芽生え
恵の幼馴染のお名前は?
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夏休みが終わり、学校中心の日常がまた始まる。
休みが明けてすぐにテストがあり、テストが終わったと思えば芙蓉を含め、主に部活動を行っている生徒向けの中学校体育大会がある。夏休み前の大会を最後に3年が引退しており、今回は1、2年で新しく編成されたチームでの試合となる。バスケ部に属する芙蓉は1年ながら補欠に選抜されたらしく、大会に向け一段と厳しくなってきた部活の練習で忙しくしているようだった。
一方、伏黒。夏休み前よりも素行が悪くなってきたようだと教員の間で問題視され始めていた。
放課後の、祓除の為の巡回が教員からすれば無駄な徘徊だと目に映っている。その徘徊を止めれば他校生とのトラブルもなくなるだろうと考えているようで、何度か伏黒を呼び出しては説教している。教員の言い分や考えは半分くらい正解ではあるが、他校生とのトラブルに関して伏黒の行動は正当防衛と言えたー自身から手を出してはいない、相手が殴りかかってきたから自分の身を守る為の行為だと。伏黒はその辺りを徹底していた。不良連中は片っ端からシメてやると決めたものの、冷静に立ち回るのは伏黒らしいと言えた。
そして教員にとって悩ましい事がもうひとつ。伏黒の学業成績だ。こちらはもう文句のつけようがないくらいに優秀で、ひと学年あたり200名近くの生徒の中でも、学年成績上位10名の中には必ず入っている。要領が良く、趣味の読書が彼の読解力や知識を底上げしているようだった。そんな優秀な伏黒はしっかり話し合えば必ずわかってくれるはずだと、家庭環境の事もあって彼が抱えているものを話せる大人が周りにいないだけだ、などと変にアツい教員も居たようで、当面はこのまま様子を見ていこうじゃないかというところで落ち着いていた。
伏黒はそんな教員たちの目を上手く掻い潜りながら日々をやり過ごすも、津美紀からは度々雷を落とされているようだった。
芙蓉の部活の方は、大会が終わるとまたゆとりのあるスケジュールとなり、時間を見つけては伏黒のアパートを訪れ、津美紀の愚痴に付き合ったりしていた。
中学生にもなると、どうしてこんなにも学力チェックが多いのかー数学の教科書と睨めっこしながら芙蓉は内心ウンザリしていた。教員から心配されるほど成績が悪いわけではないのだが、近くにいるのが成績優秀な伏黒。どうしても彼と比較してしまう形になり、生来の負けず嫌いが顔を出す。
「ねぇ恵ぃ、ここわかんない」
「…さっき説明した問題の応用じゃねぇか」
国語、社会、英語は問題なし、理科は今のところ自力でなんとか出来ているが、数学だけはどうしても苦手だった。小学生の頃、芙蓉は算数が苦手だったのだが、その算数や数字の苦手意識がそのまま数学へ反映されているようだった。
期末テストに向けての勉強会と称して伏黒のアパートで勉強を始めたのだが、結局のところ勉強しているのは芙蓉だけで、伏黒はずっと本を読んでいる。芙蓉がわからないというところを伏黒が解説する状況になっていた。
学年トップレベルの伏黒には勝てそうもないとわかっているのだが、もしかしたら1教科だけでも勝てるかもしれない、という気持ちもある。
「…得意を伸ばそうかなぁ…」
「ソレ、教わってる時に言うことか?」
ちゃんと聞いとけよ、と教科書の説明を更に噛み砕いて説明していく。
「…なんでこれがそう簡単にわかるの?」
「ここに書いてあるだろ」
「日本語の意味がわかんない」
「理解する気がねぇだろオマエ」
もう休憩休憩、と芙蓉はペンを投げ出し、そのまま後ろに倒れるように寝転がる。伏黒はため息をつきながら立ち上がりキッチンへ向かう。
「津美紀、ココア飲むか?」
お湯を沸かし、伏黒はマグを3つ準備しながら隣の部屋でテスト勉強をしている姉へ声をかける。
「恵が淹れてくれるの?」
そう声が聞こえ、程なくして津美紀が部屋から出てきた。転がって教科書を見ながらブツブツ言っている芙蓉、キッチンに立つ伏黒。なんともシュールな光景に津美紀は思わず吹き出した。
「…で、飲むか?」
「ごめんごめん、お願い」
津美紀もキッチンへ向かい、キャビネットからお菓子をいくつか引っ張り出す。
「芙蓉の勉強は進んでるの?」
「ん」
津美紀が出したクッキーを1枚咥え、顎でしゃくって芙蓉を示しながらカップにお湯を注ぎ入れる。伏黒のカップにはコーヒーを淹れ、津美紀と芙蓉のカップにはココアを。適当にスプーンでココアをかき混ぜ、大きな手でカップ3つを運ぶ。
津美紀もお菓子を皿に取り分けて伏黒に続く。
「お疲れ芙蓉、少し休憩しよ」
「ありがとう〜恵ぃ〜津美紀ちゃん〜」
芙蓉は起き上がり、伏黒が淹れてくれた熱いココアに息を吹きかけ、ゆっくりと啜る。ココアの匂いに気持ちが解れていく。津美紀が準備してくれたお菓子を摘む。思わず頬が緩んだ。
