変転
恵の幼馴染のお名前は?
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卒業式の後、伏黒と芙蓉、千浪、五条の4人で昼食をとった。それから伏黒と芙蓉は一旦帰宅し、制服から私服に着替えて津美紀の入院している病院へ向かった。
「津美紀ちゃん、こんにちは」
病室へ入り、声をかける。2人は中学校の卒業を報告し、伏黒と芙蓉はそれぞれ別の高校へ進学する事を伝えた。勿論津美紀からの言葉はないが、改めて言葉にしてみると、明日からの2人の生活が、今までの日常が大きく変わってしまう事を突き付けられたようだった。
「また来るな」
「津美紀ちゃん、またね」
静かに再会を約束し、2人は病院を後にした。
「…さて、これからどうするか」
時刻は15時を回ったところで、病院を出た2人は駅近くの、通りに面したカフェでひと息ついていた。
「この辺ブラつくか、家でのんびりするか、だよね…、あ、今日は夜ごはんも考えないと」
「…? 門限はどうした」
伏黒の言葉に芙蓉はニカっと笑う。
「お母さんが、もう中学校卒業したから、門限変えるって言ってて。今日は特別に9時で良いって」
門限の時間は伏黒は千浪の気遣いだと悟った。今日を最後に、芙蓉とは暫く会えなくなるし、会う約束も出来ない。更に大きく言えば、伏黒と芙蓉それぞれ住む世界が違ってしまうという事だ。
「そうか。…なら晩飯も含めて考えないとな」
せっかく与えて貰った時間を無駄に過ごすのは気が引ける。伏黒はコーヒーを啜った。
「芙蓉はどうしたい?」
「んー…特にどうっていうのはないんだよね。何か買いたいとか、見たいっていうものもないし。だからこのままアパート戻っても良いかなって。のんびりしてから夜ごはん食べに行ってもいいと思うし、何か買って帰ってアパートで食べてもいいと思うし…」
窓の外では忙しく車が行き来している。交差点の信号が変わる度、止まっていた車列が一斉に動き出す。
「…あ、デリバリーっていう手もあるね」
ちょうどデリバリーピザのバイクが走り去って行ったのを芙蓉の目が捉えていた。芙蓉の家でも伏黒も、デリバリーピザという選択肢は今までなかったのもあって、2人の気持ちを掴んだようだった。
「…決まりだな」
アパートへの道中、2人は近くのスーパーへ立ち寄り、飲み物やお菓子を買い込んだ。お菓子やピザをつまみながらのんびり過ごそうという事になった。
アパートに入れば、芙蓉が片付けの手伝いに来た時よりも更に物が減り、リビングからは生活感がほとんど消えていた。飲み物はガラガラの冷蔵庫に入れ、お菓子はすぐ食べられるようにテーブルに置く。それから2人は並んで座り、どのピザを頼もうかとスマホを見ながら相談する。時間はまもなく16時、先にピザを頼んでしまおうとネットで注文を済ませた。
あまり面白くない番組を流し続けるテレビを横目に、以前2人で撮った写真を送り合ったり、お菓子を食べたり、ピザが届くまでのんびりと過ごした。
夕食には少し早めの、17時半にピザの配達員がやって来た。ピザの代金は割り勘にしようという芙蓉の申し出を伏黒が固辞し、彼の奢りという形となった。早速届いたピザの箱を開けると、チーズの焼けた香ばしい匂いが食欲をそそる。冷蔵庫からコーラを2本取り出し、そのまま封を開けて乾杯、とボトルを合わせた。
「…美味いな」
「うん、美味しい」
2人とも黙々とピザをかじり続け、半分くらい食べたところで芙蓉がお腹いっぱい、と声を上げる。食べるのは2人だからと、ミドルサイズのピザを頼んだのだが、想像よりだいぶボリュームがあったようだ。
「…あとひと切れくらいイケるだろ」
「これ食べちゃうとデザートのプリンとバニラアイスが食べられなくなりそうなんだもん」
「……」
結局ピザの3分の2を伏黒が平らげた。
適当に片付けを済ませ、再びのんびりと過ごす。大抵の物は片付けてしまった為、娯楽と言える物はテレビかスマホだけ、時間的に夕方のニュース番組ばかりでたいして興味を引くような事もない。
「ね、恵」
「ん?」
「…そっち、行っても、いい?」
テーブルを挟んで向かい合っていた芙蓉が遠慮がちに恥ずかしそうに言う。そんな彼女が可愛らしくて、伏黒は頬を緩めて頷いた。座布団代わりのクッションごと移動して来た芙蓉は伏黒の隣でテレビを眺め始める。
と、5分も経たない内に再び芙蓉が口を開く。何の用かと伏黒が聞き返すと、
「…くっついても、いい?」
「……。…おう」
伏黒の返事を聞くと芙蓉は猫のように伏黒に擦り寄り、彼の肩に頭をもたれかけるような姿勢で落ち着いた。伏黒のスキンシップにも恥ずかしいと顔を赤くしていた芙蓉の行動に、不意に伏黒は自身の内側が揺さ振られるような感覚を覚えた。思わずため息が出ていた。
「…どうしたの?」
伏黒を気遣う言葉と共に、肩から芙蓉が離れていくーそれだけの事に、伏黒は再び表現し難い感覚に襲われる。
「…何でもねぇ」
「何でもなくない顔してる」
見上げてくる芙蓉を振り返れば目が合い、見つめ合う形となる。そこで伏黒はやっと、自身に纏わりついている感覚を理解した。
