もしも、明日死ぬなら
恵の幼馴染のお名前は?
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釘崎が来栖に遭遇し、彼女を捕まえる少し前。
医務室での作業に当たっていた芙蓉は家入に休憩だと誘われ、共にコーヒーを飲んでいた。
「…最近どうだ、伏黒とは上手くやってるか?」
「え、急にどうしたんですか?」
「釘崎が自分の事の様に愚痴をこぼしていてな。近々伏黒を殴ってしまいそうだと怒り狂っていたよ」
芙蓉は苦笑するしかなかった。以前釘崎に話した事が家入にもある程度伝わっているという事か、と芙蓉は小さく息を吐いた。
「…どれくらい話聞いてます?」
「事の次第から進行形で」
家入の業務を手伝って以来、すっかり舌に慣れたブラックコーヒーを見つめたまま芙蓉は苦笑した。
「…硝子さんはどう…、思います?」
「なかなか難しい事言うねー」
事務椅子の背凭れに体重を預け、家入はうん、と伸びをした。そして左右にゆっくりゆらゆらと椅子を揺らす。
「…にわか雨、みたいな感じじゃない?」
思いもしなかった言葉に芙蓉は顔を上げた。
「にわか雨、ですか…?」
「一応、伏黒との関係は前から見てるつもりだけど…、仲良いよね、お前ら。喧嘩とかした事ないだろ?」
「えっと、…そう、ですね」
「だから、にわか雨。喧嘩とか仲違いもした事ないお前らは、ずーっと晴れてる空みたいなもんだろ。…で、今回のイザコザで一悶着、雨が降ってきたけど、お前らの仲が悪くなったわけじゃないだろ?」
「……」
芙蓉は納得したというか腑に落ちる感覚という様なものを自覚しつつ、家入の言葉に気恥ずかしさも覚えた。
「…、硝子さんは…、また晴れると思いますか?」
家入は想像もしなかった芙蓉の言葉に、吹き出す様に声を上げて笑った。
「お前がそんな事言うなんてな」
「…笑わないでください…」
「これが笑わずにいられるかって」
ひと頻り笑い、落ち着いたところで家入はゆっくりとした所作でコーヒーを飲んだ。
「…今まで伏黒からもらったモノを傘にしたら?にわか雨を凌ぐくらい、余裕だろ?」
なんてあたたかな言葉だろうー芙蓉の中にモヤモヤと蟠っていた気持ちがスッキリと晴れ渡る様な思いだった。
と、芙蓉のスマホが着信を告げる。
「…噂をすれば、野薔薇です」
失礼します、と言い置いて芙蓉はスピーカーモードにして応答し、デスクにスマホを置いた。家入は苦笑しながらコーヒーを口にする。
「はーい、どーしたの?」
『今何処?来栖さん捕まえたのよ』
「えっ…」
芙蓉は戸惑った表情で家入を見た。
「他所でやってよ、私を巻き込むな」
言いながら何かを追い払う様に手を振る家入の声が聞こえたのか、釘崎は小さく唸った。
『じゃあラウンジにしましょ。…芙蓉はアイツも呼んどいて、いいわね』
「ちょっと野薔、」
終話を告げる機械音に芙蓉はため息を吐いた。
「…急に言われても困るって…!」
口を尖らせた芙蓉を見、家入は良いんじゃない、とコーヒーを口にした。
「もうお前らの関係は周知なんだし、この際見せつけてやったらどうだ?」
「そんな、」
「私は応援してるよ、お前らの事。…幼少期からの初恋同士、ロマンがあって良いじゃないか。今時そんなのフィクションの世界でしか目にしないよ」
褒められているのか揶揄われているのかー芙蓉は釈然としない思いを抱きながら立ち上がった。
「硝子さん、この書類は」
「後でいいよ、早いとこ釘崎の言いつけ通りにしないと後が怖いぞ。…結果報告もよろしくな」
半ば追い出される様にして医務室を出た芙蓉はスマホを取り出し、伏黒の名前がついた番号を画面上に呼び出した。数字の羅列を眺めながら、何と言えば良いのかをぼんやりと考えた。そのまま数歩歩き出す。
「…考えても仕方ないか…」
