もしも、明日死ぬなら
恵の幼馴染のお名前は?
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釘崎の強制介入の甲斐あって、来栖との件は一応の落着となった。伏黒と芙蓉は今までと変わらず、寧ろより強い絆で結ばれた様だった。
「…という事で、一応落ち着いた感じです」
芙蓉は家入に言われた通り、伏黒を伴って医務室へ事の顛末を報告しに訪れていた。
「良かったじゃん」
新しくコーヒーを淹れながら家入は笑った。
「すっかり快晴です」
「もうどんな嵐が来ても問題無さそうだな」
「…?」
首を傾げる伏黒を他所に2人は笑い合う。出来立てのコーヒーをカップに注ぎ、家入は2人に手渡した。
「…お前らに聞くのは気が引けるが、来栖は」
「野薔薇が外に連れ出してくれたりして、…すごく仲良くなったみたいです。…今ではたぶん、私より来栖さんと出掛けてる回数多いと思います」
「釘崎にも感謝しなよ、な、伏黒」
「⁉︎」
コーヒーを口にしていた伏黒は思わず咳き込んだ。
「釘崎が口出してこなかったら円満解決にはならなかったかもしれないだろ?」
「円満って…」
どう言葉を返して良いかと苦虫を噛み潰したような顔の伏黒に家入は笑った。そして芙蓉に向き直る。
「今日はもう良いよ」
「…え?」
「今まで任務やら私の手伝いやらでゆっくりする時間もあんまりなかっただろ?だから今日はもう終わり、2人で過ごしたら良いよ」
「でも、」
「ホラホラ行った行った」
シッシッ、と追い払う様に家入は問答無用で医務室から2人を追い出した。通路に佇む2人は顔を見合わせる。
「…ホントに、良いのかな…?」
「…。もう何言っても聞いてもらえないだろうな」
伏黒は肩を竦め、スマホで時間を確認する。まだ午前中で、1日が終わるには十分時間がある。
「…どうする?これから」
「まず伊地知さんに確認だ」
言いながら伏黒はスマホを操作すると伊地知に電話をかける。電話に出た伊地知は事も無げに、家入から話は聞いている、今日明日は任務に出る必要はないと、伏黒に穏やかな口調で告げた。
「硝子さんすごい…」
「…これはもう甘えさせてもらうか」
そうして2人は私服に着替え、外に出かけて少し早めの昼食をとった。その後は菓子や飲み物、それぞれ本や雑誌を買って、伏黒の部屋でのんびり過ごす事にした。
伏黒の部屋では特にコレと言って何か話をする事もなく、並んでソファに座り、菓子をつまみながら本を読む。時折気になった本の内容について話をしたり、休憩と称して肩に頭を凭れかけてみたり、穏やかな時間がゆるゆる過ぎていく。
「…すごく贅沢な時間の使い方してるね」
不意に口を開いた芙蓉。その言葉に伏黒は本から芙蓉の方へと視線を移す。彼女の膝の上には開きっぱなしの雑誌が乗っているのが見えた。
「そうだな」
「…何が現実か、わかんなくなりそう」
伏黒が本を閉じて顔を向けると、眠たげな目でこちらを見上げている芙蓉と目が合った。
「…ん、」
伏黒は芙蓉の肩へ軽く腕を回して口付けた。芙蓉は驚いた様な表情を見せると顔を伏せた。
「少なくとも、今この時間は現実だろ」
「ふ、不意打ち…」
「2人きりで居るんだ、これくらいするだろ」
「でもそんな急に、」
「…。…キスするぞって言ってからなら良いのか?」
「や、それは…」
頬を赤く染めて言い淀む芙蓉。悪戯心が芽生えたらしい伏黒がもう一度彼女に口付けると、芙蓉は顔を隠す様に伏黒に抱き付き、彼の胸元へ顔を埋めた。
「…もぅ」
「顔真っ赤」
芙蓉はそのまま倒れ込む様にして、座る伏黒の太腿の上に上半身を横たえた。
