変転
恵の幼馴染のお名前は?
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鼻歌交じりでにこやかに車を降りる五条、好奇心で車を降りる芙蓉。伏黒は軽い頭痛を覚えた。
「…申し訳ありません…」
「…藤田さんが悪いわけじゃないんでやめてください」
運転席で幾分青い顔をしている男ー藤田は再度伏黒に謝罪した。車から降りない限り、この人はずっと謝ってくるだろうなー伏黒は仕方なく車を降りた。
「悟くん、ここは何なの?」
「芙蓉は実際の現場は初めてだね。このビルには今まさに呪いが存在してて、これから恵に呪術師の任務として呪いを祓ってもらうところ」
目の前に聳えるビルは周りの建物と比べると随分古めかしく、背も低い。土地開発に取り残されたようなそのビルは周りの建物の影で日中も暗い。テナントも入らず、人の出入りもなく、陰気な空気だけで満たされているようだった。建物を観察する芙蓉の後ろで、五条は伏黒に任務の概要を説明し始める。
「ま、今回の任務は呪いを祓うだけで複雑な事は何もないし、せいぜい3級以下ってところかな。だから恵の自由にやっていいんだけど、」
「…けど?」
引っかかる言い方に伏黒は眉根を寄せる。
「今日は芙蓉も連れてってね」
「…はぁ⁉︎」
「一緒に行って、芙蓉が恵のがんばってるとこを見れば、“キャー恵カッコイイ〜!”ってなって、絶対今よりいい感じになるでしょ?」
この人の頭は大丈夫かと伏黒は本気で不安になった。頭がわいているんじゃないのかと率直に言ってやりたいくらいなのだが、仮にも年長で自身の師となる存在に対してそこまでの暴言を吐くのはさすがに憚られた。思いを飲み込み、代わりに大きく息を吐く。
「…どう考えても反対です。術師でもない芙蓉を同行させるなんて危険過ぎます」
「そこは恵が守ってあげるんだよ。これから先、呪いに巻き込まれた一般人を守りながらの任務だってあるかもしれないでしょ?」
「だからって…!」
「…どうしたの?大丈夫?」
芙蓉の言葉に伏黒は口を噤んだ。
「ねぇ芙蓉、恵と一緒に祓除に行ってみない?」
「な…」
「ん〜…いいよ。…けど、悟くんも一緒ね。私が行く事で恵の負担になるのは嫌だから」
ナイス芙蓉、と伏黒は内心ガッツポーズをした。
「…では、帳を下ろします。お気をつけて」
運転手の藤田が呪詞を唱えると、空きビルは黒い結界ー帳に覆われた。祓除の任務には不可欠な結界といえた。
「…なんか…、頭痛い」
帳の中に立ちこめる、濃くなった呪いの空気に当てられているのだろう、芙蓉はズキズキと脈打つこめかみを押さえながら、前を行く2人を追う。
「芙蓉、前に五条の家でやった呪力操作は覚えてる?」
「あ、うん…」
「呪力操作は基本中の基本だからね。しっかり意識して、気持ちを強く持って」
五条のアドバイスを受け、芙蓉は立ち止まって大きく深呼吸をし、自身の内側に意識を集中させる。と、少しだけ頭痛が軽減された気がした。
いつの間にか伏黒は白と黒の2匹の犬ー玉犬を召喚し、ビル1階を捜索していた。五条は伏黒に手を貸す様子もなく、腕組みをしてビルの壁に寄りかかって伏黒の様子を黙って見ていた。
「悟くん、今ってどういう状況?」
伏黒の集中を削ぐ事がないようにと、芙蓉は五条にコソコソ声をかける。
「ここのビルに呪いが集まってるのは話したね?その呪いの中でも一番強力な呪いを探してるところだよ」
親玉を祓えば無事任務終了だよ、言う五条に納得しつつも、2人でやったら早いんじゃないのと言う芙蓉。
「それだと恵のトレーニングにならないでしょ」
五条は本当に動く気がないようで、先程から伏黒の様子を黙って見ているだけだ。
伏黒の様子を遠目に見ると、かなり集中して索敵しているようで、声をかけるのも憚られる。自分は来る必要がなかったんじゃないかと思いながら、芙蓉は手近な場所にある、伏黒がドアを開け放して行った部屋を覗く。
「呪いが隠れてる事もあるから、1人であちこち行かないようにね」
五条の言葉に頷き、先程のドアを潜る。部屋には事務椅子がひとつ置き去りにされているだけで何も無かった。窓に近づいて外を見れば帳が下りている。ビルは漆黒の呪力の膜で覆われ、辺りは夜の闇を湛えている。
ふと、芙蓉の耳に物音が届いた。音が聞こえた方へ顔を向けると、扉が半開きになった古びたロッカーがあった。芙蓉はその中を覗こうとして近付く。と、異様に目の大きい、背に翼を生やした小人のようなモノが飛び出して来て芙蓉は驚いて身を引いた。その小さな呪いは芙蓉の姿を認めると、そちらも彼女に驚いたようで何処かへ飛んで行ってしまった。ほっと胸を撫で下ろし、芙蓉は部屋を出ようとドアノブに手をかけーる直前でドアが大きく開き、驚き飛び上がった。
「あ、ゴメン、びっくりさせちゃった?…恵が上の階に行くみたいだからね、一緒に行くよ」
