芽生え
恵の幼馴染のお名前は?
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中学に入学して、伏黒と芙蓉は新しい環境での生活をスタートさせた。小学校との違いは多々あれど、部活動の存在は大きい。部活動に所属すれば放課後に自身の時間が少なくなるのは明白。2人の入学した浦見東中学校では部活動への所属を強制しているわけではないものの、極力所属するよう推奨されている。伏黒は部活動への興味があるなし以前に、五条から“部活?そんなのやってる暇ないよ〜、恵は他にやる事あるんだから”と切り捨てられたらしく無所属に。
芙蓉は小学校時代から運動神経は良い方で、平均より身長も高い。そんな事もあり、入学してから女子バレー部と女子バスケ部から熱烈なアプローチを受け続けていた。部活動の見学、体験の期間を過ぎ、正式に入部届を提出する期日ギリギリまでバレー部、バスケ部、無所属の3択で悩み通した芙蓉は果たしてバスケ部へ入る事にした。
そんなこんなでそれぞれの生活が回り始め、学校での接点が少なくなってきた2人だが、芙蓉は相変わらず伏黒のアパートへ時間を見つけては遊びに行ったり、母の作った食事を届けたりと、特に大きな問題もなさそうだったのだが。
「え?恵が喧嘩?」
部活が休みだった日の放課後、芙蓉は久しぶりに伏黒のアパートへ遊びに来ていた。出迎えたのは津美紀。学校の授業はもう終わっているのに、伏黒はまだ帰ってきていないようだった。
「そうなの。先生から聞かされてびっくりよ。
…最近は私が口出すと機嫌悪くなるし。今日みたいに学校終わってもすぐ帰って来なかったりするし。
ねぇ芙蓉、恵に何か変わった事がないか、ちょっと気にして見ててくれる?」
芙蓉に紅茶を出しながら、反抗期かしらと津美紀がため息混じりに、そして心配そうな顔で懇願した。
じめじめと雨が降り続く梅雨が間もなく明ける頃ー中学校生活にも部活にも慣れた今の時期に、一体伏黒に何があったのだろう。ちゃんと授業も出ているし、学校では変わった様子はないのにー芙蓉は津美紀の言葉に頷き、申し出を了承した。
津美紀の話を聞いてから1週間。芙蓉は今まで以上に学校での伏黒の様子を観察していた。集中して見過ぎていたのか、時々伏黒から何見てんだと不機嫌そうに言われた事がある程に。
少なくとも学校では問題なさそうだと結論づけるも、放課後は部活がある芙蓉にはどうしようもない。そこで芙蓉は思い切って部活が終わった後に伏黒を探してみる事にした。
探してみると言っても、これと言ってアテがあるわけでもない。伏黒を見つけたとして、どうするのかも考えていない。だが、放っておく事もできない。思い付きのような行動ではあるが、この日、芙蓉は普段と違うルートを通って帰途に着くことにした。
家まで遠回りになるルートは新鮮で、芙蓉は冒険をしているみたいだとワクワクしながら歩いて行く。間もなく日暮れ、ポツポツと明かりが灯り始めた住宅街を歩いて行くと、一角に小さな公園を見つけた。初めての発見に、公園の中を見て行こうと足を向けると、声が聞こえる。子供の声ではない。
公園はフェンスで囲われており、内側の植え込みが目隠しになっていて、遠目からでは中の様子は見えにくくなっていた。芙蓉が入り口から中を覗くと。
「っ、恵⁉︎」
地面には数人の男ーたぶん同年代だろう、他校の制服を着た男子学生が倒れていて、伏黒はその倒れた学生たちを見下ろすように立っていた。
「…何してんだ」
「何…って、恵こそ何してるのよ、」
言いながら芙蓉がケガをしている様子の学生たちに近付こうとすれば。
「来るなよ!」
初めて聞いたかもしれない伏黒の大声に驚き、芙蓉は思わず立ち止まった。そして今まで向けられた事のない、射抜くような視線。怖いー初めて伏黒にそんな感情を持った事にも芙蓉は驚き、戸惑った。
「…悪ぃ」
何の謝罪か、ぼそり、と零された言葉。伏黒は芙蓉の手をやや乱暴に掴むと、そのまま芙蓉を引きずるようにして公園を出た。
どれくらい歩いただろうか、早足で歩く伏黒に手を引かれたまま転ばないようについて行くと、住宅街を抜けたところでやっと芙蓉の手は解放された。
「…で?」
「で、って…」
「なんであんなところにいたのか聞いてんだよ。芙蓉の家は逆方向だろう」
伏黒の剣幕に気押されて、芙蓉の表情は曇り、声も小さくなっていく。
「…最近、恵が帰って来るのが遅いんだって、津美紀ちゃんが心配してて…、私も、心配になって…」
それを聞いた伏黒は大きくため息をついた。
「…帰るぞ」
先程とは違い、芙蓉の歩調に伏黒が合わせて歩く。言いたいことはお互いあるのに、糸口が掴めないまま伏黒のアパート前に差し掛かる。
「え、恵?」
「送ってく」
「でも、」
「いいから」
「…ありがとう」
「…おう」
そうしてまた2人、歩いて行く。不器用だけど伏黒らしいと、芙蓉は口元が緩むのを感じた。芙蓉の家に着くと、そこで伏黒はやっと口を開く。
「…いいか、今日みたいな事はもう絶対するなよ」
「…でも、」
