変転
恵の幼馴染のお名前は?
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夏休みが明けると、すぐに実力テストが実施された。
伏黒も芙蓉も特に問題なく無事にやり遂げ、結果もまずまずー伏黒は安定の学年上位、芙蓉は過去イチの好成績を収めた。伏黒のおかげもあって少しずつ芙蓉の成績が上がってきており、担任との面談でもかなりいい調子だと褒められた。そして難航していた志望校選びも2〜3校までに絞る事が出来、その辺りも順調と言えた。
残り僅かとなってきた中学校生活、伏黒は相変わらず呪霊を祓う為に学区内を巡回したり、以前よりもかなりおとなしくなってきた不良連中を一掃したりしていた。芙蓉の方はというと、今まで部活に費やしていた時間を勉強や趣味に使うようになっていて、今まで以上に伏黒に寄り添うように、彼と過ごす時間を取るようになった。
10月も半ばに差し掛かったある土曜日の午後、芙蓉は昼食を済ませて伏黒のアパートを訪れると、玄関先に見慣れた白髪を見つけた。
「やぁ芙蓉、久しぶり〜」
夏休みに会って以来の五条だった。芙蓉が声をかける前に彼は振り返り、いつも通り明るく手を振る。
「どうしたの?」
「恵に届け物でね。…立ち話も何だから、中入ろっか」
「……」
家主である伏黒を押し退け、五条はお邪魔しまーすと元気に挨拶をして部屋へ上がり込む。いつもの事だよねと芙蓉は伏黒に向けて苦笑いを浮かべて部屋に入った。
「はい、これ」
ちゃっかりとテーブルの前に座った五条は持参した紙袋から2通の封筒を取り出して伏黒の前に並べて置いた。
「こっちは学校に提出してもらいたい書類があるみたいで、その詳細が書いてあるから担任に渡してくれってさ。で、そっちは恵宛て、受験の日程に関する連絡ね」
「恵も試験あるの?」
驚いたように芙蓉が声をあげれば、伏黒は当たり前だろ、とさも当然のように言う。
「…推薦?スカウト?なんじゃないの?」
「うん、まぁそうだけど、一応形式的にテストはあるよ。…尤も、学力云々よりも呪術師としての素質とか人柄とかが重視されるけどね」
伏黒が封筒の中から引っ張り出した受験要項を隣から芙蓉も覗き見る。
「試験の時期は他の学校とほとんど同じなんだね」
「ま、恵はもう合格してるようなもんだけどね」
「へぇ〜いいなぁ」
「ん?芙蓉も高専受ける?まだ間に合うよ?」
「んーん、初志貫徹、自分で選んだところ受けるよ」
「ま、高専は転校も受け付けてるから、気が向いたらいつでも言ってよ」
芙蓉が高専を受験しないと五条に伝えたのは夏休みが明けてからだった。それまで五条はまさに三顧の礼よろしく足繁く芙蓉の家を訪れては高専への勧誘をしていた。受験を断ったら断ったで、めんどくさくなったら嫌だなという芙蓉の心配をよそに、芙蓉が拍子抜けするくらいに五条はあっさりと引き下がったのだった。
「あとはコレ、前回の資料の続きね」
そう言って五条は持って来ていた紙袋をそっくりそのまま伏黒に渡した。
「コレは高専関係者の資料だから芙蓉は見ちゃダメ〜」
「…ソレ言ったら俺も見ちゃいけない事になりますが」
「恵はもう内定者だから良いの」
早いとこ片付けておいでと促され、伏黒は紙袋を持って隣の部屋へ入って行った。
「さて、そろそろ僕は行こうかな」
芙蓉が引き止める間もなく、伏黒が部屋から出てくるのも待たずに五条はアパートを出て行ってしまった。そこからワンテンポ遅れて伏黒が眉間にシワを寄せて勢いよく部屋から出てくる。
「…あの人は?」
些か怒気を孕んだ声で芙蓉に尋ねるも時すでに遅しー用があるなら連絡したら、という芙蓉の落ち着いた言葉に伏黒はいや、いい、と大きなため息をついた。
「…大丈夫?」
「…おう。…さっき渡された紙袋に余計なモンが入ってたから、返してやろうと思っただけだ」
「何入ってたの?」
「聞くな」
気分転換に何か飲もうかと芙蓉が台所へ向かえば、伏黒ものろのろと続いて台所へ向かう。
「…ホント大丈夫?」
すごい疲れた顔してるよ、という芙蓉の言葉に伏黒は再びため息をつく。芙蓉はカップを2つ準備する。
「…少し充電させろ」
「ひゃっ」
伏黒は芙蓉にもたれかかるように彼女を抱きしめた。以前の彼からは想像も出来ないくらいの変わりようで、2人だけの時には甘える様子を見せる。それだけ芙蓉へ全幅の信頼を寄せているという事なのだろう。
不意に芙蓉がクスッと笑った。
「…なんだよ」
「こんな恵を見られるのは私だけなんだなぁって」
勝手知ったる様子でお湯を沸かしてコーヒーとココアを淹れる準備をしながら、頬を赤らめて嬉しそうに笑う芙蓉がとても愛らしい。
「芙蓉」
名を呼ばれて振り返った芙蓉に伏黒は口付けた。伏黒の思った通り、芙蓉の顔は真っ赤で。
「早く慣れろよな」
