出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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時間が経つのは早いもので、ひとつの季節が終わるかと思えばあっという間に次の季節が巡り来る。津美紀は小学校を卒業し、中学校へ入学。伏黒と芙蓉は小学校最後の年を迎えた。それに伴い生活に大きな変化はあまりないものの、強いて挙げれば、津美紀と伏黒の生活リズムに少しだけズレが生じた事だろうか。
中学校へは小学校よりも通学に時間がかかるし、学校から出される課題も増えてくる。津美紀は新しい環境にも慣れなくてはならない。伏黒に然程手がかからなくなってきたとはいえ、津美紀が今まで通りに家事をこなすのが少々大変になってくる。
それを見越してか、芙蓉の母・千浪は年明けを過ぎた辺りから食事面で津美紀の援助を始めていた。“姉”である自分がしっかりしなくては、という自負から遠慮していた津美紀だったが、自身が何かと忙しくなってきたこと、伏黒の食事量が増えてきたこと、そして何より芙蓉から1人で全部背負い過ぎだと、体調を崩したらどうするつもりなのかと説得されたこともあり、次第にその援助を受け入れるようになっていった。
一方伏黒はというと、今までのように五条家での長期休日恒例の鍛錬合宿の他、五条が請け負った祓除の任務に同行させられる事も増えてきた。五条と出会った頃は芙蓉とほとんど変わらなかった身長も、今はもう芙蓉を追い越す程になっている。心身共に成長した伏黒は、今以上に呪術師としてのレベルアップを求められているようだった。
そして芙蓉の方は、夏に行った呪力操作の鍛錬が功を奏しているようで、時折呪霊に遭遇する事はあれど、襲われるという事は今まで通りほぼないという平和な状況が続いている。尤も、彼女の生活圏に存在する呪霊は定期的に伏黒が祓っているのだが。
また、芙蓉が以前発動させた反転術式、呪力操作の感覚を忘れないようにという五条の言いつけに従い、時々五条家を訪れては鍛錬を受けているようだった。
「や、久しぶり」
ある日の、図書委員活動を終えた学校からの帰り道。かけられた声にデジャヴを覚えた伏黒と芙蓉。2人は毎日一緒に登下校しているわけではないのだが、どういうわけか2人が一緒に下校しているタイミングで五条に遭遇するのは偶然なのか、それとも。
伏黒は何とも言えない薄気味悪さを感じながら足を止める。芙蓉も伏黒に倣って立ち止まる。
「久しぶりに会ったんだよ〜?もう少しくらい嬉しそうな顔しても良いんじゃなーい?」
五条が現れる時は大抵面倒事が多いと刷り込まれている伏黒は眉間に皺を寄せる。
「久しぶりって言ったって、悟くん先週もウチに来てたじゃない」
え、そんな頻繁に芙蓉の家に行ってるのと伏黒は内心驚き引いたが表情は崩さない。
「…何か用ですか」
「いゃぁ、別に用はないんだけどねぇ」
ちょっと近くに来たもんだからさ、と空を仰ぐ。つられて2人も空を見上げると、魚と毛虫を掛け合わせたような巨大な生物ー呪霊が空に浮かんでいた。芙蓉は思わず声を上げそうになり、慌てて自身の口元を押さえた。幸いにして呪霊は3人に気が付いていないようで、相変わらず風に漂うように浮かんでいる。
「…今年はちょぉっと呪霊が多くてさぁ。ほとんどが低級だからほっといてもいいんだけど、見かけちゃったら祓うしかないでしょ」
そう言うと五条は魚の呪霊を指差した。と、指先にビー玉ほどの赤い球体が現れ、それを弾くように押し出せば、数秒遅れて呪霊が断末魔の叫びが耳を突いた。
「とまぁ、そんなワケ。2人のデートを邪魔するつもりはないから心配しないでいいよ」
言いながら五条は2人に背を向けてヒラヒラと手を振りながら歩いて行く。五条と遭遇したのに何事もないなんて、なんかすごく不気味ー口に出さずとも、思わず2人は顔を見合わせていた。
五条が立ち去った後、残された2人はしばらくその場に留まり、異変がないか周辺の様子を窺う。
「…本当に、何もないみたいだね」
「…みたいだな」
2人は改めて雑談をしながら帰途につく事にした。
そして、もう少しで芙蓉の家に着く頃。
「ねぇ恵」
「ん?」
「恵はさ、…悟くんみたいな、呪術師になる、の?」
ずっと、それぞれの頭の片隅にあった事だった。
目の前に中学入学を控え、自身の長期的な人生設計を考える事が多くなってきた。今後様々な事を取捨選択し、自身の進む道を決めていかなくてはならない。
少し先の話にはなるが、伏黒は呪術高等専門学校へ進学する事が決められた状態だ。呪術師になる事も、ほぼ決められているようなものだった。
「…ごめん。困らせるつもりはなかったの」
黙ったままの伏黒に芙蓉は謝罪した。
「ちょっと気になっただけだから、気にしないで」
「まだ決めてねぇ」
