奈落
恵の幼馴染のお名前は?
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医務室へ突然飛び込んできた面々の処置が落ち着いたところで、冥冥と西宮が顔を見せた。
「どうやら上手くいった様だね」
芙蓉が首を傾げると、冥冥は部屋の隅のモニターを示した。依然として宿儺との戦闘が映し出されている。
「…東堂、さん?」
「乙骨の方も動けているみたいだな」
「それじゃ、まだ私にはやる事が残っているからね。行こうか、西宮くん」
芙蓉は何と言ったら良いのか、部屋を出ていく冥冥と西宮の後ろ姿を見送るしか出来なかった。
「…とりあえず…、虎杖と脹相以外は戻って来たな」
少しひと息入れてくる、と家入は部屋を出て行った。医務室に準備していたベッドが足りず、甘井と、拠点で待機していた狗巻がベッドを移動したりと手を貸してくれていた。隻腕となり、身体のバランスが崩れるのだろう、幾分疲れた表情の狗巻が医務室隅のベンチに、小さくなったパンダと共に座っていた。
「狗巻先輩、お疲れさまです」
「ツナマヨ」
「芙蓉もお疲れ」
「…狗巻先輩?」
ひと息ついたのも束の間、睨みつける様にモニターを見ていた狗巻に芙蓉は思わず声をかけた。返事はなく、狗巻の視線を追うように芙蓉もモニターを見る。五条の肉体を行使している乙骨が領域を展開していた。閉じられた領域の内部は何が起きているか見る事も出来ず何もわからない。狗巻はその様子をじっと見つめている。
狗巻が何も言わない以上、何がどうなのかもわからない。芙蓉はモニターから目を逸らし、長く息を吐いた。
と、くぐもった呻き声、苦しげな息遣いが耳に入り、芙蓉は弾かれた様に顔を向けた。
「棘!」
「っ狗巻先輩!」
突然狗巻が血を吐き出した。血塗れのネックウォーマーを引き下げ、苦悶の表情で咳き込んでいる。
「何、が、」
「…ずじ、ご」
「!…あのボイスレコーダーか!」
パンダの言葉にどう応えたものか、芙蓉は慌てながらも狗巻に慌てて反転術式を施した。
「…おがが」
「何言ってるんですか、じっとしててください!」
芙蓉の術式を拒絶する様に首を振って制止する狗巻に構わず、芙蓉は狗巻に手を伸ばす。宿儺相手に呪言を使ったダメージが大き過ぎるのか、狗巻の状態が良くならない。芙蓉は出力を上げようと大きく息を吸った。
「もうやめとけ。呪力切れで動けなくなるぞ」
ぽす、と芙蓉の頭にパンダが飛び乗って来た。
「呪力出力が上がらないのもそのせいだ。少し休め」
「っ、で、も…」
パンダに言われて初めて芙蓉は自身の状態に目を向けた。今まで見て見ぬフリをして動き回ってきた。そのツケが回って来たのか、小さなパンダが乗っただけなのに、身体が酷く重く感じる。
「じゃげじゃげ」
狗巻は芙蓉に喉薬を翳して見せ、コレがあるから大丈夫だと言うように狗巻は薬を飲み干した。親指を立てて見せる狗巻とパンダの柔らかさに、芙蓉は全身の力が抜けていく状態に抗う事も出来ず、パンダが耳元で何か騒いでいるのが聞こえていたがそのまま意識を手放した。
「芙蓉」
揺り動かされる身体と自身を呼ぶ声に、芙蓉は微睡から急速に引き上げられる感覚に目を開けた。
「…、野薔、薇…、」
「良かった、起きたわね」
釘崎と共にいたのは彼女が目覚めてすぐの時だったはずー抜け落ちていた記憶が一瞬にして芙蓉の脳内を駆け抜けていった。
「…っ!恵は⁉︎虎杖くんは⁉︎宿儺はどうなっ」
「五月蠅いわね、落ち着きなさい」
「……」
やや乱暴にお茶の入ったペットボトルを押し付けられ、芙蓉はひと口お茶を飲む。喉が潤う感覚に喉が渇いていた事を自覚し、ごくごくとお茶を飲んだ。
「…とりあえず全部片付いたわよ」
「…みんなは、」