「俺の事より自分の心配をしろ。それから当分の間は1人で帰るな。部活に帰りが同じ方向の奴いるんだろ、ソイツと帰れ」
「そんな、子供じゃないし」
「いいから言う通りにしとけ」
それだけ言って、伏黒は踵を返してその場を離れた。遠くなる伏黒の背中に芙蓉はもう一度礼を言って、自宅のドアを開けた。
芙蓉は小学校時代から運動神経は良い方で、平均より身長も高い。そんな事もあり、入学してから女子バレー部と女子バスケ部から熱烈なアプローチを受け続けていた。部活動の見学、体験の期間を過ぎ、正式に入部届を提出する期日ギリギリまでバレー部、バスケ部、無所属の3択で悩み通した芙蓉は果たしてバスケ部へ入る事にした。
そんなこんなでそれぞれの生活が回り始め、学校での接点が少なくなってきた2人だが、芙蓉は相変わらず伏黒のアパートへ時間を見つけては遊びに行ったり、母の作った食事を届けたりと、特に大きな問題もなさそうだったのだが。
「え?恵が喧嘩?」
部活が休みだった日の放課後、芙蓉は久しぶりに伏黒のアパートへ遊びに来ていた。出迎えたのは津美紀。学校の授業はもう終わっているのに、伏黒はまだ帰ってきていないようだった。
「そうなの。先生から聞かされてびっくりよ。
…最近は私が口出すと機嫌悪くなるし。今日みたいに学校終わってもすぐ帰って来なかったりするし。
ねぇ芙蓉、恵に何か変わった事がないか、ちょっと気にして見ててくれる?」
芙蓉に紅茶を出しながら、反抗期かしらと津美紀がため息混じりに、そして心配そうな顔で懇願した。
じめじめと雨が降り続く梅雨が間もなく明ける頃ー中学校生活にも部活にも慣れた今の時期に、一体伏黒に何があったのだろう。ちゃんと授業も出ているし、学校では変わった様子はないのにー芙蓉は津美紀の言葉に頷き、申し出を了承した。
津美紀の話を聞いてから1週間。芙蓉は今まで以上に学校での伏黒の様子を観察していた。集中して見過ぎていたのか、時々伏黒から何見てんだと不機嫌そうに言われた事がある程に。
少なくとも学校では問題なさそうだと結論づけるも、放課後は部活がある芙蓉にはどうしようもない。そこで芙蓉は思い切って部活が終わった後に伏黒を探してみる事にした。
探してみると言っても、これと言ってアテがあるわけでもない。伏黒を見つけたとして、どうするのかも考えていない。だが、放っておく事もできない。思い付きのような行動ではあるが、この日、芙蓉は普段と違うルートを通って帰途に着くことにした。
家まで遠回りになるルートは新鮮で、芙蓉は冒険をしているみたいだとワクワクしながら歩いて行く。間もなく日暮れ、ポツポツと明かりが灯り始めた住宅街を歩いて行くと、一角に小さな公園を見つけた。初めての発見に、公園の中を見て行こうと足を向けると、声が聞こえる。子供の声ではない。
公園はフェンスで囲われており、内側の植え込みが目隠しになっていて、遠目からでは中の様子は見えにくくなっていた。芙蓉が入り口から中を覗くと。
「っ、恵⁉︎」
地面には数人の男ーたぶん同年代だろう、他校の制服を着た男子学生が倒れていて、伏黒はその倒れた学生たちを見下ろすように立っていた。
「…何してんだ」
「何…って、恵こそ何してるのよ、」
言いながら芙蓉がケガをしている様子の学生たちに近付こうとすれば。
「来るなよ!」
初めて聞いたかもしれない伏黒の大声に驚き、芙蓉は思わず立ち止まった。そして今まで向けられた事のない、射抜くような視線。怖いー初めて伏黒にそんな感情を持った事にも芙蓉は驚き、戸惑った。
「…悪ぃ」
何の謝罪か、ぼそり、と零された言葉。伏黒は芙蓉の手をやや乱暴に掴むと、そのまま芙蓉を引きずるようにして公園を出た。
どれくらい歩いただろうか、早足で歩く伏黒に手を引かれたまま転ばないようについて行くと、住宅街を抜けたところでやっと芙蓉の手は解放された。
「…で?」
「で、って…」
「なんであんなところにいたのか聞いてんだよ。芙蓉の家は逆方向だろう」
伏黒の剣幕に気押されて、芙蓉の表情は曇り、声も小さくなっていく。
「…最近、恵が帰って来るのが遅いんだって、津美紀ちゃんが心配してて…、私も、心配になって…」
それを聞いた伏黒は大きくため息をついた。
「…帰るぞ」
先程とは違い、芙蓉の歩調に伏黒が合わせて歩く。言いたいことはお互いあるのに、糸口が掴めないまま伏黒のアパート前に差し掛かる。
「え、恵?」
「送ってく」
「でも、」
「いいから」
「…ありがとう」
「…おう」
そうしてまた2人、歩いて行く。不器用だけど伏黒らしいと、芙蓉は口元が緩むのを感じた。芙蓉の家に着くと、そこで伏黒はやっと口を開く。
「…いいか、今日みたいな事はもう絶対するなよ」
「…でも、」
「俺の事より自分の心配をしろ。それから当分の間は1人で帰るな。部活に帰りが同じ方向の奴いるんだろ、ソイツと帰れ」
「そんな、子供じゃないし」
「いいから言う通りにしとけ」
それだけ言って、伏黒は踵を返してその場を離れた。遠くなる伏黒の背中に芙蓉はもう一度礼を言って、自宅のドアを開けた。