変転
恵の幼馴染のお名前は?
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「津美紀ちゃん、卒業おめでとう!」
3月、別れの月。元気に卒業の日を迎えた津美紀は友人たちとの別れを惜しみながらも、間もなく訪れるだろう新しい出会いにも胸を膨らませていた。
心配だった高校入試も無事にパスし、第一志望の高校へ進学する事も決まっている。
「なんだか淋しくなっちゃうな」
「…ウチ来ればいつでも会えんだろ」
別れを惜しんで友人たちと抱き合ったり写真を撮っている津美紀を遠目に見ながら話している伏黒と芙蓉。
そーいう事じゃないんだよなぁ、と口を尖らせる芙蓉に対し、彼女の言わんとする事は理解出来るが、それが事実である以上、伏黒はどう返事をすればいいかわからず黙っていた。
「…でもさ、津美紀ちゃん、元気になって良かったね」
「…そうだな」
病院に行った日以来、津美紀は体調を崩す事なく元気に過ごしている。伏黒がアパート周りを掃除した事もあってか、蠅頭もずっと見かけていない。芙蓉の母が言っていたように、体調を崩した原因は蠅頭だったのだろう。
これからまた生活リズムにズレが生じてくるだろうが、世話焼きの津美紀の事、それもまた楽しんでやり繰りしていくのだろう。
伏黒もまた、津美紀の新しい門出を祝福していた。
津美紀は高校へ、伏黒と芙蓉は3年になる4月。津美紀の入学式には芙蓉の母が出席する事になった。津美紀からの提案に戸惑った千浪であったが、今までずっと近くで見守ってくれていて、ここまで成長出来た姿を見て欲しいと言われ、嬉し涙で快諾したのだった。
入学式を終えてクラスも決まり、新しい高校生活をスタートさせた津美紀。毎日を楽しみにしていた。
この日は委託された仕事が早めに片付き、午後からのんびりと過ごしていた千浪。リビングでコーヒーを飲みながら本を読んでいると、普段あまり出番のないスマホが鳴った。ダイニングテーブルに置きっぱなしになっていたスマホを取り、番号を確認するも、登録外の番号。出るか出ないかー僅かな逡巡の後、千浪は通話を繋いだ。
「はい、もしもし?」
『恐れ入ります、高峰様の携帯電話でしょうか?こちらは浦見高校の者ですが…』
「伏黒、高峰、ちょっといいか」
この日最後の授業が終わるとほぼ同時に、学年主任の教諭がクラスに現れ2人を呼び出した。教室から少し離れたところで学年主任は2人に向き直る。
「さっき、高峰のお母さんから電話が来てな。落ち着いて聞いてくれ、…伏黒、お前のお姉さんが学校で倒れて病院に運ばれたそうだ」
「…!」
「すぐ病院に向かわせるように言われてな。タクシーを呼んであるから、荷物をまとめてすぐに行きなさい。担任の先生にも話してある」
想像もしていなかった話に、芙蓉は理解が追いつかないようで呆然としていた。
「しっかりしろ、高峰。…伏黒」
「大丈夫です、ありがとうございます」
落ち着いた声音ながら、伏黒はやや乱暴に芙蓉の手を引いて教室へ戻った。クラスメイトの一部が何事かと騒ぎ立てていたが、2人はどうにか荷物をまとめて教室を出る。靴を履き替えて外に出れば、タクシーの隣で担任の教諭が2人を待っていた。
「場所は伝えてあるから、早く行きなさい」
伏黒は先に芙蓉をタクシーに押し込み、続いて自身も乗り込む。ドアが閉まったところで、伏黒がある事に気付き、運転手を見て口を開こうとすると。
「お代は先生からお預かりしてるから大丈夫だよ」
「あ…、すみま、せん」
上手く言葉が出なかった。伏黒は自分が思っている以上に動揺しているなと、冷静に物事を見ている自分を感じていた。隣に座る芙蓉を見れば、顔が青ざめている。運転手はそれ以上何も言わずに病院へ車を走らせた。
病院に着き、タクシーを降りる。エントランスを抜けると千浪が2人を待っていた。
「津美紀は…!」
「…意識がないみたいで…、さっき、検査が終わったって。…これからお医者さんの説明よ」
落ち着いて話をしている千浪だが、その目には涙が滲んでおり、僅かに声が震えていた。
向かった先はICUー集中治療室。感染症予防の為、医師や看護師の許可なく入る事は出来ない。ICU前の待合スペースで待つように指示されたものの、一向に動きがない。どれくらい待っただろうか、漸く医師と看護師が現れ、小さな部屋へ通された。
「伏黒津美紀さんのご家族、…ですか?」
「…津美紀は俺の姉です。2人は…、家族同然です」
伏黒の言葉には、それ以上余計な事を言わせないくらいの強さがあった。その雰囲気に押されたようで、医師は津美紀の状態を話し始めた。
「えぇと…、まず、学校で突然倒れたと言う話でしたので、私たちはまず脳に何かあったのかと思ってCT、MR検査をしました。意識を失うとなると、てんかん、脳内での出血などが疑われるのですが」
医師はパソコンを操作し、伏黒たちの前にあるモニターに画像を映し出すー津美紀の脳内を写したものだ。
「津美紀さんにはこれまでてんかんの症状や発作もなかったといいますし…、画像診断から、脳内での出血などといった異常も認められません」
