変転
恵の幼馴染のお名前は?
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「いや〜芙蓉もさ、一応僕の実家で鍛錬受けてるワケだし、実際の現場を見せてあげようと思っただけなんだよね。だからそんな怖い顔しないでよ、ね?」
この場に高専の学長が居たら間違いなく怒鳴り飛ばされるだろう五条の言葉に、家入は深いため息をついた。
「もし呪霊に襲われるとか、危なくなりそう事があっても大丈夫なように、僕も同行してたワケだし、」
「……だろ…?」
つらつらと言い訳のような理由を話す五条の言葉に、感情を押し殺したような伏黒の低い声が割って入る。
「ん?」
「…アンタ、わざとだろ!?」
伏黒の怒鳴り声に家入は驚いて肩を揺らし、五条はさすがに開きかけていた口を噤んだ。
「最初からわざと芙蓉を危険に晒して術式を無理に発現させようとしてたんだろ!?芙蓉の悲鳴が聞こえてからもアンタの呪力は感じられなかった!それでよくー」
「っ、伏黒、」
今にも五条に掴みかかっていきそうな彼に、少し落ち着け、と言う家入の声。伏黒は我に返った。が、一度噴き出した感情をすぐに抑える事は出来ず、伏黒はそのまま医務室を飛び出して行ってしまった。
「驚いたな、伏黒があんなに感情的になるなんてな。…で?五条、本当のところはどうなんだ?」
「…何の事?」
素知らぬ顔で首を傾げる五条に、家入は盛大にため息をついてみせた。そして医務室の出入り口に足を向ける。
「え、硝子までどこ行くの?」
「黙れクズ。お前は着いてくるなよ、お前が居ると落ち着く話も落ち着かないからな」
吐き捨てるように言い置いて家入は医務室を出る。こっちか、と建物を出てグラウンドの方へ向かった。
グラウンドの側にある、自販機の並ぶ休憩スペースのベンチに探していた後ろ姿を見つけた。
ポケットの小銭を自販機に押し込み、コーヒーのボタンを押す。少し迷って、続けてコーラのボタンを押した。
「…ほら」
項垂れている背中に声をかけてコーラを差し出す。億劫そうに顔を上げた伏黒は気まずそうに家入から目を逸らしつつも、遠慮がちにコーラを受け取った。
「コーラで良かったか?」
家入はコーヒーを開封しながら伏黒から少し間を空けて隣に座った。頷く伏黒にまぁ飲めよ、と促せば、伏黒はいただきます、とコーラを開封してひと口飲んだ。
「…あのバカが悪かったな」
「…いえ…」
「あのバカとは学生の頃からの付き合いでな。…他人に対しての態度はアレでも幾らかマシになったんだが、まだ人として必要な部分が欠落しててな」
淡々と語る家入に、伏黒は黙って耳を傾けていた。感情はだいぶ落ち着いてきたものの、まだ腑に落ちないというか、納得出来ない部分がまだまだある。
「…あの人は五条家に生まれて、一般人の生活とは掛け離れた生活をしてきたんだろう事はわかりますが」
そこで伏黒はコーラを口にした。弾ける炭酸が喉を刺す。祓除の現場で戦う術も持たず、あの場所で一番強力な呪霊に襲われた芙蓉。彼女はどれほど恐ろしい想いをしただろうーもっと口汚く罵ってやりたい衝動に駆られるが、そんな事をしたって何にもならないのはわかっているし、何より芙蓉がそのような事を望まないだろう。
「…その事が、他人を危険な目に遭わせる理由にはなりませんし、俺は許せません」
絞り出すような伏黒の言葉に、家入は同調した。
「…お前の言う通りだな。お前の方があのバカよりもずっと大人だ。…この先、高専で付き合って行くんだ、ある程度割り切っていかないと持たないぞ」
「は…、そうですね」
力なく笑う伏黒を見て、とりあえずは大丈夫そうだと家入は安堵した。あのまま変なすれ違いを残したままではこの先良くない影響が出るだろう事は明らかだった。
「それにしても…」
「…はい?」
「… 高峰の事、だいぶ大事にしてるんだな」
その言葉に伏黒は思わず家入を振り返った。家入は何でもないような顔でコーヒーを飲んでいるが、恐らく伏黒の気持ちを察しているのだろう。
「お前があんなに感情的になるとは思わなかった」
「っ、あれは、」
「若いっていいな。悪い事じゃない、大事にしてやれ」
そう微笑む家入に伏黒は何も言えなかった。家入は立ち上がって伸びをした。と、伏黒を振り返り、そろそろ行くか、と声をかける。
「高峰がそろそろ目を覚ますかもしれないからな。…お前の姿がないと心配するだろう」
伏黒は照れ臭いようなこそばゆいような気持ちを押し込め、家入の後について歩く。
「とりあえず今回の件は問題行為ともとれる事案だ。あのバカを連れてこの後学長に報告する。…この程度の事しか出来ないが、今回はこれで手打ちにしてくれ」
「…お気遣い、ありがとうございます」
医務室のドアを開ければ、芙蓉はもう目を覚ましていたようで、五条と話をしていた。
「あ、恵!…と、」
「芙蓉は初めてだったね。高専の専属医で、僕の同期の家入硝子。…キレるとマジ怖いから気を付けてね」
「家入だ。…どこか痛むところや具合の悪いところはないか?薬も準備できるぞ」
「あ、はい…、ありがとうございます。少し、頭が痛いですが…、大丈夫です」
「…とてもお前の親戚とは信じられないくらいしっかりしているな。…五条、行くぞ。着いてこい」