「…あったかい」
「そりゃあな」
「…寝ちゃいそう」
「寝ちまえ」
「…何もしないでね」
「何もしねぇよ」
伏黒を見上げ、ふにゃりと溶けそうな表情の芙蓉に伏黒は僅かに劣情を覚えたものの、彼女の頭を撫でる様に髪を梳くと、とても幸せそうな表情の芙蓉につられる様に、笑みが自然とこぼれ落ちた。
程なくして穏やかな寝息が聞こえ、伏黒は暫くそのままに彼女を寝かせる事にした。
芙蓉の寝顔を十分に堪能した伏黒は、彼女を起こさない様にその場から抜け出した。ソファで眠る彼女に背を向け、伏黒はデスクの引き出しを静かに開けると、中から菓子のラッピング飾りに使われるモールを取り出す。誰かからの差し入れだといって貰った菓子の詰め合わせに使われていたものを見て、ある事を閃いた伏黒はそのモールを大切に保管していたのだった。
「……」
モールを手に、ゆっくりと静かに芙蓉へと近付いていく。相変わらず芙蓉はすうすうと眠っている。
伏黒はそっと芙蓉の左手に手を伸ばした。自分の手よりも小さく華奢で、白い綺麗な手。きちんと手入れをしているのだろう、滑らかでほっそりとした指先。伏黒は一番細い小指の隣の指へと優しくモールを巻き付ける。抵抗なく引き抜けるくらいの輪が出来上がると、伏黒はその輪を歪ませる事のないように慎重に慎重を重ねて自身の手の中へと取り戻した。
ふっと息を吐くと、伏黒は手早く輪になったモールをデスクの引き出しへと片付けた。芙蓉はまだ起きる気配がない。伏黒はソファを背もたれとする様にしてフロアに座る。より近くで芙蓉の顔を見るー額に薄い傷痕が見えた。渋谷でのケガだったなと思いながら、優しく指先でなぞった。自身の顔や身体にも多くの傷が残った。人目を引くくらいの大きな傷痕ではあるが、命が繋がり生き延びた事を思えば、如何という事はない。
今この時間が当たり前となる様に。
共にいる時間が日常とできる様に。
そんな想いを込めて、伏黒は芙蓉に口付けた。
「…という事で、一応落ち着いた感じです」
芙蓉は家入に言われた通り、伏黒を伴って医務室へ事の顛末を報告しに訪れていた。
「良かったじゃん」
新しくコーヒーを淹れながら家入は笑った。
「すっかり快晴です」
「もうどんな嵐が来ても問題無さそうだな」
「…?」
首を傾げる伏黒を他所に2人は笑い合う。出来立てのコーヒーをカップに注ぎ、家入は2人に手渡した。
「…お前らに聞くのは気が引けるが、来栖は」
「野薔薇が外に連れ出してくれたりして、…すごく仲良くなったみたいです。…今ではたぶん、私より来栖さんと出掛けてる回数多いと思います」
「釘崎にも感謝しなよ、な、伏黒」
「⁉︎」
コーヒーを口にしていた伏黒は思わず咳き込んだ。
「釘崎が口出してこなかったら円満解決にはならなかったかもしれないだろ?」
「円満って…」
どう言葉を返して良いかと苦虫を噛み潰したような顔の伏黒に家入は笑った。そして芙蓉に向き直る。
「今日はもう良いよ」
「…え?」
「今まで任務やら私の手伝いやらでゆっくりする時間もあんまりなかっただろ?だから今日はもう終わり、2人で過ごしたら良いよ」
「でも、」
「ホラホラ行った行った」
シッシッ、と追い払う様に家入は問答無用で医務室から2人を追い出した。通路に佇む2人は顔を見合わせる。
「…ホントに、良いのかな…?」
「…。もう何言っても聞いてもらえないだろうな」
伏黒は肩を竦め、スマホで時間を確認する。まだ午前中で、1日が終わるには十分時間がある。
「…どうする?これから」
「まず伊地知さんに確認だ」
