芽生え
恵の幼馴染のお名前は?
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梅雨が明けて、夏本番。
間もなく学生達が楽しみにしている夏休みがやってくる。何処に遊びに行こうか、何をして遊ぼうか、それぞれが期待を膨らませ、指折り日にちを数えて過ごしているが、何にでもマイノリティ、例外はある。
伏黒はその数少ない例外に該当し、夏休みが楽しみだなんて考えられない、そんなもんない方がいいとまで思っていた。小学生の頃から続いている五条家合宿。今年もやるんだろうなー考えるだけでウンザリする。
「どーしたの?ため息なんかついちゃって」
ため息くらいつきたくなる。ついでに頭も痛くなってきた気がする。伏黒は目の前で胸焼けを起こしそうなくらいのチョコレートシロップとホイップクリームが盛り盛りにキャラメルソースもたっぷりのパンケーキを嬉しそうに頬張る五条の様子を引き気味に観察していた。
「欲しがってもあげないよ?これは僕の分だからね」
ニヤニヤと伏黒を揶揄う五条と、不機嫌オーラ全開の伏黒。その2人の間で胃を押さえながら冷や汗を流し続ける、呪術高専補助監督の伊地知。
「伏黒くん、本当に申し訳ありませんでした…」
「いえ、伊地知さんは悪くないですから」
伏黒はこの日の朝、津美紀より少し遅れて家を出て学校へ向かっていた。が、その途中、伊地知の運転する車に乗った五条に突如、拉致同然で祓除の任務に連れて行かれたのだった。
「…ていうか、現役の術師でも逃げ出すなんて事があるんですね」
「アイツは向いてなかったんだよ、辞めて正解。一緒に行く奴が迷惑するだけだよ」
伊地知は五条を乗せて祓除の任務に出ようとしていたところだった。そんな伊地知の元に別の補助監督から、予定していた術師が待ち合わせ場所にいないという連絡が入った。ひとつ任務に穴があく事になってしまうところ、五条の発案でその任務を引き受ける代わりに伏黒を連れて行こうとなったらしかった。
「…五条さんなら任務が1件増えたくらいどうって事ないと思うんですけどね…」
ボソッと呟く伊地知は酷く疲れているようで、細い身体を縮こませて紅茶を飲んだ。
祓除の任務はそれ程複雑な事はなく、ただ単純に呪霊を祓うのみ。爆速で2件分の任務をこなし、時間は昼時。3人は近くのカフェで昼食をとる事にし、今に至る。
「…ところで伏黒くん、この後はどうするつもりですか?」
食事を済ませて時間を確認すると13時前。半端な時間だが、伏黒はとりあえず登校しておく事に決めた。この時間になった理由は体調不良とでも言えばいい。
「学校に行きます。…一応」
「そうですか。ではお送りしますよ」
店を出て3人は再び車に乗り込み、朝通った道を戻って行く。学校の近くで伏黒は車を降りた。
「んじゃ恵、まったね〜」
窓から大きく手を振ってくる五条をスルーし、校門をくぐる。伏黒は靴を履き替えて教室へ向かうー間もなく午後の授業が始まる時間だ。ほとんどの生徒がそれぞれの机で授業の準備をしているだろう。
教室のドアを開けると、教科担任が教室に来ていた。
「おっ、伏黒じゃないか。どうした、大丈夫か、連絡つかなかったから心配してたんだぞ」
「体調が良くなかったので。…今はもう大丈夫です」
何か言われたら面倒だと思っていたが、教科担任は後でクラス担任に顔を見せるように言うと、それ以上何も言わなかった。そしてそのまま授業が始まった。
授業後の休み時間、伏黒はクラス担任に挨拶をしようと職員室へ向かった。担任には何かあったのか心配した、どうしたんだと言われたが、先程と同じように体調不良と伝える。今後、休んだり遅刻する時は連絡を入れるようにと言われて終わった。
職員室を出ると、芙蓉が廊下で伏黒を待っていた。
「大丈夫?」
教室に戻りながら、心配そうに見上げてくる芙蓉には本当の事を伝えておこうー伏黒は口を開く。
「…今朝、あの人に拉致られた」
「はぁっ⁉︎何それ、何で⁉︎」
「声がデカい」
芙蓉は口元を押さえて周りを見回す。何事かと振り返った数人に頭を下げた。
「…急に手が足りなくなったんだとさ」
「ケガはない?」
「ない」
良かったと安堵する芙蓉。いざとなったら反転術式で傷を治すつもりなのだろう。
「あと、休み中の話もされた」
「今年も合宿なの?」
「まぁ…、合宿っていうより…」
“恵も中学生になった事だし、今まで通りだと課題を終わらせるのも時間がなくて大変だろうからさ。
という事で今年からは短期集中、夏期講習スタイルでいこうと思ってるからよろしく〜”
「…とか言ってた」
「うんまぁ…悟くんらしいと言うか何というか…」
とりあえず自分の時間が確保出来ると前向きに考える事にした伏黒。多少なりとも、今年は夏休みを満喫出来そうな予感に、伏黒はほんの少し、周りのクラスメイトが夏休みを待ち遠しく思う気持ちがわかる気がした。