小さく息を吐くと、通話をタップした。
虎杖と共に任務へ出ていた伏黒は、電話口から伝えられる曖昧な話にとりあえず頷いた。
「…早めにラウンジに行けば良いんだな、わかった」
任務を終え、空腹だという虎杖はコンビニで買った軽食を咀嚼しながら伏黒を見た。
「…どったの?」
「…状況はよくわからんが、芙蓉からラウンジに来るよう言われた。…来栖の事で、釘崎に呼ばれてるとか」
「あー、そういや前に釘崎が何か言ってたかも」
最後のひと口を放り込み、虎杖は先に歩き始めた伏黒の後を追うように歩き出す。
「なぁなぁ、俺も行っていい?」
「…。…好きにしろ」
元は自身と芙蓉、自身と来栖の話であったはずが、釘崎が首を突っ込んできた。釘崎同様、当事者でない虎杖が加わったからといって問題があるわけではない。2人は指定されたラウンジ目指して移動を始めた。
「…おっそい」
伏黒と虎杖がラウンジに到着すると、不機嫌さを全開にした釘崎が2人を睨みつけていた。
「任務に出てたんだ、仕方ねぇだろ」
「あれ、高峰は?」
虎杖の言葉通り、芙蓉の姿が見当たらない。
「伊地知さんから呼ばれたみたい。すぐ来るわ」
とりあえず座りなさいよ、という釘崎の隣では身を縮こまらせた来栖が居る。居心地の悪さからか、下を向いていた。釘崎の向かいには伏黒が、来栖の向かいには虎杖が座ろうとした、その時。
「アンタはこっちよ」
釘崎が虎杖に指示した場所は釘崎と伏黒の間ー所謂お誕生日席。虎杖は思わず声を上げる。
「ぅえぇ、なんで⁉︎」
「アンタは当事者じゃないでしょ、そこで十分よ」
それは釘崎も一緒では、と釘崎以外の3人が同じ事を思い、伏黒がそれを口にしようとした時、こちらに向かってくる足音が耳に届いた。
「ごめんね遅くなって…!」
何とも言えない雰囲気を破る様に芙蓉が息を切らせてやって来た。釘崎は嬉々として手を振り、伏黒の隣、来栖の向かいに芙蓉を座らせる。
「全員揃ったわね。…煮え切らない状態にイライラしてたのよ。今日ここでハッキリさせてやろうじゃない」
医務室での作業に当たっていた芙蓉は家入に休憩だと誘われ、共にコーヒーを飲んでいた。
「…最近どうだ、伏黒とは上手くやってるか?」
「え、急にどうしたんですか?」
「釘崎が自分の事の様に愚痴をこぼしていてな。近々伏黒を殴ってしまいそうだと怒り狂っていたよ」
芙蓉は苦笑するしかなかった。以前釘崎に話した事が家入にもある程度伝わっているという事か、と芙蓉は小さく息を吐いた。
「…どれくらい話聞いてます?」
「事の次第から進行形で」
家入の業務を手伝って以来、すっかり舌に慣れたブラックコーヒーを見つめたまま芙蓉は苦笑した。
「…硝子さんはどう…、思います?」
「なかなか難しい事言うねー」
事務椅子の背凭れに体重を預け、家入はうん、と伸びをした。そして左右にゆっくりゆらゆらと椅子を揺らす。
「…にわか雨、みたいな感じじゃない?」
思いもしなかった言葉に芙蓉は顔を上げた。
「にわか雨、ですか…?」
「一応、伏黒との関係は前から見てるつもりだけど…、仲良いよね、お前ら。喧嘩とかした事ないだろ?」
「えっと、…そう、ですね」
「だから、にわか雨。喧嘩とか仲違いもした事ないお前らは、ずーっと晴れてる空みたいなもんだろ。…で、今回のイザコザで一悶着、雨が降ってきたけど、お前らの仲が悪くなったわけじゃないだろ?」
「……」
芙蓉は納得したというか腑に落ちる感覚という様なものを自覚しつつ、家入の言葉に気恥ずかしさも覚えた。
「…、硝子さんは…、また晴れると思いますか?」
家入は想像もしなかった芙蓉の言葉に、吹き出す様に声を上げて笑った。
「お前がそんな事言うなんてな」
「…笑わないでください…」
「これが笑わずにいられるかって」
ひと頻り笑い、落ち着いたところで家入はゆっくりとした所作でコーヒーを飲んだ。
