変転
恵の幼馴染のお名前は?
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冬の寒さが一層厳しくなる2月。伏黒の受験の結果が出て、高専への入学が正式に決定した。
もうほとんど学校に出席する必要性がほぼ無くなっている伏黒にとって、登校するというのは日常生活のリズムを整える為だけのものになっていた。そんな毎日の中、芙蓉の志望校の合格発表が行われる日の朝。珍しく伏黒のスマホが通話の着信を知らせて騒ぎ立てた。
「もしもし?」
相手は芙蓉、何かあったのかと心配になりながらも落ち着いて通話を繋いだ。
『あ、朝からごめん。…あのね、本当は恵にお願いするのは間違ってるかもって思うんだけど…』
「おう、どうした?」
『お母さんが今日、急に仕事入っちゃって…、もう行っちゃったんだけど、今日、合格発表なの。それで…』
「いいぜ、行ってやるよ」
二つ返事で承諾した伏黒に芙蓉は驚きつつ、そんな彼にとても心強いと安堵した。
「とりあえず芙蓉の家に行けばいいか?」
『ありがとう…!発表が9時からなの、』
「わかった、適当な時間見て行く」
通話を切って時間を確認すれば7時前。少し時間にゆとりが出来たー手早く朝食を済ませて身支度を整える。7時半を過ぎた頃に中学校へ欠席の連絡を入れて部屋を出た。欠席の理由は高校の手続きの関係だと伝えれば、伏黒の家庭事情を理解している学校は何も言わなかった。
軽い足取りで芙蓉の家に向かう。彼女の家まであと少し、というところで遠目に彼女が出てくるのが見えた。
「…寝不足か?」
赤い目をした芙蓉を見るなり声をかける。
「…うん、昨日はなかなか眠れなくて…」
今日は結果の発表、芙蓉が出来ることはもう1カ月程前に終わっているのにと伏黒は笑った。
「滑り止めも受かってんだろ?」
「うん、けどそうは言っても私立はお金かかるし。やっぱり自分で行くって決めた学校の方が良いじゃない」
「受かってるから心配すんな」
「…受かってなかったら?」
「その時は慰めてやるよ」
伏黒は幾分足取りの重い芙蓉をせっつき、2人は最寄りの駅へ向かった。
「…んん〜、美味しい…!」
合否結果を確認した2人は駅近くのカフェでひと息ついていた。伏黒はコーヒーを、芙蓉はコーヒーにザッハトルテを注文した。無事志望校合格を果たした芙蓉は幸せそうな顔で、艶やかなチョコのコーティングを少しずつ崩しながらケーキを頬張る。
「恵、本当にありがとう」
幸せそうな笑みを浮かべる芙蓉。そんな彼女を見ているだけで伏黒は癒される思いだ。
「俺は何もしてねぇよ。芙蓉が努力した結果だろ」
「…なんでそんなカッコいい事言うの?」
「どこがだよ…つーか急にそーいう事言うのやめろ。
…それより、何処か行きたいトコは考えたか?」
前に言ったろ、と伏黒はコーヒーを啜る。以前は試験が終わったら、と思っていたところ、芙蓉の方が結果が出てからじゃないと楽しめないかもしれないとの事で、ひと月近く延期になっていた。
「それがまだ決まらなくて…、恵はどぉ?」
「芙蓉が行きたいところなら何処でも」
「言うと思った。…嬉しいけど」
芙蓉はまたひと口ケーキを頬張る。咀嚼しながら思い悩むも、なかなか思い浮かばない。
そのまま互いに言葉を発する事もなく、飲み物を飲んだりケーキを食べたり。
「…ま、時間はある。急いで決める事もないからな」
そろそろ行くか、と芙蓉がケーキを食べ終えたところで伏黒が声をかける。時間は10時半を回ったところ、カフェを出てすぐ駅の改札を抜け、電車の到着を待つ。
「この後学校行くのか?」
「ん〜…行きたくないけど、とりあえず先生に報告しなきゃいけないし。…恵は?」
「今日は休む連絡した」
「えっずるっ」
「…どの口が言ってんだよ」
「…ソーデスネ。…けど1日休まなくても良くない?」
芙蓉の言葉に、伏黒は何か考える素振りを見せる。
「ま、いろいろやる事あるからな。たまには良いだろ」
何するの、と尋ねようとしたところに電車の到着を告げるアナウンスが響く。
「…そっか」
ホームに入ってきた電車を眺めながら、芙蓉は伏黒がやらなくてはいけない事を理解した。彼は中学を卒業したら高専に入学する。高専は全寮制ー引越す為の準備をしなくてはいけない。
2人は到着した電車に乗り込んだ。
自分で高専には進学しないと決めたが、伏黒と離れてしまう事は、やはり淋しいという言葉しか出てこない。
一緒に過ごせる時間はあと1カ月程度ーこの1カ月は笑って過ごそう。彼の中に、笑う自分が残るように。
「…決めた」
「ん?」
「今度の土曜日か日曜日に、海、見に行きたい」
動き出した電車。平日の昼間という事もあって、それほど混雑していない。2人は並んで座る。
