変転
恵の幼馴染のお名前は?
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夏休み期間はもう半分を過ぎ、8月も中旬から下旬に差し掛かる頃。
受験勉強を兼ねての宿題は順調に片付けてはいるものの、芙蓉は自身の進路について未だに悩み続けていた。将来、これをやってみたいとか、あの職業に就きたいというようなモノがない、というよりも、将来の自分がどうであるかというビジョンが朧げで、何に当て嵌めてもピンとこないのというのが芙蓉の現状だった。高校に進学する前から明確な目標やら希望が決まっている方が珍しいとわかっているものの、伏黒が高専に行くと聞いてから、自身の在り方について頭を悩ませる事が多くなった。いっそのこと、五条のように家柄や才能で自身の将来が決められていたら、と考える事もある。自由と不自由は正反対のようでいて、ある意味背中合わせなのかもしれないなどと思ったり。考えれば考える程、もう何が何だかわからなくなってくる。芙蓉は変な苛立ちを覚えながらベッドに飛び込んだ。
「芙蓉、悟くんが来てるわよ」
母・千浪に声をかけられ、のろのろとベッドから起き上がる。気分転換を兼ねて自室を出た。
「ぃや〜毎日暑いね〜」
リビングで麦茶を飲みながら、涼しい顔でいつもの真っ黒な服を着ている五条が芙蓉に声をかけた。
「悟くんさぁ、いつも長袖で暑くないの?…見てるだけで暑いけど」
「暑そうに見えるけど、意外と通気性良いのよコレ」
ふーん、とさして興味も無さげに返事をし、千浪が出した麦茶を飲み、お菓子に手を伸ばす。
「ねぇ芙蓉、」
「まだ決めてないよ」
五条の言葉を遮ってピシャリと言い切る。
「…僕、まだ何も言ってないんだけど?」
「どうせまた高校の話でしょ?…基本的に勉強内容はどこも同じだろうし、部活はもう特にやる気ないし。…それでもまだ決められないの」
「なら高専で良いじゃん。高専なら恵と一緒に楽しい高校生活送れるよ」
「……」
確かにそれは五条の言う通り、なのだが。
「高専での任務もこなせば手当も出るしー」
「あーもぅ!いいからほっといて!」
芙蓉はリビングを出て行ってしまった。
「…千浪ちゃん、芙蓉、反抗期?」
「どうかしら?お年頃なのは間違いないけど」
再び自室に戻り、芙蓉はベッドへ飛び込む。
ごろりと仰向けになって天井を見つめ、先日の高専の医務室での話を思い出していた。
五条に連れられ、伏黒が祓除を行うというビルに行き、1階と2階に行った事は覚えているのだが、3階に行ってからの事が酷く曖昧だった。
気が付いたら高専の医務室に居た、というのが芙蓉の感覚。医務室で目を覚ました時は五条が居て、そこで彼が告げた事ー芙蓉が術式を発現したという事。
その術式で、あの現場の呪霊を祓ったという事。
術式が発現した事で、芙蓉の中での呪力がまた少し変化してきている事。
この話を絶対に忘れないように、そして誰にも口外しないように、という事。
この話を口外しないように、という五条の意図がわからない。というか五条が何を考えているのか、本当にわからない。わからないから、彼との約束を破るワケにはいかないー何かお互いに不利益となる事があるかもしれないからだ。芙蓉としては伏黒にも事情を話して、アレコレ相談したいのが本音なのだがー。
「あーもぅ」
何だか気持ちがスッキリしない。モヤモヤした気持ちのまま芙蓉はスマホに手を伸ばした。
伏黒は先程五条がアパートまでわざわざ届けに来た書類に目を通していた。
書類と言っても、そのほとんどが何かしらの冊子をコピーしたもので、恐らく外に持ち出す事が禁じられている物なのだろう。そんな物を外部の人間に渡すのはどうなのかと思うのだが、暑さと面倒さも手伝って、伏黒は黙って受け取っておいた。
と、テーブルに置いておいたスマホが着信を知らせる。芙蓉と連絡先を交換してからは手元に置いておくようにしていて、画面を開くとメッセージが届いていた。
『今から行っていい?』
送り主は芙蓉。特に断る理由もない。
『おう』
それだけ送り、伏黒は再び冊子に視線を戻した。
「お母さん、恵のとこ行ってくる」
「なになに、デート?」
「悟くんうっさい」
「気をつけてね」
「…芙蓉は僕限定の反抗期なの?」
「どうかしら?」
芙蓉は手近な参考書を適当に詰め込んだバッグを持って家を飛び出した。
ちょうど午後で一番暑い時間帯だったのもあり、芙蓉はクールダウンを兼ねて伏黒のアパート近くのコンビニに立ち寄り、シャーベットアイスを2つ買った。コンビニを出ると早足でアパートへ向かう。
程なくしてアパートに辿り着き、アイスは形が無くなる前に無事冷凍庫へ避難する事ができた。
「…なんかあったか?」
暑さで赤い顔をし、タオルで汗を拭いている芙蓉に伏黒は氷たっぷりの麦茶を出してやった。芙蓉は伏黒に礼を言うと、居酒屋でヤケ酒を呷るサラリーマンよろしく冷えた麦茶を一気に飲み干した。
「…なんかあったな」
「…悟くんがめんどくさい」
「それはいつもだろ」
