変転
恵の幼馴染のお名前は?
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梅雨が明け、伏黒と芙蓉にとって中学最後の夏休みがやってくる。この頃にはもう3年生は全員部活を引退していて、もう学年全体が受験一色に染まり始める。クラス担任は受験に向けて大切な時だ、くれぐれも無駄に過ごす事のないようにと毎日のように同じ事を言っている。
もうほとんどの生徒はどの学校に進学するか、ある程度受験先を決めてそれに向かって勉強を始めているのだが、芙蓉は未だに明確に進学先を決められずにいた。
せめてもの救いは芙蓉の成績が良いところで安定している事。極端に悪いわけでもない為、選択の幅はわりと広く、今無理に決めなくても学力を維持しておけばとりあえず進学は出来ると言うのが本人の弁。早めに目標を決めた方が勉強も捗るだろうと周りも本人も思うのだが。
「ねぇ芙蓉、高専に進学するの、考えてくれた?」
夏休みの初日、久しぶりに伏黒と芙蓉は五条に呼び出された。駅前の小さなカフェで伏黒はアイスコーヒーを、芙蓉はアイスカフェオレを、五条はチョコレートクリームパフェを目の前に話していた。五条の前に提供された、バニラアイスの上に山盛りのホイップクリームにこれでもかと流し込まれたチョコレートシロップ。見ているだけでお腹いっぱいになりそうなパフェに視線を奪われ、芙蓉は五条の言葉を聞き漏らしていた。
「…芙蓉?」
「え、あ、ごめん、何て?」
「高専に進学しないかって聞いたの」
スプーンでクリームとチョコを混ぜ合わせて口に運ぶ五条は上機嫌だった。一方芙蓉とは反対に、進学先を高専に決めた伏黒は五条のパフェを視界に入れないように意識しながらアイスコーヒーを啜る。
「うーん…。まだ迷ってるんだよね…」
カフェオレをストローでぐるぐると混ぜ遊ぶ。かなり前から五条は芙蓉の事を口説いているが、未だ術式も発現していない芙蓉は、自分のような者が高専に入っても大丈夫なのだろうかと常々思っていた。
「じゃあさ、恵と一緒に高専の見学においでよ。僕が直々に案内するからさ」
五条の言葉に伏黒と芙蓉は顔を見合わせた。
「…俺は別に、」
「まぁまぁ、恵だって高専の中は見たことないでしょ?固いこと言わずにさぁ」
伏黒は以前、五条に連れられて祓除の任務に同行した際、高専に立ち寄った事があった。尤も、その時は車の中で待機していたので正門しか見ていない。
「…悟くんがそこまで言うなら…」
ね、恵、どうかな?と芙蓉が隣を振り返ると、伏黒は仕方ねぇなと了承した。
「よーし決まりぃ!じゃ、明日の9時にまたこのカフェに集合ね。そんじゃまたね〜」
いつの間にかパフェを平らげていた五条は伝票を手に、2人を残して行ってしまった。
半強制的に決まった高専見学。なんだか嫌な予感がすると伏黒は残りのアイスコーヒーを啜った。
翌日。伏黒と芙蓉は9時前に前日と同じカフェに到着し、五条を待っていた。伏黒は昨日と同じくアイスコーヒーを、芙蓉はキャラメルマキアートを飲んでいた。
「…来ないね、9時過ぎてるのに」
時計の針は9:05を指しているが、五条が現れる様子がない。芙蓉は大丈夫かなと心配するも、伏黒は五条がわりと時間にルーズなところがあると知っているからか、その内来るだろ、とさして気にする様子もなくコーヒーを飲む。果たして伏黒の言葉通り、9:10を過ぎた頃に五条はカフェに姿を見せた。
「いやぁごめんごめん。ちょっと立て込んじゃってね」
「大丈夫なの?もし大変なら別の日でも、」
「大丈夫。とりあえず行こうか」
五条はテーブルから伝票を取り上げレジへ向かう。彼に遅れないようと2人は後を追った。
外へ出れば、駅のロータリーに黒塗りの車が1台。
「あれ、電車じゃないんだ…?」
高専は東京都内にありながら、都心からはかなり離れた場所にあると聞いていた芙蓉。ここ、埼玉からは電車やバスを乗り継いでの長旅になるだろうと思い、軽い旅行気分でいたようだ。
「ん?…あぁ、ちょっと用事があってね。用を済ませてから高専に行こうと思って」
五条の言葉に納得し、促されるまま車に乗り込む芙蓉とは対照的に、嫌な予感を覚え眉間に皺を寄せる伏黒。五条の言う“用事”が今までたいした事がなかった試しがないーそうわかっていても、今この場で同行を拒否する事は出来ないし、用事の内容を聞いてもはぐらかされて終わりだろう。伏黒は肺の空気を全部吐き出すくらいの大きなため息をつくと、仕方なく車に乗り込んだ。
埼玉県を抜けて車は都内に入る。交通量が増えてきたところで車は裏路地の方へと向かい、人通りの少ない裏通りの一角で停まった。