お化け屋敷というか何というかー芙蓉は深呼吸して気持ちを落ち着かせ、伏黒と五条の後を追った。
「…申し訳ありません…」
「…藤田さんが悪いわけじゃないんでやめてください」
運転席で幾分青い顔をしている男ー藤田は再度伏黒に謝罪した。車から降りない限り、この人はずっと謝ってくるだろうなー伏黒は仕方なく車を降りた。
「悟くん、ここは何なの?」
「芙蓉は実際の現場は初めてだね。このビルには今まさに呪いが存在してて、これから恵に呪術師の任務として呪いを祓ってもらうところ」
目の前に聳えるビルは周りの建物と比べると随分古めかしく、背も低い。土地開発に取り残されたようなそのビルは周りの建物の影で日中も暗い。テナントも入らず、人の出入りもなく、陰気な空気だけで満たされているようだった。建物を観察する芙蓉の後ろで、五条は伏黒に任務の概要を説明し始める。
「ま、今回の任務は呪いを祓うだけで複雑な事は何もないし、せいぜい3級以下ってところかな。だから恵の自由にやっていいんだけど、」
「…けど?」
引っかかる言い方に伏黒は眉根を寄せる。
「今日は芙蓉も連れてってね」
「…はぁ⁉︎」
「一緒に行って、芙蓉が恵のがんばってるとこを見れば、“キャー恵カッコイイ〜!”ってなって、絶対今よりいい感じになるでしょ?」
この人の頭は大丈夫かと伏黒は本気で不安になった。頭がわいているんじゃないのかと率直に言ってやりたいくらいなのだが、仮にも年長で自身の師となる存在に対してそこまでの暴言を吐くのはさすがに憚られた。思いを飲み込み、代わりに大きく息を吐く。
「…どう考えても反対です。術師でもない芙蓉を同行させるなんて危険過ぎます」
「そこは恵が守ってあげるんだよ。これから先、呪いに巻き込まれた一般人を守りながらの任務だってあるかもしれないでしょ?」
「だからって…!」
「…どうしたの?大丈夫?」
芙蓉の言葉に伏黒は口を噤んだ。
「ねぇ芙蓉、恵と一緒に祓除に行ってみない?」
「な…」
「ん〜…いいよ。…けど、悟くんも一緒ね。私が行く事で恵の負担になるのは嫌だから」
ナイス芙蓉、と伏黒は内心ガッツポーズをした。
「…では、帳を下ろします。お気をつけて」
運転手の藤田が呪詞を唱えると、空きビルは黒い結界ー帳に覆われた。祓除の任務には不可欠な結界といえた。
「…なんか…、頭痛い」
帳の中に立ちこめる、濃くなった呪いの空気に当てられているのだろう、芙蓉はズキズキと脈打つこめかみを押さえながら、前を行く2人を追う。
「芙蓉、前に五条の家でやった呪力操作は覚えてる?」
「あ、うん…」
「呪力操作は基本中の基本だからね。しっかり意識して、気持ちを強く持って」
五条のアドバイスを受け、芙蓉は立ち止まって大きく深呼吸をし、自身の内側に意識を集中させる。と、少しだけ頭痛が軽減された気がした。
いつの間にか伏黒は白と黒の2匹の犬ー玉犬を召喚し、ビル1階を捜索していた。五条は伏黒に手を貸す様子もなく、腕組みをしてビルの壁に寄りかかって伏黒の様子を黙って見ていた。
「悟くん、今ってどういう状況?」
伏黒の集中を削ぐ事がないようにと、芙蓉は五条にコソコソ声をかける。
「ここのビルに呪いが集まってるのは話したね?その呪いの中でも一番強力な呪いを探してるところだよ」
親玉を祓えば無事任務終了だよ、言う五条に納得しつつも、2人でやったら早いんじゃないのと言う芙蓉。
「それだと恵のトレーニングにならないでしょ」
五条は本当に動く気がないようで、先程から伏黒の様子を黙って見ているだけだ。
伏黒の様子を遠目に見ると、かなり集中して索敵しているようで、声をかけるのも憚られる。自分は来る必要がなかったんじゃないかと思いながら、芙蓉は手近な場所にある、伏黒がドアを開け放して行った部屋を覗く。
「呪いが隠れてる事もあるから、1人であちこち行かないようにね」
五条の言葉に頷き、先程のドアを潜る。部屋には事務椅子がひとつ置き去りにされているだけで何も無かった。窓に近づいて外を見れば帳が下りている。ビルは漆黒の呪力の膜で覆われ、辺りは夜の闇を湛えている。
ふと、芙蓉の耳に物音が届いた。音が聞こえた方へ顔を向けると、扉が半開きになった古びたロッカーがあった。芙蓉はその中を覗こうとして近付く。と、異様に目の大きい、背に翼を生やした小人のようなモノが飛び出して来て芙蓉は驚いて身を引いた。その小さな呪いは芙蓉の姿を認めると、そちらも彼女に驚いたようで何処かへ飛んで行ってしまった。ほっと胸を撫で下ろし、芙蓉は部屋を出ようとドアノブに手をかけーる直前でドアが大きく開き、驚き飛び上がった。
「あ、ゴメン、びっくりさせちゃった?…恵が上の階に行くみたいだからね、一緒に行くよ」
お化け屋敷というか何というかー芙蓉は深呼吸して気持ちを落ち着かせ、伏黒と五条の後を追った。