変転
恵の幼馴染のお名前は?
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年が明けると、いよいよ本格的に受験シーズンに突入。伏黒は芙蓉よりもひと足早く高専の入試を受け、それが終われば芙蓉のサポートに徹した。彼女が苦手としているポイントを徹底的に教え込み、入試直前までまさに二人三脚で勉強を続けた。
「…明日だったよな、試験」
「…うん」
あまり芙蓉にプレッシャーを与えないように軽く言ったつもりの伏黒だが、芙蓉は不安気な表情で返事をした。
「…なんでそんな不安そうな顔してんだよ」
「…だって…不安なんだもん」
「今まで勉強してきたんだ、問題ねぇだろ」
現に芙蓉は今日も学校帰りに勉強を教えてもらおうと伏黒のアパートに立ち寄ったのだ。それだけやる気もあるならもう大丈夫だろうと思うのだが。
「…この不安な気持ちって何とかならないかなぁ」
「部活の試合ではどうしてたんだよ?試験も試合も一発勝負なのは同じだろ?」
「それはそうだけど…」
「そもそも自信がどうとかっていうのは場数踏まねぇと付いてこねぇし、今はそんなの考えるよりも、今まで勉強してきた自分の力を信じるしかねぇだろ」
何かある度にクラスメイトや先生が口にする“大丈夫”という言葉。中身も根拠もない“大丈夫”に対してウンザリしていたが、伏黒の言葉にはちゃんと説得力があって。
「…先生の声かけより頼もしい…」
「そりゃどうも」
芙蓉をずっと近くで見てきた伏黒にとって、彼女の不安を和らげる事が出来るのは当たり前と言えた。伏黒は彼女を一番理解しているのは自分だと自負している。
「ね、恵、お願いがあるんだけど」
「ん?」
「恵が普段使ってるシャーペン貸して?」
芙蓉に言われるまま、伏黒は通学バッグからペンケースを引っ張り出し、シャーペンを1本取り出して見せる。
「こんなんだけどいいのか?あんま綺麗じゃねぇけど」
何の装飾もなく、本当に筆記の目的を果たす為だけに作られたようなシンプルなシャーペン。だいぶ使い込んでいるのもあって、少し汚れたりもしている。
「ありがとう!明日、使わせてもらうね」
こんな事で、と伏黒は思うが、本当に嬉しそうな顔をする芙蓉につられて自然と口元が緩む。
「じゃ、今日は早めに帰って明日に備えるとするか」
「え、少し教わろうと思ったんだけど…」
「もう教える事なんかねぇよ。今日は緩く過ごしとけ。しっかり飯食って早く寝る、その方が絶対良い」
伏黒は芙蓉の返事も待たずに立ち上がって上着を羽織る。芙蓉も忘れ物がないようにと、荷物の中身を入念に確認して立ち上がる。
「明日の試験が終わったら、どこか遊びに行くか?」
意外な伏黒の提案に芙蓉は驚き、すぐに破顔した。
「ホント⁉︎行きたい!」
嬉しそうに返事をする芙蓉。伏黒はそんな彼女を優しく包み込んだ。
「…明日、乗り切れよ」
「…うん」
伏黒のスキンシップにもだいぶ慣れてきた様子の芙蓉、幾分頬が赤いまま伏黒の背に腕を回す。こうして抱き合うと伏黒の匂いに鼓動が早まるものの、安心感と共に気持ちが満たされるー伏黒への気持ちを再確認する。
「恵、ありがとう。…大好きだよ」
芙蓉の言葉に応えるように、伏黒は彼女に口付けた。伏黒が離れ、どうしてもまだ恥ずかしさが拭い切れないらしい芙蓉は照れ隠しをするように笑った。
「じゃ、行くか」
彼女を解放し、2人は外へ出た。冬の寒さが苦手な芙蓉は身体を震わせながら、春はまだ、しばらく来ないで欲しいな、と頭の片隅で思っていた。
一晩明けて、入試当日。
芙蓉はいつもより少しだけ早く起きた。母が準備してくれた食事をとって身支度を済ませ、忘れ物がないかを確認する。あとは試験会場へ向かうだけとなり、現地へは母が車で送ってくれる事になっていた。時間に遅れる事がないようにと、早めに家を出発する。会場まであと少し、というところで芙蓉のスマホが鳴る。
『よく眠れたか?自分の力を信じろ』
伏黒らしい端的なメッセージに笑みが溢れた。
『おはよー!いっぱい食べていっぱい寝たよ。少し緊張してるけど恵のご利益シャーペンでがんばるね、ありがとう。終わったらまた連絡するね』
そう返信してスマホの電源を落とす。車は会場の前に間もなく到着する。
「いつも通りの芙蓉で気楽にね」
伏黒も千浪も、“がんばれ”という言葉は言わなかった。2人とも芙蓉が普段からがんばっているのはわかっている。そんな言葉をわざわざ言う必要もない。
「うん、ありがとう。終わったら連絡するね」
