もしも、明日死ぬなら
恵の幼馴染のお名前は?
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芙蓉は向かいに座る来栖を見た。戸惑いや不安などの気持ちを抱えているのだろう、口を引き結んで俯きがちに座っている彼女を見た感想は“自分とは違うタイプの人”。好む髪型も、好む服も、勿論考え方も。
彼女に接するのは初めてではない。真希が意識と右腕を失った彼女を連れ、その治療のサポートとケアを行った。だが、その彼女が自身の恋人に想いを寄せているとは露ほど思わなかった。
「じゃ、改めて話を聞いておこうかしら」
まるで警察の取り調べの様に、釘崎は今までの話をひとつひとつ、それぞれに確認しながら状況を整理していく。賑やかなリアクションをする虎杖を制止する様に伏黒が時折睨みつける。
「…で、今の問題は、伏黒が芙蓉と来栖さんのどっちを選ぶかって事よね」
「…その言い方やめろ」
「前も言ったけど、元はと言えばアンタの発言がキッカケなのよ、わかってんの?」
「ねぇ野薔薇、」
「伏黒もちょっと落ち着こーよ、な?」
お互い食ってかかりそうな釘崎と伏黒を窘める様に芙蓉と虎杖が声をかける。
「…俺がどーこー言える立場じゃねぇけど…、伏黒が来栖の腕の事、本気で悪いと思っての話っしょ?それに関して高峰はなんか言ったん?」
「…私は…、…言葉の受け取り方は人それぞれだし、恵が決めた事なら、…良いと思うって」
「なんでそんな曖昧なのよ!自分の男が他の女をケガさせたから責任取るって事がどーいう事かわかってんの⁉︎伏黒と離れるかもしれないって事なのよ⁉︎」
強い口調の釘崎に驚いた顔をしながら、芙蓉は一度来栖を見、ゆっくりと頷いた。
「…それは恵が決める事。責任の果たし方は色々あると思うし…、それは恵が来栖さんと決めたら良い事だし」
芙蓉の目が来栖を見つめた。視線を上げてやり取りを見ていた来栖だったが、芙蓉の目に思わず顔を伏せた。以前の彼女の言葉ー責任という言葉は義務的で、彼は誰に対してもその様な言葉を使うだろう事ーはもう拭えないくらい来栖に大きな影響を与えていた。
そして何より先の発言。伏黒に対しての絶対的な信頼が垣間見え、彼の全てを受け止めようとする芙蓉の態度。伏黒を独占したいという自身の思いが酷く幼稚に思え、そんな自分は到底彼女には敵わないのだと真っ向から突き付けられた感覚だった。
「…俺は、」
「やめて!!」
大きな声で伏黒の言葉を遮った来栖。4人は驚きの表情で彼女を見た。
「……」
それきり何も言わずに黙ってしまった来栖は下を向いたまま涙を流していた。そんな状況に、来栖を除いた4人は顔を見合わせる。と、釘崎は口元に笑みを浮かべた。
「…私は良い判断をしたと思うわよ」
そう言って、釘崎は来栖の肩に腕を回した。
「世の中には伏黒なんかよりハイスペックな男が山ほどいるわよ!もうこの際、私と一緒にイイ男探しに行って、伏黒を見返してやるのよ!」
予想を斜め上に行った釘崎の発言に伏黒、芙蓉、虎杖、そして来栖は面食らって何も言えなかった。
「華は可愛い系の服が好みだものね、イメチェンも兼ねていろんなファッション試してみましょ」
「え、ぇ…」
「そうと決まれば、行くわよ、華」
そのまま釘崎は来栖を連れて行ってしまった。
「……」
残された3人は呆然と2人を見送り、2人の姿が見えなくなったところで顔を見合わせた。
「…まぁ…、良かったんじゃね?…来栖は、どう思ったか、わかんねぇけど…」
とりあえず俺も行くわ、2人ともお疲れ、と虎杖も立ち上がって足早に去っていく。彼を見送り、残された伏黒と芙蓉は暫くそのままでいた。
「…飯、行くか」
ふと思い出した様に伏黒が言うと、今まで通り変わらない様子の芙蓉は嬉しそうに頷いた。
「2人でごはんとか、ちょっと久しぶりだね」
「何食うか…っても、自力で行ける範囲ではラーメン屋とか定食屋くらいしかねぇが」
「何処でも良いよ、最近ずっと缶詰め状態で任務にも出てなかったから。何より、恵と一緒に外行くの、久しぶりだし…、それが一番嬉しいかな」
2人は話しながら立ち上がり、外へ向けて歩き出す。