悪戯を成功させた子供のように笑う伏黒にはまだまだ敵いそうもないー芙蓉は赤い顔のまま恥ずかしさを隠すように俯くしか出来なかった。
伏黒も芙蓉も特に問題なく無事にやり遂げ、結果もまずまずー伏黒は安定の学年上位、芙蓉は過去イチの好成績を収めた。伏黒のおかげもあって少しずつ芙蓉の成績が上がってきており、担任との面談でもかなりいい調子だと褒められた。そして難航していた志望校選びも2〜3校までに絞る事が出来、その辺りも順調と言えた。
残り僅かとなってきた中学校生活、伏黒は相変わらず呪霊を祓う為に学区内を巡回したり、以前よりもかなりおとなしくなってきた不良連中を一掃したりしていた。芙蓉の方はというと、今まで部活に費やしていた時間を勉強や趣味に使うようになっていて、今まで以上に伏黒に寄り添うように、彼と過ごす時間を取るようになった。
10月も半ばに差し掛かったある土曜日の午後、芙蓉は昼食を済ませて伏黒のアパートを訪れると、玄関先に見慣れた白髪を見つけた。
「やぁ芙蓉、久しぶり〜」
夏休みに会って以来の五条だった。芙蓉が声をかける前に彼は振り返り、いつも通り明るく手を振る。
「どうしたの?」
「恵に届け物でね。…立ち話も何だから、中入ろっか」
「……」
家主である伏黒を押し退け、五条はお邪魔しまーすと元気に挨拶をして部屋へ上がり込む。いつもの事だよねと芙蓉は伏黒に向けて苦笑いを浮かべて部屋に入った。
「はい、これ」
ちゃっかりとテーブルの前に座った五条は持参した紙袋から2通の封筒を取り出して伏黒の前に並べて置いた。
「こっちは学校に提出してもらいたい書類があるみたいで、その詳細が書いてあるから担任に渡してくれってさ。で、そっちは恵宛て、受験の日程に関する連絡ね」
「恵も試験あるの?」
驚いたように芙蓉が声をあげれば、伏黒は当たり前だろ、とさも当然のように言う。
「…推薦?スカウト?なんじゃないの?」
「うん、まぁそうだけど、一応形式的にテストはあるよ。…尤も、学力云々よりも呪術師としての素質とか人柄とかが重視されるけどね」
伏黒が封筒の中から引っ張り出した受験要項を隣から芙蓉も覗き見る。
「試験の時期は他の学校とほとんど同じなんだね」
「ま、恵はもう合格してるようなもんだけどね」
「へぇ〜いいなぁ」
「ん?芙蓉も高専受ける?まだ間に合うよ?」
「んーん、初志貫徹、自分で選んだところ受けるよ」
「ま、高専は転校も受け付けてるから、気が向いたらいつでも言ってよ」
芙蓉が高専を受験しないと五条に伝えたのは夏休みが明けてからだった。それまで五条はまさに三顧の礼よろしく足繁く芙蓉の家を訪れては高専への勧誘をしていた。受験を断ったら断ったで、めんどくさくなったら嫌だなという芙蓉の心配をよそに、芙蓉が拍子抜けするくらいに五条はあっさりと引き下がったのだった。
「あとはコレ、前回の資料の続きね」
そう言って五条は持って来ていた紙袋をそっくりそのまま伏黒に渡した。
「コレは高専関係者の資料だから芙蓉は見ちゃダメ〜」
「…ソレ言ったら俺も見ちゃいけない事になりますが」
「恵はもう内定者だから良いの」
早いとこ片付けておいでと促され、伏黒は紙袋を持って隣の部屋へ入って行った。
「さて、そろそろ僕は行こうかな」
芙蓉が引き止める間もなく、伏黒が部屋から出てくるのも待たずに五条はアパートを出て行ってしまった。そこからワンテンポ遅れて伏黒が眉間にシワを寄せて勢いよく部屋から出てくる。
「…あの人は?」
些か怒気を孕んだ声で芙蓉に尋ねるも時すでに遅しー用があるなら連絡したら、という芙蓉の落ち着いた言葉に伏黒はいや、いい、と大きなため息をついた。
「…大丈夫?」
「…おう。…さっき渡された紙袋に余計なモンが入ってたから、返してやろうと思っただけだ」
「何入ってたの?」
「聞くな」
気分転換に何か飲もうかと芙蓉が台所へ向かえば、伏黒ものろのろと続いて台所へ向かう。
「…ホント大丈夫?」
すごい疲れた顔してるよ、という芙蓉の言葉に伏黒は再びため息をつく。芙蓉はカップを2つ準備する。
「…少し充電させろ」
「ひゃっ」
伏黒は芙蓉にもたれかかるように彼女を抱きしめた。以前の彼からは想像も出来ないくらいの変わりようで、2人だけの時には甘える様子を見せる。それだけ芙蓉へ全幅の信頼を寄せているという事なのだろう。
不意に芙蓉がクスッと笑った。
「…なんだよ」
「こんな恵を見られるのは私だけなんだなぁって」
勝手知ったる様子でお湯を沸かしてコーヒーとココアを淹れる準備をしながら、頬を赤らめて嬉しそうに笑う芙蓉がとても愛らしい。
「芙蓉」
名を呼ばれて振り返った芙蓉に伏黒は口付けた。伏黒の思った通り、芙蓉の顔は真っ赤で。
「早く慣れろよな」
悪戯を成功させた子供のように笑う伏黒にはまだまだ敵いそうもないー芙蓉は赤い顔のまま恥ずかしさを隠すように俯くしか出来なかった。