芙蓉は車を降りた。この学校を受験する顔見知りは少なく、幾許かの不安や心細さは拭い切れない、だけどきっと大丈夫ー。自分の力を信じろという伏黒の言葉を噛み締めつつ、芙蓉は会場へと足を向けた。
「…明日だったよな、試験」
「…うん」
あまり芙蓉にプレッシャーを与えないように軽く言ったつもりの伏黒だが、芙蓉は不安気な表情で返事をした。
「…なんでそんな不安そうな顔してんだよ」
「…だって…不安なんだもん」
「今まで勉強してきたんだ、問題ねぇだろ」
現に芙蓉は今日も学校帰りに勉強を教えてもらおうと伏黒のアパートに立ち寄ったのだ。それだけやる気もあるならもう大丈夫だろうと思うのだが。
「…この不安な気持ちって何とかならないかなぁ」
「部活の試合ではどうしてたんだよ?試験も試合も一発勝負なのは同じだろ?」
「それはそうだけど…」
「そもそも自信がどうとかっていうのは場数踏まねぇと付いてこねぇし、今はそんなの考えるよりも、今まで勉強してきた自分の力を信じるしかねぇだろ」
何かある度にクラスメイトや先生が口にする“大丈夫”という言葉。中身も根拠もない“大丈夫”に対してウンザリしていたが、伏黒の言葉にはちゃんと説得力があって。
「…先生の声かけより頼もしい…」
「そりゃどうも」
芙蓉をずっと近くで見てきた伏黒にとって、彼女の不安を和らげる事が出来るのは当たり前と言えた。伏黒は彼女を一番理解しているのは自分だと自負している。
「ね、恵、お願いがあるんだけど」
「ん?」
「恵が普段使ってるシャーペン貸して?」
芙蓉に言われるまま、伏黒は通学バッグからペンケースを引っ張り出し、シャーペンを1本取り出して見せる。
「こんなんだけどいいのか?あんま綺麗じゃねぇけど」
何の装飾もなく、本当に筆記の目的を果たす為だけに作られたようなシンプルなシャーペン。だいぶ使い込んでいるのもあって、少し汚れたりもしている。
「ありがとう!明日、使わせてもらうね」
こんな事で、と伏黒は思うが、本当に嬉しそうな顔をする芙蓉につられて自然と口元が緩む。
「じゃ、今日は早めに帰って明日に備えるとするか」
「え、少し教わろうと思ったんだけど…」
「もう教える事なんかねぇよ。今日は緩く過ごしとけ。しっかり飯食って早く寝る、その方が絶対良い」
伏黒は芙蓉の返事も待たずに立ち上がって上着を羽織る。芙蓉も忘れ物がないようにと、荷物の中身を入念に確認して立ち上がる。
「明日の試験が終わったら、どこか遊びに行くか?」
意外な伏黒の提案に芙蓉は驚き、すぐに破顔した。
「ホント⁉︎行きたい!」
嬉しそうに返事をする芙蓉。伏黒はそんな彼女を優しく包み込んだ。
「…明日、乗り切れよ」
「…うん」
伏黒のスキンシップにもだいぶ慣れてきた様子の芙蓉、幾分頬が赤いまま伏黒の背に腕を回す。こうして抱き合うと伏黒の匂いに鼓動が早まるものの、安心感と共に気持ちが満たされるー伏黒への気持ちを再確認する。
「恵、ありがとう。…大好きだよ」
芙蓉の言葉に応えるように、伏黒は彼女に口付けた。伏黒が離れ、どうしてもまだ恥ずかしさが拭い切れないらしい芙蓉は照れ隠しをするように笑った。
「じゃ、行くか」
彼女を解放し、2人は外へ出た。冬の寒さが苦手な芙蓉は身体を震わせながら、春はまだ、しばらく来ないで欲しいな、と頭の片隅で思っていた。
一晩明けて、入試当日。
芙蓉はいつもより少しだけ早く起きた。母が準備してくれた食事をとって身支度を済ませ、忘れ物がないかを確認する。あとは試験会場へ向かうだけとなり、現地へは母が車で送ってくれる事になっていた。時間に遅れる事がないようにと、早めに家を出発する。会場まであと少し、というところで芙蓉のスマホが鳴る。
『よく眠れたか?自分の力を信じろ』
伏黒らしい端的なメッセージに笑みが溢れた。
『おはよー!いっぱい食べていっぱい寝たよ。少し緊張してるけど恵のご利益シャーペンでがんばるね、ありがとう。終わったらまた連絡するね』
そう返信してスマホの電源を落とす。車は会場の前に間もなく到着する。
「いつも通りの芙蓉で気楽にね」
伏黒も千浪も、“がんばれ”という言葉は言わなかった。2人とも芙蓉が普段からがんばっているのはわかっている。そんな言葉をわざわざ言う必要もない。
「うん、ありがとう。終わったら連絡するね」
芙蓉は車を降りた。この学校を受験する顔見知りは少なく、幾許かの不安や心細さは拭い切れない、だけどきっと大丈夫ー。自分の力を信じろという伏黒の言葉を噛み締めつつ、芙蓉は会場へと足を向けた。