芙蓉の言葉に同調しつつ、五条がまた芙蓉の家を訪れた事を察した。伏黒は芙蓉のグラスに麦茶を淹れると、テーブルを挟んで芙蓉の向かいに座った。
受験勉強を兼ねての宿題は順調に片付けてはいるものの、芙蓉は自身の進路について未だに悩み続けていた。将来、これをやってみたいとか、あの職業に就きたいというようなモノがない、というよりも、将来の自分がどうであるかというビジョンが朧げで、何に当て嵌めてもピンとこないのというのが芙蓉の現状だった。高校に進学する前から明確な目標やら希望が決まっている方が珍しいとわかっているものの、伏黒が高専に行くと聞いてから、自身の在り方について頭を悩ませる事が多くなった。いっそのこと、五条のように家柄や才能で自身の将来が決められていたら、と考える事もある。自由と不自由は正反対のようでいて、ある意味背中合わせなのかもしれないなどと思ったり。考えれば考える程、もう何が何だかわからなくなってくる。芙蓉は変な苛立ちを覚えながらベッドに飛び込んだ。
「芙蓉、悟くんが来てるわよ」
母・千浪に声をかけられ、のろのろとベッドから起き上がる。気分転換を兼ねて自室を出た。
「ぃや〜毎日暑いね〜」
リビングで麦茶を飲みながら、涼しい顔でいつもの真っ黒な服を着ている五条が芙蓉に声をかけた。
「悟くんさぁ、いつも長袖で暑くないの?…見てるだけで暑いけど」
「暑そうに見えるけど、意外と通気性良いのよコレ」
ふーん、とさして興味も無さげに返事をし、千浪が出した麦茶を飲み、お菓子に手を伸ばす。
「ねぇ芙蓉、」
「まだ決めてないよ」
五条の言葉を遮ってピシャリと言い切る。
「…僕、まだ何も言ってないんだけど?」
「どうせまた高校の話でしょ?…基本的に勉強内容はどこも同じだろうし、部活はもう特にやる気ないし。…それでもまだ決められないの」
「なら高専で良いじゃん。高専なら恵と一緒に楽しい高校生活送れるよ」
「……」
確かにそれは五条の言う通り、なのだが。
「高専での任務もこなせば手当も出るしー」
「あーもぅ!いいからほっといて!」
芙蓉はリビングを出て行ってしまった。
「…千浪ちゃん、芙蓉、反抗期?」
「どうかしら?お年頃なのは間違いないけど」
再び自室に戻り、芙蓉はベッドへ飛び込む。
ごろりと仰向けになって天井を見つめ、先日の高専の医務室での話を思い出していた。
五条に連れられ、伏黒が祓除を行うというビルに行き、1階と2階に行った事は覚えているのだが、3階に行ってからの事が酷く曖昧だった。
気が付いたら高専の医務室に居た、というのが芙蓉の感覚。医務室で目を覚ました時は五条が居て、そこで彼が告げた事ー芙蓉が術式を発現したという事。
その術式で、あの現場の呪霊を祓ったという事。
術式が発現した事で、芙蓉の中での呪力がまた少し変化してきている事。
この話を絶対に忘れないように、そして誰にも口外しないように、という事。
この話を口外しないように、という五条の意図がわからない。というか五条が何を考えているのか、本当にわからない。わからないから、彼との約束を破るワケにはいかないー何かお互いに不利益となる事があるかもしれないからだ。芙蓉としては伏黒にも事情を話して、アレコレ相談したいのが本音なのだがー。
「あーもぅ」
何だか気持ちがスッキリしない。モヤモヤした気持ちのまま芙蓉はスマホに手を伸ばした。
伏黒は先程五条がアパートまでわざわざ届けに来た書類に目を通していた。
書類と言っても、そのほとんどが何かしらの冊子をコピーしたもので、恐らく外に持ち出す事が禁じられている物なのだろう。そんな物を外部の人間に渡すのはどうなのかと思うのだが、暑さと面倒さも手伝って、伏黒は黙って受け取っておいた。
と、テーブルに置いておいたスマホが着信を知らせる。芙蓉と連絡先を交換してからは手元に置いておくようにしていて、画面を開くとメッセージが届いていた。
『今から行っていい?』
送り主は芙蓉。特に断る理由もない。
『おう』
それだけ送り、伏黒は再び冊子に視線を戻した。
「お母さん、恵のとこ行ってくる」
「なになに、デート?」
「悟くんうっさい」
「気をつけてね」
「…芙蓉は僕限定の反抗期なの?」
「どうかしら?」
芙蓉は手近な参考書を適当に詰め込んだバッグを持って家を飛び出した。
ちょうど午後で一番暑い時間帯だったのもあり、芙蓉はクールダウンを兼ねて伏黒のアパート近くのコンビニに立ち寄り、シャーベットアイスを2つ買った。コンビニを出ると早足でアパートへ向かう。
程なくしてアパートに辿り着き、アイスは形が無くなる前に無事冷凍庫へ避難する事ができた。
「…なんかあったか?」
暑さで赤い顔をし、タオルで汗を拭いている芙蓉に伏黒は氷たっぷりの麦茶を出してやった。芙蓉は伏黒に礼を言うと、居酒屋でヤケ酒を呷るサラリーマンよろしく冷えた麦茶を一気に飲み干した。
「…なんかあったな」
「…悟くんがめんどくさい」
「それはいつもだろ」
芙蓉の言葉に同調しつつ、五条がまた芙蓉の家を訪れた事を察した。伏黒は芙蓉のグラスに麦茶を淹れると、テーブルを挟んで芙蓉の向かいに座った。