「無事よ。…虎杖も、伏黒も」
芙蓉は言葉に出来ないくらいの喜びと安堵を覚え、一気に噴き出してきた涙をそっと拭った。
「虎杖はともかく、伏黒は眠ってるわ。…ま、宿儺に暫く抑え込まれてたから仕方ないのかもしれないけど」
何か言葉を返したいと思っても芙蓉の口は何も言葉を紡ぎ出せず、代わりに涙が溢れてくるばかりだった。そんな芙蓉に釘崎は困った様に笑った。
「…良い事ばかりじゃないけどさ。…とりあえずは、良かったわね。頑張ったじゃん」
「…うん、」
「とりあえず片付いたって事は早めに伝えておこうと思って起こしたの。これで安心して休めるでしょ」
喜びを噛み締め、涙を流す芙蓉と彼女を気遣う釘崎。と、乱暴にドアを叩く音が響く。
「もっと静かにドア叩きなさいよ、壊れんだろ」
「壊れなかったんだからいーじゃん、それより高峰、だいじょぶ⁉︎」
あちこちに絆創膏やらガーゼなどを貼り付けた虎杖の姿を見て、芙蓉は再び奥から溢れてくる涙を拭った。
「え、どっか痛むん?」
「馬鹿ね、…嬉し泣き、に決まってんでしょ」
そう言う釘崎の目にも、うっすらと涙が滲んでいた。
「虎杖、くん、…ありが、とう」
「やめてよ、約束守っただけだって。…やっぱ俺も伏黒の事は助けたかったしさ。アイツがいなくなったら淋しいじゃん。…それにさ…、俺の手の届くところではもう、誰にも死んで欲しくない。笑ってて欲しいじゃん」
「…ほーんと、アンタって奴はそーいう恥ずかしい事を恥ずかしげも無く言えるわよね」
同調する事に対しての照れ隠しかそれとも本心か、釘崎は虎杖の脚を軽く蹴りつけた。
「いっだぁ!ちょっと、ソコさっきくっついたばっかなんですけどぉ釘崎さん⁉︎」
「何よ、虎杖のくせに生意気言ってんじゃないわよ」
「えぇ〜…」
憎まれ口を叩きながらも楽しそうな2人につられ、泣いていた芙蓉にも笑顔が浮かぶ。
ー恵がいたら、なんて言うかな。
そんな事を思いながら、芙蓉は一応の安寧に胸を撫で下ろし、伏黒の目覚めを心から願った。
「どうやら上手くいった様だね」
芙蓉が首を傾げると、冥冥は部屋の隅のモニターを示した。依然として宿儺との戦闘が映し出されている。
「…東堂、さん?」
「乙骨の方も動けているみたいだな」
「それじゃ、まだ私にはやる事が残っているからね。行こうか、西宮くん」
芙蓉は何と言ったら良いのか、部屋を出ていく冥冥と西宮の後ろ姿を見送るしか出来なかった。
「…とりあえず…、虎杖と脹相以外は戻って来たな」
少しひと息入れてくる、と家入は部屋を出て行った。医務室に準備していたベッドが足りず、甘井と、拠点で待機していた狗巻がベッドを移動したりと手を貸してくれていた。隻腕となり、身体のバランスが崩れるのだろう、幾分疲れた表情の狗巻が医務室隅のベンチに、小さくなったパンダと共に座っていた。
「狗巻先輩、お疲れさまです」
「ツナマヨ」
「芙蓉もお疲れ」
「…狗巻先輩?」
ひと息ついたのも束の間、睨みつける様にモニターを見ていた狗巻に芙蓉は思わず声をかけた。返事はなく、狗巻の視線を追うように芙蓉もモニターを見る。五条の肉体を行使している乙骨が領域を展開していた。閉じられた領域の内部は何が起きているか見る事も出来ず何もわからない。狗巻はその様子をじっと見つめている。
狗巻が何も言わない以上、何がどうなのかもわからない。芙蓉はモニターから目を逸らし、長く息を吐いた。
と、くぐもった呻き声、苦しげな息遣いが耳に入り、芙蓉は弾かれた様に顔を向けた。
「棘!」
「っ狗巻先輩!」
突然狗巻が血を吐き出した。血塗れのネックウォーマーを引き下げ、苦悶の表情で咳き込んでいる。
「何、が、」
「…ずじ、ご」
「!…あのボイスレコーダーか!」