食事をするのは近くのラーメン屋に決まり、店に着けば並んでカウンターに座って麺を啜る。店を出てからは少し遠回りをして戻る事にした。
「意外と美味しかったね、あのラーメン屋さん」
「また機会があれば違う味を食べるのも良いな」
春が間近に来ているとはいえ、日が暮れれば肌寒さを覚える気温、芙蓉は吹き抜ける風に思わず身を震わせた。
「朝晩はまだ冷えるな」
徐に、当然の様に伏黒は芙蓉の手と自身の手を繋ぎ合わせる。ふふ、と芙蓉の口から漏れた笑い声に、何だよ、と口元を緩めた伏黒が振り返る。
「ありがと、恵」
「…何が」
「全部」
「何だよそれ」
繋ぎ合わせた手がとてもあたたかくて、この時間が少しでも長く続く事を願う様に、2人の足取りは段々と緩やかな速さとなっていく。拠点近くの街灯の明かりの下、芙蓉が立ち止まった。
「…今じゃなくても良い事なんだけど、」
「ん?」
芙蓉は繋いでいた手を離して自身の首元へ手を伸ばす。その指先は首にかけていたネックレスを取り出した。
「芙蓉が持ってたのか。…早く聞くべきだった。…待て、それは何処で、」
「虎杖くんが、回游の結界から戻って来た時に持って来てくれたの。…チェーンは切れちゃったけど、恵にとって、大事なものなのかもしれないからって」
首から下がるチェーンに、大小サイズ違いの2つのトップが揺れる。
「…ほんの小さな事だけど…、恵もネックレスをつけてくれてた事、こうして恵にネックレスの事を話せて、…本当に…、良かった」
伏黒は風で乱れた芙蓉の髪を撫で、彼女が手に持つトップを見つめた。
「…どっちも傷だらけだな」
「いつも身につけてる証拠だね」
「…しばらくは芙蓉が持っていてくれ」
ネックレスを摘み上げ、伏黒は芙蓉の襟元へ戻し入れる。また手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出す。
「…新しいの、買いに行くか。今度はそう簡単に外れないやつにしようと思ってる」
「…外れないやつ…?」
首を傾げる芙蓉に、伏黒は繋いでいる彼女の手、指の付け根をするりと撫でる。それに気付き、驚きと戸惑いと喜びが混ざり合い、困惑にも似た表情で伏黒を見上げる芙蓉。伏黒はそんな彼女を抱き寄せ、顔を覗き込む。
「…そういうことだ」
暗がりの中でもわかるくらいに顔を赤くした芙蓉に、伏黒は優しく口付けた。
彼女に接するのは初めてではない。真希が意識と右腕を失った彼女を連れ、その治療のサポートとケアを行った。だが、その彼女が自身の恋人に想いを寄せているとは露ほど思わなかった。
「じゃ、改めて話を聞いておこうかしら」
まるで警察の取り調べの様に、釘崎は今までの話をひとつひとつ、それぞれに確認しながら状況を整理していく。賑やかなリアクションをする虎杖を制止する様に伏黒が時折睨みつける。
「…で、今の問題は、伏黒が芙蓉と来栖さんのどっちを選ぶかって事よね」
「…その言い方やめろ」
「前も言ったけど、元はと言えばアンタの発言がキッカケなのよ、わかってんの?」
「ねぇ野薔薇、」
「伏黒もちょっと落ち着こーよ、な?」
お互い食ってかかりそうな釘崎と伏黒を窘める様に芙蓉と虎杖が声をかける。
「…俺がどーこー言える立場じゃねぇけど…、伏黒が来栖の腕の事、本気で悪いと思っての話っしょ?それに関して高峰はなんか言ったん?」
「…私は…、…言葉の受け取り方は人それぞれだし、恵が決めた事なら、…良いと思うって」
「なんでそんな曖昧なのよ!自分の男が他の女をケガさせたから責任取るって事がどーいう事かわかってんの⁉︎伏黒と離れるかもしれないって事なのよ⁉︎」
強い口調の釘崎に驚いた顔をしながら、芙蓉は一度来栖を見、ゆっくりと頷いた。
「…それは恵が決める事。責任の果たし方は色々あると思うし…、それは恵が来栖さんと決めたら良い事だし」
芙蓉の目が来栖を見つめた。視線を上げてやり取りを見ていた来栖だったが、芙蓉の目に思わず顔を伏せた。以前の彼女の言葉ー責任という言葉は義務的で、彼は誰に対してもその様な言葉を使うだろう事ーはもう拭えないくらい来栖に大きな影響を与えていた。
そして何より先の発言。伏黒に対しての絶対的な信頼が垣間見え、彼の全てを受け止めようとする芙蓉の態度。伏黒を独占したいという自身の思いが酷く幼稚に思え、そんな自分は到底彼女には敵わないのだと真っ向から突き付けられた感覚だった。