言いながら伏黒はスマホを操作すると伊地知に電話をかける。電話に出た伊地知は事も無げに、家入から話は聞いている、今日明日は任務に出る必要はないと、伏黒に穏やかな口調で告げた。
「硝子さんすごい…」
「…これはもう甘えさせてもらうか」
そうして2人は私服に着替え、外に出かけて少し早めの昼食をとった。その後は菓子や飲み物、それぞれ本や雑誌を買って、伏黒の部屋でのんびり過ごす事にした。
伏黒の部屋では特にコレと言って何か話をする事もなく、並んでソファに座り、菓子をつまみながら本を読む。時折気になった本の内容について話をしたり、休憩と称して肩に頭を凭れかけてみたり、穏やかな時間がゆるゆる過ぎていく。
「…すごく贅沢な時間の使い方してるね」
不意に口を開いた芙蓉。その言葉に伏黒は本から芙蓉の方へと視線を移す。彼女の膝の上には開きっぱなしの雑誌が乗っているのが見えた。
「そうだな」
「…何が現実か、わかんなくなりそう」
伏黒が本を閉じて顔を向けると、眠たげな目でこちらを見上げている芙蓉と目が合った。
「…ん、」
伏黒は芙蓉の肩へ軽く腕を回して口付けた。芙蓉は驚いた様な表情を見せると顔を伏せた。
「少なくとも、今この時間は現実だろ」
「ふ、不意打ち…」
「2人きりで居るんだ、これくらいするだろ」
「でもそんな急に、」
「…。…キスするぞって言ってからなら良いのか?」
「や、それは…」
頬を赤く染めて言い淀む芙蓉。悪戯心が芽生えたらしい伏黒がもう一度彼女に口付けると、芙蓉は顔を隠す様に伏黒に抱き付き、彼の胸元へ顔を埋めた。
「…もぅ」
「顔真っ赤」
芙蓉はそのまま倒れ込む様にして、座る伏黒の太腿の上に上半身を横たえた。
「…あったかい」
「そりゃあな」
「…寝ちゃいそう」
「寝ちまえ」
「…何もしないでね」
「何もしねぇよ」
伏黒を見上げ、ふにゃりと溶けそうな表情の芙蓉に伏黒は僅かに劣情を覚えたものの、彼女の頭を撫でる様に髪を梳くと、とても幸せそうな表情の芙蓉につられる様に、笑みが自然とこぼれ落ちた。
程なくして穏やかな寝息が聞こえ、伏黒は暫くそのままに彼女を寝かせる事にした。
芙蓉の寝顔を十分に堪能した伏黒は、彼女を起こさない様にその場から抜け出した。ソファで眠る彼女に背を向け、伏黒はデスクの引き出しを静かに開けると、中から菓子のラッピング飾りに使われるモールを取り出す。誰かからの差し入れだといって貰った菓子の詰め合わせに使われていたものを見て、ある事を閃いた伏黒はそのモールを大切に保管していたのだった。
「……」
モールを手に、ゆっくりと静かに芙蓉へと近付いていく。相変わらず芙蓉はすうすうと眠っている。
伏黒はそっと芙蓉の左手に手を伸ばした。自分の手よりも小さく華奢で、白い綺麗な手。きちんと手入れをしているのだろう、滑らかでほっそりとした指先。伏黒は一番細い小指の隣の指へと優しくモールを巻き付ける。抵抗なく引き抜けるくらいの輪が出来上がると、伏黒はその輪を歪ませる事のないように慎重に慎重を重ねて自身の手の中へと取り戻した。
ふっと息を吐くと、伏黒は手早く輪になったモールをデスクの引き出しへと片付けた。芙蓉はまだ起きる気配がない。伏黒はソファを背もたれとする様にしてフロアに座る。より近くで芙蓉の顔を見るー額に薄い傷痕が見えた。渋谷でのケガだったなと思いながら、優しく指先でなぞった。自身の顔や身体にも多くの傷が残った。人目を引くくらいの大きな傷痕ではあるが、命が繋がり生き延びた事を思えば、如何という事はない。
今この時間が当たり前となる様に。
共にいる時間が日常とできる様に。
そんな想いを込めて、伏黒は芙蓉に口付けた。