変転
恵の幼馴染のお名前は?
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家入と五条が医務室を出て行き、残された伏黒と芙蓉。伏黒はともかく、今の状況がどうなっているのか把握出来ていない芙蓉は戸惑いを滲ませて口を開く。
「…なんか…、何があったの?」
伏黒は側にあったパイプ椅子を広げて座る。
「それより、本当に身体は大丈夫か?話はそれからだ」
「あ…うん…、家入さんに言った通り、少しだけ頭が痛いくらい。あとは…ちょっと疲れたって感じかな」
ベッドから身体を起こした芙蓉の顔を改めて見れば、だいぶ顔色が良くなっている。伏黒は安堵の息を漏らす。
「…何か飲むか?」
「ううん、大丈夫。…さっき、悟くんがお茶買ってきてくれたから」
芙蓉の口から五条の名が出て、伏黒は先程の怒りが再び沸き立つのを感じた。家入と話をして少し落ち着き、落とし所までつけてもらったのにー。
「恵は、大丈夫?」
「…、何が」
芙蓉の言葉に対し、苛立ちを抑えきれずぞんざいな物言いをしてしまった伏黒は自身の幼稚さに嫌気が差す。
「さっき、悟くんに謝られたの。…“僕の勝手で芙蓉に怖い想いをさせちゃったね、ごめんね”って。それと…、恵にもすごく怒られた、って言ってて」
「…そうか」
話を聞いて、また少し落ち着きを感じるあたり、つくづく単純だな、まだまだガキだなと伏黒は内心自嘲した。
「ねぇ恵、」
「…ん?」
「…、私、」
そこでドアを叩く音がして、芙蓉は口を閉じる。伏黒と芙蓉は顔を見合わせた。
「…はい」
伏黒が返事をすると、静かにドアが開く。先程出て行った家入と、些か小さくなったような五条、そしてサングラスをかけた強面の男性が姿を見せた。芙蓉は無意識にブランケットを握りしめる。
「急に悪いな。…こちらは高専の学長だ。伏黒は会った事があるな。どうしてもお前たちと話がしたいと」
家入の言葉に、学長はゆっくりと2人の側へ歩み寄る。
「学長〜、芙蓉が怯えてるよ〜」
「悟、お前という奴は本当に…」
「学長、言うだけ無駄ですよ」
外野2人の野次に出鼻をくじかれた格好となり、口をへの字に歪めた学長はひとつ咳払いをする。
「…私は高専の学長を務める夜蛾と言う。この度はウチの五条が申し訳ない事をした」
そう言って深々と頭を下げる。この行動に伏黒はもちろん芙蓉は驚いた。
「あっ、いえ、そんな、大丈夫です」
「望むなら五条には何かしらの処分を検討するが」
夜蛾の言葉にえ、マジ、という五条の声が聞こえる。想像もしなかった状況に芙蓉は戸惑い、ブランケットを握る手を見つめたり、所在なく視線を彷徨わせたり。
ややあって、芙蓉は控えめに口を開く。
「…あの、…大丈夫です」
そこまで言って顔を上げると、その場にいた全員の視線が芙蓉に集まる。
「…私個人としては、ちょっと怖い想いしたくらいで…その、悟くんも謝ってくれましたし、大丈夫です。…それに…、恵にも、悟くんにもケガはなかったわけですから…、本当にお気になさらないでください」
「…本当に硝子の言った通り、とても悟の親戚とは思えんくらいに本当によく出来た子だな」
夜蛾は家入と五条を振り返って言った。
「寛大な配慮に感謝する。体調が落ち着くまで休んでいくと良い。…もし必要なら親御さんに連絡して…」
「いえっ、そこまでご迷惑をおかけするわけには…!」
そこまで気を遣ってもらっては恐縮が過ぎるー芙蓉は何度も頭を下げて礼を言った。
「ここは駅やバス停からはかなり距離があるからな、帰る時には声をかけてくれ。家まで送らせよう」
そう言って夜蛾は五条を連れて医務室を出て行った。ドアが閉まり、2人の足音が遠ざかるのを確認すると、家入はずっと堪えていたらしい笑いを吹き出した。
「…高峰、学長に怯えすぎ」
「え、だってそんな…」
「怖そうだけど良い人だぞ」
家入は学長から、と封筒を芙蓉に差し出した。封筒を受け取り、中を覗くと1万円札が入っていた。驚いた芙蓉は封筒を伏黒に手渡す。伏黒も中を確認する。
「…これ、受け取ったらマズいんじゃないですか?」
「学長は迷惑料だって言ってたんだが…、どうしても受け取れないっていうなら自分たちで返しに行きな」
そこまで言われて伏黒と芙蓉は頷き合うと、夜蛾学長によろしくお伝えください、と家入に頭を下げた。
「それで良い。…デート代の足しにはなるだろ」
「えっ、そんな…っ」
「なんだ、違うのか?」
「…揶揄わないでください」
伏黒も芙蓉も僅かに顔を赤らめているのを見て、家入はまた小さく笑った。
「…照れる事ないだろう?それより、もう大丈夫そうだな。思ったより回復が早くて良かったよ」
家入は芙蓉の血圧と体温を確認すると、歩けそうなら帰っても大丈夫だと太鼓判を押す。言われてみれば、だいぶ身体の調子が良い気がするー言われた通り、立ち上がっても頭痛やめまいのような症状はない。ありがとうございます、と家入に頭を下げる。
