出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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伏黒と芙蓉が顔を合わせたのは翌日の朝食の時だった。芙蓉の鍛錬は朝食を済ませてからのようで、しっかり睡眠をとった彼女はある程度の身支度を済ませて食堂へやってきた。早朝の鍛錬を終え、既に食事を始めている伏黒の向かいに座る。
「おはよ、恵」
「…おう」
「ん?寝不足?大丈夫?」
想定内というか案の定というか、昨夜伏黒はなかなか寝付けなかったようで、今朝は寝過ごしそうになり、大急ぎで準備をして鍛錬に顔を出したという体だった。赤い目を擦り、あくびをしながら食事をとる。
「恵が寝不足とか珍しいね」
本を読んでたらやめられなくなったんでしょ、宿題をがんばり過ぎちゃったとか、などと楽しそうに話す芙蓉を前に、まさか本当の事など言えるはずもなく、伏黒は曖昧に返事をした。
食事を済ませると、まだ眠気はあるものの、だいぶ身体が楽になった気がする、昼食後の休憩時間には仮眠を取ろうーそんな事を考えながら芙蓉が食べ終えるのを待ち、共に食堂を出た。
「恵、がんばってね」
「お互いな」
伏黒と別れ、芙蓉は張り切って昨日時永に指示された場所に向かう。昨日の部屋は客間の和室で、今日は寺院の広間のような場所だった。
「おはようございます」
襖を開けて挨拶をすれば、時永はにこやかに迎えた。
「おはようございます。今日も頑張りましょう」
午前中の鍛錬を終えると、伏黒は食後に仮眠をとる為に早く食事を済ませようと食堂へやってきた。
ぐるりと食堂を眺めるが、芙蓉の姿はない。そんなに長引いてるのか、また根詰めてやっているんだろうかなどと思いながら食事を始める。
半分くらい食べ終えた辺りで、不満そうな顔をした芙蓉がやって来た。全くもってわかりやすいー伏黒は思わず緩みそうになった口元を慌てて引き締める。
「お疲れ。…ホントわかりやすいよな」
「だって…」
むぅ、と頬を膨らませながら食事を始める。
「鍛錬始めて1日2日でそうそう出来るようになってたまるかよ。そんな簡単に出来たら苦労しない」
「そう言ったって、恵はわりとスムーズに出来たんでしょ?…時永さん言ってた」
時永を相手に鍛錬をした事はないが、伏黒は五条の秘蔵っ子という事で、少なからず五条家の中で話題になっているのだろう。
「…俺は早いうちに術式に気付いたからな。たぶん、その辺りの違いもあるんじゃないか」
正直なところ、術式の認識と呪力操作の関連性があるのかわからないが、伏黒と芙蓉の違いといえばそのくらいしかない気がするーその旨も伝えてみるが、芙蓉は納得したのかしていないのか、何か考えているようで黙々と箸を進める。
「…なんかコツとかないの?」
ひとしきり食べたところで芙蓉が思い出したように口を開く。伏黒はもう食べ終えてお茶を飲んでいた。
「…感覚的な事だからな。何とも言えねぇけど…、イメージ、か。時永さんも言ってたろ、呪力は腹から捻出されるって。それをイメージする」
言いながら伏黒は使用済みの食器を重ねてトレイにまとめ、テーブルの上を片付け始める。
「これも最初は上手くいかねぇかもしれねぇけど、慣れてくれば自然に出来るようになる」
俺はこれから少し寝るから、と伏黒は立ち上がり、トレイを片付けて食堂を後にした。
「…。あ、やば」
伏黒と違って食後の空き時間がない芙蓉は時計を見て声を上げる。まずは食事を済ませないとー芙蓉は急いで食事をかき込んだ。
1時間近く仮眠を取れば、怠かった身体も楽になり、朝から続いていた頭重感も無くなっていた。午後の鍛錬が始まるまで少し時間がある。伏黒は少し芙蓉の様子でも見に行くかと部屋を出た。
鍛錬の場所はわからないが、芙蓉の呪力を辿れば造作もないーすぐにわかった。
室内から特に何の物音も聞こえてこないが、襖越しに呪力の動きが感じられる。食事の際に伝えたコツが役に立つのはもう少し先になりそうだと、また愚痴でも聞いてやろうと、伏黒は静かにその場を離れ、自身の鍛錬場へ足を向けた。
芙蓉が呪力の感覚を掴むのに1週間程費やし、さらにそのコントロールをマスターするまでも1週間はかかり、正味2週間近く五条家での鍛錬に勤しんだ。夏休みも後半に差し掛かり、学校の新学期がチラつき始めた頃に芙蓉はやっと自宅に帰れる事になった。荷物をまとめて家人に挨拶を済ませ、五条家の者が家まで送り届けてくれる事になった。玄関先で車が来るまで待機している僅かな間に伏黒が顔を出した。
「ねぇ恵。悟くんてどうしてるか知ってる?前に会ったきり、姿見てないんだけど」
「さぁな。俺もあの時以来会っていない」
芙蓉は心配がるが、伏黒にとっては日常茶飯事だ。忘れた頃にふらりと戻ってくるー掴みどころのない、そういう人だ。車がこちらに向かってくるのが見える。
「明日辺り芙蓉の家に行くかもな」
「あ、なんかそれあり得そう」