「…俺は、」
「やめて!!」
大きな声で伏黒の言葉を遮った来栖。4人は驚きの表情で彼女を見た。
「……」
それきり何も言わずに黙ってしまった来栖は下を向いたまま涙を流していた。そんな状況に、来栖を除いた4人は顔を見合わせる。と、釘崎は口元に笑みを浮かべた。
「…私は良い判断をしたと思うわよ」
そう言って、釘崎は来栖の肩に腕を回した。
「世の中には伏黒なんかよりハイスペックな男が山ほどいるわよ!もうこの際、私と一緒にイイ男探しに行って、伏黒を見返してやるのよ!」
予想を斜め上に行った釘崎の発言に伏黒、芙蓉、虎杖、そして来栖は面食らって何も言えなかった。
「華は可愛い系の服が好みだものね、イメチェンも兼ねていろんなファッション試してみましょ」
「え、ぇ…」
「そうと決まれば、行くわよ、華」
そのまま釘崎は来栖を連れて行ってしまった。
「……」
残された3人は呆然と2人を見送り、2人の姿が見えなくなったところで顔を見合わせた。
「…まぁ…、良かったんじゃね?…来栖は、どう思ったか、わかんねぇけど…」
とりあえず俺も行くわ、2人ともお疲れ、と虎杖も立ち上がって足早に去っていく。彼を見送り、残された伏黒と芙蓉は暫くそのままでいた。
「…飯、行くか」
ふと思い出した様に伏黒が言うと、今まで通り変わらない様子の芙蓉は嬉しそうに頷いた。
「2人でごはんとか、ちょっと久しぶりだね」
「何食うか…っても、自力で行ける範囲ではラーメン屋とか定食屋くらいしかねぇが」
「何処でも良いよ、最近ずっと缶詰め状態で任務にも出てなかったから。何より、恵と一緒に外行くの、久しぶりだし…、それが一番嬉しいかな」
2人は話しながら立ち上がり、外へ向けて歩き出す。
食事をするのは近くのラーメン屋に決まり、店に着けば並んでカウンターに座って麺を啜る。店を出てからは少し遠回りをして戻る事にした。
「意外と美味しかったね、あのラーメン屋さん」
「また機会があれば違う味を食べるのも良いな」
春が間近に来ているとはいえ、日が暮れれば肌寒さを覚える気温、芙蓉は吹き抜ける風に思わず身を震わせた。
「朝晩はまだ冷えるな」
徐に、当然の様に伏黒は芙蓉の手と自身の手を繋ぎ合わせる。ふふ、と芙蓉の口から漏れた笑い声に、何だよ、と口元を緩めた伏黒が振り返る。
「ありがと、恵」
「…何が」
「全部」
「何だよそれ」
繋ぎ合わせた手がとてもあたたかくて、この時間が少しでも長く続く事を願う様に、2人の足取りは段々と緩やかな速さとなっていく。拠点近くの街灯の明かりの下、芙蓉が立ち止まった。
「…今じゃなくても良い事なんだけど、」
「ん?」
芙蓉は繋いでいた手を離して自身の首元へ手を伸ばす。その指先は首にかけていたネックレスを取り出した。
「芙蓉が持ってたのか。…早く聞くべきだった。…待て、それは何処で、」
「虎杖くんが、回游の結界から戻って来た時に持って来てくれたの。…チェーンは切れちゃったけど、恵にとって、大事なものなのかもしれないからって」
首から下がるチェーンに、大小サイズ違いの2つのトップが揺れる。
「…ほんの小さな事だけど…、恵もネックレスをつけてくれてた事、こうして恵にネックレスの事を話せて、…本当に…、良かった」
伏黒は風で乱れた芙蓉の髪を撫で、彼女が手に持つトップを見つめた。
「…どっちも傷だらけだな」
「いつも身につけてる証拠だね」
「…しばらくは芙蓉が持っていてくれ」
ネックレスを摘み上げ、伏黒は芙蓉の襟元へ戻し入れる。また手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出す。
「…新しいの、買いに行くか。今度はそう簡単に外れないやつにしようと思ってる」
「…外れないやつ…?」
首を傾げる芙蓉に、伏黒は繋いでいる彼女の手、指の付け根をするりと撫でる。それに気付き、驚きと戸惑いと喜びが混ざり合い、困惑にも似た表情で伏黒を見上げる芙蓉。伏黒はそんな彼女を抱き寄せ、顔を覗き込む。
「…そういうことだ」
暗がりの中でもわかるくらいに顔を赤くした芙蓉に、伏黒は優しく口付けた。