「伏黒はともかく、高峰はあまりここに来るような事にならないようにな」
穏やかな顔で言う家入に芙蓉は再び頭を下げた。
「…なんか…、何があったの?」
伏黒は側にあったパイプ椅子を広げて座る。
「それより、本当に身体は大丈夫か?話はそれからだ」
「あ…うん…、家入さんに言った通り、少しだけ頭が痛いくらい。あとは…ちょっと疲れたって感じかな」
ベッドから身体を起こした芙蓉の顔を改めて見れば、だいぶ顔色が良くなっている。伏黒は安堵の息を漏らす。
「…何か飲むか?」
「ううん、大丈夫。…さっき、悟くんがお茶買ってきてくれたから」
芙蓉の口から五条の名が出て、伏黒は先程の怒りが再び沸き立つのを感じた。家入と話をして少し落ち着き、落とし所までつけてもらったのにー。
「恵は、大丈夫?」
「…、何が」
芙蓉の言葉に対し、苛立ちを抑えきれずぞんざいな物言いをしてしまった伏黒は自身の幼稚さに嫌気が差す。
「さっき、悟くんに謝られたの。…“僕の勝手で芙蓉に怖い想いをさせちゃったね、ごめんね”って。それと…、恵にもすごく怒られた、って言ってて」
「…そうか」
話を聞いて、また少し落ち着きを感じるあたり、つくづく単純だな、まだまだガキだなと伏黒は内心自嘲した。
「ねぇ恵、」
「…ん?」
「…、私、」
そこでドアを叩く音がして、芙蓉は口を閉じる。伏黒と芙蓉は顔を見合わせた。
「…はい」
伏黒が返事をすると、静かにドアが開く。先程出て行った家入と、些か小さくなったような五条、そしてサングラスをかけた強面の男性が姿を見せた。芙蓉は無意識にブランケットを握りしめる。
「急に悪いな。…こちらは高専の学長だ。伏黒は会った事があるな。どうしてもお前たちと話がしたいと」
家入の言葉に、学長はゆっくりと2人の側へ歩み寄る。
「学長〜、芙蓉が怯えてるよ〜」
「悟、お前という奴は本当に…」
「学長、言うだけ無駄ですよ」
外野2人の野次に出鼻をくじかれた格好となり、口をへの字に歪めた学長はひとつ咳払いをする。
「…私は高専の学長を務める夜蛾と言う。この度はウチの五条が申し訳ない事をした」
そう言って深々と頭を下げる。この行動に伏黒はもちろん芙蓉は驚いた。
「あっ、いえ、そんな、大丈夫です」
「望むなら五条には何かしらの処分を検討するが」
夜蛾の言葉にえ、マジ、という五条の声が聞こえる。想像もしなかった状況に芙蓉は戸惑い、ブランケットを握る手を見つめたり、所在なく視線を彷徨わせたり。
ややあって、芙蓉は控えめに口を開く。
「…あの、…大丈夫です」
そこまで言って顔を上げると、その場にいた全員の視線が芙蓉に集まる。
「…私個人としては、ちょっと怖い想いしたくらいで…その、悟くんも謝ってくれましたし、大丈夫です。…それに…、恵にも、悟くんにもケガはなかったわけですから…、本当にお気になさらないでください」
「…本当に硝子の言った通り、とても悟の親戚とは思えんくらいに本当によく出来た子だな」
夜蛾は家入と五条を振り返って言った。
「寛大な配慮に感謝する。体調が落ち着くまで休んでいくと良い。…もし必要なら親御さんに連絡して…」
「いえっ、そこまでご迷惑をおかけするわけには…!」
そこまで気を遣ってもらっては恐縮が過ぎるー芙蓉は何度も頭を下げて礼を言った。
「ここは駅やバス停からはかなり距離があるからな、帰る時には声をかけてくれ。家まで送らせよう」
そう言って夜蛾は五条を連れて医務室を出て行った。ドアが閉まり、2人の足音が遠ざかるのを確認すると、家入はずっと堪えていたらしい笑いを吹き出した。
「…高峰、学長に怯えすぎ」
「え、だってそんな…」
「怖そうだけど良い人だぞ」
家入は学長から、と封筒を芙蓉に差し出した。封筒を受け取り、中を覗くと1万円札が入っていた。驚いた芙蓉は封筒を伏黒に手渡す。伏黒も中を確認する。
「…これ、受け取ったらマズいんじゃないですか?」
「学長は迷惑料だって言ってたんだが…、どうしても受け取れないっていうなら自分たちで返しに行きな」
そこまで言われて伏黒と芙蓉は頷き合うと、夜蛾学長によろしくお伝えください、と家入に頭を下げた。
「それで良い。…デート代の足しにはなるだろ」
「えっ、そんな…っ」
「なんだ、違うのか?」
「…揶揄わないでください」
伏黒も芙蓉も僅かに顔を赤らめているのを見て、家入はまた小さく笑った。
「…照れる事ないだろう?それより、もう大丈夫そうだな。思ったより回復が早くて良かったよ」
家入は芙蓉の血圧と体温を確認すると、歩けそうなら帰っても大丈夫だと太鼓判を押す。言われてみれば、だいぶ身体の調子が良い気がするー言われた通り、立ち上がっても頭痛やめまいのような症状はない。ありがとうございます、と家入に頭を下げる。
「伏黒はともかく、高峰はあまりここに来るような事にならないようにな」
穏やかな顔で言う家入に芙蓉は再び頭を下げた。