「…今まで伏黒からもらったモノを傘にしたら?にわか雨を凌ぐくらい、余裕だろ?」
なんてあたたかな言葉だろうー芙蓉の中にモヤモヤと蟠っていた気持ちがスッキリと晴れ渡る様な思いだった。
と、芙蓉のスマホが着信を告げる。
「…噂をすれば、野薔薇です」
失礼します、と言い置いて芙蓉はスピーカーモードにして応答し、デスクにスマホを置いた。家入は苦笑しながらコーヒーを口にする。
「はーい、どーしたの?」
『今何処?来栖さん捕まえたのよ』
「えっ…」
芙蓉は戸惑った表情で家入を見た。
「他所でやってよ、私を巻き込むな」
言いながら何かを追い払う様に手を振る家入の声が聞こえたのか、釘崎は小さく唸った。
『じゃあラウンジにしましょ。…芙蓉はアイツも呼んどいて、いいわね』
「ちょっと野薔、」
終話を告げる機械音に芙蓉はため息を吐いた。
「…急に言われても困るって…!」
口を尖らせた芙蓉を見、家入は良いんじゃない、とコーヒーを口にした。
「もうお前らの関係は周知なんだし、この際見せつけてやったらどうだ?」
「そんな、」
「私は応援してるよ、お前らの事。…幼少期からの初恋同士、ロマンがあって良いじゃないか。今時そんなのフィクションの世界でしか目にしないよ」
褒められているのか揶揄われているのかー芙蓉は釈然としない思いを抱きながら立ち上がった。
「硝子さん、この書類は」
「後でいいよ、早いとこ釘崎の言いつけ通りにしないと後が怖いぞ。…結果報告もよろしくな」
半ば追い出される様にして医務室を出た芙蓉はスマホを取り出し、伏黒の名前がついた番号を画面上に呼び出した。数字の羅列を眺めながら、何と言えば良いのかをぼんやりと考えた。そのまま数歩歩き出す。
「…考えても仕方ないか…」
小さく息を吐くと、通話をタップした。
虎杖と共に任務へ出ていた伏黒は、電話口から伝えられる曖昧な話にとりあえず頷いた。
「…早めにラウンジに行けば良いんだな、わかった」
任務を終え、空腹だという虎杖はコンビニで買った軽食を咀嚼しながら伏黒を見た。
「…どったの?」
「…状況はよくわからんが、芙蓉からラウンジに来るよう言われた。…来栖の事で、釘崎に呼ばれてるとか」
「あー、そういや前に釘崎が何か言ってたかも」
最後のひと口を放り込み、虎杖は先に歩き始めた伏黒の後を追うように歩き出す。
「なぁなぁ、俺も行っていい?」
「…。…好きにしろ」
元は自身と芙蓉、自身と来栖の話であったはずが、釘崎が首を突っ込んできた。釘崎同様、当事者でない虎杖が加わったからといって問題があるわけではない。2人は指定されたラウンジ目指して移動を始めた。
「…おっそい」
伏黒と虎杖がラウンジに到着すると、不機嫌さを全開にした釘崎が2人を睨みつけていた。
「任務に出てたんだ、仕方ねぇだろ」
「あれ、高峰は?」
虎杖の言葉通り、芙蓉の姿が見当たらない。
「伊地知さんから呼ばれたみたい。すぐ来るわ」
とりあえず座りなさいよ、という釘崎の隣では身を縮こまらせた来栖が居る。居心地の悪さからか、下を向いていた。釘崎の向かいには伏黒が、来栖の向かいには虎杖が座ろうとした、その時。
「アンタはこっちよ」
釘崎が虎杖に指示した場所は釘崎と伏黒の間ー所謂お誕生日席。虎杖は思わず声を上げる。
「ぅえぇ、なんで⁉︎」
「アンタは当事者じゃないでしょ、そこで十分よ」
それは釘崎も一緒では、と釘崎以外の3人が同じ事を思い、伏黒がそれを口にしようとした時、こちらに向かってくる足音が耳に届いた。
「ごめんね遅くなって…!」
何とも言えない雰囲気を破る様に芙蓉が息を切らせてやって来た。釘崎は嬉々として手を振り、伏黒の隣、来栖の向かいに芙蓉を座らせる。
「全員揃ったわね。…煮え切らない状態にイライラしてたのよ。今日ここでハッキリさせてやろうじゃない」