうめっちゃ嫌な奴だよー伏黒は、喉元まで出かかったその言葉を飲み込む事にする。
「…津美紀が買い物に出てる。行くなら津美紀が戻ってからだ」
「じゃ、お邪魔しまーす」
五条は津美紀が戻るまで待つつもりなのだろう、何の断りもなく部屋に入る。さすがにそれは失礼だと芙蓉が止めにかかるが、もう五条はテーブルの前に座っていた。伏黒はひとつため息を吐き、芙蓉にも入室を促した。
3人がテーブルを囲むと、津美紀はすぐに戻ってきた。来客には驚いたようだったが、ちょっと相談があるんだけどと前置いて口を開く。
「買い物してたら同じクラスの友達とお母さんに会って、もし良かったらごはん食べに来ないかって誘われたんだけど…」
五条と芙蓉の手前、言葉尻が小さくなっている。伏黒も知っているその津美紀の友達の家には伏黒自身も何度か行った事があったし、友達もその家族も津美紀を大切にしてくれている事は充分に感じられた。津美紀1人で行ったって何ら問題はない。
「いいんじゃないか、行ってきても。…たまには俺抜きでゆっくりして来いよ」
伏黒の言葉に、津美紀は芙蓉と五条を見る。
「いいよいいよ、たまにはそんな時があっても良いでしょ。恵の事は僕がちゃぁーんと見ててあげるから心配しなくていいよ」
五条の言葉に後押しされ、漸く津美紀は笑顔を見せた。買って来た物を片付けると、津美紀は行ってきますと元気良く笑顔で部屋を出て行った。
「よし、じゃあ津美紀ちゃんいないけど、3人でこの花火全部片付けるから、そのつもりで。さ、まずはちょっと早いけど腹ごしらえね。恵、芙蓉、晩飯何がいい?」
五条の言葉に、2人は幾分血の気の引いた顔を見合わせた。