進境
恵の幼馴染のお名前は?
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受け入れ先の病院の都合とケガの程度差で、芙蓉と佐山は別の病院へと搬送される事になった。幸い芙蓉に大きなケガはなく、軽い足の捻挫と飛んできた瓦礫による打撲や小さな擦過傷の診断をされた。
「芙蓉」
診察を終えると、親御さんには連絡してあるからと看護師に言われた。捻挫の箇所に貼るようにと渡された湿布を手に、待合室でぼんやり座っていると名を呼ばれた。振り返ると不安げな顔の、息を切らせた千浪だった。連絡を受けて慌てて来たらしく、部屋着だろうラフな服に薄い上着を羽織り、バッグも持たずに財布とスマホ、車のキーをそのまま手に持っていた。
「大丈夫?」
芙蓉は黙って頷いた。沈痛な面持ちで俯いたままの娘に千浪はかける言葉を見つけられず、とにかく家に帰ろうと促すので精一杯だった。
「や。大きなケガが無くて良かったよ」
陽は落ち、辺りはもう夜の空気に包まれている。自宅に到着し、車を降りたところで暗がりから声がかかり、芙蓉と千浪は驚きつつ身構える。
「僕だよ僕」
そんな怖い顔しないでよと、外灯の薄明かりに白い髪がキラキラと輝いていた。千浪が声をかける。
「…悟くん?どうして?」
「ん〜、今すぐ話しても良いんだけど、長くなると思うから家に入って話さない?」
五条の来訪で、何となく今後の事を理解した千浪。ドアを解錠して五条を部屋へと招き入れた。
「芙蓉、今日は災難だったね」
リビングのソファに座り、千浪が淹れた甘いミルクティーを飲んで五条が事も無げに言った。芙蓉にも同じミルクティーが出されているが、手をつける気にならないようで、カップをじっと見つめていた。千浪はキッチンからリビングに戻って来ると芙蓉の隣に座る。
「…なんで、知ってるの…?」
「実は今日みたいに、祓除の任務でトラブルが起きる事は珍しくないんだ。…ま、トラブルはない方が良いに決まってるけどね。基本的に、祓除の現場で巻き込まれた一般人の事は補償の関係もあって、高専に報告される事になってる。名前に住所、勤務先と言った個人情報も含めてね。…で、今回はその中に芙蓉の名前があるのを伊地知が見つけて、僕に知らせてきたってワケ」
「…じゃあ、梓は…?梓の事も、わかるんでしょう?梓は大丈夫なの⁉︎」
芙蓉は声を荒げて五条に問い掛けた。五条はミルクティーをひと口啜るとポケットからスマホを取り出して操作し、さらさらとスワイプする。
「…佐山梓、浦見第一高等学校1年。同学校所属の高峰芙蓉の友人で、共に被害に遭う。ケガの程度は軽傷であるものの、頭部負傷の為大事を取り一晩入院の予定」
何かを読み上げているような五条の言葉に芙蓉は良かった、と安堵の息を漏らした。
「うん、まぁ…、芙蓉の友達はともかく、僕としては芙蓉の方が心配なんだけどね?」
「…私…?」
五条は徐にサングラスを外した。
「…どういうワケか、ここ最近呪霊がやたらと活動的なんだよね。時期的に数が増えるのは仕方ないんだけど、変に攻撃的になってる奴もいるくらいでさぁ」
「…それが、何か関係あるの?」
「呪霊はより強い呪いになる為に、自分よりも弱い、呪力を持った存在を取り込もうとする」
「…それって、」
「そ。つまり芙蓉のような、一般人よりも呪力を持つ人間は呪いに狙われやすいって事」
「そんな…、っ、あ、でも私、前に五条の家で教わった呪力操作はいつもやってるし、」
「もうそういう次元の話じゃないんだよ」
五条の言葉が冷たい刃のように芙蓉の言葉を両断した。
「さっき言った呪いの問題もあるとは思う。けどそれ以上に芙蓉の呪力が変化してきてるんだ。去年の夏に術式を発現したのも影響あるんじゃないかな、今までの呪力操作ではもう芙蓉の呪力を抑えきれなくなってる」
こうして話してる今もそう、見てればわかるよと五条の碧眼が煌めいている。
「悟くん、」
「悪いけど千浪ちゃんは少し黙ってて。僕は純粋に、芙蓉がどう考えるかを知りたいんだ。…千浪ちゃん前に言ってたよね、自分で決めさせるって」
落ち着いた五条の言葉には有無を言わせぬ強さがあり、千浪は口を噤むしかなかった。
「さて芙蓉、少し落ち着いて考えて欲しいんだけど」
青白い顔で芙蓉は五条を見る。
「今のままじゃ芙蓉は勿論、大事な友達も危険な目に遭うだろう事はわかると思うんだけど」
芙蓉は静かに頷く。
「今出来る、芙蓉と芙蓉の友達を守る方法は3つ。
…まずは1つ目、五条の家で、前にやったような呪力操作を身につける。…今までのものとは比べ物にならないくらいに強力な、それこそ現役の術師がやるような操作が必要になるからね、鍛錬も結構厳しくなる上にかなり時間もかかる。現実的な事を言えば、効率が悪いからお勧めは出来ないけど、方法の1つとして、ね。