「…海で良いのか?…買い物とか、遊びに行くっていうのでも良いんだぞ?」
「うん、良いの。恵と一緒に海を見たい」
もうほとんど学校に出席する必要性がほぼ無くなっている伏黒にとって、登校するというのは日常生活のリズムを整える為だけのものになっていた。そんな毎日の中、芙蓉の志望校の合格発表が行われる日の朝。珍しく伏黒のスマホが通話の着信を知らせて騒ぎ立てた。
「もしもし?」
相手は芙蓉、何かあったのかと心配になりながらも落ち着いて通話を繋いだ。
『あ、朝からごめん。…あのね、本当は恵にお願いするのは間違ってるかもって思うんだけど…』
「おう、どうした?」
『お母さんが今日、急に仕事入っちゃって…、もう行っちゃったんだけど、今日、合格発表なの。それで…』
「いいぜ、行ってやるよ」
二つ返事で承諾した伏黒に芙蓉は驚きつつ、そんな彼にとても心強いと安堵した。
「とりあえず芙蓉の家に行けばいいか?」
『ありがとう…!発表が9時からなの、』
「わかった、適当な時間見て行く」
通話を切って時間を確認すれば7時前。少し時間にゆとりが出来たー手早く朝食を済ませて身支度を整える。7時半を過ぎた頃に中学校へ欠席の連絡を入れて部屋を出た。欠席の理由は高校の手続きの関係だと伝えれば、伏黒の家庭事情を理解している学校は何も言わなかった。
軽い足取りで芙蓉の家に向かう。彼女の家まであと少し、というところで遠目に彼女が出てくるのが見えた。
「…寝不足か?」
赤い目をした芙蓉を見るなり声をかける。
「…うん、昨日はなかなか眠れなくて…」
今日は結果の発表、芙蓉が出来ることはもう1カ月程前に終わっているのにと伏黒は笑った。
「滑り止めも受かってんだろ?」
「うん、けどそうは言っても私立はお金かかるし。やっぱり自分で行くって決めた学校の方が良いじゃない」
「受かってるから心配すんな」
「…受かってなかったら?」
「その時は慰めてやるよ」
伏黒は幾分足取りの重い芙蓉をせっつき、2人は最寄りの駅へ向かった。
「…んん〜、美味しい…!」
合否結果を確認した2人は駅近くのカフェでひと息ついていた。伏黒はコーヒーを、芙蓉はコーヒーにザッハトルテを注文した。無事志望校合格を果たした芙蓉は幸せそうな顔で、艶やかなチョコのコーティングを少しずつ崩しながらケーキを頬張る。
「恵、本当にありがとう」
幸せそうな笑みを浮かべる芙蓉。そんな彼女を見ているだけで伏黒は癒される思いだ。
「俺は何もしてねぇよ。芙蓉が努力した結果だろ」
「…なんでそんなカッコいい事言うの?」
「どこがだよ…つーか急にそーいう事言うのやめろ。
…それより、何処か行きたいトコは考えたか?」
前に言ったろ、と伏黒はコーヒーを啜る。以前は試験が終わったら、と思っていたところ、芙蓉の方が結果が出てからじゃないと楽しめないかもしれないとの事で、ひと月近く延期になっていた。
「それがまだ決まらなくて…、恵はどぉ?」
「芙蓉が行きたいところなら何処でも」
「言うと思った。…嬉しいけど」
芙蓉はまたひと口ケーキを頬張る。咀嚼しながら思い悩むも、なかなか思い浮かばない。
そのまま互いに言葉を発する事もなく、飲み物を飲んだりケーキを食べたり。
「…ま、時間はある。急いで決める事もないからな」
そろそろ行くか、と芙蓉がケーキを食べ終えたところで伏黒が声をかける。時間は10時半を回ったところ、カフェを出てすぐ駅の改札を抜け、電車の到着を待つ。
「この後学校行くのか?」
「ん〜…行きたくないけど、とりあえず先生に報告しなきゃいけないし。…恵は?」
「今日は休む連絡した」
「えっずるっ」
「…どの口が言ってんだよ」
「…ソーデスネ。…けど1日休まなくても良くない?」
芙蓉の言葉に、伏黒は何か考える素振りを見せる。
「ま、いろいろやる事あるからな。たまには良いだろ」
何するの、と尋ねようとしたところに電車の到着を告げるアナウンスが響く。
「…そっか」
ホームに入ってきた電車を眺めながら、芙蓉は伏黒がやらなくてはいけない事を理解した。彼は中学を卒業したら高専に入学する。高専は全寮制ー引越す為の準備をしなくてはいけない。
2人は到着した電車に乗り込んだ。
自分で高専には進学しないと決めたが、伏黒と離れてしまう事は、やはり淋しいという言葉しか出てこない。
一緒に過ごせる時間はあと1カ月程度ーこの1カ月は笑って過ごそう。彼の中に、笑う自分が残るように。
「…決めた」
「ん?」
「今度の土曜日か日曜日に、海、見に行きたい」
動き出した電車。平日の昼間という事もあって、それほど混雑していない。2人は並んで座る。
「…海で良いのか?…買い物とか、遊びに行くっていうのでも良いんだぞ?」
「うん、良いの。恵と一緒に海を見たい」