進境
恵の幼馴染のお名前は?
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翌日、芙蓉はホームルーム前の賑やかな教室に入って席に着く。部活を始めたらしい佐山と瀧井はまだ朝練らしく、席が空いていた。特に気にする事なく、芙蓉は荷物の片付けをしつつ、1限目の準備する。
「高峰、昨日はごめん!」
何の前触れもなく掛けられた声に芙蓉は飛び上がった。振り返れば瀧井ー朝練を終えて来ていたようだ。
「え、あ、」
「…昨日部活の仲間に、いきなりアレはナシだって、失礼過ぎるって散々言われて。よく考えてみて、確かにアレは悪かったって思って。ほんっとごめん!」
捲し立てる瀧井に、何事かとクラスメイトの視線が集まりつつある。芙蓉はとりあえずその場を収める為に謝罪を受ける事にしよう、そう思って口を開こうとした。
「何騒いでるの?」
朝練を終えたらしい佐山が現れ、首を傾げていた。席に着いて荷物を片付ける彼女に芙蓉が事情を説明しようとすると、瀧井が口を挟もうと顔を出す。
「…あんたに聞いてない。私は芙蓉に聞いてるの」
佐山の言葉に芙蓉は昨日考えた、瀧井に謝罪という事はもう少し考えてからにしようと思い直した。ピシャリと言い切られた瀧井は目に見えて落ち込んでいるのがわかった。少々気の毒な気もするが、本人の至らなさが発端でもある為、とりあえず芙蓉は昨日の出来事を伝えた。
「…うん、それは瀧井が悪いわ」
「はぃ…」
この2人は同じ中学出身だったかと思う程に佐山は瀧井を諭していく。佐山を見ながら、人は見かけによらないなと芙蓉は思った。佐山を見た時に、おっとりしていそうというのが芙蓉の第一印象だった。それがこんなにハッキリと他人に説教が出来るとは予想だにしなかった。
「…芙蓉は何がいい?」
「え?」
「瀧井に今回の謝罪として、お昼に購買でパン買って来るように言ったからさ」
「えぇ…」
そこまでする必要はないと芙蓉は断るも、瀧井は変な意地を張っているように一歩も譲ろうとしなかった。仕方なしに彼のお勧めを1つ頼む事でその場は落ち着き、程なくして担任が現れホームルームが始まった。
午前中の授業が終わると、瀧井はそれじゃあ行ってくるぜと勇んで教室を出て行った。そんな彼を見送りながら、2人は芙蓉は持参した弁当を、佐山はコンビニのおにぎりを食べ始める。
「芙蓉もさ、もっと言いたい事はハッキリ言った方がいいよ。…瀧井みたいな勘違いする奴、結構多いから」
彼女の言う、勘違いの意味が今ひとつわからないが、とりあえず返事をして先を促す。
「結局さ、自分の事守れるのって自分しかいないじゃん?相手の事を気遣うのも大事だけど、ひと言に友達って言ったって、どれくらいの距離感で捉えてるかは人それぞれだし。たまにその距離感間違える奴もいるしさ」
芙蓉は佐山が過去に人間関係で苦労したんだろうと思うと同時に、何処となく伏黒の考えに似ている、気風の良い彼女にとても好感を持った。
「…ありがとう」
「? お礼言われる事なんて何もないと思うけど?」
「梓はそうかもしれないけど、私にはすごく響いたよ」
芙蓉の言葉に、佐山が口を開こうとすると。
「ただいま戻りました!」
「…。ホントタイミング悪い奴っているよね」
悪態をつく佐山、パンを抱えて首を傾げる瀧井。芙蓉は思わず吹き出した。
「え、なになに?」
「何でもないよ。で、戦利品は?」
佐山の言葉に、瀧井は2人の机にパンを置く。佐山に2個、芙蓉に1個。満足そうな、ドヤ顔の瀧井。
「何でこの配分?…どう考えてもさ、芙蓉に迷惑かけてんだから芙蓉の方を多くするか同数にすべきでしょ?」
「や、高峰が1つで良いって」
佐山は手をヒラヒラ振りながらため息をついた。
「あ…、大丈夫だから、私お弁当あるし。パンも今食べられないと思うから、1個で十分だよ。ていうか気持ちだけで全然問題ないし」
何処となく険悪な空気になりそうな佐山と瀧井の間で芙蓉が取り持つように口を挟む。
ため息をつく佐山、笑顔の瀧井。2人とも悪意を持って発言したり行動したりしているわけではないが、悪意がないからと言って相手の発言や行動を否定するような事、相手を傷付けるような事が許されるはずもない。佐山が瀧井のことを“勘違いする奴”と言っていたが、それは恐らく彼が言葉の裏を読み取る事をしない、出来ない、或いは意図的に読まない、という事を言っているのだろう。佐山はそのような事で芙蓉が嫌な思いをしないようにと気遣っての発言をしたようだった。
少なくとも、芙蓉が中学生の頃には瀧井のように、変にフレンドリーな人間は居なかった。互いの様子を見て、互いを知ってから少しずつ自分を出していく、それが人間関係の構築方法だと思っていた芙蓉にとって、瀧井はある意味未知のタイプと言えた。
ともあれ、瀧井の件をキッカケに、芙蓉と佐山はより親しくなった。連絡先を交換したり、佐山の部活がない日は共に寄り道をして帰ったり。