笑いながら芙蓉は車に乗り込むと、また後でねと伏黒に手を振る。伏黒が軽く手をあげて応えると車は動き出し、あっという間に見えなくなった。
夏休みが終わるまであと少し。今年の夏は新たな発見に満ちていて、少しだけ成長した2人。
伏黒は雲ひとつない晴れ渡った空を仰いだ。
「おはよ、恵」
「…おう」
「ん?寝不足?大丈夫?」
想定内というか案の定というか、昨夜伏黒はなかなか寝付けなかったようで、今朝は寝過ごしそうになり、大急ぎで準備をして鍛錬に顔を出したという体だった。赤い目を擦り、あくびをしながら食事をとる。
「恵が寝不足とか珍しいね」
本を読んでたらやめられなくなったんでしょ、宿題をがんばり過ぎちゃったとか、などと楽しそうに話す芙蓉を前に、まさか本当の事など言えるはずもなく、伏黒は曖昧に返事をした。
食事を済ませると、まだ眠気はあるものの、だいぶ身体が楽になった気がする、昼食後の休憩時間には仮眠を取ろうーそんな事を考えながら芙蓉が食べ終えるのを待ち、共に食堂を出た。
「恵、がんばってね」
「お互いな」
伏黒と別れ、芙蓉は張り切って昨日時永に指示された場所に向かう。昨日の部屋は客間の和室で、今日は寺院の広間のような場所だった。
「おはようございます」
襖を開けて挨拶をすれば、時永はにこやかに迎えた。
「おはようございます。今日も頑張りましょう」
午前中の鍛錬を終えると、伏黒は食後に仮眠をとる為に早く食事を済ませようと食堂へやってきた。
ぐるりと食堂を眺めるが、芙蓉の姿はない。そんなに長引いてるのか、また根詰めてやっているんだろうかなどと思いながら食事を始める。
半分くらい食べ終えた辺りで、不満そうな顔をした芙蓉がやって来た。全くもってわかりやすいー伏黒は思わず緩みそうになった口元を慌てて引き締める。
「お疲れ。…ホントわかりやすいよな」
「だって…」
むぅ、と頬を膨らませながら食事を始める。
「鍛錬始めて1日2日でそうそう出来るようになってたまるかよ。そんな簡単に出来たら苦労しない」
「そう言ったって、恵はわりとスムーズに出来たんでしょ?…時永さん言ってた」
時永を相手に鍛錬をした事はないが、伏黒は五条の秘蔵っ子という事で、少なからず五条家の中で話題になっているのだろう。
「…俺は早いうちに術式に気付いたからな。たぶん、その辺りの違いもあるんじゃないか」
正直なところ、術式の認識と呪力操作の関連性があるのかわからないが、伏黒と芙蓉の違いといえばそのくらいしかない気がするーその旨も伝えてみるが、芙蓉は納得したのかしていないのか、何か考えているようで黙々と箸を進める。
「…なんかコツとかないの?」
ひとしきり食べたところで芙蓉が思い出したように口を開く。伏黒はもう食べ終えてお茶を飲んでいた。
「…感覚的な事だからな。何とも言えねぇけど…、イメージ、か。時永さんも言ってたろ、呪力は腹から捻出されるって。それをイメージする」
言いながら伏黒は使用済みの食器を重ねてトレイにまとめ、テーブルの上を片付け始める。
「これも最初は上手くいかねぇかもしれねぇけど、慣れてくれば自然に出来るようになる」
俺はこれから少し寝るから、と伏黒は立ち上がり、トレイを片付けて食堂を後にした。
「…。あ、やば」
伏黒と違って食後の空き時間がない芙蓉は時計を見て声を上げる。まずは食事を済ませないとー芙蓉は急いで食事をかき込んだ。
1時間近く仮眠を取れば、怠かった身体も楽になり、朝から続いていた頭重感も無くなっていた。午後の鍛錬が始まるまで少し時間がある。伏黒は少し芙蓉の様子でも見に行くかと部屋を出た。
鍛錬の場所はわからないが、芙蓉の呪力を辿れば造作もないーすぐにわかった。
室内から特に何の物音も聞こえてこないが、襖越しに呪力の動きが感じられる。食事の際に伝えたコツが役に立つのはもう少し先になりそうだと、また愚痴でも聞いてやろうと、伏黒は静かにその場を離れ、自身の鍛錬場へ足を向けた。
芙蓉が呪力の感覚を掴むのに1週間程費やし、さらにそのコントロールをマスターするまでも1週間はかかり、正味2週間近く五条家での鍛錬に勤しんだ。夏休みも後半に差し掛かり、学校の新学期がチラつき始めた頃に芙蓉はやっと自宅に帰れる事になった。荷物をまとめて家人に挨拶を済ませ、五条家の者が家まで送り届けてくれる事になった。玄関先で車が来るまで待機している僅かな間に伏黒が顔を出した。
「ねぇ恵。悟くんてどうしてるか知ってる?前に会ったきり、姿見てないんだけど」
「さぁな。俺もあの時以来会っていない」
芙蓉は心配がるが、伏黒にとっては日常茶飯事だ。忘れた頃にふらりと戻ってくるー掴みどころのない、そういう人だ。車がこちらに向かってくるのが見える。
「明日辺り芙蓉の家に行くかもな」
「あ、なんかそれあり得そう」
笑いながら芙蓉は車に乗り込むと、また後でねと伏黒に手を振る。伏黒が軽く手をあげて応えると車は動き出し、あっという間に見えなくなった。
夏休みが終わるまであと少し。今年の夏は新たな発見に満ちていて、少しだけ成長した2人。
伏黒は雲ひとつない晴れ渡った空を仰いだ。