間もなく学生達が楽しみにしている夏休みがやってくる。何処に遊びに行こうか、何をして遊ぼうか、それぞれが期待を膨らませ、指折り日にちを数えて過ごしているが、何にでもマイノリティ、例外はある。
伏黒はその数少ない例外に該当し、夏休みが楽しみだなんて考えられない、そんなもんない方がいいとまで思っていた。小学生の頃から続いている五条家合宿。今年もやるんだろうなー考えるだけでウンザリする。
「どーしたの?ため息なんかついちゃって」
ため息くらいつきたくなる。ついでに頭も痛くなってきた気がする。伏黒は目の前で胸焼けを起こしそうなくらいのチョコレートシロップとホイップクリームが盛り盛りにキャラメルソースもたっぷりのパンケーキを嬉しそうに頬張る五条の様子を引き気味に観察していた。
「欲しがってもあげないよ?これは僕の分だからね」
ニヤニヤと伏黒を揶揄う五条と、不機嫌オーラ全開の伏黒。その2人の間で胃を押さえながら冷や汗を流し続ける、呪術高専補助監督の伊地知。
「伏黒くん、本当に申し訳ありませんでした…」
「いえ、伊地知さんは悪くないですから」
伏黒はこの日の朝、津美紀より少し遅れて家を出て学校へ向かっていた。が、その途中、伊地知の運転する車に乗った五条に突如、拉致同然で祓除の任務に連れて行かれたのだった。
「…ていうか、現役の術師でも逃げ出すなんて事があるんですね」
「アイツは向いてなかったんだよ、辞めて正解。一緒に行く奴が迷惑するだけだよ」
伊地知は五条を乗せて祓除の任務に出ようとしていたところだった。そんな伊地知の元に別の補助監督から、予定していた術師が待ち合わせ場所にいないという連絡が入った。ひとつ任務に穴があく事になってしまうところ、五条の発案でその任務を引き受ける代わりに伏黒を連れて行こうとなったらしかった。
「…五条さんなら任務が1件増えたくらいどうって事ないと思うんですけどね…」
ボソッと呟く伊地知は酷く疲れているようで、細い身体を縮こませて紅茶を飲んだ。
祓除の任務はそれ程複雑な事はなく、ただ単純に呪霊を祓うのみ。爆速で2件分の任務をこなし、時間は昼時。3人は近くのカフェで昼食をとる事にし、今に至る。
「…ところで伏黒くん、この後はどうするつもりですか?」
食事を済ませて時間を確認すると13時前。半端な時間だが、伏黒はとりあえず登校しておく事に決めた。この時間になった理由は体調不良とでも言えばいい。
「学校に行きます。…一応」
「そうですか。ではお送りしますよ」
店を出て3人は再び車に乗り込み、朝通った道を戻って行く。学校の近くで伏黒は車を降りた。
「んじゃ恵、まったね〜」
窓から大きく手を振ってくる五条をスルーし、校門をくぐる。伏黒は靴を履き替えて教室へ向かうー間もなく午後の授業が始まる時間だ。ほとんどの生徒がそれぞれの机で授業の準備をしているだろう。
教室のドアを開けると、教科担任が教室に来ていた。
「おっ、伏黒じゃないか。どうした、大丈夫か、連絡つかなかったから心配してたんだぞ」
「体調が良くなかったので。…今はもう大丈夫です」
何か言われたら面倒だと思っていたが、教科担任は後でクラス担任に顔を見せるように言うと、それ以上何も言わなかった。そしてそのまま授業が始まった。
授業後の休み時間、伏黒はクラス担任に挨拶をしようと職員室へ向かった。担任には何かあったのか心配した、どうしたんだと言われたが、先程と同じように体調不良と伝える。今後、休んだり遅刻する時は連絡を入れるようにと言われて終わった。
職員室を出ると、芙蓉が廊下で伏黒を待っていた。
「大丈夫?」
教室に戻りながら、心配そうに見上げてくる芙蓉には本当の事を伝えておこうー伏黒は口を開く。
「…今朝、あの人に拉致られた」
「はぁっ⁉︎何それ、何で⁉︎」
「声がデカい」
芙蓉は口元を押さえて周りを見回す。何事かと振り返った数人に頭を下げた。
「…急に手が足りなくなったんだとさ」
「ケガはない?」
「ない」
良かったと安堵する芙蓉。いざとなったら反転術式で傷を治すつもりなのだろう。
「あと、休み中の話もされた」
「今年も合宿なの?」
「まぁ…、合宿っていうより…」
“恵も中学生になった事だし、今まで通りだと課題を終わらせるのも時間がなくて大変だろうからさ。
という事で今年からは短期集中、夏期講習スタイルでいこうと思ってるからよろしく〜”
「…とか言ってた」
「うんまぁ…悟くんらしいと言うか何というか…」
とりあえず自分の時間が確保出来ると前向きに考える事にした伏黒。多少なりとも、今年は夏休みを満喫出来そうな予感に、伏黒はほんの少し、周りのクラスメイトが夏休みを待ち遠しく思う気持ちがわかる気がした。