出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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五条が芙蓉の家を訪れ、伏黒と接触してからひと月が経とうとしていた。春の気配は少しずつ薄れ、季節は夏の色へと変わり始めている。
あの日の事は、どちらから話そうとも聞こうともしなかった。話したければ話せば良いし、聞きたければ聞けば良い。それぞれ、まだ幼いながらもお互いに踏み込んで良い部分の線引きをしているようだった。他のクラスメイトのように、相手の事情なり心情なりを無視して土足で踏み荒らすような事はしないーそこが2人にとって互いに居心地の良いところだ。
しばらく姿を見せなかった五条が2人の前に現れたのは、夏休みを目前に控えた7月半ばに差し掛かる頃だった。
「や。2人とも元気にしてた?」
学校からの帰り道、互いに読んだ本について話をしていた。通学路にある自販機に寄りかかり、五条は手にしていた缶ジュースをひと息に呷る。
「あ、悟くん」
芙蓉が笑みを浮かべて五条に手を振るのと対照に、伏黒は嫌悪を隠そうともせずに彼を見上げている。そんな2人の様子に、空缶を近くの塵入れへ投げ込みながら五条は笑った。
「さて、そろそろ夏休みだねぇ。何か予定でも立てた?」
突拍子もない五条の言葉に、思わず芙蓉と伏黒は顔を見合わせた。そんな2人に構わず、五条は満面の笑みで続ける。
「やぁっと面倒事が整理ついてね。これからは思う存分、ビシバシ鍛錬が出来るようになったんだよね」
「…?」
「という事で、恵、夏休みは僕と合宿ね」
「はぁ?」
全くもって意味がわからないー伏黒の眉間の皺が深くなった。芙蓉は首を傾げている。
「あぁ、芙蓉と津美紀ちゃんも一緒に来るといいよ。違った環境で生活するのもいい気分転換になると思うからね。芙蓉のお母さんにはもう話してあるから大丈夫だよ」
「わぁ、すごく素敵…!」
目の前に広がる日本庭園。隅々まで手入れが行き届いた景色に声を上げたのは津美紀だった。
五条の言っていた事が現実となっていた。
夏休みの間、芙蓉、伏黒、津美紀の3人は芙蓉の母の実家である五条家に滞在する事になった。学校からは離れるものの、宿題だって出来るし、衣食住特に問題はない。
「こんなところで過ごせるなんて夢みたい」
「…」
はしゃぐ津美紀、暗い顔の伏黒。
『恵は2人と別メニューだから。のんびり過ごせるなんて思わないでね』
端正な顔でにこやかに笑うあの悪魔ーもとい、五条が伏黒の脳裏に浮かぶ。
どうやら自分はもう呪術師とやらになる事が確定しているらしいー伏黒は他人事のように思った。
以前、芙蓉と一緒に目撃した“アレ”は呪いだそうで、自分にはその呪いを祓うー撃退する能力があるのだと言われた。
そして五条はこの夏休みで呪術師の何たるか、基本的な事を伏黒に叩き込むつもりらしい。
詳しい事はわからないが、恐らく芙蓉にも同じ力があるのではないかと伏黒は何となく感じていた。実際、芙蓉も呪いが見えるようだし、津美紀からは感じられないものー上手く表現出来ないが、空気感とでもいうか、そんなものを芙蓉から感じている。それなのに何故自分だけーそんな想いが出てきた事に些か驚き、伏黒はかぶりを振った。
芙蓉は津美紀と同じように、屈託のない笑顔と優しさをもって、真っ直ぐに自分と向き合ってくれる。
伏黒は津美紀と同じような気持ちを芙蓉に抱いて良いものなのだろうかと、複雑な気持ちになった。津美紀に対しては、血の繋がりはないものの自身の姉である事に間違いないし、彼女を守る事が、彼女の気持ちに応える事になるのではないかと思っている。
では、芙蓉はー
「何ボサっとしてんの。のんびりしてる時間はないよ」
不意に背後から飛んできた五条の言葉に、伏黒は冷や水をかけられたような気分だった。驚いたのは間違いないのだが、その顔を見られるのはなんだか癪だーありったけの平常心を総動員して、何もないような顔で五条を振り返る。五条は伏黒の頭をポンポン叩く。
「じゃ、2人とも。僕と恵は出かけてくるから、遊ぶだけじゃなく宿題もやっておくんだよ」
素直に返事をする芙蓉と津美紀。特に津美紀は笑顔で伏黒にがんばって、と手を振ったーこの時津美紀は2人が夏休みの自由研究、昆虫採集にでも行くのだろうと思っていたようだ。