2つ目。千浪ちゃんのように自分に縛りを科して、術式を封印して非術師として生きていく」
芙蓉は驚いた顔で隣に座る千浪を振り返った。
「芙蓉」
診察を終えると、親御さんには連絡してあるからと看護師に言われた。捻挫の箇所に貼るようにと渡された湿布を手に、待合室でぼんやり座っていると名を呼ばれた。振り返ると不安げな顔の、息を切らせた千浪だった。連絡を受けて慌てて来たらしく、部屋着だろうラフな服に薄い上着を羽織り、バッグも持たずに財布とスマホ、車のキーをそのまま手に持っていた。
「大丈夫?」
芙蓉は黙って頷いた。沈痛な面持ちで俯いたままの娘に千浪はかける言葉を見つけられず、とにかく家に帰ろうと促すので精一杯だった。
「や。大きなケガが無くて良かったよ」
陽は落ち、辺りはもう夜の空気に包まれている。自宅に到着し、車を降りたところで暗がりから声がかかり、芙蓉と千浪は驚きつつ身構える。
「僕だよ僕」
そんな怖い顔しないでよと、外灯の薄明かりに白い髪がキラキラと輝いていた。千浪が声をかける。
「…悟くん?どうして?」
「ん〜、今すぐ話しても良いんだけど、長くなると思うから家に入って話さない?」
五条の来訪で、何となく今後の事を理解した千浪。ドアを解錠して五条を部屋へと招き入れた。
「芙蓉、今日は災難だったね」
リビングのソファに座り、千浪が淹れた甘いミルクティーを飲んで五条が事も無げに言った。芙蓉にも同じミルクティーが出されているが、手をつける気にならないようで、カップをじっと見つめていた。千浪はキッチンからリビングに戻って来ると芙蓉の隣に座る。
「…なんで、知ってるの…?」
「実は今日みたいに、祓除の任務でトラブルが起きる事は珍しくないんだ。…ま、トラブルはない方が良いに決まってるけどね。基本的に、祓除の現場で巻き込まれた一般人の事は補償の関係もあって、高専に報告される事になってる。名前に住所、勤務先と言った個人情報も含めてね。…で、今回はその中に芙蓉の名前があるのを伊地知が見つけて、僕に知らせてきたってワケ」
「…じゃあ、梓は…?梓の事も、わかるんでしょう?梓は大丈夫なの⁉︎」
芙蓉は声を荒げて五条に問い掛けた。五条はミルクティーをひと口啜るとポケットからスマホを取り出して操作し、さらさらとスワイプする。
「…佐山梓、浦見第一高等学校1年。同学校所属の高峰芙蓉の友人で、共に被害に遭う。ケガの程度は軽傷であるものの、頭部負傷の為大事を取り一晩入院の予定」
何かを読み上げているような五条の言葉に芙蓉は良かった、と安堵の息を漏らした。
「うん、まぁ…、芙蓉の友達はともかく、僕としては芙蓉の方が心配なんだけどね?」
「…私…?」
五条は徐にサングラスを外した。
「…どういうワケか、ここ最近呪霊がやたらと活動的なんだよね。時期的に数が増えるのは仕方ないんだけど、変に攻撃的になってる奴もいるくらいでさぁ」
「…それが、何か関係あるの?」
「呪霊はより強い呪いになる為に、自分よりも弱い、呪力を持った存在を取り込もうとする」
「…それって、」
「そ。つまり芙蓉のような、一般人よりも呪力を持つ人間は呪いに狙われやすいって事」
「そんな…、っ、あ、でも私、前に五条の家で教わった呪力操作はいつもやってるし、」
「もうそういう次元の話じゃないんだよ」
五条の言葉が冷たい刃のように芙蓉の言葉を両断した。
「さっき言った呪いの問題もあるとは思う。けどそれ以上に芙蓉の呪力が変化してきてるんだ。去年の夏に術式を発現したのも影響あるんじゃないかな、今までの呪力操作ではもう芙蓉の呪力を抑えきれなくなってる」
こうして話してる今もそう、見てればわかるよと五条の碧眼が煌めいている。
「悟くん、」
「悪いけど千浪ちゃんは少し黙ってて。僕は純粋に、芙蓉がどう考えるかを知りたいんだ。…千浪ちゃん前に言ってたよね、自分で決めさせるって」
落ち着いた五条の言葉には有無を言わせぬ強さがあり、千浪は口を噤むしかなかった。
「さて芙蓉、少し落ち着いて考えて欲しいんだけど」
青白い顔で芙蓉は五条を見る。
「今のままじゃ芙蓉は勿論、大事な友達も危険な目に遭うだろう事はわかると思うんだけど」
芙蓉は静かに頷く。
「今出来る、芙蓉と芙蓉の友達を守る方法は3つ。
…まずは1つ目、五条の家で、前にやったような呪力操作を身につける。…今までのものとは比べ物にならないくらいに強力な、それこそ現役の術師がやるような操作が必要になるからね、鍛錬も結構厳しくなる上にかなり時間もかかる。現実的な事を言えば、効率が悪いからお勧めは出来ないけど、方法の1つとして、ね。
2つ目。千浪ちゃんのように自分に縛りを科して、術式を封印して非術師として生きていく」
芙蓉は驚いた顔で隣に座る千浪を振り返った。