5月に入れば、2人は佐山の部活が休みの日に一緒に遊びに行こうという約束をした。行き先は特に決めず、街へ出てから考えようという緩い予定。
新しい友人との外出がとても新鮮に感じられ、芙蓉はその日を楽しみに過ごしていた。
「高峰、昨日はごめん!」
何の前触れもなく掛けられた声に芙蓉は飛び上がった。振り返れば瀧井ー朝練を終えて来ていたようだ。
「え、あ、」
「…昨日部活の仲間に、いきなりアレはナシだって、失礼過ぎるって散々言われて。よく考えてみて、確かにアレは悪かったって思って。ほんっとごめん!」
捲し立てる瀧井に、何事かとクラスメイトの視線が集まりつつある。芙蓉はとりあえずその場を収める為に謝罪を受ける事にしよう、そう思って口を開こうとした。
「何騒いでるの?」
朝練を終えたらしい佐山が現れ、首を傾げていた。席に着いて荷物を片付ける彼女に芙蓉が事情を説明しようとすると、瀧井が口を挟もうと顔を出す。
「…あんたに聞いてない。私は芙蓉に聞いてるの」
佐山の言葉に芙蓉は昨日考えた、瀧井に謝罪という事はもう少し考えてからにしようと思い直した。ピシャリと言い切られた瀧井は目に見えて落ち込んでいるのがわかった。少々気の毒な気もするが、本人の至らなさが発端でもある為、とりあえず芙蓉は昨日の出来事を伝えた。
「…うん、それは瀧井が悪いわ」
「はぃ…」
この2人は同じ中学出身だったかと思う程に佐山は瀧井を諭していく。佐山を見ながら、人は見かけによらないなと芙蓉は思った。佐山を見た時に、おっとりしていそうというのが芙蓉の第一印象だった。それがこんなにハッキリと他人に説教が出来るとは予想だにしなかった。
「…芙蓉は何がいい?」
「え?」
「瀧井に今回の謝罪として、お昼に購買でパン買って来るように言ったからさ」
「えぇ…」
そこまでする必要はないと芙蓉は断るも、瀧井は変な意地を張っているように一歩も譲ろうとしなかった。仕方なしに彼のお勧めを1つ頼む事でその場は落ち着き、程なくして担任が現れホームルームが始まった。
午前中の授業が終わると、瀧井はそれじゃあ行ってくるぜと勇んで教室を出て行った。そんな彼を見送りながら、2人は芙蓉は持参した弁当を、佐山はコンビニのおにぎりを食べ始める。
「芙蓉もさ、もっと言いたい事はハッキリ言った方がいいよ。…瀧井みたいな勘違いする奴、結構多いから」
彼女の言う、勘違いの意味が今ひとつわからないが、とりあえず返事をして先を促す。
「結局さ、自分の事守れるのって自分しかいないじゃん?相手の事を気遣うのも大事だけど、ひと言に友達って言ったって、どれくらいの距離感で捉えてるかは人それぞれだし。たまにその距離感間違える奴もいるしさ」
芙蓉は佐山が過去に人間関係で苦労したんだろうと思うと同時に、何処となく伏黒の考えに似ている、気風の良い彼女にとても好感を持った。
「…ありがとう」
「? お礼言われる事なんて何もないと思うけど?」
「梓はそうかもしれないけど、私にはすごく響いたよ」
芙蓉の言葉に、佐山が口を開こうとすると。
「ただいま戻りました!」
「…。ホントタイミング悪い奴っているよね」
悪態をつく佐山、パンを抱えて首を傾げる瀧井。芙蓉は思わず吹き出した。
「え、なになに?」
「何でもないよ。で、戦利品は?」
佐山の言葉に、瀧井は2人の机にパンを置く。佐山に2個、芙蓉に1個。満足そうな、ドヤ顔の瀧井。
「何でこの配分?…どう考えてもさ、芙蓉に迷惑かけてんだから芙蓉の方を多くするか同数にすべきでしょ?」
「や、高峰が1つで良いって」
佐山は手をヒラヒラ振りながらため息をついた。
「あ…、大丈夫だから、私お弁当あるし。パンも今食べられないと思うから、1個で十分だよ。ていうか気持ちだけで全然問題ないし」
何処となく険悪な空気になりそうな佐山と瀧井の間で芙蓉が取り持つように口を挟む。
ため息をつく佐山、笑顔の瀧井。2人とも悪意を持って発言したり行動したりしているわけではないが、悪意がないからと言って相手の発言や行動を否定するような事、相手を傷付けるような事が許されるはずもない。佐山が瀧井のことを“勘違いする奴”と言っていたが、それは恐らく彼が言葉の裏を読み取る事をしない、出来ない、或いは意図的に読まない、という事を言っているのだろう。佐山はそのような事で芙蓉が嫌な思いをしないようにと気遣っての発言をしたようだった。
少なくとも、芙蓉が中学生の頃には瀧井のように、変にフレンドリーな人間は居なかった。互いの様子を見て、互いを知ってから少しずつ自分を出していく、それが人間関係の構築方法だと思っていた芙蓉にとって、瀧井はある意味未知のタイプと言えた。
ともあれ、瀧井の件をキッカケに、芙蓉と佐山はより親しくなった。連絡先を交換したり、佐山の部活がない日は共に寄り道をして帰ったり。
5月に入れば、2人は佐山の部活が休みの日に一緒に遊びに行こうという約束をした。行き先は特に決めず、街へ出てから考えようという緩い予定。
新しい友人との外出がとても新鮮に感じられ、芙蓉はその日を楽しみに過ごしていた。