パンダの言葉にどう応えたものか、芙蓉は慌てながらも狗巻に慌てて反転術式を施した。
「…おがが」
「何言ってるんですか、じっとしててください!」
芙蓉の術式を拒絶する様に首を振って制止する狗巻に構わず、芙蓉は狗巻に手を伸ばす。宿儺相手に呪言を使ったダメージが大き過ぎるのか、狗巻の状態が良くならない。芙蓉は出力を上げようと大きく息を吸った。
「もうやめとけ。呪力切れで動けなくなるぞ」
ぽす、と芙蓉の頭にパンダが飛び乗って来た。
「呪力出力が上がらないのもそのせいだ。少し休め」
「っ、で、も…」
パンダに言われて初めて芙蓉は自身の状態に目を向けた。今まで見て見ぬフリをして動き回ってきた。そのツケが回って来たのか、小さなパンダが乗っただけなのに、身体が酷く重く感じる。
「じゃげじゃげ」
狗巻は芙蓉に喉薬を翳して見せ、コレがあるから大丈夫だと言うように狗巻は薬を飲み干した。親指を立てて見せる狗巻とパンダの柔らかさに、芙蓉は全身の力が抜けていく状態に抗う事も出来ず、パンダが耳元で何か騒いでいるのが聞こえていたがそのまま意識を手放した。
「芙蓉」
揺り動かされる身体と自身を呼ぶ声に、芙蓉は微睡から急速に引き上げられる感覚に目を開けた。
「…、野薔、薇…、」
「良かった、起きたわね」
釘崎と共にいたのは彼女が目覚めてすぐの時だったはずー抜け落ちていた記憶が一瞬にして芙蓉の脳内を駆け抜けていった。
「…っ!恵は⁉︎虎杖くんは⁉︎宿儺はどうなっ」
「五月蠅いわね、落ち着きなさい」
「……」
やや乱暴にお茶の入ったペットボトルを押し付けられ、芙蓉はひと口お茶を飲む。喉が潤う感覚に喉が渇いていた事を自覚し、ごくごくとお茶を飲んだ。
「…とりあえず全部片付いたわよ」
「…みんなは、」
「無事よ。…虎杖も、伏黒も」
芙蓉は言葉に出来ないくらいの喜びと安堵を覚え、一気に噴き出してきた涙をそっと拭った。
「虎杖はともかく、伏黒は眠ってるわ。…ま、宿儺に暫く抑え込まれてたから仕方ないのかもしれないけど」
何か言葉を返したいと思っても芙蓉の口は何も言葉を紡ぎ出せず、代わりに涙が溢れてくるばかりだった。そんな芙蓉に釘崎は困った様に笑った。
「…良い事ばかりじゃないけどさ。…とりあえずは、良かったわね。頑張ったじゃん」
「…うん、」
「とりあえず片付いたって事は早めに伝えておこうと思って起こしたの。これで安心して休めるでしょ」
喜びを噛み締め、涙を流す芙蓉と彼女を気遣う釘崎。と、乱暴にドアを叩く音が響く。
「もっと静かにドア叩きなさいよ、壊れんだろ」
「壊れなかったんだからいーじゃん、それより高峰、だいじょぶ⁉︎」
あちこちに絆創膏やらガーゼなどを貼り付けた虎杖の姿を見て、芙蓉は再び奥から溢れてくる涙を拭った。
「え、どっか痛むん?」
「馬鹿ね、…嬉し泣き、に決まってんでしょ」
そう言う釘崎の目にも、うっすらと涙が滲んでいた。
「虎杖、くん、…ありが、とう」
「やめてよ、約束守っただけだって。…やっぱ俺も伏黒の事は助けたかったしさ。アイツがいなくなったら淋しいじゃん。…それにさ…、俺の手の届くところではもう、誰にも死んで欲しくない。笑ってて欲しいじゃん」
「…ほーんと、アンタって奴はそーいう恥ずかしい事を恥ずかしげも無く言えるわよね」
同調する事に対しての照れ隠しかそれとも本心か、釘崎は虎杖の脚を軽く蹴りつけた。
「いっだぁ!ちょっと、ソコさっきくっついたばっかなんですけどぉ釘崎さん⁉︎」
「何よ、虎杖のくせに生意気言ってんじゃないわよ」
「えぇ〜…」
憎まれ口を叩きながらも楽しそうな2人につられ、泣いていた芙蓉にも笑顔が浮かぶ。
ー恵がいたら、なんて言うかな。
そんな事を思いながら、芙蓉は一応の安寧に胸を撫で下ろし、伏黒の目覚めを心から願った。