なんて事ない、何処にでもありふれているような日常。こんな毎日がこれからもずっと続きますようにー芙蓉はそう願わずにいられなかった。
休みが明けてすぐにテストがあり、テストが終わったと思えば芙蓉を含め、主に部活動を行っている生徒向けの中学校体育大会がある。夏休み前の大会を最後に3年が引退しており、今回は1、2年で新しく編成されたチームでの試合となる。バスケ部に属する芙蓉は1年ながら補欠に選抜されたらしく、大会に向け一段と厳しくなってきた部活の練習で忙しくしているようだった。
一方、伏黒。夏休み前よりも素行が悪くなってきたようだと教員の間で問題視され始めていた。
放課後の、祓除の為の巡回が教員からすれば無駄な徘徊だと目に映っている。その徘徊を止めれば他校生とのトラブルもなくなるだろうと考えているようで、何度か伏黒を呼び出しては説教している。教員の言い分や考えは半分くらい正解ではあるが、他校生とのトラブルに関して伏黒の行動は正当防衛と言えたー自身から手を出してはいない、相手が殴りかかってきたから自分の身を守る為の行為だと。伏黒はその辺りを徹底していた。不良連中は片っ端からシメてやると決めたものの、冷静に立ち回るのは伏黒らしいと言えた。
そして教員にとって悩ましい事がもうひとつ。伏黒の学業成績だ。こちらはもう文句のつけようがないくらいに優秀で、ひと学年あたり200名近くの生徒の中でも、学年成績上位10名の中には必ず入っている。要領が良く、趣味の読書が彼の読解力や知識を底上げしているようだった。そんな優秀な伏黒はしっかり話し合えば必ずわかってくれるはずだと、家庭環境の事もあって彼が抱えているものを話せる大人が周りにいないだけだ、などと変にアツい教員も居たようで、当面はこのまま様子を見ていこうじゃないかというところで落ち着いていた。
伏黒はそんな教員たちの目を上手く掻い潜りながら日々をやり過ごすも、津美紀からは度々雷を落とされているようだった。
芙蓉の部活の方は、大会が終わるとまたゆとりのあるスケジュールとなり、時間を見つけては伏黒のアパートを訪れ、津美紀の愚痴に付き合ったりしていた。
中学生にもなると、どうしてこんなにも学力チェックが多いのかー数学の教科書と睨めっこしながら芙蓉は内心ウンザリしていた。教員から心配されるほど成績が悪いわけではないのだが、近くにいるのが成績優秀な伏黒。どうしても彼と比較してしまう形になり、生来の負けず嫌いが顔を出す。
「ねぇ恵ぃ、ここわかんない」
「…さっき説明した問題の応用じゃねぇか」
国語、社会、英語は問題なし、理科は今のところ自力でなんとか出来ているが、数学だけはどうしても苦手だった。小学生の頃、芙蓉は算数が苦手だったのだが、その算数や数字の苦手意識がそのまま数学へ反映されているようだった。
期末テストに向けての勉強会と称して伏黒のアパートで勉強を始めたのだが、結局のところ勉強しているのは芙蓉だけで、伏黒はずっと本を読んでいる。芙蓉がわからないというところを伏黒が解説する状況になっていた。
学年トップレベルの伏黒には勝てそうもないとわかっているのだが、もしかしたら1教科だけでも勝てるかもしれない、という気持ちもある。
「…得意を伸ばそうかなぁ…」
「ソレ、教わってる時に言うことか?」
ちゃんと聞いとけよ、と教科書の説明を更に噛み砕いて説明していく。
「…なんでこれがそう簡単にわかるの?」
「ここに書いてあるだろ」
「日本語の意味がわかんない」
「理解する気がねぇだろオマエ」
もう休憩休憩、と芙蓉はペンを投げ出し、そのまま後ろに倒れるように寝転がる。伏黒はため息をつきながら立ち上がりキッチンへ向かう。
「津美紀、ココア飲むか?」
お湯を沸かし、伏黒はマグを3つ準備しながら隣の部屋でテスト勉強をしている姉へ声をかける。
「恵が淹れてくれるの?」
そう声が聞こえ、程なくして津美紀が部屋から出てきた。転がって教科書を見ながらブツブツ言っている芙蓉、キッチンに立つ伏黒。なんともシュールな光景に津美紀は思わず吹き出した。
「…で、飲むか?」
「ごめんごめん、お願い」
津美紀もキッチンへ向かい、キャビネットからお菓子をいくつか引っ張り出す。
「芙蓉の勉強は進んでるの?」
「ん」
津美紀が出したクッキーを1枚咥え、顎でしゃくって芙蓉を示しながらカップにお湯を注ぎ入れる。伏黒のカップにはコーヒーを淹れ、津美紀と芙蓉のカップにはココアを。適当にスプーンでココアをかき混ぜ、大きな手でカップ3つを運ぶ。
津美紀もお菓子を皿に取り分けて伏黒に続く。
「お疲れ芙蓉、少し休憩しよ」
「ありがとう〜恵ぃ〜津美紀ちゃん〜」
芙蓉は起き上がり、伏黒が淹れてくれた熱いココアに息を吹きかけ、ゆっくりと啜る。ココアの匂いに気持ちが解れていく。津美紀が準備してくれたお菓子を摘む。思わず頬が緩んだ。
なんて事ない、何処にでもありふれているような日常。こんな毎日がこれからもずっと続きますようにー芙蓉はそう願わずにいられなかった。