呪いを祓う力を持っていても、未だ呪術師という存在を受け入れきれていないというのが伏黒の本音だった。自分が呪術師になったところで、津美紀も芙蓉も幸せになれるかもわからないーまだ先の事、それはその時に決めればいい。
「…そんな他人の事心配するより、今日の宿題の事でも心配しろ。お前、算数苦手なんだから」
「う…」
桜の咲く季節はもうすぐそこまで来ている。
中学校へは小学校よりも通学に時間がかかるし、学校から出される課題も増えてくる。津美紀は新しい環境にも慣れなくてはならない。伏黒に然程手がかからなくなってきたとはいえ、津美紀が今まで通りに家事をこなすのが少々大変になってくる。
それを見越してか、芙蓉の母・千浪は年明けを過ぎた辺りから食事面で津美紀の援助を始めていた。“姉”である自分がしっかりしなくては、という自負から遠慮していた津美紀だったが、自身が何かと忙しくなってきたこと、伏黒の食事量が増えてきたこと、そして何より芙蓉から1人で全部背負い過ぎだと、体調を崩したらどうするつもりなのかと説得されたこともあり、次第にその援助を受け入れるようになっていった。
一方伏黒はというと、今までのように五条家での長期休日恒例の鍛錬合宿の他、五条が請け負った祓除の任務に同行させられる事も増えてきた。五条と出会った頃は芙蓉とほとんど変わらなかった身長も、今はもう芙蓉を追い越す程になっている。心身共に成長した伏黒は、今以上に呪術師としてのレベルアップを求められているようだった。
そして芙蓉の方は、夏に行った呪力操作の鍛錬が功を奏しているようで、時折呪霊に遭遇する事はあれど、襲われるという事は今まで通りほぼないという平和な状況が続いている。尤も、彼女の生活圏に存在する呪霊は定期的に伏黒が祓っているのだが。
また、芙蓉が以前発動させた反転術式、呪力操作の感覚を忘れないようにという五条の言いつけに従い、時々五条家を訪れては鍛錬を受けているようだった。
「や、久しぶり」
ある日の、図書委員活動を終えた学校からの帰り道。かけられた声にデジャヴを覚えた伏黒と芙蓉。2人は毎日一緒に登下校しているわけではないのだが、どういうわけか2人が一緒に下校しているタイミングで五条に遭遇するのは偶然なのか、それとも。
伏黒は何とも言えない薄気味悪さを感じながら足を止める。芙蓉も伏黒に倣って立ち止まる。
「久しぶりに会ったんだよ〜?もう少しくらい嬉しそうな顔しても良いんじゃなーい?」
五条が現れる時は大抵面倒事が多いと刷り込まれている伏黒は眉間に皺を寄せる。
「久しぶりって言ったって、悟くん先週もウチに来てたじゃない」
え、そんな頻繁に芙蓉の家に行ってるのと伏黒は内心驚き引いたが表情は崩さない。
「…何か用ですか」
「いゃぁ、別に用はないんだけどねぇ」
ちょっと近くに来たもんだからさ、と空を仰ぐ。つられて2人も空を見上げると、魚と毛虫を掛け合わせたような巨大な生物ー呪霊が空に浮かんでいた。芙蓉は思わず声を上げそうになり、慌てて自身の口元を押さえた。幸いにして呪霊は3人に気が付いていないようで、相変わらず風に漂うように浮かんでいる。
「…今年はちょぉっと呪霊が多くてさぁ。ほとんどが低級だからほっといてもいいんだけど、見かけちゃったら祓うしかないでしょ」
そう言うと五条は魚の呪霊を指差した。と、指先にビー玉ほどの赤い球体が現れ、それを弾くように押し出せば、数秒遅れて呪霊が断末魔の叫びが耳を突いた。
「とまぁ、そんなワケ。2人のデートを邪魔するつもりはないから心配しないでいいよ」
言いながら五条は2人に背を向けてヒラヒラと手を振りながら歩いて行く。五条と遭遇したのに何事もないなんて、なんかすごく不気味ー口に出さずとも、思わず2人は顔を見合わせていた。
五条が立ち去った後、残された2人はしばらくその場に留まり、異変がないか周辺の様子を窺う。
「…本当に、何もないみたいだね」
「…みたいだな」
2人は改めて雑談をしながら帰途につく事にした。
そして、もう少しで芙蓉の家に着く頃。
「ねぇ恵」
「ん?」
「恵はさ、…悟くんみたいな、呪術師になる、の?」
ずっと、それぞれの頭の片隅にあった事だった。
目の前に中学入学を控え、自身の長期的な人生設計を考える事が多くなってきた。今後様々な事を取捨選択し、自身の進む道を決めていかなくてはならない。
少し先の話にはなるが、伏黒は呪術高等専門学校へ進学する事が決められた状態だ。呪術師になる事も、ほぼ決められているようなものだった。
「…ごめん。困らせるつもりはなかったの」
黙ったままの伏黒に芙蓉は謝罪した。
「ちょっと気になっただけだから、気にしないで」
「まだ決めてねぇ」
呪いを祓う力を持っていても、未だ呪術師という存在を受け入れきれていないというのが伏黒の本音だった。自分が呪術師になったところで、津美紀も芙蓉も幸せになれるかもわからないーまだ先の事、それはその時に決めればいい。
「…そんな他人の事心配するより、今日の宿題の事でも心配しろ。お前、算数苦手なんだから」
「う…」
桜の咲く季節はもうすぐそこまで来ている。