芙蓉は虫が嫌いだから、自分が芙蓉の付き添いのような立場なのだと思い、採集に行く2人を応援したつもりだったそうだーこれが思い違いだった事に気付いたのは、夜になって戻ってきた全身アザだらけの伏黒を見た時だったとかいうのはまた別の話。
あの日の事は、どちらから話そうとも聞こうともしなかった。話したければ話せば良いし、聞きたければ聞けば良い。それぞれ、まだ幼いながらもお互いに踏み込んで良い部分の線引きをしているようだった。他のクラスメイトのように、相手の事情なり心情なりを無視して土足で踏み荒らすような事はしないーそこが2人にとって互いに居心地の良いところだ。
しばらく姿を見せなかった五条が2人の前に現れたのは、夏休みを目前に控えた7月半ばに差し掛かる頃だった。
「や。2人とも元気にしてた?」
学校からの帰り道、互いに読んだ本について話をしていた。通学路にある自販機に寄りかかり、五条は手にしていた缶ジュースをひと息に呷る。
「あ、悟くん」
芙蓉が笑みを浮かべて五条に手を振るのと対照に、伏黒は嫌悪を隠そうともせずに彼を見上げている。そんな2人の様子に、空缶を近くの塵入れへ投げ込みながら五条は笑った。
「さて、そろそろ夏休みだねぇ。何か予定でも立てた?」
突拍子もない五条の言葉に、思わず芙蓉と伏黒は顔を見合わせた。そんな2人に構わず、五条は満面の笑みで続ける。
「やぁっと面倒事が整理ついてね。これからは思う存分、ビシバシ鍛錬が出来るようになったんだよね」
「…?」
「という事で、恵、夏休みは僕と合宿ね」
「はぁ?」
全くもって意味がわからないー伏黒の眉間の皺が深くなった。芙蓉は首を傾げている。
「あぁ、芙蓉と津美紀ちゃんも一緒に来るといいよ。違った環境で生活するのもいい気分転換になると思うからね。芙蓉のお母さんにはもう話してあるから大丈夫だよ」
「わぁ、すごく素敵…!」
目の前に広がる日本庭園。隅々まで手入れが行き届いた景色に声を上げたのは津美紀だった。
五条の言っていた事が現実となっていた。
夏休みの間、芙蓉、伏黒、津美紀の3人は芙蓉の母の実家である五条家に滞在する事になった。学校からは離れるものの、宿題だって出来るし、衣食住特に問題はない。
「こんなところで過ごせるなんて夢みたい」
「…」
はしゃぐ津美紀、暗い顔の伏黒。
『恵は2人と別メニューだから。のんびり過ごせるなんて思わないでね』
端正な顔でにこやかに笑うあの悪魔ーもとい、五条が伏黒の脳裏に浮かぶ。
どうやら自分はもう呪術師とやらになる事が確定しているらしいー伏黒は他人事のように思った。
以前、芙蓉と一緒に目撃した“アレ”は呪いだそうで、自分にはその呪いを祓うー撃退する能力があるのだと言われた。
そして五条はこの夏休みで呪術師の何たるか、基本的な事を伏黒に叩き込むつもりらしい。
詳しい事はわからないが、恐らく芙蓉にも同じ力があるのではないかと伏黒は何となく感じていた。実際、芙蓉も呪いが見えるようだし、津美紀からは感じられないものー上手く表現出来ないが、空気感とでもいうか、そんなものを芙蓉から感じている。それなのに何故自分だけーそんな想いが出てきた事に些か驚き、伏黒はかぶりを振った。
芙蓉は津美紀と同じように、屈託のない笑顔と優しさをもって、真っ直ぐに自分と向き合ってくれる。
伏黒は津美紀と同じような気持ちを芙蓉に抱いて良いものなのだろうかと、複雑な気持ちになった。津美紀に対しては、血の繋がりはないものの自身の姉である事に間違いないし、彼女を守る事が、彼女の気持ちに応える事になるのではないかと思っている。
では、芙蓉はー
「何ボサっとしてんの。のんびりしてる時間はないよ」
不意に背後から飛んできた五条の言葉に、伏黒は冷や水をかけられたような気分だった。驚いたのは間違いないのだが、その顔を見られるのはなんだか癪だーありったけの平常心を総動員して、何もないような顔で五条を振り返る。五条は伏黒の頭をポンポン叩く。
「じゃ、2人とも。僕と恵は出かけてくるから、遊ぶだけじゃなく宿題もやっておくんだよ」
素直に返事をする芙蓉と津美紀。特に津美紀は笑顔で伏黒にがんばって、と手を振ったーこの時津美紀は2人が夏休みの自由研究、昆虫採集にでも行くのだろうと思っていたようだ。
芙蓉は虫が嫌いだから、自分が芙蓉の付き添いのような立場なのだと思い、採集に行く2人を応援したつもりだったそうだーこれが思い違いだった事に気付いたのは、夜になって戻ってきた全身アザだらけの伏黒を見た時だったとかいうのはまた別の話。