「…つまり…?」
「…申し上げにくいのですが、…わからないのです」
3月、別れの月。元気に卒業の日を迎えた津美紀は友人たちとの別れを惜しみながらも、間もなく訪れるだろう新しい出会いにも胸を膨らませていた。
心配だった高校入試も無事にパスし、第一志望の高校へ進学する事も決まっている。
「なんだか淋しくなっちゃうな」
「…ウチ来ればいつでも会えんだろ」
別れを惜しんで友人たちと抱き合ったり写真を撮っている津美紀を遠目に見ながら話している伏黒と芙蓉。
そーいう事じゃないんだよなぁ、と口を尖らせる芙蓉に対し、彼女の言わんとする事は理解出来るが、それが事実である以上、伏黒はどう返事をすればいいかわからず黙っていた。
「…でもさ、津美紀ちゃん、元気になって良かったね」
「…そうだな」
病院に行った日以来、津美紀は体調を崩す事なく元気に過ごしている。伏黒がアパート周りを掃除した事もあってか、蠅頭もずっと見かけていない。芙蓉の母が言っていたように、体調を崩した原因は蠅頭だったのだろう。
これからまた生活リズムにズレが生じてくるだろうが、世話焼きの津美紀の事、それもまた楽しんでやり繰りしていくのだろう。
伏黒もまた、津美紀の新しい門出を祝福していた。
津美紀は高校へ、伏黒と芙蓉は3年になる4月。津美紀の入学式には芙蓉の母が出席する事になった。津美紀からの提案に戸惑った千浪であったが、今までずっと近くで見守ってくれていて、ここまで成長出来た姿を見て欲しいと言われ、嬉し涙で快諾したのだった。
入学式を終えてクラスも決まり、新しい高校生活をスタートさせた津美紀。毎日を楽しみにしていた。
この日は委託された仕事が早めに片付き、午後からのんびりと過ごしていた千浪。リビングでコーヒーを飲みながら本を読んでいると、普段あまり出番のないスマホが鳴った。ダイニングテーブルに置きっぱなしになっていたスマホを取り、番号を確認するも、登録外の番号。出るか出ないかー僅かな逡巡の後、千浪は通話を繋いだ。
「はい、もしもし?」
『恐れ入ります、高峰様の携帯電話でしょうか?こちらは浦見高校の者ですが…』
「伏黒、高峰、ちょっといいか」
この日最後の授業が終わるとほぼ同時に、学年主任の教諭がクラスに現れ2人を呼び出した。教室から少し離れたところで学年主任は2人に向き直る。
「さっき、高峰のお母さんから電話が来てな。落ち着いて聞いてくれ、…伏黒、お前のお姉さんが学校で倒れて病院に運ばれたそうだ」
「…!」
「すぐ病院に向かわせるように言われてな。タクシーを呼んであるから、荷物をまとめてすぐに行きなさい。担任の先生にも話してある」
想像もしていなかった話に、芙蓉は理解が追いつかないようで呆然としていた。
「しっかりしろ、高峰。…伏黒」
「大丈夫です、ありがとうございます」
落ち着いた声音ながら、伏黒はやや乱暴に芙蓉の手を引いて教室へ戻った。クラスメイトの一部が何事かと騒ぎ立てていたが、2人はどうにか荷物をまとめて教室を出る。靴を履き替えて外に出れば、タクシーの隣で担任の教諭が2人を待っていた。
「場所は伝えてあるから、早く行きなさい」
伏黒は先に芙蓉をタクシーに押し込み、続いて自身も乗り込む。ドアが閉まったところで、伏黒がある事に気付き、運転手を見て口を開こうとすると。
「お代は先生からお預かりしてるから大丈夫だよ」
「あ…、すみま、せん」
上手く言葉が出なかった。伏黒は自分が思っている以上に動揺しているなと、冷静に物事を見ている自分を感じていた。隣に座る芙蓉を見れば、顔が青ざめている。運転手はそれ以上何も言わずに病院へ車を走らせた。
病院に着き、タクシーを降りる。エントランスを抜けると千浪が2人を待っていた。
「津美紀は…!」
「…意識がないみたいで…、さっき、検査が終わったって。…これからお医者さんの説明よ」
落ち着いて話をしている千浪だが、その目には涙が滲んでおり、僅かに声が震えていた。
向かった先はICUー集中治療室。感染症予防の為、医師や看護師の許可なく入る事は出来ない。ICU前の待合スペースで待つように指示されたものの、一向に動きがない。どれくらい待っただろうか、漸く医師と看護師が現れ、小さな部屋へ通された。
「伏黒津美紀さんのご家族、…ですか?」
「…津美紀は俺の姉です。2人は…、家族同然です」
伏黒の言葉には、それ以上余計な事を言わせないくらいの強さがあった。その雰囲気に押されたようで、医師は津美紀の状態を話し始めた。
「えぇと…、まず、学校で突然倒れたと言う話でしたので、私たちはまず脳に何かあったのかと思ってCT、MR検査をしました。意識を失うとなると、てんかん、脳内での出血などが疑われるのですが」
医師はパソコンを操作し、伏黒たちの前にあるモニターに画像を映し出すー津美紀の脳内を写したものだ。
「津美紀さんにはこれまでてんかんの症状や発作もなかったといいますし…、画像診断から、脳内での出血などといった異常も認められません」
「…つまり…?」
「…申し上げにくいのですが、…わからないのです」