私の当たり前は、みんなにとっての当たり前とイコールではないと気付いたのは、高専に入ってからだった。

当たり前のように学校で勉強して、興味とやる気があれば部活動に参加してみたりして。
学校が終われば、当たり前のように友達とつるんで遊びに行ったり、ごはんを食べに行ったりして。
そこで流行りモノの話とか恋愛観の話とか、好きなものの話で盛り上がったりして。

私たちには「また後で」なんて、
当たり前のような確実なものはない。
私たちは呪術師だ。
誰かに禍いをもたらす呪いを命懸けで祓う。
私の父親だってそうだ。見知らぬ誰かの為に、
呪いを祓う任務に出たきり、戻っていない。

どうしてそんな危険を理解しながら呪術師として生きる事を選んだのかー私にしか出来ない事だから。
素質があっても素材が無ければダメ。
素材があっても素質が無ければダメ。
その両方を持ち合わせ、且つ、自分と呪いに向き合う事ができる者だけが呪術師になれると聞いた。

正直なところ、
私が一端の呪術師になれるかはわからないけど。
１回きりの人生、自分の事くらい、
もしも、明日死ぬなら、
命懸けで信じてみたい。

私を信じてくれる人の為にも。