「悟くん、ここは…?」
「うん、ここに用があるんだ。…さて恵、仕事だよ」
あぁやっぱりー車に乗る前に感じた嫌な予感は的中し、伏黒は再び盛大にため息をついた。
もうほとんどの生徒はどの学校に進学するか、ある程度受験先を決めてそれに向かって勉強を始めているのだが、芙蓉は未だに明確に進学先を決められずにいた。
せめてもの救いは芙蓉の成績が良いところで安定している事。極端に悪いわけでもない為、選択の幅はわりと広く、今無理に決めなくても学力を維持しておけばとりあえず進学は出来ると言うのが本人の弁。早めに目標を決めた方が勉強も捗るだろうと周りも本人も思うのだが。
「ねぇ芙蓉、高専に進学するの、考えてくれた?」
夏休みの初日、久しぶりに伏黒と芙蓉は五条に呼び出された。駅前の小さなカフェで伏黒はアイスコーヒーを、芙蓉はアイスカフェオレを、五条はチョコレートクリームパフェを目の前に話していた。五条の前に提供された、バニラアイスの上に山盛りのホイップクリームにこれでもかと流し込まれたチョコレートシロップ。見ているだけでお腹いっぱいになりそうなパフェに視線を奪われ、芙蓉は五条の言葉を聞き漏らしていた。
「…芙蓉?」
「え、あ、ごめん、何て?」
「高専に進学しないかって聞いたの」
スプーンでクリームとチョコを混ぜ合わせて口に運ぶ五条は上機嫌だった。一方芙蓉とは反対に、進学先を高専に決めた伏黒は五条のパフェを視界に入れないように意識しながらアイスコーヒーを啜る。
「うーん…。まだ迷ってるんだよね…」
カフェオレをストローでぐるぐると混ぜ遊ぶ。かなり前から五条は芙蓉の事を口説いているが、未だ術式も発現していない芙蓉は、自分のような者が高専に入っても大丈夫なのだろうかと常々思っていた。
「じゃあさ、恵と一緒に高専の見学においでよ。僕が直々に案内するからさ」
五条の言葉に伏黒と芙蓉は顔を見合わせた。
「…俺は別に、」
「まぁまぁ、恵だって高専の中は見たことないでしょ?固いこと言わずにさぁ」
伏黒は以前、五条に連れられて祓除の任務に同行した際、高専に立ち寄った事があった。尤も、その時は車の中で待機していたので正門しか見ていない。
「…悟くんがそこまで言うなら…」
ね、恵、どうかな?と芙蓉が隣を振り返ると、伏黒は仕方ねぇなと了承した。
「よーし決まりぃ!じゃ、明日の9時にまたこのカフェに集合ね。そんじゃまたね〜」
いつの間にかパフェを平らげていた五条は伝票を手に、2人を残して行ってしまった。
半強制的に決まった高専見学。なんだか嫌な予感がすると伏黒は残りのアイスコーヒーを啜った。
翌日。伏黒と芙蓉は9時前に前日と同じカフェに到着し、五条を待っていた。伏黒は昨日と同じくアイスコーヒーを、芙蓉はキャラメルマキアートを飲んでいた。
「…来ないね、9時過ぎてるのに」
時計の針は9:05を指しているが、五条が現れる様子がない。芙蓉は大丈夫かなと心配するも、伏黒は五条がわりと時間にルーズなところがあると知っているからか、その内来るだろ、とさして気にする様子もなくコーヒーを飲む。果たして伏黒の言葉通り、9:10を過ぎた頃に五条はカフェに姿を見せた。
「いやぁごめんごめん。ちょっと立て込んじゃってね」
「大丈夫なの?もし大変なら別の日でも、」
「大丈夫。とりあえず行こうか」
五条はテーブルから伝票を取り上げレジへ向かう。彼に遅れないようと2人は後を追った。
外へ出れば、駅のロータリーに黒塗りの車が1台。
「あれ、電車じゃないんだ…?」
高専は東京都内にありながら、都心からはかなり離れた場所にあると聞いていた芙蓉。ここ、埼玉からは電車やバスを乗り継いでの長旅になるだろうと思い、軽い旅行気分でいたようだ。
「ん?…あぁ、ちょっと用事があってね。用を済ませてから高専に行こうと思って」
五条の言葉に納得し、促されるまま車に乗り込む芙蓉とは対照的に、嫌な予感を覚え眉間に皺を寄せる伏黒。五条の言う“用事”が今までたいした事がなかった試しがないーそうわかっていても、今この場で同行を拒否する事は出来ないし、用事の内容を聞いてもはぐらかされて終わりだろう。伏黒は肺の空気を全部吐き出すくらいの大きなため息をつくと、仕方なく車に乗り込んだ。
埼玉県を抜けて車は都内に入る。交通量が増えてきたところで車は裏路地の方へと向かい、人通りの少ない裏通りの一角で停まった。
「悟くん、ここは…?」
「うん、ここに用があるんだ。…さて恵、仕事だよ」
あぁやっぱりー車に乗る前に感じた嫌な予感は的中し、伏黒は再び盛大にため息をついた。