「…めぐー」
もうこれ以上何も言うなと言うように、伏黒は芙蓉の口を塞ぐように口付けた。
「津美紀ちゃん、こんにちは」
病室へ入り、声をかける。2人は中学校の卒業を報告し、伏黒と芙蓉はそれぞれ別の高校へ進学する事を伝えた。勿論津美紀からの言葉はないが、改めて言葉にしてみると、明日からの2人の生活が、今までの日常が大きく変わってしまう事を突き付けられたようだった。
「また来るな」
「津美紀ちゃん、またね」
静かに再会を約束し、2人は病院を後にした。
「…さて、これからどうするか」
時刻は15時を回ったところで、病院を出た2人は駅近くの、通りに面したカフェでひと息ついていた。
「この辺ブラつくか、家でのんびりするか、だよね…、あ、今日は夜ごはんも考えないと」
「…? 門限はどうした」
伏黒の言葉に芙蓉はニカっと笑う。
「お母さんが、もう中学校卒業したから、門限変えるって言ってて。今日は特別に9時で良いって」
門限の時間は伏黒は千浪の気遣いだと悟った。今日を最後に、芙蓉とは暫く会えなくなるし、会う約束も出来ない。更に大きく言えば、伏黒と芙蓉それぞれ住む世界が違ってしまうという事だ。
「そうか。…なら晩飯も含めて考えないとな」
せっかく与えて貰った時間を無駄に過ごすのは気が引ける。伏黒はコーヒーを啜った。
「芙蓉はどうしたい?」
「んー…特にどうっていうのはないんだよね。何か買いたいとか、見たいっていうものもないし。だからこのままアパート戻っても良いかなって。のんびりしてから夜ごはん食べに行ってもいいと思うし、何か買って帰ってアパートで食べてもいいと思うし…」
窓の外では忙しく車が行き来している。交差点の信号が変わる度、止まっていた車列が一斉に動き出す。
「…あ、デリバリーっていう手もあるね」
ちょうどデリバリーピザのバイクが走り去って行ったのを芙蓉の目が捉えていた。芙蓉の家でも伏黒も、デリバリーピザという選択肢は今までなかったのもあって、2人の気持ちを掴んだようだった。
「…決まりだな」
アパートへの道中、2人は近くのスーパーへ立ち寄り、飲み物やお菓子を買い込んだ。お菓子やピザをつまみながらのんびり過ごそうという事になった。
アパートに入れば、芙蓉が片付けの手伝いに来た時よりも更に物が減り、リビングからは生活感がほとんど消えていた。飲み物はガラガラの冷蔵庫に入れ、お菓子はすぐ食べられるようにテーブルに置く。それから2人は並んで座り、どのピザを頼もうかとスマホを見ながら相談する。時間はまもなく16時、先にピザを頼んでしまおうとネットで注文を済ませた。
あまり面白くない番組を流し続けるテレビを横目に、以前2人で撮った写真を送り合ったり、お菓子を食べたり、ピザが届くまでのんびりと過ごした。
夕食には少し早めの、17時半にピザの配達員がやって来た。ピザの代金は割り勘にしようという芙蓉の申し出を伏黒が固辞し、彼の奢りという形となった。早速届いたピザの箱を開けると、チーズの焼けた香ばしい匂いが食欲をそそる。冷蔵庫からコーラを2本取り出し、そのまま封を開けて乾杯、とボトルを合わせた。
「…美味いな」
「うん、美味しい」
2人とも黙々とピザをかじり続け、半分くらい食べたところで芙蓉がお腹いっぱい、と声を上げる。食べるのは2人だからと、ミドルサイズのピザを頼んだのだが、想像よりだいぶボリュームがあったようだ。
「…あとひと切れくらいイケるだろ」
「これ食べちゃうとデザートのプリンとバニラアイスが食べられなくなりそうなんだもん」
「……」
結局ピザの3分の2を伏黒が平らげた。
適当に片付けを済ませ、再びのんびりと過ごす。大抵の物は片付けてしまった為、娯楽と言える物はテレビかスマホだけ、時間的に夕方のニュース番組ばかりでたいして興味を引くような事もない。
「ね、恵」
「ん?」
「…そっち、行っても、いい?」
テーブルを挟んで向かい合っていた芙蓉が遠慮がちに恥ずかしそうに言う。そんな彼女が可愛らしくて、伏黒は頬を緩めて頷いた。座布団代わりのクッションごと移動して来た芙蓉は伏黒の隣でテレビを眺め始める。
と、5分も経たない内に再び芙蓉が口を開く。何の用かと伏黒が聞き返すと、
「…くっついても、いい?」
「……。…おう」
伏黒の返事を聞くと芙蓉は猫のように伏黒に擦り寄り、彼の肩に頭をもたれかけるような姿勢で落ち着いた。伏黒のスキンシップにも恥ずかしいと顔を赤くしていた芙蓉の行動に、不意に伏黒は自身の内側が揺さ振られるような感覚を覚えた。思わずため息が出ていた。
「…どうしたの?」
伏黒を気遣う言葉と共に、肩から芙蓉が離れていくーそれだけの事に、伏黒は再び表現し難い感覚に襲われる。
「…何でもねぇ」
「何でもなくない顔してる」
見上げてくる芙蓉を振り返れば目が合い、見つめ合う形となる。そこで伏黒はやっと、自身に纏わりついている感覚を理解した。
「…めぐー」
もうこれ以上何も言うなと言うように、伏黒は芙蓉の口を塞ぐように口付けた。