「え、どこに?」
黙ってついてこいと有無を言わさず、家入は五条を引きずるように部屋を出て行った。
この場に高専の学長が居たら間違いなく怒鳴り飛ばされるだろう五条の言葉に、家入は深いため息をついた。
「もし呪霊に襲われるとか、危なくなりそう事があっても大丈夫なように、僕も同行してたワケだし、」
「……だろ…?」
つらつらと言い訳のような理由を話す五条の言葉に、感情を押し殺したような伏黒の低い声が割って入る。
「ん?」
「…アンタ、わざとだろ!?」
伏黒の怒鳴り声に家入は驚いて肩を揺らし、五条はさすがに開きかけていた口を噤んだ。
「最初からわざと芙蓉を危険に晒して術式を無理に発現させようとしてたんだろ!?芙蓉の悲鳴が聞こえてからもアンタの呪力は感じられなかった!それでよくー」
「っ、伏黒、」
今にも五条に掴みかかっていきそうな彼に、少し落ち着け、と言う家入の声。伏黒は我に返った。が、一度噴き出した感情をすぐに抑える事は出来ず、伏黒はそのまま医務室を飛び出して行ってしまった。
「驚いたな、伏黒があんなに感情的になるなんてな。…で?五条、本当のところはどうなんだ?」
「…何の事?」
素知らぬ顔で首を傾げる五条に、家入は盛大にため息をついてみせた。そして医務室の出入り口に足を向ける。
「え、硝子までどこ行くの?」
「黙れクズ。お前は着いてくるなよ、お前が居ると落ち着く話も落ち着かないからな」
吐き捨てるように言い置いて家入は医務室を出る。こっちか、と建物を出てグラウンドの方へ向かった。
グラウンドの側にある、自販機の並ぶ休憩スペースのベンチに探していた後ろ姿を見つけた。
ポケットの小銭を自販機に押し込み、コーヒーのボタンを押す。少し迷って、続けてコーラのボタンを押した。
「…ほら」
項垂れている背中に声をかけてコーラを差し出す。億劫そうに顔を上げた伏黒は気まずそうに家入から目を逸らしつつも、遠慮がちにコーラを受け取った。
「コーラで良かったか?」
家入はコーヒーを開封しながら伏黒から少し間を空けて隣に座った。頷く伏黒にまぁ飲めよ、と促せば、伏黒はいただきます、とコーラを開封してひと口飲んだ。
「…あのバカが悪かったな」
「…いえ…」
「あのバカとは学生の頃からの付き合いでな。…他人に対しての態度はアレでも幾らかマシになったんだが、まだ人として必要な部分が欠落しててな」
淡々と語る家入に、伏黒は黙って耳を傾けていた。感情はだいぶ落ち着いてきたものの、まだ腑に落ちないというか、納得出来ない部分がまだまだある。
「…あの人は五条家に生まれて、一般人の生活とは掛け離れた生活をしてきたんだろう事はわかりますが」
そこで伏黒はコーラを口にした。弾ける炭酸が喉を刺す。祓除の現場で戦う術も持たず、あの場所で一番強力な呪霊に襲われた芙蓉。彼女はどれほど恐ろしい想いをしただろうーもっと口汚く罵ってやりたい衝動に駆られるが、そんな事をしたって何にもならないのはわかっているし、何より芙蓉がそのような事を望まないだろう。
「…その事が、他人を危険な目に遭わせる理由にはなりませんし、俺は許せません」
絞り出すような伏黒の言葉に、家入は同調した。
「…お前の言う通りだな。お前の方があのバカよりもずっと大人だ。…この先、高専で付き合って行くんだ、ある程度割り切っていかないと持たないぞ」
「は…、そうですね」
力なく笑う伏黒を見て、とりあえずは大丈夫そうだと家入は安堵した。あのまま変なすれ違いを残したままではこの先良くない影響が出るだろう事は明らかだった。
「それにしても…」
「…はい?」
「… 高峰の事、だいぶ大事にしてるんだな」
その言葉に伏黒は思わず家入を振り返った。家入は何でもないような顔でコーヒーを飲んでいるが、恐らく伏黒の気持ちを察しているのだろう。
「お前があんなに感情的になるとは思わなかった」
「っ、あれは、」
「若いっていいな。悪い事じゃない、大事にしてやれ」
そう微笑む家入に伏黒は何も言えなかった。家入は立ち上がって伸びをした。と、伏黒を振り返り、そろそろ行くか、と声をかける。
「高峰がそろそろ目を覚ますかもしれないからな。…お前の姿がないと心配するだろう」
伏黒は照れ臭いようなこそばゆいような気持ちを押し込め、家入の後について歩く。
「とりあえず今回の件は問題行為ともとれる事案だ。あのバカを連れてこの後学長に報告する。…この程度の事しか出来ないが、今回はこれで手打ちにしてくれ」
「…お気遣い、ありがとうございます」
医務室のドアを開ければ、芙蓉はもう目を覚ましていたようで、五条と話をしていた。
「あ、恵!…と、」
「芙蓉は初めてだったね。高専の専属医で、僕の同期の家入硝子。…キレるとマジ怖いから気を付けてね」
「家入だ。…どこか痛むところや具合の悪いところはないか?薬も準備できるぞ」
「あ、はい…、ありがとうございます。少し、頭が痛いですが…、大丈夫です」
「…とてもお前の親戚とは信じられないくらいしっかりしているな。…五条、行くぞ。着いてこい」
「え、どこに?」
黙ってついてこいと有無を言わさず、家入は五条を引きずるように部屋を出て行った。